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もし貧乏人が経済学を学んだら

2014年07月

(消費税の)軽減税率と(所得税の)配偶者控除は同じ穴のムジナ

 大竹文雄氏が、なぜ消費税の軽減税率は人気なのか、という理由を挙げています(こちら)。

 その2つめ、
第2の理由は、中所得者以上の人たちが、実際は軽減税率によって自分たちが得をすることを知っているが、それが低所得者対策であるという名目を立てることで、政策への正当化をしやすいということではないだろうか。
 これは、所得税の配偶者控除にも当てはまります。低所得者よりも「上の」所得の人も配偶者控除によって得をします。

 低所得の人の中には、所得が低く生活が苦しいので、配偶者控除を受けることができる年収で労働を止める余裕なんてない、という人も多くいます。

 だから、本当に低所得者対策がしたいなら、軽減税率や配偶者控除ではなくて、直接給付をするか、低所得者の所得税率を下げればいい。

 大竹氏は理由を3つ上げていますが、もうひとつあります。
 多くの人が表面的な言葉や単純な論理にだまされる。食品の税率を下げるから、低所得対策になる、労働時間が少ない主婦に対する援助だから低所得対策になる、という具合です。

 配偶者控除を縮小すべきか? というYahooの意識調査では、約30%の人が縮小すべき、約30%の人が現行制度を維持すべき、で、増加すべきという人が30%以上もいますこの人たちは何が問題になっているのかわかっているのか?  控除開始の年収をもっと上げて、現在控除を受けている人が控除を受けたままでもっと働けるようにする、というのなら理解できますが、おそらく、控除が増えれば得だ、という理由だけから、増加すべきだと考えているのでしょう)。

 たぶん軽減税率で同じ意識調査をすれば、同じような結果になるでしょう。

 ちなみに、ムジナは、アナグマ(あるいはタヌキ、ハクビシン)のことです。

 これも、「ムジナとは何か知っていますか」という質問をYahooの意識調査で調べてみれば同じ結果になるでしょう。30%の人が知っていると答え、30%の人が知らないと答え、30%の人が「穴はうめるべきだ」と答えるでしょう。(冗談で言っているのではありません。こういう意識調査をすると、かなりの人が何が問題なのかわからずに答えているように思います。)

カウントダウン経済学

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 (2013年11月出版)


 だいじょうぶ。 まだ5か月ある!

 
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 と思っていたら

 すでに「損失」の「飛ばし」は完了していた(2014年6月出版)

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クルーグマン、「日本との貿易」序文(1991) (1)

 古いもの(1991年)ですが、NBERの論文集、Trade with Japan -- Has the Door Opened Wider?  (1991) 収録のクルーグマンによる序文 (Introduction) の翻訳です。今回は最初の部分だけです。

要約
 日本に関して次のような通説 (conventional wisdom) がある。
 日本の市場は、貿易に対する法律上の障害は比較的少ないにもかかわらず、他の国の市場のように競争的になっていないので、事実上保護されている。企業と、カルテル化した流通セクターの両方を含むグループが、グループ内で結託しているため、多くの海外の生産者は、日本の市場から事実上締め出されている。日本製品よりも安い製品をつくっても、あるいは(かつ)、いい製品をつくっても、そうである。同様に日本の企業の協力が得られないので海外直接投資を行うことができない。日本に子会社をつくることができないので、日本への輸出ができない。そして、新しい重要な技術を扱う産業や製品になると、このような結託システムがとりわけ強くなる。そのために、すでに外国の企業がリードしている場合でも、日本の企業が新たな市場でのシェアを獲得するチャンスが出てくる。
 このような通説は、おおむね正しいようだ。
 
**********
「日本との貿易」(序文) 
"Introduction" to Trade with Japan  by Paul Krugman

 主要な経済指標だけを見ると、どうしてアメリカが日本にそれほどこだわるのかは理解しがたい。アメリカの輸入のうち、日本から来ているのは約5分の1にすぎない。そして、アメリカの輸出のうち10分の1以下が日本に輸出されているだけである。アメリカに対する海外直接投資 (foreign direct investment)のうち、日本企業が占めるのは約20%にすぎない。さらに、日本企業が雇っているアメリカ人はわずかである。確かに日本は、重要な貿易と投資のパートナーだ。しかし、どんな基準から言っても、ヨーロッパとの貿易と投資のほうが重要である。さらに、ほとんどの指標で、カナダのほうが数量的に上回っている。しかし、多くのアメリカ人にとって――一般の人々だけでなく、政策決定者や学者も含めて――日本の貿易と投資は、国際経済学の議論の的になっている。

