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もし貧乏人が経済学を学んだら
(Texを読み込むのに少し時間がかかります。)
最初のダブル・オークションの線形均衡は、160-61ページと同じ手続きを経れば求まります。あるいは、sugiさんのブログに解答があります。
http://blog.livedoor.jp/sugi5_4/archives/36901819.html
ですので、結果だけを書きます。(この記事がかなり長いので、いったんこれを書いて、余裕があれば、前半のダブル・オークションの説明を加えるかもしれません。)
企業が選ぶ賃金 (企業の戦略) を $w_{f}$ とし、労働者が選ぶ賃金 (労働者の戦略) を $w_{e}$ とすると、その両者の線形戦略の均衡(線形均衡)は、
$w_{f}=\displaystyle \frac{2}{3}m+\frac{1}{12}$ (1)
$w_{e}=\displaystyle \frac{2}{3}v+\frac{1}{4}$ (2)
となります。取引が行われるのは $w_{f}>w_{e}$ となる場合なので、(1)式、(2)式から、その条件は、
$\displaystyle \frac{2}{3}m+\frac{1}{12}>\frac{2}{3}v+\frac{1}{4}$
$\Leftrightarrow$
$m>v+\displaystyle \frac{1}{4}$ (3)
となります。これを図で示せば、次のようになります。
図1
グレーの色をつけた部分は非効率になっている領域です ( $m>v$ となるなら、$v<w<m$ となる賃金で雇用すれば (雇用されれば)、企業も労働者も利得を増やせるが、雇用されていない)。
両者の期待利得は、
$\pi_{f}=\left\{\begin{array}{l}
\displaystyle 0\hspace{10pt}(0\leq m<\frac{1}{4})\\
\displaystyle \frac{1}{2}m^{2}-\frac{1}{4}m+\frac{1}{32} \hspace{10pt} (\frac{1}{4}\leq m\leq 1)
\end{array}\right.$ (4)
$\pi_{e}=\left\{\begin{array}{l}
\displaystyle \frac{1}{2}v^{2}+\frac{1}{4}v+\frac{9}{32}\hspace{10pt} (0\leq v\leq\frac{3}{4})\\
\displaystyle \frac{7}{32}\hspace{10pt}(\frac{3}{4}<v\leq1)
\end{array}\right.$ (5)
となります (これも計算は省略)。(3)式から、また、図1から、企業が取引を行うのは、$\displaystyle\frac{1}{4}\leq m\leq1$ の場合だけです。したがって、$\displaystyle m<\frac{1}{4}$ となる場合の期待利得は $0$ です。また、$\displaystyle v>\frac{3}{4}$ の場合は、 (3)式から、また、図1から、取引が行われる条件となる $m$ の値が $1$ より大きくなります。そのため、取引は行われません。したがって、$\displaystyle v>\frac{3}{4}$ となる場合の労働者の期待利得は、単純に外部での雇用から得られる利得の期待値、つまり、$\displaystyle\frac{3}{4}<v\leq1$ となる場合の $v$ の期待値、$\displaystyle E\hspace{2pt}[v\hspace{2pt}|\hspace{2pt}v>\frac{3}{4}]\hspace{5pt}=\frac{7}{32}$ になります。
$m$, $v$ は $[0,1]$ の一様分布なので、期待利得はさらに計算できます。積分区間に注意して計算すると、
$\displaystyle \pi_{f}=\int_{\frac{1}{4}}^{1}(\frac{1}{2}m^{2}-\frac{1}{4}m+\frac{1}{32})\hspace{4pt}dm=\frac{9}{128}$
$\displaystyle \pi_{e}=\int_{0}^{\frac{3}{4}}(\frac{1}{2}v^{2}+\frac{1}{4}v+\frac{9}{32})\hspace{4pt}dv+E\hspace{2pt}[v\hspace{2pt}|\hspace{2pt}v>\frac{3}{4}]$
