wiltonfelder


CRUSADERSのサックス奏者、ウィルトン・フェルダー(WILTON FELDER)が9月27日に亡くなりました。
ウィルトンといえば1969年頃から1976年頃までのL.A.を代表するセッション・ベーシストでもあった。彼が何故ベースを弾き始めたのかは寡聞にして知りませんが、デトロイトからL.A.へ移転したモータウン社のセッションから、レッキングクルーのレギュラーメンバーで賄い切れなくなったハリウッド産ポップス〜シンガー・ソングライター〜A.O.R.の伴奏、さらに「本業」と言えるジャズ・ファンクまで幅広く活躍しました。

思えば、僕自身が一番多く聴いたベーシストもこのウィルトン・フェルダーです。なにしろポール・ハンフリー、エド・グリーンといった贔屓のドラマー(クレジットを見つけたら必ず買う)と一番多くリズム隊を組んでいたのがこのウィルトンに他ならないのです。
ベーシストとしての活動期間は長くないのですが、1971〜1974年あたりの約4年弱で言えばチャック・レイニーと肩を並べる実力と仕事量だったと思います。

主に(上の写真に見える)オリジナル・プレシジョン・ベース(以下OPB)を愛用していたらしいウィルトンの特徴といえば、ジェマーソンとキャロル・ケイの中間(にチョッパー等のモダンな奏法やグルーヴが混ざる)と言えるフレージング、OPBらしいボむボむした音色、OPBの性能に因るところもありそうな粘っこいグルーヴ感、あと特に白人系のセッションで垣間みれるタイトなアレンジへの適応力(アレンジャーの書き譜かな?という完成度のラインが時折ある)…等々があります。

そんなウィルトン・フェルダーの素晴らしいベースが聴けるアルバムを選んでみました。

なお今回は下記の名作群は(本来は決して外せないですが)対象外とさせていただきました。

まずはクルセイダーズ関連の作品。

そして以前に当ブログに掲載した下記の作品(ほとんどが代表作)。
JIMMY SMITH『ROOT DOWN』
DAVID T. WALKER『DAVID T. WALKER』
MICHAEL FRANKS『ART OF TEA』
NICK DECARO『ITALIAN GRAFFITI』
DUSTY SPRINGFIELD『CAMEO』
CARMEN McRAE『CAN'T HIDE LOVE』
LARRY CARLTON『SINGING/PLAYING』

さらに
MARVIN GAYE『LET'S GET IT ON』
GRANT GREEN『LIVE AT THE LIGHTHOUSE』
・・・といった、今さら語るまでも無い…感が強い作品。

上記をはじめ数えきれないほどの作品に参加していますが、個人的な好みと思い入れで選んだ20枚がこちらです。


calvin

CALVIN SCOTT『I'M NOT BLIND...I JUST CAN'T SEE』(1972)
クラレンス・カーターともデュオを組んで活動していたらしい盲目のディープ・ソウル・シンガーに、スタックスというレーベル、そして勢いに乗るウエスト・コースト・サウンド。と役者が揃い過ぎた一枚。激しく情熱的な歌を、熱い演奏が煽る煽る!すごいレコードです。
ここで揃うジョー・サンプルp、アーサー・アダムスg、ポール・ハンフリーds、ウィルトン・フェルダーbという面子(当時のクルセイダーズからスティックス・フーパーdsをハンフリーに替えた編成)はFUNKY THUMBS(ファンキー・サムズ)というユニットとしてNYのキングピンズに匹敵する「時代の音」を作った。当時のBLUE THUMBレーベルが誇るリズム・セクションとして、ジミー・スミス『ROOT DOWN』など多くの名演を残しました。

merry

『MERRY CLAYTON』(1971)
映画『バックコーラスの歌姫たち』での健在ぶりが記憶に新しい、当時最も忙しかった職人シンガーのソロ2作目。こちらはさらに役者が揃い、ビリー・プレストンにキャロル・キングまで。文句無しの内容で70年代ソウルを代表する1枚と信じて疑わないが、同時にウィルトンとしても代表作に数えられる。歌も演奏も全編最高。個人的にはシャッフルの「SHO NUFF」での飛び跳ねるような演奏がたまらなく好きです。

sharon

『SHARON CASH』(1973)
ちょっと勘弁してほしいジャケットではある。立ち寄った酒場にこんなのが座っていたら即座にドアを閉めて引き返すと思う。それはさておきこのシンガー、例えが微妙だがジャニス・ジョプリン風なハスキーヴォイスのシャウターで、バックの面子も「いつもの顔ぶれ」ながら音が違う。ここまで激しく生々しいエド・グリーンdsは他で聴けないし、ウィルトンはキャロル・ケイとベースパートを分け合い、それぞれ個性剥き出しの演奏をしています。ウィルトンはいつになく音数多め。かっこいい。

