こんばんは! ドラマ『曹操』案内人の哲舟です。
9月は3連休が2回もあって、なんだか不思議な感じがする今日この頃ですが、
みなさん、いかがお過ごしでしょうか? 楽しい連休は、あっという間に過ぎ去りますよね。

連休はあんまり関係のない、自由業のわたくし哲舟、
それでは、さっそく第5話を綴って参ります。

さて、朝廷からの命令で、議郎(ぎろう)という役人に返り咲いた曹操は、
程昱(ていいく)、曹仁(そうじん)をともなって、都の洛陽へやってきました。

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先ごろ、身請けして側室にしたばかりの卞(べん)も連れてきています。
「なぜ側室を?」と訪ねる程昱に対し、
「残してきたら正妻の丁(てい)夫人にいじめられるだろう」と答える曹操。
卞をめとることは、父や祖父にも反対されたようです。
長男を産んだ劉夫人が亡くなったばかりだし、
まあ、そりゃそうですよね・・・。しかし、曹操はまったく意に介しません。

曹操の勤務先は、尚書台(しょうしょだい)。
簡単にいえば、皇帝の文書の管理をする部署です。

さっそく入室する新入り、曹操。
とくに着任式があったり、特別に挨拶したりはしないようです(笑)。
机をひとつ与えられますが、周りの文官(士人)たちは
曹操が宦官の孫であり、なおかつ北部都尉時代に
過激な行動をとっていたことを知っているのか、距離を置いて眺めます。

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ちょうど昼食時なのでしょうか、文官たちが食事をしています。

なぜ、箸(はし)を使わないかについては、第2作でも少し述べましたが、
本作においては「まだ普及していないから」という解釈でいいでしょう。
おそらく、この先にも詳しく記す機会もあると思いますので、ここはサラリと。

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手のひらに取った飯(アワやヒエなど雑穀が混ざったもの)の上に、
野菜や干し肉などの具を載せ、口に運んでいる様子。

この食べ方、おにぎりとか、手巻き寿司の原型なのかな?と思いましたが、
単に、ご飯とおかずを一緒にして食べているようにも見えますね。

実は、中国では「おにぎり」というものは、一般的な食べ物ではありません。
今でこそ、コンビニなどで日本食として売られていますが、
昔は、米を握って食べるという方法は、ほとんどされてこなかったようです。
似たものとしてもち米を蒸した「ちまき」がありますが、あれはまた別の料理ですよね。

さて、兵書を読もうとする曹操に対し、意地悪な先輩役人がやってきて、
「過去の詔書を読め」と強制しますが、曹操が聞くはずもありません。

いささか、キレ気味の表情で頑固に自分の読みたい書を読もうとしますが、
先輩は懲りずに、今度は「これを運べ」と肉体労働を押し付けます。
おいおい、それぐらいにしておかないと曹操、そろそろキレますぞ・・・(笑)。

そこへ、2人の大物が入ってきました。司徒の陳耽(ちんたん)と、蔡邕(さいよう)です。
陳耽とは面識がありますが、蔡邕とは初対面の曹操。

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蔡邕(右)は、当時を代表する高名な詩人であり学者さん。
みなが一目置く存在なので、当然曹操も知っています。

その2人に伴われ、曹操は蔡邕の屋敷に行って飲むことになりました。
乾杯する3人。一見質素に見えますが、十分なご馳走なのでしょう。

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すぐに分かりますが、2人は曹操にある願いごとをしたくて招いたのです。

都では、曹操が子供の頃から、相も変わらず
宦官と士人たちの権力抗争が続いています。

第1話で描かれた「党錮の禁」で、陳蕃(ちんばん)、竇武(とうぶ)が
曹節ら宦官によって粛清された一件以来、
宦官らは引き続き、霊帝の寵愛を受けて優位に立っていました。
そのため霊帝のそばから遠ざけられた士人らは、反撃の機会を狙っています。

陳耽と蔡邕の2人は、宦官ではないので当然、士人です。
曹操は宦官の孫ながら宦官ではない。しかも正義感に篤い。
そこで、自分らの味方につけたいと、2人は思っているのです。

