取り急ぎ、今回のハリルホジッチ監督解任に関して、触れなければならない項目は個人的には以下の7つあると考えています。
  1. ハリルホジッチ監督の挫折と解任の必然/「世界基準」に到達出来なかった日本選手の問題
  2. なぜゾーンでなくマンマーク主体の守備になったか?(ハリルホジッチ監督の守備について)
  3. ハリルホジッチ監督に相手に応じた戦い方はあったのか?(ハリルホジッチ監督の攻撃について)
  4. 判断の遅い香川選手、スプリント量・運動量のない本田選手、ハリルホジッチ監督での選外の必然
  5. 今回の解任における香川選手、本田選手などに疑われる、サッカー外での動きと、それに応じてしまった田嶋会長のサッカー界における汚点
  6. それでも、今回のロシアワールドカップで日本が勝つための解決策
  7. 今回のハリルホジッチ監督解任の本質は、日本サッカー界が「世界基準」を超えるのをあきらめ【日本化サッカー】を取るという大分岐点である
では順にそれぞれ見て行きたいと思います。

1.ハリルホジッチ監督の挫折と解任の必然/「世界基準」に到達出来なかった日本選手の問題


結論めいたことを言えば、今回この文章を書く為に最終予選などのハリルホジッチJAPANの試合を見返してみると、ハリルホジッチ監督の解任は必然だったと個人的には思われました。

しかし、その理由は、解任賛成派の人達が唱えていたハリルホジッチ監督の能力問題とは違い、ハリルホジッチ監督が求めた(西野監督が就任会見で言っていた)「世界基準」に到達出来なかった、日本選手側の問題だった、と個人的には思われました。

ではハリルホジッチ監督が求め、日本選手が到達出来なかったサッカーにおける「世界基準」とは何だったのでしょうか?
その答えは、サッカーというスポーツの本質の中にあると思われます。

サッカーとは、精神的に自立した個々の選手が、複数動的な敵と味方の中で、さまざまな選択肢の中から最善あるいは次善の選択を、周りと連動しながら瞬時に決断し続けるスポーツである、と考えられると思われます。

すなわちサッカーとは、動的に複数の敵味方の関係性の中で連動して不断に決断して行く、「組織的」なスポーツなのです。
そしてサッカーにおける「世界基準」とは、その「組織的」なプレーレベルに到達するということだと思われます。


ところで、ここで使う「組織的」という言葉は、日本人は組織的プレーが得意、の意味では使われていません。

実は日本人は(動的・敵味方複数・連動・自立個々判断という意味での)「組織的」プレーは苦手だと思われるからです。
(※もちろん人によって微細に見れば違っては来るのですが、ここでは文化的総体の話で「日本人」という言葉を使っています。)

日本人が得意としている、全体の意識を統一してまとまってする行動は「集団的」行動(プレー)とここでは定義し、「組織的」行動(プレー)とは区別します。

日本人が得意な「集団的」とは、ある型やパターン、マニュアルといったその集団が持つルールを全員が共有して守ることです。

そしてこの、己を殺し、皆が同じ方向にパターンを磨いて行う「集団的」行動を、日本人は得意としていると思われます。
(※これは「己を殺し、皆が同じ方向にパターンを磨いて行くやり方」を批判する言動すら、己を殺し皆が同じ方向にパターン的に批判する、ぐらいに文化的に浸透していると思われています。)


つまり日本文化的には、日本人はパターンや型を磨いて行く競技には長けているのです。
(もちろんそれでもそこで勝ちを収めるには想像を絶する努力と困難と、それに匹敵する称賛が必要だと思われますが‥)

例えば、
・己の技術を純粋に磨いて行く、体操やフイギュアスケートやシンクロナイズドスイミング
・レーンが分かれている、水泳や陸上やスピードスケート
・1対1や2対2の、柔道やレスリングや卓球
・攻守の交代がはっきりしていて選択の決断を思考する時間が割と取れる、野球やカーリング、将棋
などは、パターンや型を精緻に磨くのが得意な日本人にとって、精神的にも取り組みやすい競技だと言えます。


ところがサッカーというスポーツは、敵味方が複数人動的に動き、瞬時に関係性の中から個々人が自立して連動的に決断して行く「組織的」なスポーツの為、日本人には向いていない、となります。
今回のハリルホジッチ監督解任は、そんな「組織的」プレーの集大成ともいえるサッカーという競技に、日本人は文化的に向いていないのではないか、を示しているようにも思われました。

サッカーという競技が当たり前に要求している「組織的」プレーが出来る自立した個人になることを、日本人が文化的に拒否してしまった。
ハリルホジッチ監督の挫折は、「組織的」プレーが苦手な日本人について、ハリルホジッチ監督も日本選手も互いに意識化出来ていなかった、のが要因だと思われています。


宮澤ミッシェルさんは、今回のハリルホジッチ監督解任決定を受けて、「なんで得点が取れないんだとなった時に、コンビネーションが全くない。」とハリルホジッチ監督がやってきたことを批判しながら、次の様な日本サッカーの特徴を指摘しています。

「やっぱり日本って、細かいことが欲しいんだよ。プルアウェイ、チャレンジ&カバー、フラット3、デュエル・・・色々と流行ったけど、キーワードが欲しいんだよね。

 僕の友人がスペインから帰ってきて、日本の指導者研修をS級ライセンスまで受けたことがあった。向こうのライセンスも持っているんだけど、こっちでも受講したんだ。
すると彼は細かいな、この国って言ったんだ。だけど、そのかわり戦術のことが少ないなって。」
「ハリル、失敗の要因は“オシムとの違い”。拘りすぎた欧州化、「日本人」を理解せず」【宮澤ミシェルの独り言】/FOOTBALL CHANNEL 2018/4/12


宮澤ミッシェルさんは、スペインでライセンスを持ってる友人が日本の指導者研修で感じた、日本の「細か(さ)」の印象から日本の「細かいことが欲しい」特徴を指摘しています。
と同時に、「戦術のことが少ない」という特徴も指摘しています。

このことは「集団的」な型・パターンを細かく求める日本の特徴を示しているエピソードだと思われます。


おそらく欧米では、監督による<戦術の大方針>があれば、個々の局面での細かい決断は、それぞれの選手が言われなくても今までの決断経験の積み重ねから判断出来る話なのだろうと想像します。
そしてそれらは連動し「組織的」振る舞いとして、全体として有機的に動くことになります。