$=\displaystyle \frac{45}{128}+\int_{\frac{3}{4}}^{1}v\hspace{4pt}dv=\frac{45}{128}+\frac{7}{32}=\frac{73}{128}$
となります。したがって、企業と労働者の期待利得の和は、
$\displaystyle \pi_{f}+\pi_{e}=\frac{82}{128}=\frac{41}{64}$ (6)
となります (注(1) )。
ゲーム I
これは159ページの単一価格均衡に対応しています。
企業と労働者がそれぞれの私的情報 (企業にとっては労働者の生産性 $m$, 労働者にとっては外部での雇用の機会 $v$ ) を知る前に、区間 $[0,1]$ から任意に $w$ が決定されます。企業の最適戦略は、もし $m\geq w$ なら取引を受諾し (賃金 $w$ で雇用する)、$m<w$ なら拒否する (雇用しない) というものになります。いっぽう、労働者の最適戦略は、もし $v\leq w$ なら受諾し (賃金 $w$ で就職する)、$v>w$ なら拒否する (就職しない)、というものになります。これは最適戦略でありナッシュ均衡になっています。企業は、$m<w$ である労働者を雇用しても、企業の利得は $m-w$ なので、利得がマイナスになるだけです。また、労働者にとって、$v>w$ の場合に取引に応じる (就職する) のは、外部から得られる利得 $v$ のほうが賃金 $w$ より大きくなっているため、最適ではありません。
取引が行われるタイプの組を図示すると、次の図となります。
図2
$m\geq w$ かつ $v\leq w$ となる領域 (黄色の部分) でのみ取引が行われ、それ以外の領域では取引は行われません。グレーの領域は不効率になっている領域です (左下の三角形では $v<w^{\prime}<m$ となる賃金 $w^{\prime}$ で雇用すれば、企業も労働者も利得を増やせるのに、賃金が $w\hspace{4pt}(>m)$ に設定されているため企業が雇用しない。右上の三角形では、$v<w^{\prime \prime}<m$ となる賃金 $w^{\prime \prime}$ で雇用されれば、企業も労働者も利得を増やせるのに、賃金が $w\hspace{4pt}(<v)$ に設定されているため労働者が拒否する)。
そこで、企業と労働者がそれぞれの私的情報を知る前に、$w$ を設定した場合の両者の期待利得を求めると、まず企業の期待利得は (企業にとっての私的情報 $m$ は、賃金を決める時点ではわかっていないので期待値で計算する必要があります)、
$\pi_{f}=(E\hspace{2pt}[m\hspace{2pt}|\hspace{2pt}m>w]-w)\hspace{2pt}Pr\{m>w\}Pr\{v\leq w\}$ (7)
となります。続けて計算していくと、
$\pi_{f}=(\displaystyle \frac{w+1}{2}-w)(1-Pr\{m\leq w\})Pr\{v\leq w\}$
$=(\displaystyle \frac{w+1}{2}-w)(1-w)w$
$=\displaystyle \frac{(1-w)^{2}w}{2}$ (8)
となります。
( (8)式の値は、積分を使って計算することもできます。図2の黄色の領域で $w-m$ の期待値を計算すればいい。
$\displaystyle \pi_{f}=\int_{0}^{w}\int_{w}^{1}(w-m) \hspace{4pt}dm\hspace{2pt}dv=\frac{(1-w)^{2}w}{2}$ )
次に、労働者の期待利得を計算すると (労働者にとっての私的情報 $v$ も、賃金を決める時点ではわかっていないので期待値で計算する必要があります)、
$\pi_{e}=w\hspace{2pt}Pr\{m>w\}Pr\{v\leq w\}$
$+E\hspace{2pt}[v\hspace{2pt}|\hspace{2pt}v\leq w]Pr\{m\leq w\}Pr\{v\leq w\}$
$+E\hspace{2pt}[v\hspace{2pt}|\hspace{2pt}v>w]Pr\{v>w\}$ (9)
となります。第1項が次の図3の①、第2項が②、第3項が③に対応しています。
図3
続けて計算していくと、
$\pi_{e}=w(1-Pr\{m\leq w\})Pr\{v\leq w\}$
$+\displaystyle \frac{w}{2}Pr\{v\leq w\}Pr\{v\leq w\}$
