こんばんは!ドラマ『曹操』案内役の哲舟です。
今月に入って初の更新。今か、今かと楽しみにされている方すいません。

まずはお知らせから。
GyaO!に「ドラマ曹操」特集ページが出来ています。
1話~2話の全編映像や、第1~7部までの特別ダイジェスト映像のほか、
旧作品「三国志Three Kingdoms」の映像も無料視聴できて盛り沢山の内容。
ぜひ、ご覧になってみてください。
http://gyao.yahoo.co.jp/special/sousou/

では、今回も元気に綴ってまいります。
陳宮との再会を果たし、その助けで中牟県(ちゅうぼうけん)を
脱出した曹操。陳宮も曹操と行動を共にし、彼とともに逃亡します。

snp-00357
めざすところは、故郷の譙(しょう)県です。
しかし、馬に乗っているとはいえ数日はかかる距離。

3日ほど、飲まず喰わずで逃げ続けている曹操たちは、
成皐県(せいこうけん)の知人、呂伯奢(りょ はくしゃ)に会いに行きます。
呂伯奢は曹操の父(曹嵩)の義兄弟で、信頼できる人物と曹操はいいます。

snp-00370
呂伯奢宅に着くと、用意されたものを2人は必死で飲み食いします。
呂伯奢は曹操を阿瞞(あまん)と幼名で呼び、
曹操は呂伯奢を「叔父上」と呼ぶ仲。これで一安心といったところ。

「上等な酒を買ってくる」といって出かける呂伯奢の言葉も
耳に入っていたのかどうか、曹操と陳宮はひとしきり夢中で平らげると
そのまま横になって、いつしか深い眠りに就きます。

曹操の夢の中には、最愛の妻・卞(べん)と、
そして次に蔡文姫(さいぶんき)の映像が。
しかし、董卓の一党に拉致されそうになる・・・というところで目が覚めます。

悪夢から覚めたときは、もうあたりは真っ暗。夜になっていました。
すると、陳宮が曹操に目配せします。
刀を研ぐ音に耳をすますと、「すぐにやるぞ」「一刀で仕留めろ」などと
なにやら物騒な声も聞こえてくるではありませんか。

snp-00389
2人は壁越しに怪しい声の主を刺し殺し、表に出ると
出くわした者たちを片っ端から斬っていきました。
しかし、台所で縛られた豚を見て、それが勘違いだったことに気付きます。

・・・説明する必要もありませんが、呂伯奢の家族や使用人たちは
曹操たちをもてなすために料理を準備していたところでした。
しかし、曹操と陳宮はその物音を自分たちを
殺そうとしている計画の準備だと思い込み、殺害してしまったのです。
逃亡中で疑心暗鬼になっていたことがゆえの不幸な事件が起きてしまいました。

深く悔いる陳宮に対し、「すぐにここを出よう」と曹操。
2人は馬を走らせますが、しかし、間の悪いことに出てまもなく、
酒を買って屋敷へ戻ってきた呂伯奢と鉢合わせます。

出て行こうとする2人に、何も知らない呂伯奢は引きとめようと近づいてきます。
「このまま行けば仁義に反する。正直に弁明すべきだ」という陳宮ですが、
曹操は近づきざま、剣を抜いて呂伯奢を刺し殺してしまいました。

snp-00395
「なぜ呂殿まで!」
家人だけでなく、主人まで殺してしまった行為を非難する陳宮。

「小事にかまけるな。わが大計をさまたげる者は斬り捨てる!」
「私が天下に背くとも、天下が私に背くことは許さぬ!」


snp-00397
曹操は、痛む頭をさすりながら馬上で叫んだのです。
これまで見たこともないような、曹操の狼狽した顔と開きなおりよう。
人間、追い込まれたときに本性が出るといいますが、
やはり曹操の本性は「悪」ということになるのでしょうか・・・。

この呂伯奢殺害のエピソードは、曹操の性格を示すエピソードとして
さまざまな三国志作品ではそれぞれに脚色して描かれています。

じつは、正史『三国志』にはこのエピソードは無いのですが、
三国志以外の同時代の書物には記されています。

王沈の『魏書』では、呂伯奢の息子たちが本当に曹操を襲おうとしたので
正当防衛をしたように記されているし、『世語』『異同雑語』では上記のように
曹操側の過失であるように記されています。

『三国志演義』を中心とした小説などは様々に脚色してあります。
吉川英治・三国志では、「おれとしたことが、彼がたずさえていた
美酒と果実を奪ってくるのを、すっかり忘れていたよ」と、
後から曹操に言わせ、その悪逆ぶりを強調しているのです。

呂伯奢は、曹操が家人らを誤殺したと聞いたとして、彼らを許したでしょうか?
許すにしても、自分以外の家人が皆殺しに遭ったとなれば絶望的な思いに
襲われたことでしょう。いっそ、ひと思いに命を絶ったのも「曹操なりの優しさ」と
見ることもできないではありませんが、いずれにしても後味の悪さは残る事件です。

その夜、あばらやに宿をとって寝入る曹操を殺すか否かで悩む陳宮。
曹操を生かしておくことが本当に天下のためになるのか。
不義の人物は殺してしまうべきだが、それでは自分も彼と同じになる・・・。
結局、陳宮は曹操を殺さずしばらく付き従うことになります。

ドラマ『三国志 Three Kingdoms』では、曹操が目覚めると陳宮の姿はなく、
陳宮はここで彼を見限ったとして描かれていましたが、
本作では陳宮はまだ彼を見限っていません。
しかし、この日から彼の曹操に対する見方は今までとは違うものとなります。

snp-00432
途中で陳宮と別れ、2年ぶりに卞(べん)夫人の屋敷に戻ってきた曹操。
しかし、死亡説まで出回っていた末の帰還ですから、
卞の驚きようと喜びようは尋常ではありません。再会を喜びあう夫婦。