中田英寿さんも、日本サッカーが求める特徴について
「トルシエは細かく細かくやった」「パターンをたくさん覚えていった方が確率はいい」
「中田英寿が語った代表監督交代劇。「僕が考える日本らしいサッカーとは」」/Number Web 2018/4/13
と似た指摘をしています。


同様の事は、2000年の記事に書かれた、ベンゲル監督が名古屋グランパスの監督に就任した時に感じた、細かく約束事を決めて欲しいという日本選手の特徴にも示されています。

「ベンゲル氏「名古屋に就任当初、選手から「ボールを持ったらどこにパスを出せばいいか約束事を決めてほしい」と要望された。
「サッカーは状況に応じて自分の選択でやる」という欧州のサッカー観との違いに戸惑いつつ、日本人の「勤勉さ」に着目、基本の反復練習で成果をあげた。」
「トルシエ・ベンゲル比較 サッカー日本代表監督問題」朝日新聞 2000/5/17



以前「保守・リベラル配置図」で書いた、積極/秩序(父型)・寛容/多様性(母型)を使って、サッカーの分類をしてみます。

ここでは、横軸の右側に「<父型大>積極/秩序/縦に速いサッカー」、左側に「<父型小>離脱/解放/緩く回すサッカー」を当てはめます。
縦軸は上側に「<母型大>寛容/多様性/組織的パスサッカー」、下側に「<母型小>排他/集団的パターン/殻に閉じこもるサッカー」を当てはめます。

ハリルホジッチサッカー世界基準図


「世界基準」のラインは、縦軸上の「組織的パスサッカー」、横軸右の「縦に速いサッカー」のそれぞれにあり、どちらも越えることが例えばワールドカップでベスト16以上のチームに勝ち上がる「世界基準のサッカー」になります。(図の右上の薄紫の部分)。
当然ハリルホジッチ監督も、その「世界基準ライン」を日本代表で超えることを目標に掲げ3年間取り組んできたと思われます。

ハリルホジッチ監督が目指したのは、弱小チームでも手が届く、縦に素早く攻める(相手の裏を取る)「世界基準ライン」を超える図の右上のC.薄い青の場所に到達することでした。

このレベルさえ届けば、あとは相手チームを詳細に研究し尽くして、相手の長所を潰し短所を攻めることで、相手を凌駕するチャンスを掴むことが出来るはずでした。

その為には、日本選手の個々人が、相手の「組織的サッカー」に対応出来るように、殻を打ち破り<大方針>の背骨を通し自立した「組織的」サッカー選手になる必要がありました。
すなわち例えるなら、<背骨を通し自立した、脊椎動物サッカー>です。

ハリルホジッチ監督は、日本選手がその「世界基準ライン」を超えられると最後まで信じていたと思われます。


ところが残念ながら実際のハリルホジッチ監督での日本代表はD.濃い青の場所にしか到達出来ず、「世界基準ライン」を超えることは出来ませんでした。

それは選手自身の問題であったと私的には思われるのですが、ハリルホジッチ監督のこの挫折は、解任の必然でもありました。

後述しますが、長谷部キャプテンや本田選手、香川選手といった中心選手やそれに近いジャーナリストやサッカー関係者は、自身の「世界基準ライン」を超えることが出来なかった問題を、ハリルホジッチ監督の能力問題にすり替えていたと思われます。
といった発言までする選手も現れ、ハリルホジッチ監督の求めた「世界基準ライン」超えを拒否するようになります。


これら中心選手がハリルホジッチ監督の求める「世界基準」を拒否するようになった根拠は、「自分たちの」やり方で十分「世界基準ライン」を超えられ、自分たちは上の図のA.薄いピンクのパスサッカーが出来る場所にいる、の思いにあると個人的には考えています。

これは一部の中心選手や、それに近いジャーナリストや一部サッカー関係者も思っている節があるように思われます。
しかし、個人的には実際に彼らが言っているパスサッカーは「世界基準ライン」を超えておらず、殻に閉じこもった上の図のB.濃い赤の場所にしかいない、A.の場所にいるのは錯誤なのではないか、と思われています。
実際は、例えるならB.の、【殻に閉じこもった、甲殻類サッカー】の場所にいるということです。


なぜならもし日本選手のレベルがA.の「世界基準ライン」を超えた場所にいるなら、ハリルホジッチ監督の求めたC.の「世界基準ライン」を超えたやり方にも対応出来たはずだからです。


ハリルホジッチ監督の解任の理由は、監督の能力を嘲笑する論調で報道され一般の人にそのように植え付けられ示されました。
しかし、その必要以上の嘲笑は、恐れからの逃避であり、一部の、日本代表選手やジャーナリストやサッカー関係者が、日本選手や日本サッカー界の本当の姿(【殻に閉じこもった、甲殻類のサッカー】)から目を逸らしたいが為に産まれて来たものだ、と個人的には強く思われています。



2.なぜゾーンでなくマンマーク主体の守備になったか?(ハリルホジッチ監督の守備について)


長友選手は、4年前のブラジルワールドカップのコートジボワール戦後に、マンマークの必要性を
訴えています。

「ああいう戦術をされたとき、ゾーンだけでは世界レベルで守るのは難しい。
僕らには体格もないし、マンツーではないけど、人を見るのも必要という意見も出た」

4年前の日本代表はザッケローニ監督の元、ゾーンで守備を構築してきました。
しかし、肝心のブラジルワールドカップのコートジボワール戦の本番で、日本選手は自分のマークをことごとく最後の最後で外してしまう事態が起こり、それが失点に直結し敗戦に繋がってしまいました。

下の一連の写真はコートジボワール戦の2失点目の場面です。
日本左サイドからクロスを上げる17番オーリエ選手に香川選手が詰められず、ゴール前の数的有利も長友選手、山口選手がそれぞれ相手マークを離してしまい、結果的には数的不利になり失点してしまいます。

ブラジルワールドカップ・コートジボワール戦2失点目①
コートジ2失点目⑥文字入り

ブラジルワールドカップ・コートジボワール戦2失点目②
コートジ2失点目⑦文字入りブラジルワールドカップ・コートジボワール戦2失点目③
コートジ2失点目⑨文字入り


この約2分前にも似たような形で1失点目を喰らってしまっています。

ブラジルワールドカップでの日本代表のゾーンでの守備の崩壊は、ゾーン守備のスペシャリストの国のイタリアの監督であるザッケローニ監督が、4年間掛けてもゾーンの守備を日本では構築出来なかったことを示していると個人的には思われます。


