マイ・フェイバリット・ムービーとして何を取り上げるかは大変迷うところです。

今の気分で書いていくしかなさそうです。(若干リサーチはしますがほぼ記憶だけを頼りにしていますので、間違いがあったらごめんなさい)

今春、嘉手納港からボートで20分ほどの場所で海釣りをしました。幸い好天で沖縄の最高の時期といわれる<うりずん>を堪能したのですが、港から遠ざかりコーラルブルーに輝く海越しでどんどん小さくなっていく陸地を眺めていた時、『わっ、太陽がいっぱいだ』と思わず心の中で叫んでいました。本当に見上げると高い空には太陽がいっぱいでしたが、ここは映画の「太陽がいっぱい」を思い出したのでした。この映画、まずアンリ・ドカエの撮影の美しさに圧倒されるわけです。紺碧の海原を疾走する白い帆のヨット、日に焼けた男たちの逞しい肉体、遠くに見える南欧の陽光に映える街並み、その街並みを闊歩する夏服を着た女たち、一転してアラン・ドロンの暗く憂いを帯びた瞳、その対比がとても印象的で、それら全ての映像のアンサンブルは青春の光と影そのものを表現しているようでした。(「死刑台のエレベーター」「サムライ」も撮影アンリ・ドカエです)それにしてもアラン・ドロンは美しかった。完全犯罪を成し遂げた達成感溢れるアラン・ドロンの顔から一気に悲劇的結末へ流れるラストシーンへのギャップは、その余韻を増幅するニーノ・ロータのテーマ曲とともに強く記憶に刻まれました。マリー・ラフォレ、モーリス・ロネとアラン・ドロンとの2ショット、3ショットは自分の頭の中のシネアルバムに今でも刻まれています。映画の頭から尻尾までどこをとっても名匠ルネ・クレマン一流の造形でした。この作品、ここ数年自分の中で首位の座をキープしています。(マリー・ラフォレと言えば「赤と青のブルース」での可憐な歌声もいいですね、映画は観ていませんが・・・)

海つながりでいくなら「八月の濡れた砂」のラストシーンも忘れられません。映画は学園紛争で敗北した若者たちの行き場のない暴走ぶりが描かれていたと思います。自分は政治の季節に乗り遅れたコンプレックス世代ですが学生運動を観察はしていましたので彼らの挫折感を少しは理解できました。カメラが捉える青春の残骸のように海に漂うヨットが空撮でどんどん俯瞰になっていくところがなんとも象徴的で、石川セリの気だるい歌声と共に青春の終わりを告げているようでした。ただ全力でぶつかり、結果全てを失った喪失感ってこの年になってより判る感じがしています。今、彼女の歌声を聴くと優しい気持ちになるのはそのせいでしょうか。(ちなみにこの映画の藤田敏八監督は後年俳優としても活躍されていて、自分の担当するテレビドラマで主人公の父親役で出演してもらいました。自ら〈平成の笠智衆〉と明言し、その通りの渋い演技をしてもらいました)

そんな挫折もない無邪気な世界を描いた「小さな恋のメロディ」は自分の映画のホームラン王です。ビージーズのイン・ザ・モーニングから始まってCSNYのティーチ・ユア・チルドレンでジ・エンドが出るまでのあの夢のような時間はいまだに宝物です。美少女トレイシー・ハイドの可愛さは文字で表現できません。最初で最後、英語でラブレターを書きました。バレーを踊っている必死で健気な形相、雨の墓地で寄り添う二人(相手役はマーク・レスター)、ガラス瓶にいれた金魚を眺めながら街を練り歩くシーン、二人でトロッコを漕ぐラストシーン、名場面は数え切れません。これら名場面は<スター千一夜>内の旭化成のCMでトワエモアの曲とセットで流れていたと思いますが、毎晩その時間が待ち遠しかったものです。好き過ぎてロケ地巡りまでしてしまいました。ネット情報を頼りに行ったのですが、なにぶん不案内な土地なので空振りもありましたが、トレイシー・ハイドが父親を訪ねて行くパブはすぐ見つかりました。そこで飲んだ生温いビールの味は格別でした。そのすぐそばに先ほどの金魚のストリートもありました。穏やかな秋の昼下がりのロンドンでの出来事でした。

ロンドンと言えば、「フォロー・ミー」です。名匠キャロル・リードの遺作です。当時この映画そのものがまるでキャロル・リードの遺言ではないかと思ったほどです。(脚本はピーター・シェーファーなので監督と物語とは直接関係ありません)自由奔放に生きているようでどこか不器用なミア・ファローの生き様が愛おしく魅力的でした。いつも自分の気持ちに正直に向き合い、行動する彼女に対するシンパシーがメッセージされていて全体として優しく監督からそう言われているような気がしたものです。私立探偵トポルとの追跡シーン、一切会話はないのですが、追跡されているミア・ファローの寂しげな表情に笑顔が戻り、その二人の目で交わす会話が微笑ましく、それが幾度か繰り返されて、とても温かいシーンになっています。ここにこれでもかとばかりにジョン・バリーのハイドパークに落ちた枯葉を優しく払う風のようなテーマ曲が流れるのです。思い出すだけで幸せになります。この曲は原さんも触れている林美雄さんのパックインミュージックで一時期エンディング曲として流れていました。

ラブストーリーといえば「ラブストーリーを君に」が自分にとって最強作品の一つです。澤井信一郎監督作品はほかに「Wの悲劇」「早春物語」も大好きですが、自分に一番強烈な印象を残しているのはこの作品です。物語はいわゆる定番の難病ものなのですが、そこに澤井監督が仲村トオルと後藤久美子に魂を吹き込みました。仲村トオルのベストアクトだと思っています。お客さんの感情移入のさせ方などお見事というしかありません。この頃もう自分はドラマの助監督の仕事をしていて、森崎東監督など名演出家とご一緒していたので演出の何たるかが少しずつわかってきていただけに澤井監督のプロとしての仕事ぶりが想像できたというわけです。財津和夫が切々と歌い上げる主題歌は感動とともにしばらく頭の中を駆け巡っていました。

本当に映画と音楽って切っても切れないんですね。

映画の話はなかなか終わりません。(文中敬称略)

大森美孝(第一期)IMG_20190818_102549