$+\displaystyle \frac{w+1}{2}(1-Pr\{v\leq w\})$
$=w(1-w)w+\displaystyle \frac{w}{2}ww+\frac{w+1}{2}(1-w)$
$=-\displaystyle \frac{w^{3}}{2}+\frac{w^{2}}{2}+\frac{1}{2}$ (10)
となります。
(これも積分を使って計算できます。図3に従って積分区間を設定し、(9)式の第1項は、
$\displaystyle \int_{0}^{w}\int_{w}^{1}w \hspace{4pt}dm\hspace{2pt}dv$
第2項は、
$\displaystyle \int_{0}^{w}\int_{0}^{w}v \hspace{4pt}dv\hspace{2pt}dm$
第3項は、
$\displaystyle \int_{w}^{1}v\hspace{4pt}dv$ となります。 )
したがって、(8)式、(10)式から、企業と労働者の期待利得の和は、
$\displaystyle \pi_{f}+\pi_{e}=-\frac{w^{2}}{2}+\frac{w}{2}+\frac{1}{2}$
$=-\displaystyle \frac{1}{2}(w-\frac{1}{2})^{2}+\frac{5}{8}$ (11)
となります。(11)式から、この期待利得を最大にする $w$ の値は $\displaystyle \frac{1}{2}$ で、その場合の期待利得は $\displaystyle \frac{5}{8}$ になることがわかります。
ゲーム II
このゲームでは、企業が私的情報、つまり労働者の生産性 $m$ を観察してから、賃金 $w$ を提示します。企業の利得は $m-w$ です。しかし、労働者は、$v>w$ の場合は、この取引を拒否します。したがって、企業が利得を得ることができるのは、$v\leq w$ となる場合だけです。企業はこの労働者の行動を予測して期待利得を最大にするように戦略、つまり、$w$ を決めます。企業の期待利得は、
$\pi_{f}=(m-w)Pr\{v\leq w\}$
$=(m-w)w$
$=-(w-\displaystyle \frac{m}{2})^{2}+\frac{m^{2}}{4}$ (12)
です。(12)式を最大にする $w$ は、
$w=\displaystyle \frac{m}{2}$ (13)
です。企業にとって、この期待利得を最大にする賃金を選択するのが最適なので、企業の最適戦略は、$w=\displaystyle \frac{m}{2}$ を選択することです。その場合の企業の期待利得は、(12)式から、
$\displaystyle \pi_{f}=\frac{m^{2}}{4}$
になることがわかります。$m$ は $[0,1]$ の一様分布なので、さらに計算できて、
$\displaystyle \pi_{f}=\int_{0}^{1}\frac{m^{2}}{4}\hspace{4pt}dm=\frac{1}{12}$ (14)
となります。
企業は $w=\displaystyle \frac{m}{2}$ となる賃金を選択し、労働者は $w\geq v$ となる場合にのみ取引に応じるので、取引が行われるのは、$\displaystyle v\leq \frac{m}{2}\hspace{6pt}(m\geq 2v)$ となる場合です。これを図で示せば、次のようになります。
図4
$\displaystyle v\leq \frac{m}{2}\hspace{6pt}(m\geq 2v)$ となる領域(黄色の部分)が取引が行われる領域です。グレーの部分は非効率になっている領域です (企業が $v<w^{*}<m$ となる賃金 $w^{*}$ を提示すれば、企業も労働者も利得を増やせるが、$w=m/2$ を選択しているため (このグレーの領域では $v>w\hspace{6pt}(=m/2)$ となるため) 労働者が拒否する)。
( (14)式の企業の利得の値は、積分を使って計算することもできます。$m-w$ の期待値を $m\geq 2v$ となる領域 (図4の黄色の領域) で計算すればいい。
$\displaystyle \int_{0}^{1}\int_{0}^{\frac{m}{2}}(m-w) \hspace{4pt}dv\hspace{2pt}dm=\displaystyle \int_{0}^{1}\int_{0}^{\frac{m}{2}}(m-\frac{m}{2}) \hspace{4pt}dv\hspace{2pt}dm$