ハリルホジッチ監督は初めロープを使った練習でゾーン(プレス)の練習をしています。

しかし、ハリルホジッチ監督も、コートジボワール戦をはじめ、ブラジルワールドカップでの日本代表の試合を分析し、就任後の試合も通して、日本選手は人に対する意識を強調しないとすぐマークを離してしまう傾向がある欠点を見抜いていたのではないか、と思われます。

その結果ハリルホジッチ監督は、ブロックを作りながらも元々人に厳しくプレスする守備戦術をアルジェリア代表でも取っていましたが、より人を意識した守備を日本選手に課すようになって行ったと思われます。


ところが、今度は人に付き過ぎる欠点が現れて来たのです。

日本vsウクライナ戦、ウクライナの戦術
日本1-2ウクライナ ウクライナ攻撃時(日本アウェー)
話は飛んで、左の図は2018年3月27日のウクライナ戦の両チームのフォーメーションとウクライナの戦術の動きです。

日本のダブルボランチの17番長谷部選手と16番山口選手は、ハリルホジッチ監督から相手のインサイドハーフの8番マリノフスキー選手、17番ジンチェンコを意識して守備をするように指示されていたと思います。
(長谷部選手、山口選手のポジションが逆の場合含む)

ところがウクライナの8番マリノフスキー選手、17番ジンチェンコ選手は、日本が人に付いて来る守備をするのを見越し、それぞれ自陣深くに下がるようになります。(黄色↑

すると長谷部選手、山口選手がその2人に付いて行く(青色↑)ので、図の赤丸で示した日本自陣のゴール前にスペースが出来てしまいました。
このままだとこのスペースをウクライナの前線の選手に使われて日本は危険な状態になります。

ただ、この問題の解決策はそんなに難しい事ではないと思われます。

その解決策の選択肢は以下の2つあるように思われます。
A.出来てしまった図の赤丸のスペースを、日本の両サイドバックの5番長友選手、21番酒井(高)選手が、そのスペースを使うウクライナ選手を意識して埋める
B.長谷部選手、山口選手は、無暗に相手8番、17番に付いて行かず、図の赤丸のスペースをきちんと埋めておく

ハリルホジッチ監督が、日本のダブルボランチに相手に付いて行く守備タスクを課していたなら、長谷部選手は即座にA.の解決策を全体に指示すれば瞬時に済む話でした。


ところが事態はそうすんなりとは運びませんでした。

長谷部選手はA.の解決策の指示を前半中に長友選手らにしたことはしたのですが、自身はかなりナーバスになってしまいます。

前半12分07秒には相手陣深くにいたサイドバックの5番ソボル選手にまで食い付こうとし、逆にマークを離した17番ジンチェンコ選手へパスを通され、最後はシュートの場面まで持って行かれピンチを招きます。
前半29分57秒、前半39分04秒には、2度に渡って相手にミスパスしてしまう失態を犯してしまいます。

長谷部選手のウクライナ戦前半の守備は、正直ボロボロでした。


ところでウクライナ戦での日本の守備は、後半になると落ち着きます。
それはハーフタイム中に選手間でもA.の解決策の意識の共有が徹底出来たからかもですが、ハリルホジッチ監督もハーフタイムに守備の修正を行っています。

「ハリルホジッチ監督ウクライナ戦後の会見
「…ハーフタイムで修正した。守備で(酒井)高徳と圭佑のサイドに相手選手がいたので、より縦を切ってプレーしようと言った。
そしてわれわれの左サイドで、(長友)佑都、長谷部(誠)、(柴崎)岳の3人がポジションチェンジをしながらトライアングルを作っていた。
相手がポジションを入れ替える中で、どうやって相手を捕まえるのかを話した。」」

いずれにせよ結果としてA.の解決策が徹底され、連動の守備意識も上がり、後半の守備は安定しました。

ただ、この解決策はそんなに難しい話ではないはずでした。
例えば相手の両ウィングが上の様に中央寄りに絞って来るのは、最終予選のホーム・オーストラリア戦や、2017年11月のベルギー戦で相手がやって来ていて、その対応とほぼ同じだったからです。
つまり日本のサイドバックにとっては過去に経験済みの解決策でした。

しかし日本選手はそこまで難しいと思われないこの解決策を瞬時に「組織的」に取ることは出来ませんでした。


上で長谷部選手が、①前半12分07秒に相手陣深くにいたサイドバックの5番ソボル選手にまで食い付こうとし、逆にマークを離した17番ジンチェンコ選手へパスを通され、最後はシュートの場面まで持って行かれピンチを招く場面を書きましたが、このような長谷部選手のプレーは実は初めてではありませんでした。

長谷部選手は、②2017年11月のブラジル戦の前半14分43秒以降にも、9番ジョブス選手に詰めるがかわされ、2失点目に繋がるPKを取られるカウンターの起点になってしまっています。

③2018年3月のマリ戦の前半17分47秒でも、ハリルホジッチ監督(通訳)の「ハセ前!ハセ前!ハセ出ろ、出ろ!」の掛け声もむなしく、4番ハイダラ選手にかわされボールを持ちあがられてしまいます。

しかもこの3場面とも非常に似た失敗であり、相手陣左サイド(日本の右サイド)深くまで追いかけた上でのプレーでした。
つまり、長谷部選手はプレスにおいて何度トライしても同じ失敗を繰り返し、相手からボールを奪取することが出来ず、大ピンチに繋がるプレーをしてしまっているのです。

正直、長谷部選手はハリルホジッチ監督の求めに応えられず、そのやり方に嫌気がさしていたのではないでしょうか‥
それがウクライナ戦前半のミスだらけのプレーに繋がったと個人的には感じています。


長谷部選手はウクライナ戦前日の会見で
「(選手の考え)それをひとつに合わせるべきだとは思わないです。」
と、選手間で出ていたハリルホジッチ監督戦術への不満を含めた様々な意見を、キャプテンとしてまとめる気がないと思われる発言をしています。