 もちろん、日本に対する焦点の多くは、魅力と妬みのまぜあわさったものだろう。魅力――なぜなら、日本は比較的後進国の位置から、また敗戦のショックから、金融のリーダー国、そして技術的なリーダー国へと、めざましい躍進をみせたからだ。妬み――なぜなら、日本の台頭は、アメリカの優越が次第に低下していったこととはっきりとした対照を示しているからだ。それにともなって、多くのアメリカ人の生活水準は、停滞しているか、さらには低下しているありさまである。日本がアメリカ人にとって目立ってしまうのは、ある程度、それがアメリカの不足の象徴になっているからであり、アメリカ経済が本来与えるべきものを与えてくれないことへの失望を表しているからである。

 しかし、「日本問題」には、世界第2位になった国に対するアメリカ人の妬み以上のものがある。日本は世界経済の周辺国から中心へと踊り出てきたが、それにもかかわらず、依然として他の先進国とは違ったルールでゲームを行っている、と多くの人が感じているのである。それが正しいにせよ、間違っているにせよ、アメリカの多くの有識者が、日本の経済は他の産業国とは違う方法で動いている――その結果、従来のアメリカの対外経済政策は、日本がマイナープレイヤーであった時代には有効だったが、もはやうまく機能しなくなっている、という考えをいだくようになってきている。そのうちのいくらかの人は、日本バッシング専門家になっていて、アメリカに正面突破せよ、とせきたてる。またいくらかの人は、日本を賞賛するだけになっている。アメリカも日本システムと言われるものを見習ってほしい、というわけだ。

 問題は、アメリカと日本との貿易―投資関係は、過熱した議論をたくさん生み出しているが、データと信頼できる分析がまだ足りない、ということだ。最近の日本の輸出と投資の増加にばかり注目して、次のような基本的な疑問に答える議論ができていないのだ。どのような点で、日本の経済システムは他の産業国とは違っているのか? その違いは、どのような影響を与えているのか? それは、友好な経済関係に障害をもたらすか? この対立を解消するために何ができるのか?

 1989年の秋に、日本とアメリカの参加者が、両国の経済関係にとって重要な問題のいくつかを議論するために、全米経済研究所で国際会議を開催した。この本はその結果である。このイントロダクションで、この議論が行われた背景と、その会議で明らかになった主要な問題の概観を示してみたいと思う。

日本問題を定義する

 日本の政府官僚や多くのエコノミストや他の人々にとって、日本の異質性に対するアメリカの執着は、支持されていないようだ。従来の国際経済学の指標で見れば、日本はそれほど例外的ではないからだ。農業は手厚く保護されている。他の産業国と比べて、ほとんどの指標でそうである。しかし、日本は大きな農産物輸入国であるので、日本の農業保護主義は、ヨーロッパの農業政策の巨大な輸出補助金に比べて、貿易問題として対立を生むことは少ない。いっぽう、輸入工業製品に対する日本の関税は、他の先進国同様、きわめて低い。また、日本は、アメリカやヨーロッパへの工業製品の輸出量を制限する、という輸出制限の協定を結んでいない。私たちは、日本の貿易政策の制度上の構造だけを見れば、日本の官僚が――彼らがしばしば主張するように――日本はアメリカよりも自由貿易を維持している国だ、と主張するのを聞いても驚かないだろう。

 しかし、アメリカの政策決定者の中で、このような日本に都合がいい解釈を受け入れる人はいないだろう。そのうちいくらかの人は、日本は一枚岩的な「ニッポン株式会社」"Japan Inc." である、という考えをいまだに抱いている。しかし、より一般的な通説は次のようなものである。日本の市場は、貿易に対する法律上の障害は比較的少ないにもかかわらず、他の国の市場のように競争的になっていないので、事実上保護されている。企業と、カルテル化した流通セクターの両方を含むグループが、グループ内で結託しているため、多くの海外の生産者は、日本の市場から事実上締め出されている。日本製品よりも安い製品をつくっても、あるいは(かつ)、いい製品をつくっても、そうである。同様に日本の企業の協力が得られないので海外直接投資を行うことができない(訳注 例えば、日本に生産拠点をつくろうとしても、日本の部品会社が「系列」内で結託しているので、部品の調達ができるかどうかわからない。そのため、海外企業は日本に生産拠点をつくろうと思わない)。日本に子会社をつくることができないので、日本への輸出ができない。そして、新しい重要な技術を扱う産業や製品になると、このような結託システムがとりわけ強くなる。そのために、すでに外国の企業がリードしている場合でも、日本の企業が新たな市場でシェアを獲得するチャンスが出てくる。

