攻めるも地獄、攻めぬも地獄。
このままでは、兵糧が枯渇して自滅するほかない曹操は、
袁紹軍を裏切ってきた許攸(きょゆう)の進言を受けて、
烏巣(うそう)への攻撃を決断しました。

烏巣は、袁紹軍の食糧基地で、名将の淳于瓊(じゅんうけい)が
10万の兵で守備していましたが、曹操は坐して死を待つより攻める選択をしたのです。

37-2
袁紹軍の援軍に化け、曹操も兵の一人に身をやつして烏巣へと進軍します。
見張りの将、張郃(ちょうこう)と高覧に見つかりますが、巧みに切り抜けて通ります。
彼らも、まさか曹操が奇襲に来たとは思いもよらなかったのでしょう。

しかし、この奇襲は容易ではありません。なにしろ10万の守備軍に対し、
曹操が連れてきたのは5千の軽装兵。よほど上手く仕掛けなくては
成功はおぼつきません。

37-5
曹操軍にとって幸いだったのは、淳于瓊が酒で酔いつぶれていたことです。
その情報を知ってか知らずか、曹操軍は見事奇襲に成功し、兵糧庫に
次々と火を放っていきました。淳于瓊が武器をとって表に出たときには、
すでに烏巣は火の海でした。

報告を受けた袁紹は、烏巣奇襲を見落とした張郃と高覧を罵った挙句、
彼らに官渡(曹操の本陣)攻撃を命じますが、2人は烏巣救援を懇願しました。

しかし、袁紹は蒋奇(しょうき)を烏巣の援軍に向かわせるといい、
2人にはやはり本陣攻撃を命じ、落とすまで帰らないよう言い放ちます。
郭図の進言を信じてのことでしたが、これはまずい選択でした。

37-6
張郃と高覧は、仕方なく官渡へ向かいますが、
予想通り、官渡は曹仁、曹洪らが堅く備えを布いており、難攻が予想されました。
そのため、二将は戦いをあきらめ、曹操軍への投降を決めます。

37-8
そのころ、蒋奇の援軍を退けて烏巣を陥落させた曹操は、
淳于瓊の鼻をそいで袁紹陣営に送り、勝利の凱歌を上げたのです。

37-7
兵糧がことごとく焼き尽くされた袁紹軍は、一気に士気が落ちて撤退し、
官渡の戦いは曹操軍の大勝利で終わります。
曹操は、こうして長く苦しかった天下分け目の戦いを勝利で飾りました。

37-11
勝利した曹操は、投降した者や捕虜に対する処遇を決めます。
まず、檄文で自らを痛烈に罵倒した陳琳(ちんりん)は、その文才を認めて許しました。

snp-00002
袁紹のために数々の献策をしながら、用いられずに捕虜となった沮授(そじゅ)も
曹操はその才能を惜しんで救おうとしましたが、本人にその意志はなく、
とりあえず気持ちが変わることを期待して休ませることにしました。
結局その後、沮授は脱走を企てて斬られてしまうのです・・・。

snp-00003
袁紹の陣営からは、多数の投降文書が見つかりました。
曹操の配下たちが、袁紹に対して寝返りを約束をした
内通の証拠文書ですが、曹操は中身を見ずにすべて焼き払ってしまいました。

当時を生きた人は精一杯戦っていましたから、
どちらが勝つかなど分かりません。曹操には内通者の気持ちを汲み、
見なかったことにしたのです。清濁併せ呑むことも、リーダーには必要ということ。

その後、袁紹はまだ強大な兵力を有していたため、倉亭で曹操軍に
戦いを挑みましたが、官渡の敗戦の痛手は大きく、またも敗れます。
袁紹と曹操。生涯のライバルの力関係は、ついにここに逆転したのでした・・・。

※週明けの5月12日から、
最終41話まで連日の更新を予定しています。ぜひご覧ください!