長谷部選手は、日本サッカー協会のマリ戦後の聞き取り調査で
「選手の総意として現体制では厳しいと伝えた」
と後に報道されています。


しかしこの発言は、長谷部選手がハリルホジッチ監督の求める「世界基準」に到達出来てなかったのが理由ではないかと、個人的には強く思われます。

もし長谷部選手がハリルホジッチ監督の要求に応えた上で、協会関係者に半ば解任を促す発言をしたのであればまだ理解も出来ますが、現実は自身がハリルホジッチ監督の要求に応えられないからそのような発言になったと、思われてなりません。

ブラジル戦、マリ戦、ウクライナ戦の長谷部選手は、奪いに行ってはかわされてピンチを招く「世界基準」に到達していない選手になってしまっていました。

しかし切られたのは「世界基準」を求めたハリルホジッチ監督の方でした。


ホームオーストラリア戦前にハリル解任を求め予想し、本田選手に関する著書もあるジャーナリストの木崎伸也氏は、「ハリルホジッチ監督に選手たちが『戦術がない』と感じた」と指摘し、香川選手の記事も多いジャーナリストのミムラユウスケ氏も半ば笑いながら「(それは)間違いない」と同意していました。

その理由は、
「ミムラユウスケ氏「プレス位置どっから行くんだ、と聞かれても、(監督は)それは試合の状況が決めるからって答えてくれなかった」「(選手は)みんな結構唖然とした」」
(デイリーサッカーニュースFoot! 2018/4/30)

だということらしいです。

しかしハリルホジッチ監督はこの事について明確に答えています。


ハリルホジッチ監督 ベルギー戦前日会見
―ブラジル戦の守備で前からボールを奪いにいくのか、それともブロックを作って対応するのか曖昧な時間があったと思う。そこの修正をどう考えているのか?

「選手たちにも同じような質問をされた(笑)。
いつハイプレスをかけるのか。いつ下がってブロックを作るのか。それは「ゲームの状況」が決めることだ。
ハイプレスをかけるのか、ミドルブロックを形成するのか、ローブロックにするのか。それは私が「ここで作りなさい」と決めることではなくて、ゲームの状況に合わせて作るものだ。

つまりブロックは「ハイ」「ミドル」「ロー」と3つあるが、自分たちで決めることではなく、相手を見ながら状況によって形成する位置を決めるのだ。私ではない。

もちろん、タッチラインから「前からいけ」「戻ってこい」といった指示も出すが、それが聞こえなかったり、聞こうとされていなかったのかは分からないが、伝わっていないことがある。
(略)
よって、いつどのようにプレスをかけるのかということは選手にも聞かれたが、「開始8分でハイプレス」というような指示の出し方はしていない。これはゲームコントロール、ゲームマネジメント次第だ。」」


もちろんプレスの連動性はそれでも基本中の基本ですのでその指示は必要ですが、当然プレスにおける連動性の指示はされていたことがベルギー戦後の長澤選手の証言から伺えます。

「長澤は、プレスの連動性について戦術的な約束事があったと話している。
「ボールを持ち運んでくる選手に対しては、ある程度まで来たら制限をかけようと。自分たちがコンパクトにできる守備をしようとしたが、ある程度はできたと思う。
大迫選手を中心にするというか、前線は大迫選手がスタートの合図になる。大迫選手が行ったところで、後ろが連動していく。後ろが遅れると間延びして、そこから行かれてしまうので」」
「日本代表に堂々デビューの長澤 「相手の嫌がる」連動した守備で存在感発揮」FOOTBALL ZONE WEB 2017/11/15


しかしこのプレスの基本の連動性すら、日本選手はこれまで満足に出来ていたとは思えませんでした。


守備のプレスやブロックの選択は、試合の状況に応じて「組織的」に個々の選手が自立して判断し連動して行う。
これは1.でも書いた、ベンゲル監督が指摘した「「サッカーは状況に応じて自分の選択でやる」という欧州のサッカー観」に通じる考え方だと思われます。

日本選手は、ゾーンの守備も満足に出来ず、その欠点を補うためのマンマーク気味の守備も出来ず、いつどうするのかといった細かいパターン指導がないとお手上げになり、自立的な状況に応じた「組織的」判断も出来ない‥

木崎伸也氏の批判や、ミムラユウスケ氏の半ばのハリルホジッチ監督への嘲笑は、本来向けられるべき選手のレベル問題から目を逸らさせる役割しか果たしていないのではないかと、個人的には強く感じられています。


ブラジルワールドカップで優勝したドイツ代表のレーヴ監督は、ハリルホジッチが監督だったアルジェリア代表に関し前日会見で「守備はコンパクトで組織的」だとの評価をしています。
「(レーヴ監督)「(アルジェリア代表は)非常にコンパクトで、運動量も極端に多い、アグレッシブなチームだ。あれほど積極的な守備を見せると同時に攻撃が速いチームは、あまり見たことがないね。危険な相手だと思うよ」」
の記事もありました。

今はハリルホジッチ監督の守備に関する問題を指摘している戸田和幸氏も、アルジェリア代表のベルギー戦でのハーフタイムのスタジオ解説で
「(アルジェリア代表は)非常に距離感も保ちながら、粘り強く勤勉にボールの取りどころを探しながら守れていますね」
(NHK 2014/6/18)
と当時は評価していました。

今、慌ててハリルホジッチ監督の守備の問題の指摘に奔走している人がいるとすれば、それは個人的には、日本選手が「世界基準」に達していない問題から目を逸らそうとしている(あるいは結果的にそうなっている)と思えてなりません。

そしてそのことに長谷部キャプテンですら目を背けようとし全ての問題責任を監督に覆い被せようとしていたとすれば、ハリルホジッチ監督の解任もまた必然だったと個人的にも思われてなりません。


3.ハリルホジッチ監督に相手に応じた戦い方はあったのか?(ハリルホジッチ監督の攻撃について)


ハリルホジッチ監督の攻撃に関して一番評価されている試合は、2017年8月31日の最終予選日本ホーム、オーストラリア戦の、ロシアワールドカップを決定した試合だと思われます。
井手口選手、山口選手がオーストラリアのダブルボランチにハイプレスを掛け、浅野選手、井手口選手の鮮やかなゴールで完勝した試合でした。

ところが、現在、ハリルホジッチ監督の能力を落したいが為に、ハリルホジッチ監督で良かったのはこの最終予選ホームオーストラリア戦だけだ、そのホームオーストラリア戦もオーストラリアが日本が苦手とするロングボールを最後まで放り込んで来なかったからたまたま良かっただけだ、の意見もちらほら目にしたりします。