そのうえで、曹操に上奏文を出すよう依頼します。
宦官らが災害の義援金を横領した一件を持ち出して彼らの腐敗振りを訴え、、
彼らに処罰を与えるよう願い出る一方、「党錮の禁」は濡れ衣だったとPRする。
それらを霊帝に上奏すれば、世の中は大きく動くかもしれません。

曹操は、まだどちらに付くかハッキリとは表明しませんが、
2人に強く請われ、その願いを聞き入れました。

曹操は自宅へ帰るとさっそく上奏文をしたためることにします。
しかし、蔡邕の屋敷でだいぶ飲まされたのか、酔っ払ってふらふら・・・。
こんな状態で、ちゃんと文が書けるのでしょうか?

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「そんなに飲んで・・・」
曹操の帰りを待っていた、妻の卞(べん)が心配して走り寄ってきました。

フラフラになりながらも、白紙の木牘(もくとく)を見つけ、筆をとる曹操。
この時代、まだ紙はきわめて貴重で、ほとんど普及していませんから、
短い文章は薄い布に書き、長い文章は木の札を紐で束ねた巻物に書いたのです。
ちなみに竹の札を竹簡(ちくかん)、木の札を木牘といいます。

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卞に墨をすってもらう間、曹操は叫びます。
「一心に漢王朝を思うのは、この曹操だけだ!」
「この曹操は何者をも恐れぬ英雄、必ず歴史に名を残す!」


宦官の後ろ盾があるとはいえ、まだまだ曹操も一介の役人。
歴史に名を残せるかどうかは今後の出世による活躍にかかっています。

酔っ払って、こうして本音をぶちまけることができる相手は、
卞をはじめ、心を許した兄弟たちぐらい・・・。
曹操の心中、身につまされるというか、サラリーマンやOL諸氏には
よくよくお分かりになるんじゃないでしょうか?

そんな曹操の心中を察し、なぐさめる卞。
「幸でも不幸でも、私はずっとあなたのそばにいます」

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・・・こんなしおらしいことを言われたら、男なんぞイチコロです。
執筆を後回しにして、卞を担いで寝室へ直行する曹操。
松村邦洋さん言うところの「下半身は別人格」モードに入りました。
とても分かりやすいです(笑)。

その後、記し終えた書を宮殿に置いてきた曹操。
これで、宦官対士人の権力抗争の幕が開くか。野となれ、山となれの心境でしょう。

義援金を横領した宦官十数名と、その宦官に味方する大尉、司空も罰するべき・・・
霊帝は、ちゃんとこれを読みました。女遊びが大好きですが、
その合間ながら、ちゃんと政治もやってます。

傍に仕えている蹇碩(けんせき)は、即座に陳耽の陰謀であることを見抜き、
もちろん、我が身のかわいさもあって、宦官らの処罰の免除を願い出ます。

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霊帝が宦官らを信任し、士人らが有能であることを知りつつも遠ざけているのは、
彼らが自身の趣味である女遊びに対し、辛らつなことを言うためです。

しかし霊帝は、これでなかなかの切れ者。とりあえず上奏を聞き入れ、
「宦官らを処罰、降格しておいて士人たちの怒りを和らげ、
後日になってからまた復帰させればいい」という策を考え付きました。
ひとまず、蹇碩もそれを了承しますが・・・。

さて、その後、尚書台では曹操に対する皆の接し方が一変します。
陳耽ら有力な人物と親しいだけでなく、勇気ある上奏をしたことが評判となり、
一躍、時の人となったのです。

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席につくと、なんとランチまで運ばれてきました(笑)。
あまりの変わりように、うす気味悪そうな様子の曹操。

その夜、書き物をしている曹操のもとを、一人の男が訪ねてきました。
曹操は追い返そうとしますが、祖父・曹騰(そうとう)の紹介状を
彼が持っているのを見て引き止めます。

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男は荀彧(じゅんいく)と名乗りました。後に曹操陣営の参謀筆頭になる人物ですが、
その英才はすでに有名なようで、曹操も名前を聞いて態度を変えました。

