失われた百年の話をしよう。

 西暦二〇XX年、最初は流星群が見られる日、としか伝わってなかった。
 最初に急接近する絶好の観測スポットであった日本では、その夜はちょっとした騒ぎとなっていたが、本当の騒ぎはそこからだった。
 その夜から朝にかけ、大勢の人が目を覚まさなかった。

 都心では多くの一人暮らしの若者が一気に亡くなり、田舎の大家族のものも、最悪は一家殲滅。生き延びたのも、夫婦のみ、兄妹のみ、母と幼子のみなどで、全員が生存というのは、極めて稀であった。
(面白い現象としては、ラブホテル街だけはその被害が皆無で、当日昼過ぎまで気づくものがいなかったという例もあるが、これについては後述しよう)。

 もちろん、日本だけでなくほかの国も同様だった。一夜にして、地球の人口は約一割以下にまで激減した。

 悲しみに明け暮れる余裕も無く、各種インフラや国家制度、システムを立て直すのにこの百年は費やされた。
 そして同時に謎の大量死の原因と対策が判明した。

 まず、原因は言わずもがな。先述の流星群から地球へ降り注がれた謎のウイルスの仕業である(もとより、大量死は人間だけだったので、ウイルス説は当初からの推測どおりであった)。
 そして、対策であるが、人間のX染色体とY染色体が……、いや小難しい医学的な話はやめよう。

 早い話、その瞬間に「一人の男性と一人の女性が至近距離にいた」ことが生き残る術だったのだ!
 だから、床を同じく寝ていた夫婦は生存し、一人で寝るのを怖がってた妹と添い寝した兄は生存し、まだ幼い赤ん坊と授乳をしていた母親は生存したのであった。
(そして、ラブホテルでの生存率が異様に高かったことはそれで説明がつく)
 その他、天体観測中だった男女はもちろんのこと、医者と患者、深夜のラーメン屋と客、修学旅行中に夜の密会をしていたカップルなどなど、数多の実例が挙がり、現在ではこの説に異議を唱える者は少ない。
 

 
…そして、私はここで残酷な話をしなければ、ならない。
 百年前に地球を壊滅に近い状態までに追いやった流星群。
 実は、再度接近をするらしい(以前の天文学なら、もっと容易にわかっただろうに、社会整備の復旧が忙しく、あまり構ってられなかったのだ。すまない)。

 対策を実証する時が来たようだ。
 ただ、トランプの神経衰弱と違い、この世の男女の数は等しくない(一人の男性と一人の女性なのだ。複数の異性と接触したケースでは死亡例が大半だ)。
 どうすれば、一番効率的に、生存率を高められるかはわからない。
(人類すべてに背番号を付け、番号順にペアにするという国連の決議は、「人類の自由意思を守る」という御旗の元で否定されたようだ)

 一体、どのような喜劇、悲劇が起こるのだろうか?