さらに、ロシアワールドカップ本番でも相手に応じた戦い方の戦術は期待出来なかった、といった意見も目にしました。

その検証の為に、最終予選ホームオーストラリア戦以外の試合も見てみたいと思います。

最終予選日本アウェー、オーストラリア戦
オーストラリア1-1日本 日本攻撃時(日本アウェー)まず初めに、2016年10月11日に行われた最終予選日本アウェーのオーストラリア戦を見てみます。

この試合はオーストラリアの両サイドバックの選手が高いポジションを取ることがハリルホジッチ監督によって分析されていたようです。
日本の先制点は、そのスペース(図の赤丸部分)を利用したゴールでした。

8番原口選手がハーフウェーライン付近で相手の縦パスをカットし、17番長谷部選手→ワントップの4番本田選手→原口選手と縦パスが繋がって前半早々の4分48秒にゴールが決まりました。

まさにオーストラリアの右サイドバック19番マクゴーワン選手が取る高い位置の背後を原口選手が切り裂く、鮮やかな相手の裏を取ったゴールといえました。

試合の方は後半に原口選手が逆に相手にPKを与えてしまい1-1の引き分けになってしまいますが、この試合もハリルホジッチ監督の分析が当たった試合だと言えます。


最終予選日本ホーム、サウジアラビア戦
日本2-1サウジアラビア 日本攻撃時(日本ホーム)
次に2016年11月15日に行われた最終予選日本ホーム、サウジアラビア戦です。

この試合はサウジアラビアの2列目と最終ライン(3列目)の間にスペース(図の赤丸部分)があることが分析されていたようで、その空間を利用した13番清武選手らが躍動して輝いた試合でした。

試合に関しては日本がハイプレスの中そのスペースを使ってチャンスを作り出すものの、なかなか得点することは出来ず、前半終了間近に相手選手のハンドからのPKでの先制点でした。

ただ、後半34分31秒の8番原口選手のゴールも、この(図の赤丸部分)スペースにするすると原口選手が入り、そこに5番長友選手が折り返したボールをシュートして決めたゴールでした。

サウジアラビアの2列目と最終ライン(3列目)の間のスペース(図の赤丸部分)は意図的に利用されたとこの事からも考えられ、清武選手が輝いた記憶も強く試合内容も良く、この試合もハリルホジッチ監督の分析によって勝利した試合だと言えます。


最終予選日本アウェー、UAE戦
UAE0-2日本(日本アウェー)2017年3月24日の最終予選日本アウェー、UAE戦もハリルホジッチ監督によって勝利した試合と言えそうです。

「手倉森コーチ「UAE戦ではアンカーを置く4-3-3のプランを先に監督が提示することで(ガンバ大阪で同じシステムでプレーする)今野や倉田の名前が出てきた。」」

との手倉森コーチの証言にあるように、相手に対し有効な4-3-3のシステムを初めから想定準備し、鮮やかに勝利した試合でした。

その意図は、相手のキーマンでピッチを縦横無尽に動き回るサウジアラビアの21番オマル選手を、インサイドハーフの17番今野選手、サイドの8番原口選手、左サイドバックの5番長友選手で役割分担しながら抑える戦術だったと思われます。

そして21番オマル選手はそれほど守備をしないので、逆に日本の攻撃時には今野選手が浮くことになり、その攻撃が日本にとって効いていました。

試合の方は19番酒井(宏)選手のグラウンダークロスを、相手の裏に抜け出した久保選手が前半12分58秒に代表初ゴールを決め先制点を取り、今野選手も後半5分43秒に久保のクロスをシュートしてチーム2点目のゴールを決めるという快勝でした。



このようにハリルホジッチ監督は、最終予選日本ホームのオーストラリア戦だけでなく、様々な試合で分析に基づく戦術からの勝利を勝ち取っています。

つまり、ロシアワールドカップ本番でも十分その分析力は発揮されただろうと個人的には考えられると思われます。


しかし、ではなぜハリルホジッチ監督は解任されてしまったのでしょうか?
その理由は、全ての試合で分析に基づく勝利とはいかなかったからだと思われます。

とりわけ、ハリルホジッチ監督の基本ベースである縦に速く(相手の裏を素早く取る)のプレーが、最終予選でも決まったのはそこまで多くなく、さらに2017年11月のブラジル戦、ベルギー戦、2018年3月のマリ戦、ウクライナ戦ではほとんど相手最終ラインを超えて背後を突くプレーは出来ていませんでした。

つまり、相手の最終ラインを満足に超えられはいなかったのです。

この結果、ハリルホジッチ監督は、ロシアワールドカップ本番での分析での勝利という淡い期待は残りながら、必然的に攻撃の面でも解任に至ったという事だと思われます。
しかしその要因は、もちろん相手の最終ラインを「世界基準」で超えることの出来なかった選手の側にあったと思われます。


ハリルホジッチ解任要因となった、3つの選手の問題
世界基準越えに挫折したハリルホジッチジャパン
ハリルホジッチ監督での、2.の日本選手の守備の問題、3.の日本選手の攻撃の問題をまとめれば次のようになります。

①(攻撃時)相手最終ラインを超えて裏を取れない

②(守備時)相手からボールを取り切れずかわされる、後方も連動が乏しい

③試合の中で(例えば想定外のポジションを相手が取ってきた時に、瞬時に)「組織的」に判断出来ない
(どうしても事前にパターンの回答を欲してしまう)


残念ながら攻撃時、守備時の両方で、日本選手は「世界基準」を超えられず、それによってハリルホジッチ監督は必然的に解任になってしまったのです。


ハリルホジッチ監督は、最後まで日本選手がこれら「世界基準」の壁を突破してくれると信じていたと思われます。
しかしその信頼は、(一部例外を除き)多くの選手の「世界基準」拒否によって壊されました。

ハリルホジッチ監督は日本選手による「世界基準」超えは諦めて、早々に出来る範囲の戦術に切り替えるべきだったのかもしれません。


4.判断の遅い香川選手、スプリント量・運動量のない本田選手、ハリルホジッチ監督での選外の必然


個人的には、香川選手がここ最近の日本代表で大活躍した記憶がありません。
そしてその理由は2つあると考えています。

それは、①判断の遅さ、②囲まれてのボールロスト、です。

香川選手の①の判断の遅さを象徴する試合は2017年10月6日キリンチャレンジカップのニュージーランド戦だと思われます。

キリンチャレンジカップ ニュージーランド戦
日本2-1ニュージーランド(日本ホーム)最終予選のホームオーストラリア戦で出場機会のなかった香川選手は、このニュージーランド戦で久々のスタメン出場を果たします。