leon

LEON HEYWOOD『COME AND GET YOURSELF SOME』(1975)
いかにも正統派のソウル作品も挙げておきたい。70年代の「西海岸で録られたサザン・ソウル」(?)として昔から評価が高い。ベースは自由にフレーズを紡ぐというよりは、あるマナーに則ってアレンジされた「ベースライン」を弾く。その中で16分のシンコペーションが個性、時代性を主張する。「BILIEVE HALF OF WHT YOU SEE」はステイプル・シンガーズ「I'LL TAKE YOU THERE」に通じるノリ、というよりほぼ「改作」だと思いますが、これを南部でなく西海岸で録れちゃったことが当時どれだけ画期的だったか、と思う。
同時期で同系統・ほぼ同面子の作品として、よりディープなジミー・ルイスのアルバムも忘れ難い。

classicexample

『CLASSIC EXAMPLE』(1972)
このデュオについて詳しいことは知りませんが、60年代のマーヴィン・ゲイっぽい男性ボーカルはなかなかいいです。ファンキー・サムズ勢揃いで72年にしては随分と古い音ではありますが(録音自体は古いのか?)、ポスト・モータウン・サウンド黎明期の貴重な記録として挙げておく。ともあれハンフリー大炸裂の「HEY THERE LITTLE GIRL」なんかは最高と言うしか無い。
コーラスで参加しているJAMES,HODGES&SMITHのアルバムも同じ布陣で制作された佳作。ウィルトンの演奏も素晴らしい。

arthur

ARTHUR ADAMS『IT'S PRIVATE TONIGHT』(1972)
ファンキー・サムズの中心的ギタリスト、アーサー・アダムスのソロ代表作がこれ。セッション・ミュージシャンとしてだけでなく、元々ブルース・ギタリスト、シンガーとして個性を確立していた。切れ味鋭いギターとほっこり温かい歌声、トミー・リピューマ制作によるメロウなムード、ファンキー・サムズのシャープなサウンド。
表題曲は名曲・名唱ですが、ウィルトンの跳ねるようなベースも「ハチロク・バラードはこう弾け!」というお手本的名演。素晴らしい。

freddie

FREDDIE ROBINSON『OFF THE CUFF』(1973)
アーサー・アダムスと同じく、界隈でウィルトンと度々競演したギタリストのフレディ・ロビンソン。
ウィルトンはサックスの片手間にベースで小遣い稼ぎをしている分際で、どうしてこんなに太い音色を出せるのか。太さに関して言えば本作はウィルトンの最高傑作と言っていいと思う。ここの音色が出せた時点で何を弾いても名作になろう。「RIVER'S INVITATIONS」のズシリと重く粘る演奏が最高。
本作をプロデュースしたモンク・ヒギンズ絡みの作品には必ずと言っていい程ウィルトンの名前がある。

henry

『THE HENRY JACKSON COMPANY』(1973)
70年代のコンテンポラリー・ゴスペルにはとんでもない作品が多々ある。本作はアレンジにジーン・ペイジも絡み、一流ミュージシャン達の演奏で素晴らしい歌声をバックアップしています。ウィルトンと同じく初期JACKSON 5作品でベースを弾いていたらしいロン・ブラウンと共に参加。曲毎のクレジットはないものの、ツヤのあるトーンと明瞭なシンコペーションに特徴が出ているのがウィルトンの演奏だと思う。本作で言えばすなわち冒頭の「WHAT'S THE MATTER」など、疾走感と美しいメロディが同居する名曲で暴れ回る演奏がウィルトンによるものではないだろうか。

fourtops

FOUR TOPS『MAIN STREET PEOPLE』(1973)
フォートップスはモータウンと袂を分かった後、スティーヴ・バリ制作、デニス・ランバート作曲、ブライアン・ポッター作詞、マイケル・オマーティアン編曲という白人スタッフ陣と組み、ほぼ同一の奏者面子でバックを務めたアルバムを5枚くらい出している。ライヴ盤含めた全ての作品にウィルトンは参加しているが、全曲をポール・ハンフリーdsとウィルトンのリズム隊で固めたこの作品を挙げておく。整理されたアレンジの中で、程よく暴れ、揺さぶりをかけるウィルトンのベースは最高。「AM I MY BROTHER'S KEEPER」これ最高。
アルバム全体の楽曲単位で言うと、後にあらゆるアーティストに歌い継がれる(というか、ランバート&ポッターが「歌わせまくった」)名曲揃いの『KEEPER OF THE CASTLE』が最高。