荀彧は、曹操に対して自重を呼びかけ、今は力を蓄えるよう助言に来たのですが、
血気にはやる曹操は、それに聞く耳を持ちません・・・。
曹操は「汚れた朝廷の風紀をただし、漢王朝の復興をめざす。
自分は堂々と振舞い、大業を成し遂げる」と、荀彧に言い放つのでした。

そのころ、別の場所では蹇碩や張譲(ちょうじょう)ら、
宦官一派が曹操排斥の計画の密議をしていました。
権力を恐れぬ曹操のふるまいを、宦官らは忌々しく思っているのです。

そこに曹騰(そうとう)が現れました。
宦官らのトップの地位にある曹騰が来られては、蹇碩らも黙るしかありません。
曹騰は、うろたえる宦官らに取引をもちかけました。

曹騰は愛する孫・曹操の命を助けるため、宦官らに対してこう言います。
曹操を殺すならそれもよしだが、ただそれだけのことになる。
士人たちに痛手は与えられず、君たち宦官一派にもメリットはないだろう。

代わりに曹操を操る黒幕の陳耽を謀殺すれば、
怖いものは何もなくなり、宦官の権力は増す・・・。
「どっちが得なのか考えてみろ」と、曹騰は蹇碩に迫りました。
天秤にかけて考え、蹇碩はついに決断を下しました。

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その頃、曹操はふたたび蔡邕の屋敷へ。
曹操は蔡邕の詩の才能に感服しきりで、褒めちぎっている様子。

中庭に出ると、ひとりの女性がいて琴を弾じていました。
蔡邕の娘で、名は蔡琰(さいえん)。字は文姫(ぶんき)といい、蔡文姫とも呼ばれます。

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曹操は、その琴の音色に聞き入り、いや文姫に見とれ、見事だと称えました。
「この曲は遊春では?」と訪ねる曹操に、蔡文姫は「詩が分かるお人」と感心します。
「即興で詩を作る」という曹操に、蔡邕も興味を示したため、
曹操は蔡文姫の隣に座りました。

後に詩人としても大いに名を成す曹操。即興で見事な詩を書いてしまいました。
それを読み上げる蔡文姫は、にわかに曹操に興味を覚えた様子。
何度か視線を交わす2人・・・また、新たな恋の芽生え?

蔡文姫も実に美しいので、気持ちは分かります。
しかし、さっきまで卞といちゃいちゃしていたばかりで、
なんと書いて良いのやら悩みますが、まさに「英雄、色を好む」。

蔡邕も陳耽も曹操の詩に感心しますが、
話があるためいそいそと屋敷へと入っていきます。
曹操もその後を追いますが、いったん蔡文姫のほうを振り返り、
彼女に強く自分を印象付けます(笑)。うまいなあ、と感心するほかありません。

その頃、後宮では霊帝が曹操の上奏文を改めて見返していました。
曹操の言いなりになっては、自分に人物を見る目がないことを
証明するようなものであろう。そういって、躊躇しているようです。

蹇碩は曹騰に建策された通り、黒幕の存在を霊帝に明かします。
さて、霊帝はどのような決断を下すのでしょうか?


~人物クローズアップ~

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◆荀彧(じゅんいく) 163年~212年
最近、三国志ファンの間では主君・曹操をしのぐほどの人気を誇る人物。戦国時代の思想家・荀子(じゅんし)の子孫。若い頃に何顒(かぎょう)から「王佐の才を持つ」と賞賛された。
正史によれば、洛陽の宮中に勤めて名前が出てくるようになるのは、董卓が政権を握った189年ごろ、彼が27歳ぐらいのことだ。しかし、本作ではそれよりもだいぶ早くからの登場で、まだ20歳前後と思われる。ちなみに曹操より8歳年下。
史実において、この頃から曹操と面識があったかどうかは不明。しかし、このように早くから登場させることで後々への伏線を張っているようで、要注目といえる。

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旧作『三国志 Three Kingdoms』の荀彧。官渡の戦いの頃なので
既にだいぶ貫禄がある。ドラマ曹操の荀彧がどう年をとるかにも注目したい。