$=\displaystyle \int_{0}^{1}\int_{0}^{\frac{m}{2}}\frac{m}{2} \hspace{4pt}dv\hspace{2pt}dm=\int_{0}^{1}\frac{m^{2}}{4}\hspace{4pt}dm=\frac{1}{12}$ )
次に、企業が提示する賃金を $w$ とすると、労働者の期待利得は、
$\pi_{e}=wPr\{v\leq w\}+E\hspace{2pt}[v\hspace{2pt}|\hspace{2pt}v>w]Pr\{v>w\}$ (15)
となります。(13)式から、企業は $w=\displaystyle \frac{m}{2}$ を提示するので、$w$ に代入すれば、
$=\displaystyle \frac{m}{2}Pr\{v\leq\frac{m}{2}\}+E\hspace{2pt}[v\hspace{2pt}|\hspace{2pt}v>\frac{m}{2}]Pr\{v>\frac{m}{2}\}$
(ここでは、$m$ をいったん所与として計算しています。別の計算方法、$v$ を所与として計算する方法は、注(2) ) 続けて計算していくと、
$=\displaystyle \frac{m}{2}Pr\{v\leq\frac{m}{2}\}+\frac{\frac{m}{2}+1}{2}(1-Pr\{v\leq\frac{m}{2}\})$
$=\displaystyle \frac{m}{2}\frac{m}{2}+(\frac{m}{4}+\frac{1}{2})(1-\frac{m}{2})$
$=\displaystyle \frac{m^{2}}{8}+\frac{1}{2}$
となります。$m$ は $[0,1]$ の一様分布なので、
$\displaystyle \pi_{e}=\int_{0}^{1}(\frac{m^{2}}{8}+\frac{1}{2})\hspace{4pt}dm=\frac{13}{24}$ (16)
となります。
( (16)式の値も積分を使って計算できます。取引を行う場合の労働者の期待利得は、図4の黄色の領域、$m\geq 2v$ で $w\hspace{4pt}(=\displaystyle\frac{m}{2})$ の期待値を求めればいい。
$\displaystyle \int_{0}^{1}\int_{0}^{\frac{m}{2}}\frac{m}{2} \hspace{4pt}dv\hspace{2pt}dm=\int_{0}^{1}\frac{m^{2}}{4}\hspace{4pt}dm=\frac{1}{12}$
取引を行わない場合の期待利得は、それ以外の領域で $v$ の期待値を求めればいい。
$\displaystyle \int_{0}^{1}\int_{\frac{m}{2}}^{1}v \hspace{4pt}dv\hspace{2pt}dm=\int_{0}^{1}\left[\frac{v^{2}}{2}\right]_{\frac{m}{2}}^{1}\hspace{4pt}dm=\displaystyle \int_{0}^{1}(\frac{1}{2}-\frac{m^{2}}{2})\hspace{4pt}dm=\frac{11}{24}$
$\displaystyle \frac{1}{12}$ と $\displaystyle \frac{11}{24}$ を足せば $\displaystyle \frac{13}{12}$ になります。 )
したがって、企業の期待利得と労働者の期待利得の和は、
$\displaystyle \pi_{f}+\pi_{e}=\frac{1}{12}+\frac{13}{24}=\frac{5}{8}$ (17)
となります。これは、ゲームIの期待利得 ((11)式) と同じ値です。
【補足】
それぞれの均衡の非効率性を比較するために、最も効率的な取引が行われた場合の期待利得を計算してみます。最も効率的な取引は、情報の非対称性がなく、企業も $v$ を観察でき、労働者も $m$ を観察でき、企業が $m\geq v$ となった場合のみ、労働者に $w=v$ となる賃金を提示し、労働者がそれを受諾する、というものです ($m<v$ の場合に、$v$ の賃金を支払えば損失を出すだけ。同様に $m<v$ の場合に、$m$ の賃金を提示しても、労働者は $v$ のほうが高くなっているため拒否する。ただし、実際はこの問題では、企業は$v$ を観察できないことになっているので、$w=v$ という賃金を設定できません)。取引が行われるのは、以下の図に示されたの領域 (黄色の領域) です。
図5
