
運命に抗うことかなわず、中原へと戻ることになった蔡琰(蔡文姫)。
夫である左賢王が、子供を連れて行くことを許さなかったため、
母と子は離れ離れとなりました。これは、もはやどちらが正しいとも言い切れません。

そのころ、曹操は将兵を連れて、陥落させたばかりの鄴(ぎょう)城へ入城しました。
長年、袁家の本拠地だった城を、曹操はついに我が物としたのです。
(傍らにいるのは左から、曹植・曹彰・曹丕 3人の子たち)

城内に残っていた袁家の人々に対し、許昌で面倒をみることを伝える曹操。
跪く彼らは、袁紹が敗死した今、かつての主人の過ちを認めるしかありませんでした。

その中に一人、聡明そうな美女がいたことに眼をつけた曹操は、
彼女をその場に呼びとめ、名を尋ねます。彼女は甄(しん)夫人といい、
袁紹の次男・袁煕(えんき)の夫人だった女性です。
曹操は気に入って側室にしようとしましたが、息子の曹植や郭嘉に反対されたため、
嫡男の曹丕に譲り、娶らせることにしました。
本作では、曹操から無理矢理あてがわれたような格好ですが、
史実では曹丕が見初めて妻に望んだとされています。彼女は後に
魏の2代目皇帝になる曹叡(そうえい)を産むことになります。

曹操一行はその後、袁紹の墓所に参拝し、冥福を祈ります。
曹洪と夏侯惇は、袁紹を仇敵とみなし跪きませんでしたが、曹操は無理に座らせました。
長らく争ったライバルでもあり、盟友でもあった袁紹に曹操は語りかけます。
墓前に酒を捧げ、感極まって涙した後、永遠の別れを告げて立ち去るのでした。

その後、曹操は諸将を集めて曹丕と甄氏の婚礼の宴を開きました。
実は弟の妻を奪われたことを屈辱に思った袁譚が、
謀反を画策していたのですが、彼は部下に殺害され、企ては未然に防がれました。
曹操は喜び、諸将から雑兵にまで分け隔てなく、九醞春酒をふるまうのでした。

その後、鄴にとどまる曹操を、匈奴から許昌へ戻ってきていた
蔡琰(蔡文姫)が訪ねてきますが、曹操は会わずに帰そうとします。
すると、彼女は「会わないのならこれを」と、置き土産を残していきました。
この簪(かんざし)には、「お早いお帰りを 曹操」と刻まれていますが、
それを見た曹操は、この文字の意味が何のことだか分からず、首をかしげます。
展開が分かりにくいのですが、蔡文姫は中原へ戻ってきてから
すぐに同郷出身の董祀(とうし)に嫁いだのです。しかし、
その夫が牛を殺した罪で処刑されると聞き、曹操に助命嘆願に来たのでした。
(当時、農耕に必要な牛は重要視され勝手に殺すことは重罪だったみたいです)
董祀は匈奴へ使者として赴いた使者のうちの一人です。
彼女は3度目の結婚ということになりますが、彼に嫁いだのは、
史書によれば曹操の指示だったようです。しかし、本作においては、
自分の意志で再婚したような描かれ方がされています。
曹操は、文姫が夫に殉じるというので慌てて呼び戻し、会うことにしました。
そして彼女を待っている間、曹操はようやく思い出すのでした。
いま、手元に置いた簪は、かつて自分が彼女に贈ったものであり、
その文字も自分が刻んだものだったということを。
しかし、曹操は一笑するや、簪を二つにポキリと折ってしまいます・・・。

そして再会する2人。別れたときが180年頃でしたから、実に27年ぶりでしょうか。
本作においては、第6話以来の再会です。
文姫は、ほとんど変わらずあの頃と同様の美貌を保っているように見えますが、
当時20歳だったとしても、40代後半になっているはずです。曹操は53歳。
(史実の文姫は曹操より22歳も年下の177年生まれなので、
第6話の時点では4~5歳ぐらいだったことになりますが、
本作は年齢設定が曖昧なので、あまり気にしないほうが良いです)
曹操は懐かしさのあまり、にわかに昔の情を思い出して文姫の肩に触れようとしますが、
文姫は拒絶するように肩を引っ込めます。嫌でも時の流れを感じさせる瞬間です。
文姫は曹操に訴えます。匈奴から戻ってくる長旅の道中で、
病にかかり、必死に看病してくれたのが董祀であったこと、
董祀が牛を殺したのは、自分に肉を与え栄養をつけさせるためであったことを。
そのおかげで助かったと彼女は言うのです。

殺すのなら一緒に殺してほしい、と願う彼女。
しかし、簡単に法を曲げるわけにはいかないため、曹操は彼女に対し、
一つの条件を出します。それは生前に彼女の父・蔡邕(さいよう)が
所有していたが戦乱によって散逸してしまった4千冊の蔵書・著作を再現することでした。
とてつもない無理難題に思えますが、文姫は必ずやりとげると約束するのでした。
父の書は、すべて心の中に暗記していると答える文姫。
半年で成し遂げたならば、曹操は董祀の命を助けると約束しました。
彼女は自分が漢に戻ってきた意味を、曹操と再会するためではなく、
漢の歴史を記すためだとハッキリと理解します。
謝して立ち去ろうとする彼女を呼びとめ、曹操は折った簪を返却しました。
簪を折ってしまったのは、おそらくは彼女があっさりと董祀の妻になっていて、
彼女の心の中に、もう自分の姿がないと悟ったから、なのかもしれません。
「私はこの手中の剣を、天下の鋤として大地を一つにまとめたい。
漢室復興のために。幼き頃から今まで、それは揺るいだことがない・・・」
曹操の天下と漢朝に対する思いを聞いて、文姫は悲しげな顔をしながらも
「かつて自分のそばで詩を諳んじた青年の姿を思い出しました」と告げ、
静かに立ち去るのでした。

そのころ、日に日に病が重くなる郭嘉は、名医・華佗(かだ)の診療を受けていました。
火の煙にやられた毒が肺を冒しているとみて、薬を与える華佗。
華佗が立ち去った後、郭嘉は程昱と天下の趨勢を話します。
河北では袁譚が死に、袁煕と袁尚はすでに虫の息。
南の荊州には劉表がいるが、やがて狡猾な劉備に乗っ取られるだろう。
揚州の孫権は配下に周瑜という英傑を従え、よく治めている。
西暦207年の中国は、およそこのような勢力図になっています。
曹操は河北をほぼ手中に収めて驕り高ぶり、最近では
郭嘉や程昱さえ遠ざけ、意見すらロクに聞かなくなったというのです。
郭嘉は自分の命が長くないことを悟るとともに、その政権の危うさを危惧し、
何らかの計画を実行に移そうとしているのですが・・・。
・・・さて、みなさん。
長らく続いてきたこのドラマ「曹操」オフィシャルブログですが、
いよいよ次回の第41話で最終回。更新は、また明日を予定しています。
どうか最後まで、お付き合いのほどよろしくお願いします。