曹家の屋敷に行くと、まるでお化けでも現れたような騒ぎです。
すでに葬式まで行なわれていたのだから、無理もありません。

自分の位牌と棺桶を見て、なぜか大ウケしてはしゃぐ曹操。
「せめて大将軍と書け!」とおどける曹操に、使用人たちも笑顔を取り戻します。

snp-00466
しまいには、棺にまで入ってしまいます。なぜか居心地よさそう。
卞は棺桶に入るなんて縁起が悪いと心配しますが、曹操は意に介さず、
「私が本当に死んだら同じ棺を72基作ってあちこちに埋めろ」などと言い出します。

あのね・・・曹操殿、そのせいで私たちはあなたの本当の墓の場所が
どこなのか分からなくなってしまったんですよ(笑)。
(曹操の墓とされるものが近年見つかりましたが、いまだ断定できず)
・・・まあ、「72ヶ所の墓」の話は曹操本人が言った記録は見当たりませんし、
どうも後世の作り話のようですが。本作は、こだわりなく色々取り入れています。

ふざけているうちに夏侯惇、夏侯淵、曹仁らが帰ってきて、
そこへさらに、父の曹嵩と正妻の丁夫人が来て、再会を喜びあいます。

snp-00476
「生きて帰ったぞ」と告げる曹操に、丁夫人もようやく喜色を浮かべました。
その脇で泣いているのが、先に死んだ劉夫人の子、
長男の曹昴(そうこう)です。

傍らにいる卞夫人はバツの悪そうな顔をしていましたが、
義父の曹嵩が歩み寄って、卞夫人の手から曹丕(そうひ)を受け取り、
彼に「子桓」(しかん)という字(あざな)を付けてやります。
曹嵩もようやく、卞と曹丕を正式な家族と認めたのでした。

ちなみに、曹昴の字は子脩(ししゅう)。曹操の子達の字には
いずれも「子」という一字が付いているのが特徴です。
字とは昔の中国人が、本名とは別に付けた通称のことで、
お互い本名で呼び合う習慣がなく、基本的には字で呼び合ったといいます。
(字は本当は成人したときに付けるもので、本作の曹丕の場合、だいぶ気が早いことになります)

snp-00493
そんな様子を見て、丁夫人はスーッと立ち去ってしまいました。
あちらを立てればこちらが立たずで、なんともアンバランスな関係で
成り立っているのが家というものだな、と思い知らされます。

その後、時流は急速な動きを見せていきます。
世を乱す董卓は、洛陽の都にいまだ健在で、
これを倒さないことには天下は治まりません。

曹操は、世間に死んだと思われている今こそ絶好の機会とばかりに、
曹家の私財を投じ、陳留にて董卓打倒の兵を挙げる準備を着々と進めていきます。
父の曹嵩は曹操の妻子とともに徐州の親戚の家に避難したとのこと。

張邈(ちょうばく)や、衛茲(えいじ)といった旧知の人物が、
曹操に協力を申し出てきたことに加え、
曹洪(そうこう)が兵を連れて馳せ参じてきます。
さらに曹真、曹休といった一族の者まで集ってきました。

snp-00544
曹仁、曹洪とともに兵営を歩く曹操。
そこに、衛茲が一人の屈強な男を連れてやってきました。その名は楽進(がくしん)。
しかし、曹操が彼に任命したのは5人の部隊長でした。

その夜、せっかく曹操に目通りできたのに、
つまらない役目を負わされて、酒びたりになっている楽進に接近する一隊がいました。
その一人は董卓配下の武将、郭汜(かくし)で、
兵卒になりすまし、曹操陣営に入り込んでいたのです・・・。

翌日、剣の訓練をしている曹操。それを見てケラケラと笑う許褚(きょちょ)。
腹を立てた曹操は「腕くらべだ!」と言って手合わせを申し入れますが、
一太刀で曹操の剣は弾き飛ばされてしまいます。
許褚の馬鹿力に2回も弾かれた曹操の剣は駄目になってしまいました。

snp-00566
一応、曹操の武芸の腕だってかなりのものですが、許褚が相手ではパワーが違いすぎて
勝負になりません。負け惜しみに「投石機の完成を楽しみにしてろ」と言い捨てます。
しかし、許褚も主君が剣舞をしているときにニヤニヤ笑うなんて意地が悪いですね(笑)。

そこへ張邈(ちょうばく)が訪ねてきて、兵がいくら集まったかと問うたところ、
曹操は「5千」と答えました。5千とは、兗州(えんしゅう)の民を救うには物足りない数字ですし、
「焦って挙兵するな」と張邈は心配するのですが・・・。

そこへ、曹仁がやってきて曹操に耳打ちします。
「兄貴、命を狙われているぞ」。
・・・といったところで、また次回へ続きます。


<この人に注目!>
snp-00533
曹洪(そうこう) 
?~232年 字は子廉(しれん)
曹操の従弟。蘄春県(きしゅんけん)の県長を務めていたが、今回の第15話にして曹操のもとへ参じる。第1話から出てきた曹仁たち3人よりだいぶ遅れ、ようやくの初登場となった。この後、献身的な働きで曹操の危難を何度も救うことになる名将。曹操の死後、子の曹丕、孫の曹叡の代まで仕えるなど曹操が旗揚げしたころから仕えた側近としては最も長命した人物といえる。