企業の期待利得は、企業は $m\geq v$ となる場合にのみ労働者を雇い、労働者に $w=v$ となる賃金を支払うので、
$\pi_{f}=(m-E\hspace{2pt}[v\hspace{2pt}|\hspace{2pt}v\leq m])\hspace{2pt}Pr\{v\leq m\}$
$=(m-\displaystyle \frac{m}{2})\hspace{2pt}m\hspace{4pt}=\frac{m^{2}}{2}$
となります。$m$ は $[0,1]$ の一様分布なので、
$\displaystyle \int_{0}^{1}\frac{m^{2}}{2}\hspace{4pt}dm=\frac{1}{6}$ (18)
となります。( (18)式の値は、$\displaystyle \int_{0}^{1}\int_{0}^{m}(m-v)\hspace{4pt}dv\hspace{2pt}dm$ を計算することでも求められます。)
労働者の期待利得は、取引に応じても、応じなくても $v$ を得るので、
$\pi_{e}=vPr\{v\leq m\}+vPr\{v>m\}$
$=v$
となります。$v$ は $[0,1]$ の一様分布なので、
$\displaystyle \int_{0}^{1}vdv=\frac{1}{2}$
となります。企業と労働者の期待利得の和は、
$\displaystyle \pi_{f}+\pi_{e}=\frac{1}{6}+\frac{1}{2}=\frac{2}{3}$ (19)
です。
そこで、前出の3つのゲームの期待利得と、この最も効率的な取引の期待利得との差、つまり期待損失を求めてみます。最初のダブル・オークション (線形均衡) では、期待利得は $\displaystyle \frac{41}{64}$ なので、期待損失は、$\displaystyle \frac{2}{3}-\frac{41}{64}=\frac{5}{192}$ です。次のゲームIとゲームIIでは、期待利得は $\displaystyle \frac{5}{8}$なので、期待損失は、$\displaystyle \frac{2}{3}-\frac{5}{8}=\frac{1}{24}$ です。したがって、ゲームI (単一価格均衡) とゲームIIよりも、ダブル・オークションの線形均衡のほうが非効率性が少ないことがわかります。
注1)
(6)式の値は、図1の黄色の領域でのみ取引が行われるような架空の取引を想定し、それぞれの期待利得を計算することでも確認できます。例えば、$m\geq v+\displaystyle \frac{1}{4}$ となる場合にのみ企業が賃金 $w=v+\displaystyle \frac{1}{4}$ を支払う、というものです ($v<w$ となるので労働者は応じます。ただし実際には企業は $v$ を観察できないので、このような賃金を設定することはできません)。その場合、黄色の領域での企業の期待利得、つまり $m-w\hspace{4pt}(=m-(v+\displaystyle \frac{1}{4})\hspace{2pt})$ の期待値を計算すれば、$\displaystyle \frac{9}{128}$ となります。黄色の領域での労働者の期待利得、つまり $w\hspace{4pt}(=v+\displaystyle \frac{1}{4})$ の期待値を計算すれば、$\displaystyle \frac{9}{64}$ になります。それ以外の領域での労働者の期待利得、つまり $v$ の期待値を計算すれば、$\displaystyle \frac{55}{128}$ になります。(それぞれの計算はここでは省略)
注2)
(15)式の計算では、$m$ をいったん所与として計算しましたが、$v$ をいったん所与として計算することもできます (こちらのほうが計算が面倒)。その場合、図4を次のように分割して計算します。
図6
$\pi_{e}=wPr\{v\leq w\}+E[v|v>w]Pr\{v>w\}$ (15)
$=\displaystyle \frac{m}{2}Pr\{v\leq\frac{m}{2}\}+E[v|v>\frac{m}{2}]Pr\{v>\frac{m}{2}\}$
ここまでは前の部分と同じ。
$=E\hspace{2pt}[\displaystyle \frac{m}{2}\hspace{2pt}|\hspace{2pt}m\geq 2v]\hspace{2pt}Pr\{m\geq 2v\}+E\hspace{2pt}[v\hspace{2pt}|\hspace{2pt}\frac{m}{2}<v\leq\frac{1}{2}]\hspace{2pt}Pr\{m<2v\}$