tavares

TAVARES『HARD CORE POETRY』(1974)
ランバート&ポッターものを、実に悩んだ末にもう一枚挙げておく。音を聴く限りスコット・エドワーズと約半々で弾き分けているようだ。ピアノとユニゾンのAメロからサビで一気にウィルトン節を解放させる「SOMEONE TO GO HOME TO」、しっかりボトムを支え8ビートをウネらせながら分数コードのなぞり方に非凡さを感じさせる「MY SHIP」(マイケル・オマーティアンの書き譜かなあ?)など最高である。
この時期のランバート&ポッターものは前述のフォートップスやチャック・ジャクソン、ジーン・レディングといったソウル系から、ライチャス・ブラザーズ、ダスティ・スプリングフィールドといったポップス畑まで「大人の中庸ソウル・ポップ」な佳作ばかり。当然ウィルトンも全てに参加している。

carl

『CARL GRAVES』(1976)
デヴィッド・フォスターが率いたグループSKYLARKのパーカッション奏者のボーカル作品。デヴィッドは参加していないが、よく整理整頓されたアレンジはA.O.R.やブラコンの元祖と言ってよく、全体に一貫したサウンドのポリシーがあると同時にバラエティー豊かな演奏が聴ける。ウィルトンの貢献も大きく、アレンジへの適応力は素晴らしいが、特にビージーズのカヴァー「FANNY BE TENDER WITH MY LOVE」のイントロのメロディ弾きは泣ける!
本作にコーラスで参加しているダニー・ジェラルドはSKYLARKのリードシンガーで、同じくウィルトン参加の名作ソロ作品がある。

walter

WALTER HEATH『YOU KNOW YOU'RE WRONG DON'T YOU BROTHER』(1974)
詳細はよく知らないのですが、白人ギタリストのルイ・シェルトンがプロデュースした低音ボイスのシンガー。ルイの他にジーン・ペイジ、マイケル・オマーティアン、デヴィッド・ペイチも編曲していて流石にクオリティが高い。全曲に参加したウィルトンは表題曲をはじめ「らしさ」は全開だが、個人的に特筆したいのは「MADE TO LOVE」。ここで聴ける「ドッ、、ドドッ、」というリズム・パターンは後にポーカロ兄弟が世に広め、ブラコンでお約束のパターンになるが、それの元祖と言っていいくらい「早い」と思う。

nancy

NANCY WILSON『COME GET TO THIS』(1975)
今更ですがウィルトンと言えば、バリー・ホワイトである。バリーのサウンドを支えた編曲家ジーン・ペイジである。どうもバリーやジーンのソロ作は古いラブホテルのBGM過ぎて...という方にはこれを推したい。ジーン・ペイジ編曲によるいつものサウンドですが、両者の作品よりもベースは唸っているし選曲も良い。カヴァーも良いけどジーン&オリヴィア・ペイジ作「LIKE A CIRCLE NEVER STOP」も超名曲!70年代のナンシー・ウィルソンはこのテが好きな方にはどれも間違いないが、珍しくクルセイダーズのスティックス・フーパーdsとウィルトンが全曲リズム隊を組んだ『I KNOW I LOVE HIM』(1973)なんてのもある。

al

AL JARREAU『GLOW』(1976)
ほとんど名手ウィリー・ウィークスがベースを担当していて、ウィルトンの出番は3曲のみなのだが、はっきり言ってウィルトンの素晴らしさがずば抜けていると思う。しかも3曲の中にあらゆるスタイルが凝縮されている。リオン・ラッセル「RAINBOW IN YOUR EYES」はメロウな楽曲の中をソウル・マナーでウネる。ジョビンの「AQUA DE BEBER」はボサにファンクを注入したブラジリアン・フュージョン。アル自作「HAVE YOU SEEN THE CHILD」は太い上に切れも良いチョッパー交えたファンク、そしてゴスペル。どれも存在感が際立っています。

randy

RANDY EDELMAN『PRIME CUTS』(1974)
いつもウットリと聴き惚れてしまってベースが耳に入ってこない。。。この名曲集においてウィルトンとしては的確な歌伴に徹しているに過ぎないのだが、「BLUEBIRD」のフレージングにほんのり漂うソウル・マナーには身悶える。こういった題材において尚更、ジョー・オズボーンやリー・スクラーといった同時代の「ポップス・」ベーシスト達と似て非なるものを感じさせるわけです。
同系統のウィルトン参加作品としてニック・デカロ、マイケル・フランクス、そしてビリー・ジョエル『PIANO MAN』あたりと共に聴き込みたい。

