宮崎駿の描いたルパン。
モンキーパンチが否定するルパン
押井守版「ルパン三世」
そしてGREENvsRED
まずは、半ば思いつきで、前回の話もぶっちゃけ放置しつつ、なんだかんだでルパン考察というか、まとめというかをやってみる。
理由はいたって簡単。
映画やアニメや漫画なんでもいい、流して見ると正直意味もわからず納得行けないよくわからない作品等、世の中には五万とあるだろう。
しいてあげるとするならば、「攻殻機動隊Ghost in the Shell や イノセンス」等の押井守の作品などではないだろうか。
一度ではわけがわからない、考察して理解をしていくにつれて面白くなっていく。
そんな作品のひとつであるのが OVA「Green vs Red」であろうと。
僕なりに調べて知ったこと、それを少しでも多くの人にみてもらいたい。
だからこそ、少しかじったにわかがまとめてみる。
最初に。
宮崎駿描いたルパン3世とは。
TV版第二シリーズ2話考察
145話「死の翼アルバトロス」155話「さらば愛しきルパンよ」
そして、ほとんどの人がルパン=として答えるであろう、「カリオストロの城」であろう。
この3つは宮崎駿が脚本演出をしている作品である。
1.TVシリーズ2話の内容。
基本的なベースが、「核」・「戦争」等であること。
そしてなにより、この2話では基本的にワルサーP38やかっこいい車そんなものはでてこない。
ルパンが戦ったのは、飛行機にのって敵のでっかい飛行船をぶっ壊したのと。(半ば不二子)
銃撃戦に脱いだ靴を投げつけたくらいであるということ。
これは、いままでのTVシリーズをすべて壊しにいくような内容=新しいルパン像を打ち立てる。
・敵は武器商人や軍需産業、国家権力などで原爆やロボット、戦車などを使おうとする=複雑怪奇な殺戮を繰り返す世の中の象徴
・そのような圧倒的な敵達に対し、ルパンは「ワルサーも持たず」徒手空拳で立ち向かう
そして複雑怪奇のようなTVシリーズでひたすら続けていた 人を撃つということ。
宮崎駿はこれで終止符を打ち、続けることだけを目的としていたルパンに決別したかったと語っている。
2.カリオストロの城
宮崎駿は今までのルパンではないルパンを描く。
カリオストロの城は、ワルサーもないダッシュですたこら逃げる。使うのは花火。人は殺さない。
結局、カリオストロの城のオチとしては、古代ローマの都市がお宝だった。
さすがのルパンも盗めない。
お金も盗んでいない、偽札も盗んでいない、結局カリオストロのお宝も盗んではいない。
泥棒にできるのは、「今はこれが精一杯」と、手から小さな花を出すことしかできない。
そこで、結局何を盗んだのか。
ご存知のとおり。
銭型「ルパンめまんまと盗みやがって」
クラリス「いいえ、あの方は何も盗まなかったわ。私のために戦ってくれたんです」
銭型「いや、やつはとんでもないものを盗んでいきました」
「あなたの心です」
これっぽちしかできない。
では、宮崎駿は、優しいルパン。なのか。
いや、今までのルパンが、ハードボイルドすぎたのか。
3.モンキーパンチのルパンと宮崎駿のルパン
モンキー・パンチ「ルパン三世」初監督の弁 より抜粋
(インタビュー時期は「ルパン三世 DEAD OR ALIVE」公開直前あたり?)
原作者としては宮崎さんの『カリオストロの城』を否定していない。
モンキーパンチの『ルパン三世』は毒があって、女性に対する優しさはあるけれども、ああいう優しさはないんですね。わりとクール。
ただ否定はしない。
それぞれ違うルパンなだけであって
4.押井守版ルパン三世
カリオストロの次に、押井守は宮崎駿に依頼されて、カリオストロの次つまり新作を作ろうとしていた。
押井はルパンをおわらそうとした。
「そうそう。で、『あんたの好き放題やんなさいよ。』、『なら好き放題やらしてもらおう』って。
ところがさ、その好き放題が突破できなかったんだよね。会杜の壁っていうのを」
「や、今となっては言ってもしょうがないんだけどさあ…。要はルパンなんかいなかったんだって話。
みんなが寄ってたかってルパンって幻想作ってただけだっていう話になる予定だった。
それにイスラエルとか絡めて、東京で戦争起こすっていう仕掛けだった。
で、ついでにルパンも次元も五エ門も、実はそんな奴いなかったと。『あそこを通る通行人も警官も、
電車で居眠りしてるオヤジも、みんなルパンじゃないか? だってルパンて変装の名人だから』
って感じだった。そしたら全然わけわからんて言われて、あっさり轟沈しちゃったの(笑)」
と語っている。
「虚構を盗ませる」 全部が虚構で全部がどんでん返しで、確かなものなんか何もないという話。世の中に唯一確かなものがあるとすれぱ、それは当時で言えば「核」だった。
というようなものを作ろうとしたらしい。
が断念。
そしてその意思を受け継ぐかのようにできたのが。
5. GREENvsRED
2008年OVAとして公開された。
この作品はいままでのルパンと一線を画す。
主人公がルパンではない。
ルパンの本当のよさとはなにか、本当の姿とはなにか。
まるで押井守が描きたかった「虚構」をなぞるように物語は始まる。
ルパンは大勢。どれが本物でどれが偽者かではなくて、この作品ではすべて偽者。
そして、ルパンにあこがれる人を描くことで、あらためてルパンの良さというものについて、メスをいれている。
そして、押井守が掲げていた「虚構」
ルパンとは、幻想なのか、人が作り上げたものなのか。
そんなことに挑戦している。
そしてかつ、その謎をどう落とすのか、それを世代交代という形で虚構を示した。
つまり、ルパンは一人ではない。本物のルパンはルパンが俺がルパンということで決まることではなく、自分以外のだれかが決める。
顔だけそっくりでも何の意味もなく、盗みの技術が優れているだけでもダメで、そうした器の大きさ、常人とは違う(と見えるほどの)精神の強さも要求されるのだ。
ルパンはあくまで自由だ。
絶対的な自由というものは、非常に重いもの
一般的には、自由や権利とペアで義務もついてくる、その代わり国というものに守ってもらえる(ということになっている)。だから普通、人には国籍があるし、その国の中で許されている範囲での自由を享受し、同時に義務も果たさねばならない。
だがルパンの「あくまで自由」というものは、望めば何でも出来る代わりに、彼を守ってくれるものは何一つなく、頼りになるのは自分自身の力だけという事で、すべて自分で背負い、守り、独力で生き抜かねばならないのだ。
それに耐えられる男こそ、ルパンなのだ。
少し長くなったが、GREENvsREDというOVAは
TV版2話・カリオストロの城・押井版ルパンの流れから見ると、なかなか面白くなってくる。
なにもしてねーけどこいつが一番有名なんだよな。とルパンが複数人しゃべっているルパンがいるが、きっとこれが カリオストロの城ルパンなんであろう。
なにはともあれ、どれが本当のルパンなのか、そんなことは誰も知りません。
すべてが偽者で、すべてが本物なのかもしれません。
少し長くなりましたが、
こうやってひとつひとつ考察していき、流れを読み改めてみるとなかなか面白くなっていく。
こんな感じでまたちょくちょく好きな映画でも考察指定校と思っています。
長文失礼しました 横木