ところがこの試合の10番香川選手はことごとく判断の遅いプレーをしていました。

前半1分10秒では上がってきたサイドバックの5番長友選手にパスを出さずボールを奪われます。
前半10分10秒では左サイドでセンタリングを上げられずボールを取られます。
前半19分14秒では左から上がってくる長友選手へのパス出しが遅く相手に奪われてしまいます。

香川選手の判断の遅さの象徴的なシーンは、前半39分19秒にやって来ます。
自陣ゴール前にいた2番井手口選手からの縦パスを自陣中央フリーで受けた香川選手は、そのままドリブルで相手陣内に上がって行きます。
センターサークル左の香川選手の前方を、フリーの15番大迫選手も駆け上がって行きます。
ところがこのタイミングで香川選手からパスが大迫選手に出ません。
香川選手はその後さらに大迫選手の後ろから駆け上がって来た9番武藤選手にパスを出すのですが、オフサイドで終わってしまいました。

このパス出しのタイミングの遅さには、TV解説していた都並さん、北澤さん、城さん、の3人全員が、「出ないかー」「いやー」「タイミングを逃した」などの溜息の落胆コメントを出していました。

この試合の香川選手は判断の遅さだけでなく、前半7分45秒、前半22分43秒、の2度似たような位置からシュートを外すおまけ付きでした。

当然、香川選手に対する評価は、報道でも厳しい結果になってしまいました。


香川選手の②ボールロストの象徴的な試合は、ニュージーランド戦より少し前の2017年6月7日キリンチャレンジカップのシリア戦です。

キリンチャレンジカップ、シリア戦
日本1-1シリア(日本ホーム)香川選手はシリア戦の前半5分50秒、センターサークル付近で後方からの山口選手のパスを受けます。
しかしトラップがばたつき、そこで18番アルグナミ選手、9番アルマワス選手に囲まれ、アルマワス選手にボールを奪われてしまいます。

香川選手は奪われたアルマワス選手を追い掛けて自陣深くまで戻るのですが、ボールを取ることが出来ず、最後はアルマワス選手に倒されて、左肩を脱臼してしまいます。
香川選手はこの怪我によって次の最終予選日本アウェーのイラク戦を欠場する他なくなりました。

実は日本代表の香川選手は、この①判断の遅さ、②囲まれてのボールロスト、をかなり他の試合でも見せていました。

ハリルホジッチ監督は縦に速い、即ち判断の速い選手を求めていたと思われます。

香川選手は3.で見た最終予選日本ホームのサウジアラビア戦にも清武選手と交代して後半19分から出場しています。
しかし、清武選手は少ないタッチで判断早くプレーし躍動したのに対し、香川選手は判断が遅く感じそれほど目立つプレーもありませんでした。

判断が遅くボールをロストしてしまう香川選手がハリルホジッチ監督の日本代表で次第に出場機会を失っていったのは、個人的には必然だと思われていました。



一方、本田選手は香川選手と違って、日本代表に出場すれば判断は早く、左足のキック力もいまだ健在だと個人的にも思われていました。

ところが本田選手は、ハリルホジッチ監督が右サイドで求めていたスプリント量・運動量に問題がありました。
本田選手も
「僕の場合は(スプリントを)20本、30本やったら他のプレーがボロボロになってしまう」
と読みようによっては半分ハリルホジッチ監督のやり方に白旗を上げているコメントを出しています。

実際、ハリルホジッチ監督の両サイドは自陣に戻って守備も行い、かつ相手最終ラインの裏も取る「世界基準」の運動量を求められていたのですが、本田選手はそれに対応出来ているとは思えず、必然的に代表の出番も激減して行きました。


私個人は、以上の理由からハリルホジッチ監督は、香川選手、本田選手を、ロシアワールドカップのメンバーに選ばないんだろうな、と思っていました。
その理由は、ハリルホジッチ監督の求める「世界基準」に2人とも到達しなかったからだと思われました。

ところが現実は、ハリルホジッチ監督の方が解任される事態になったのでした。


5.今回の解任における香川選手、本田選手などに疑われる、サッカー外での動きと、外的要因に応じてしまった田嶋会長のサッカー界における汚点


個人的には4.で指摘したように、香川選手が①判断の遅さ、②(アジアレベルでも)囲まれてボールロストしてしまう、ので、ハリルホジッチ監督でのロシアワールドカップは難しいな、とは感じてはいました。
2017年の年末から2018年2月10日に怪我するまでドルトムントでは調子は良さそうで、もしかしたらベンチの可能性はありました。
清武選手の怪我など相対的にトップ下での序列は上がりハリルホジッチ監督から最後は名前も出ていました。
しかし香川選手は、個人的には日本代表では立場含めて変化はないだろうと思っていました。


ところが、香川選手は2017年11月のブラジル戦、ベルギー戦スポーツ報知 2017/11/16、2018年3月のマリ戦サンスポ 2018/3/24、ウクライナ戦ゲキサカ 2018/3/28の日本代表の欧州遠征の計4試合全てをスタンド観戦します。
しかも、その観戦後にはハリルホジッチ監督の戦術批判を繰り返していました。

「(香川真司)「(ベルギー戦の終盤について)0-1で残り20分という中、リトリート(後退)しても前に(杉本)健勇しかいない状況では点を取りにいけない。
3トップが相手の3バックをはめにいって高い位置で奪い、一気に前へ出ないと。
それなのに、両ウイングが相手のウイングバックを見て下がったままで良かったのか」」

これは例えて言えば、イタリア代表に漏れたバロテッリ選手、あるいはドイツ代表に漏れたゲッツェ選手が、4試合続けて代表の試合をスタンド観戦し、あげくその後に監督の戦術批判をするようなものです。