$+E\hspace{2pt}[v\hspace{2pt}|\hspace{2pt}v>\displaystyle \frac{1}{2}]\hspace{2pt}Pr\{v>\frac{1}{2}\}$
最初の項は図6の①に、第2項は②に、第3項は③に対応しています。続けて計算していくと、
$=\displaystyle \frac{E\hspace{2pt}[m\hspace{2pt}|\hspace{2pt}m\geq 2v]}{2}\hspace{2pt}(1-Pr\{m<2v\})+E\left[\frac{\frac{m}{2}+\frac{1}{2}}{2}\hspace{5pt}|\hspace{5pt}m<2v\right]Pr\{m<2v\}$
$+\displaystyle \frac{\frac{1}{2}+1}{2}\frac{1}{2}$
(最後の項は、$\displaystyle \int_{\frac{1}{2}}^{1}v\hspace{2pt}dv$ を計算することでも求まります。) 続けて計算していくと、
$=\displaystyle \frac{1}{2}(\frac{2v+1}{2})(1-2v)+\frac{E\hspace{2pt}[m\hspace{2pt}|\hspace{2pt}m<2v]+1}{4}\hspace{2pt}2v+\frac{3}{8}$
$=\displaystyle \frac{1}{4}-v^{2}+\frac{v+1}{4}2v+\frac{3}{8}$
$=\displaystyle \frac{1}{4}-v^{2}+(v+1)\frac{v}{2}+\frac{3}{8}$
$v$ は $[0,1]$ の一様分布なので、
$=\displaystyle \int_{0}^{\frac{1}{2}}(\frac{1}{4}-v^{2})\hspace{4pt}dv+\int_{0}^{\frac{1}{2}}(v+1)\frac{v}{2}\hspace{4pt}dv+\frac{3}{8}$
$=\displaystyle \frac{1}{12}+\frac{1}{12}+\frac{3}{8}=\frac{13}{24}$
となり、(16)式と等しい値になります。これも積分を使って計算できます。図6の3つの部分に分けて計算します。①の部分の期待利得は、
$\displaystyle \int_{0}^{\frac{1}{2}}\int_{2v}^{1}\frac{m}{2}\hspace{4pt}dm\hspace{2pt}dv=\int_{0}^{\frac{1}{2}}\left[\frac{m^{2}}{4}\right]_{2v}^{1}dv$
$=\displaystyle \int_{0}^{\frac{1}{2}}(\frac{1}{4}-v^{2})\hspace{4pt}dv=\frac{1}{12}$
②の部分の期待利得は、
$\displaystyle \int_{0}^{\frac{1}{2}}\int_{0}^{2v}v\hspace{4pt}dm\hspace{2pt}dv=\int_{0}^{\frac{1}{2}}\left[vm\right]_{0}^{2v}\hspace{4pt}dv=\int_{0}^{\frac{1}{2}}2v^{2}\hspace{4pt}dv=\frac{1}{12}$
となり、③は $\displaystyle \frac{3}{8}$ なので、それらを合計すれば $\displaystyle \frac{13}{24}$ になります。
1. (2)
労働者を雇用し、生産活動を行う企業を考える。雇用量を$L$、賃金率を$w$で表す。労働者の努力水準$e$は賃金率$w$に依存しており、
$e=e(w),\hspace{5pt}e^{\prime}>0$
と表すことができる。この企業の生産水準は
$AF(e(w)L),\hspace{5pt}F^{\prime}>0,\hspace{5pt}F^{\prime\prime}<0$によって決定される。ここで、$A$は生産性を表す正の定数である。この企業の利潤は
$\Pi=AF(e(w)L)-wL$ (1)
で表される。企業は雇用量と賃金率の双方を自由に選択できるものとするとき、企業によって設定される賃金が、生産性$A$とどのような関係にあるのか議論しなさい(最適点の周辺では $e^{\prime\prime}<0$ が成立しており、二階の条件は満たされているものとする)。
沢ひかる
貧乏人。
経済学「部」とは無縁です。