 このような日本に関する通説の根拠は何だろうか? その多くが依拠しているのは、逸話である。例えば、どう見ても優れた製品が日本で売れなかった、ということを主張するビジネスマンの話である。カレル・ヴァン・ウォルフレンのような、影響力がある日本に関するコメンテーターは、アメリカやヨーロッパの自由奔放な個人主義とは非常に異なる日本社会というイメージを提供することで、そのような逸話を説得力のあるものにしてきた。しかし、経済学者にとって、それでは十分ではない。逸話は有益である。しかし、それを結論とすることはできない。とりわけ、逸話の語り手は、自分の利害と切り離して見ることができないからだ。いっぽう、社会学が重要になるかもしれない。しかし、経済学者は、ある社会的要因のために、利益を得る機会を社会の全員がふいにする、という考えに懐疑的である。言葉を変えて言えば、経済学者は、日本に関する通説に説得力があると認めるなら、次の点について確かめる必要があるのだ。第一に、逸話的な証拠がさらにより事実に基づいた、できれば数量的な証拠によって証明されること。第二に、日本の消費者がより値段が高い国内製品を好むという想定にそれなりの経済的意味がある、と証明されることである。

 1980年代を通して、日本のパフォーマンスに関する経済議論は、どちらかといえば単純な疑問に集中していた。日本は工業製品を異常なほど少ししか輸入しないのか? というものだ。数字だけで見れば、日本はこの点で他の先進国と大きく異なっている。日本の1988年の工業製品の輸入は、GNPの2%にすぎなかった。それに対してアメリカは7%、EC諸国の平均は14%である。この数字だけを見れば、日本の市場は閉じているという逸話は正しい、という印象を受けるだろう。しかし、多くの経済学者、とりわけ Bergsten と Cline が指摘しているように、そのような数字だけの比較は不公平である(1)。アメリカは資源が豊かな国である。そのため石油の輸入を農産物の輸出で支払うことができる。いっぽう、日本がそのような輸入原材料を買わためには、製造業で貿易黒字を生み出さなければならない。そのために工業製品の輸入は少なくなるのだろう。いっぽう、ヨーロッパの国々はお互いに生産した工業製品の半分以上を貿易する。しかし、日本は近隣に先進国を持っていない。

 多くの経済学者は、このような要因を考慮して、それでも日本は「異常な国」なのか、という疑問に答えようとしてきた。この疑問を検証するためのモデル自体も論争の的になっている。Srinivasan と Hamada は、日本の異常さを検証するすべての方法に問題がある、と主張している(2)。しかし、日本は、本来日本のような国に対して期待されるより、少ない量しか輸入していない、という主張は、依然として妥当なようだ。その点に関してとりわけ重要な点を指摘しているのは、Lawrence の論文である。彼は、日本の資源の少なさと地理的位置を考慮しても、日本はそのような状況で期待されるより、半分を少し上回るぐらいの輸入しかしていない、と指摘した(3)。

 日本は閉じた経済である、という通説を支持するもうひとつの証拠は、海外直接投資の少なさである。アメリカでは、外国人所有の企業が現在GNPの約4%を生産し、工業製品の付加価値の10%以上を生み出している。ヨーロッパの国々ではその値はさらに高くなるだろう。しかし、日本では、海外直接投資の役割は無視できるほど小さい(訳注1)。

 したがって、全体の議論を通して見れば、通説は大まかな検証テストをおおむねクリアしている、と言えそうである。しかし、そうなるとさらに疑問が生じる。どうして制度上は開かれている経済が、どちらかと言えば閉じた状態になってしまうのだろうか? そのような日本人の行動には、経済的合理性があるのか? あるいは、将来は、日本も他の産業国のようになっていくのだろうか? という疑問である。

(1)C. F. Bergsten and W. Cline, THe United States-Japan Economic Problem (Washington, D.C.: Institute fro International Economics, 1987)
(2)T. Srinivasan and K. Hamada, "The U.S.-Japan Trade Problem" (Yale University, 1990, mimeographed).
(3)R. Lawrence, "Imports in Japan: Closed Markets or Minds?" Brookings Papers on Economic Activitiy, no.2 (1987).

(訳注1) 2008年のデータでは、対内直接投資(海外企業による直接投資)のGDP比は、日本3.67%、アメリカ18.33%、イギリス46.89%、ドイツ27.43%、フランス37.93%、韓国10.49%。日本の数値は依然として著しく低い。
http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/investmentq_a/html/questions.html

プロフィール

沢ひかる

貧乏人。

経済学「部」とは無縁です。

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