個人的には異様な光景だと思えてなりませんでした。


なぜこんなことが可能で許されたのか。
個人的には香川選手の背後にいる、8年で250億円の日本代表スポンサー契約を結んでいるアディダスの存在があると思われます。

香川選手が2017年11月の欧州遠征に外されたことにより、アディダスの関係者による「面子を潰された」との報道もありました。

「この香川以上に、彼の落選にショックを受けている者がいる。香川とスパイクなどで個人契約を結んでいるアディダスだ。同社はJFAの公式スポンサーでもあり、23年までの8年契約で250億円ものスポンサー料を払う。
「香川の前にエース背番号の10をつけていたのは中村俊輔で、さらに前は名波浩。いずれもアディダスと個人契約を結んでおり、JFAの公式スポンサーの指定席と化している。
協会のパトロンでもあるのに、香川のような“顔”が外れたので、面子を潰された格好です」(アディダス関係者)」
「香川真司の代表落選で浮上 大スポンサー「アディダス」のスパイク問題 8年契約で250億円」週刊新潮 2017/11/16



ところで犬飼基昭 元日本サッカー協会会長は2010年のサッカー批評で、田嶋幸三 現日本サッカー協会会長(当時は副会長)は「(スポンサーに)揉み手してペコペコ」している、と評しています。

「(犬飼基昭)
「田嶋が僕のことを『スポンサーに態度がでかくてないがしろにしている』と言ったらしいんだけど、ちょっと待てよ、と。

おまえみたいに都合の悪いことに揉み手してスポンサーに頭下げるのがいいんじゃなくて、 スポンサーのためには日本の代表がいいサッカーをやって人気を上げることが一番なんだと。

揉み手してペコペコしたってそんなものはちっともスポンサーのためにはならないって言ったんです。 」」

サッカー批評49 2010年12月10日


田嶋会長がスポンサーの顔色を伺い配慮していることは、ハリルホジッチ監督解任に関する自身の会見でのバックにも色濃く表れていたと思われます。


田嶋会見スポンサー背景

左の上はハリルホジッチ監督の解任会見、下は西野監督就任会見の写真です。


上の解任会見のバックは青一色にJFAのマークとロゴだけで、いつものスポンサーの背景はありませんでした。


一方、下の西野監督就任会見では、いつものようにアディダスやキリンといったスポンサーの背景がカラフルに貼られています。


まるでハリルホジッチ監督解任にはスポンサーは関係ありません、と主張したいが為の配慮に思われます。

しかしかえってスポンサーの影響力の大きさが示された行為だったと個人的には思われます。


しかもいつもは日本サッカー協会の代表に関する会見は協会自らネット中継をするのですが、ハリルホジッチ解任に関する会見は協会はネット中継を行いませんでした。



田嶋会長は、マリ戦後の翌日の2018年3月24日、日本サッカー協会の会長に再任されます。

(「田嶋幸三会長が再任、日本サッカー協会新体制発足」(日本サッカー協会 2018/3/24))

この時に、事務総長だった岩上和道氏が、退任した岡田武史副会長に代わり、日本サッカー協会の副会長に就任します。

岩上和道氏は元電通出身で、電通の局長や執行役員を歴任した人です。

「岩上和道(いわがみ かずみち)プロフィール」日本サッカー協会

しかもこの岩上氏を、田嶋氏が会長に就任した2016年3月27日に、わざわざ事務総長のポストを新設して日本サッカー協会に迎えたのも田嶋会長でした。

「2016年度定時評議員会を開催 田嶋幸三新会長の下、新体制が発足」(日本サッカー協会 2016/3/27)


電通出身の岩上氏を会長就任と同時に新設の事務総長に迎え入れ、会長再任と同時に副会長に抜擢する。
犬飼 元会長の、「田嶋は…(スポンサーに)揉み手してペコペコ」している、との評価と合わせて、広告業界を通したスポンサーに対して配慮がなされていないと考える方が不自然な話だと感じられます。

個人的には、香川選手が4試合連続でスタンド観戦し監督批判をしても許される環境は、このようなフィールド以外の影響で整っていたと思えてなりません。


一方本田選手は、4.で書いたように、スプリント量・運動量のなさの問題からハリルホジッチ監督によって試合から外される傾向にありました。

そんな中で本田選手から出されたのが、田嶋会長宛てのハリルホジッチ監督解任を求める連名のメールでした。

「「既に代表落ちしていた本田が、田嶋会長の個人アドレス宛てに連名で“監督解任”を請うメールを送ろうと(香川選手に)持ちかけてきたのです。
他にも乾、FW岡崎慎司、DF吉田麻也が“連判状”に名を連ねました」(協会幹部)」
「ハリル解任、背景に本田圭佑ら5人からの「直訴メール」」週刊新潮 2018/4/19


これが事実であれば、はっきり言ってフィールド外での政治的行為です。

本田選手に関しても、スポンサー関連の話は指摘されています。

「(ハリルホジッチ監督解任により)代表への招集頻度が下がっていた本田や香川真司にとっては、歓迎すべき環境になった。
協会としても、スター選手不在で苦戦続きだった最近の代表には“スポンサー離れ”という危機も感じていた。
本田や香川が再び代表に定着すれば、スポンサー収入も期待できる」(前出・スポーツ紙記者)」


西野監督はその就任会見で、田嶋会長から監督就任を要請(つまりハリルホジッチ監督解任)を知らされる時まで、「ハリルホジッチ監督を支えていきたい」と考えていたことを話しています。
「(3月末)私自身も間違いなく(技術委員長として)ハリルホジッチ監督を支えていきたいという、今までどおりの気持ちでいっぱいでした。」

そして西野氏は、技術委員長としてウクライナ戦直後にはハリルホジッチ監督の続投を明言していました。

つまり田嶋会長がハリルホジッチ監督の解任に動いたのは、マリ戦の翌日である自身の会長再任が決まった日の後からが濃厚ということです。

さらに当時の西野技術委員長が最後まで「ハリルホジッチ監督を支えていきたい」と思っていたということは、技術委員会による技術的な問題の指摘によってハリルホジッチ監督は解任されたわけではないということです。

そしてハリルホジッチ監督解任の決断は、理事会を通さず、田嶋会長が専権事項として成されました。
(「(解任は)理事会を通さず田嶋会長に実質一任」
つまり田嶋会長がハリルホジッチ監督解任を主導したということです。


ところでハリルホジッチ監督を招へいしたのは当時の「原専務理事―霜田技術委員長」でした。
田嶋会長は、会長選で原専務理事を破ると「対立候補だった原博実専務理事を実質的な二階級降格となる理事とする新体制の人事案を作」り、結果、原氏は日本サッカー協会を去り、Jリーグの副理事長になります。
田嶋会長は、霜田技術委員長の降格も行い、その後釜に西野技術委員長を新たに据えました。