megan

MEGAN McDONOUGH『SKETCHES』(1974)
70年代に4枚の良質なアルバムを発表している美女SSW。アシッドフォーク風(?)なジャケですが、ウィルトンが参加した本作は最もポップで弾けた内容。アラン・オデイ作「DO ME WRONG,BUT DO ME」の、8ビートの中でシンコペーションしまくるベースがいかにもウィルトンらしい。インタールード的に挟まれたスティーヴィー・ワンダー「JESUS CHILDREN OF AMERICA」はベースと手拍子だけのバックで、細かいニュアンスまで聴き取れるのが嬉しい。キャロル・キング作「WHAT AM I GONNA DO」も素晴らしく(原典はSMITHというグループらしい)、カヴァーの選曲センスに唸るものの「EMPTY SPACES」「RAINMAKER」といった自作曲も超名曲。宝物のようなレコードです。

tufano

『TUFANO AND GIAMMARESE』(1973)
70年代に多い「誰々&誰々」というアコースティック・デュオですが、ジム・ゴードンds、ボビー・ホールperc、デヴィッドTウォーカーgという面子から期待されるグルーヴィーな要素は少なく、穏やかでシンプルな作品。ここでのウィルトンは万全なS.S.W.サポート仕様の演奏で素晴らしい。言うなればリー・スクラー的なメロディアスな演奏もあり、その歌心、思いやりの精神(?)は流石です。ドラム・レスの楽曲でもしっかりとグルーヴの中枢を担っています。ODEのレーベル・メイトであるキャロル・キングもピアノで参加。

john

JOHN KLEMMER『CONSTANT THROB』(1971)
2曲しか参加していないのだが、そのうちの1曲「NEPTUNE」、とにかくコレである。この1曲だけで良い。シェリー・マン&ジム・ケルトナーのツイン・ドラム(!!)が時にフリーな展開を見せる中、それに触発されつつ、その間を泳ぐようにファンキーなフレーズを紡ぐウィルトンが最高です。
impulse!レーベルと言えばミルト・ジャクソン『MEMPHIS JACKSON』(1969)でのレイ・ブラウンとのツイン・ベースも忘れられない。

donald

DONALD BYRD『ETHIOPIAN KNIGHTS』(1971)
実はウィルトンは『BLACKBYRD』なんていう古典にも参加しているのですが、敢えて本作を。ミゼル・ブラザーズと組む前、所謂「エレクトリック・マイルス」目指した感のある本作も、リズム・セクションはバリー・ホワイトそのまんまなわけで、人選ミスなのか先見の明と言うべきなのか。B面まるまる1曲ワンコードで埋め尽くした「THE LITTLE RASTI」はなんとエド・グリーンのドラム・ソロで始まるが、そこに被るウィルトンのベースはJIMMY SMITH『ROOT DOWN』まんまである。「後がけ」と思われるディストーションをかましたベース・ソロまであるが、これは御愛嬌。

dizzy

DIZZY GILLESPIE『FREE RIDE』(1977)
ディジー・ガレスピーのPABLO盤にはゲテモノJAZZファンには堪らない珍品がよくある。本作はラロ・シフリンが作編曲プロデュースを手がけたフュージョン作品。メンバーはバリー・ホワイト作品に代表されるいつもの面子、エド・グリーンds、レイ・パーカー・ジュニアg、ワーワー・ワトソンg、そしてウィルトンなど。本作の魅力はなんといっても「ジャズ・レーベルらしい」生々しい音質でこのメンバーのアンサンブルが隅々まで聴けること。ウィルトンのOPBサウンドがクリアな音像の中にクッキリと浮かび上がるのが貴重だ。
1977年といえばクルセイダーズにもロバート・ポップウェルという「正式メンバー」のベーシストが加入しているし、スコット・エドワーズやデヴィッド・シールズ、エイブ・ラボリエルにデヴィッド・ハンゲイトといったベーシスト達が台頭して来た時期であり、本作はウィルトンにとって「後期」のセッション参加作。あからさまに「古い」音色で、ブラコン的なビートのバスドラにピッタリとくっつく姿にベテランの風格を感じる。



これらのアルバムは全てきちんとウィルトンの名前がクレジットされた作品ですが、JACKSON 5をはじめとするモータウンの諸作はクレジット無しで参加しているようです。「I WANT YOU BACK」(1969)がウィルトンの演奏だとする説が定着しているようですが個人的には確信が持てません。しかしアルバム『MAYBE TOMORROW』(1971)あたりになると確かにウィルトンらしい音が聴けます。

それにしても、ベース弾く姿を、動く絵を、一度観てみたかったものです。
心からご冥福をお祈りします。