田嶋会長にとってハリルホジッチ監督は、報復人事まで行った元対立候補が連れてきた監督であり、そもそも解任することに対して何の思い入れもなかったと思われます。


加えて、スポンサーへの配慮、ハリルホジッチ監督によるスター選手の冷遇、中心選手からの解任要請メール、自身の会長再選の決定、理事会を通さない解任‥

さまざまなフィールド外での要素も絡み、ハリルホジチ監督は解任されました。

つまりフィールド外でもハリルホジッチ監督の解任は必然だったのです。
しかし個人的には、これら外的要因は単なる政治的振る舞いでしかなく、それに深く影響されハリルホジッチ監督を解任したと思われる田嶋会長は、日本サッカー界の歴史に深い汚点を残したと、強く感じざるを得ません。


6.それでも、今回のロシアワールドカップで日本が勝つための解決策


これまで見てきたように、ハリルホジッチ監督の解任は必然でした。
ただ、その理由は、ハリルホジッチ監督の求める「世界基準」を超えられなかった日本選手の側の問題であり、解任の決定は主にフィールドの外の政治的要因によって行われたのでした。


それでも、「世界基準」を超えられなかった日本代表であっても、目前に迫ったロシアワールドカップで勝つ方法を探らなければと、日本代表を応援する者として個人的にも一方思われてはいます。
それは論理的帰結では、以下の方法なら可能だと思われます。

A.殻に閉じこもり、しっかり後方で「集団的」に人数をかけて守る
B.相手の弱点を研究し、そこをワンチャンスで突く攻撃パターンを1試合につき2~3パターン用意し、ひたすらそれを磨き本番で初めて実行披露する
C.香川選手をどうしても使わなければならなければ、判断早くプレーすることを強く要求する
D.本田選手は運動量の必要とされないポジション(例えばワントップ)で起用する

いわゆる南アフリカワールドカップで成果を出した、【日本的・殻に閉じこもるサッカー】です。

日本人は決められた型を静的に磨くのは得意なはずです。
そのパターンを複数用意し、試合本番まで3試合とも隠しておけば、本番でワンチャンスで出し抜く機会は必ずあるはずと思われます。


7.今回のハリルホジッチ監督解任の本質は、日本サッカー界が「世界基準」を超えるのをあきらめ【日本化サッカー】を取るという大分岐点である


ハリルホジッチ監督は最後まで日本選手が「世界基準」を超えることを、強く強く信じていたと思われます。
しかし残念ながら、それを否定し拒否したのは(一部選手の例外はあっても)日本代表の選手たちの方でした。
であるならば、ハリルホジッチ監督の解任と挫折は必然だったと思われます。

日本サッカー界は、「世界基準」を超えるのをあきらめ、結果的に【日本的・殻に閉じこもるサッカー】を今回選択したと思われます。
おそらくロシアワールドカップの結果がどう出ようと、この殻に閉じこもる国内回帰の流れは止めることは出来ないと個人的には考えます。
そう考えると、ロシアワールドカップ後の日本人代表監督就任の噂も必然の流れだと思われます。


ただ、それでも、それでもハリルホジッチ監督の求めた、個々人が「自立」的に判断する「組織的」「世界基準」になろうと挑み、その壁を超えようとした選手が、少ないかもしれませんが存在したと思われます。

例えば、ハリルホジッチ監督に感謝の意を示した槙野選手槙野智章インスタグラム 2017/4/20、川島選手(「2018.4.9」川島永嗣オフィシャルブログ 2018/4/10)「彼とワールドカップに行きたかった」(サッカーキング 2018/4/10と話した原口選手、ハリルホジッチ監督に対して明確なコメントを出していませんが酒井宏樹選手などがそれにあたると思われます。

また柴崎選手は、ハリルホジッチ解任後でのインタビューで「(スペインに行って)ハリルホジッチ監督の要求…今はそれが分かってきている。」(サッカーダイジェスト 2018/5/24号)と語っています。


清武選手は、ハリルホジッチ監督によってJリーグのデュエルが向上した、解任は残念です、の趣旨の発言をしています。

「(清武弘嗣)「ハリルさんになって、僕は結構呼ばれている方だった。
デュエルの部分だったりというのは、Jリーグを見てもそうだし、そういうのを植え付けてくれた。
今回こういう風になってしまったので、残念な気持ちはもちろんあります」」

清武選手は残念ながら今回のロシアワールドカップは怪我の影響で選出されないことが濃厚です。
ただもし清武選手があのままスペインもしくはヨーロッパに居続けていれば、あるいは怪我を繰り返さなければ、E-1での結果などハリルホジッチ監督の命運も随分変わっていただろうと個人的には感じています。
それほど清武選手の中盤でのシンプルで正確で、決断が早く、失わないプレーは、ハリルホジッチ監督にとっても重要なプレーだったと思われます。

日本代表は、ハリルホジッチ監督の(一部例外を除く)日本選手の問題による「世界基準」に対する必然的な挫折によって、殻に閉じこもる「集団的」国内サッカーに回帰してしまいました。

しかし上に書いた「世界基準」に挑んだ一部選手だけでなく、ハリルホジッチ監督に言われなくても「自立」「組織的」「世界基準」に挑んでいる選手がちらほらと現われてはいると思われます。

例えばポルトガル・ポルティモネンセの中島翔哉選手、オランダ・フローニンゲンの堂安律選手、ドイツ・デュッセルドルフの伊藤遼哉選手など、その可能性を秘めていると思われます。

日本代表は殻に閉じこもる国内回帰をしてしまいましたが、これら「世界基準」に挑みこの先その壁を超えるだろう選手達が、今度はハリルホジッチ監督解任の時とは逆の意味での選手からの圧力を、日本サッカー協会に、裏でフィールド外の政治的振舞いをすることなく、堂々と、ロシアワールドカップ後に掛け続けて欲しいと思われています。

そしてそれら「世界基準」を超えた選手達が日本代表の中心になる時に初めて、今回のハリルホジッチ監督解任の本質的な意味がようやく万人に伝わるのかもしれません。




(※かなりな長文を最後まで読んで下さりありがとうございました。感謝しかありません。)

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