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もし貧乏人が経済学を学んだら

2014年08月

景気回復期には実質賃金が低下する


 日銀の大規模金融緩和が開始されて以降、実質賃金は下がっています。

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   図1





(厚労省、毎月勤労統計調査より。この実質賃金は、名目賃金指数を消費者物価指数(CPI)で割ったものです。2014年4月から、実質賃金が急に低下したのは、消費税の増税のためです。消費税の増税のために、CPIが4月から増えたため。)

 このような実質賃金の低下を見て、日銀の金融緩和は雇用改善に効果を発すると言ってるが、そうなっていないじゃないかとか、実質賃金が低下しているので購買力が低下しているとか(――これはある部分正しい。しかしその低下の一番の原因は消費税増税です)、実質賃金が低下しているので、景気回復どころか、景気停滞に向かっている、と主張する人がいます。

 しかし、実質賃金が低下していることは、景気停滞を示すのではなく、経済が景気回復期にあることを示しているのです(景気回復といっても、消費税のショックで怪しくなりましたが)。

なぜか。

 
景気回復期には、最初、実質賃金が下がるからです
(景気回復期の賃金経路のもう少し詳しい説明については、サンフランシスコ連銀のこのレポート(拙訳)を見てください。)

 景気回復期には、名目賃金の増加よりも、最初にインフレ率が上昇します。まず景気回復が期待できることから期待インフレ率が上がり、それに続いてインフレ率が上がるからです。また、金融緩和策で為替レートが低下すれば、エネルギー系などの輸入材の価格が上がります。

 しかし、名目賃金の増加は遅れます。
 その理由としては、企業は、将来の景気を判断するのに時間がかかり、その判断も慎重になり、最初は賃上げに慎重になる、ということがあります。企業が景気後退期に積み上げた負債を減らすことを優先するため、賃上げが遅れる場合もあります。
 また、景気後退期に増加した失業者のプールがあるため、最初、企業は賃金を上げなくても労働者を雇用できます。失業率が低下し、人手不足感が出てきてから、賃金を上げ始めます。
 そして、もうひとつの重要な要因、賃金改定が1年とか3年という比較的長い時間を経てしか行われないため、そもそも賃金改定の機会がなかなかやってこない、ということもあります。それと、企業側が一方的に賃金を決めている場合が多い(これは非正規雇用では特にそうです。そのため、本当に人手不足に直面しなければ賃金を上げない)。

 このような理由から、名目賃金の増加は遅れます。そして、インフレ率が先に上がっていれば、実質賃金は下がります。しかし、これは景気が停滞しているからではないのです。

 そして、景気回復期には、企業は将来需要が増えると予想し、雇用を増やします。実際現在雇用は増えています(これについては前の記事)。そして雇用が増えてくれば、次は名目賃金が増加します(実際すでに増え始めています。下の図を参照)。そういう点を考慮すれば、実質賃金が下がっていても、景気回復期にあると想定できるのです。

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   図2


厚労省、毎月勤労統計調査より



 先に紹介したサンフランシスコ連銀のレポートは、さらに興味深い事実を指摘しています(このレポートは、アメリカの過去の3回の景気回復期における賃金の経路を検証したものです)。

 景気後退期には、名目賃金の下方硬直性のために(日本では、アメリカに比べて名目賃金の下方硬直性が弱いですが)、実質賃金が高どまりしています。そのため、企業は賃金を下げたい欲求をかかえこんでいることになります。景気回復の初期は、企業にとって、その封じ込められた(pent-up) 欲求が満たされる時になります。つまり、景気回復で先にインフレ率が上昇し、実質賃金が下がるので、その欲求が満たされるわけです。さらに、この賃金を下げたいという封じ込められた欲求のために、景気回復期の初期には、失業率が低下しているのに、名目賃金までもが低下することがあるそうです。雇用している人を増やしているのに、名目賃金が下がるのです。景気後退期に失業者が増え、失業している労働者が多くいるならば、これは可能です。しかし、雇用される労働者が増加していく(失業率が低下していく)につれて、名目賃金は増加します。そして、名目賃金の増加率がインフレ率を超えれば、実質賃金も増加します。

 この名目賃金の変化を、賃金フィリップス曲線で描くと(失業率と名目賃金の平面にプロットすると)、時計回りの経路を描く、ということがわかります(よく言われる、フィリップス曲線が時計回りに移動するという現象です)。著者たちは、アメリカの過去3回の景気回復期でこの賃金経路を確認しています。(下の図では、まだ2008年の大不況から回復しているとは言い難い。失業率(失業率ギャップ)は低下しているが、名目賃金が増加していない。このレポートは2013年7月のものです。それ以後のデータは書き込まれていません。)

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「消費税ばか・インフレばか」注意報

 消費税の増税のために、今年2014年4月から消費者物価指数(CPI)が跳ね上がりました。消費者物価指数(CPI)には消費税分が含まれます。


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http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.htm


 これを見て、物価(インフレ率)が高くなった、とか、インフレ率が上がったので実質賃金が下がった、と叫んでいる人がいます。(そもそもその物価が高くなった根本的な原因は、消費税増税なんですけどね。)
 さらに、物価が高くなり、実質賃金が低くなったので生活が苦しくなったとか・・・

 CPIのような「短期的な」インフレ率をインフレ率として用いて、実質値を推測することには、問題があります。

 CPIは「前年同月比」です。したがって、今年度中――来年2015年3月まで3%以上の高い値が続くと予想できます。しかし、「前年同月比」なので、来年2015年4月にがっくと下がるはずです。それまでに潜在的なインフレ率が3%近くになっていなければ、下がるはずです。

 現在、期待インフレ率は、1.3%ぐらいです。この値から考えても、CPIは来年4月に再び急下降すると予想できます。
http://www.bb.jbts.co.jp/marketdata/marketdata05.html

 しかし、現在のCPIだけを見れば、インフレ率は3.6%と比較的高い水準だ、ということになってしまいます。(この数字に注目させ、インフレ2%は達成されたので、日銀の緩和策を止めさせろ、という意見も出てくるかもしれません。)

 こういう経済指標の仕組みを知らないことによる誤った意見、あるいは多くの人がこういう仕組みを知らないことを意図的に利用する悪質な意見――物価が上がった、実質賃金が下がった、という意見が、今後やはり来年度4月まで、ひんぱんにあらわれてくるので注意が必要でしょう。

エレメンタリー ホームズ in 中国――「中国が日系自動車部品メーカを独禁法違反で摘発」の「裏」を推測する

 中国が、日本の自動車部品メーカー12社がカルテルを結び、自動車部品の価格をつり上げる価格操作をしていたとして、そのうち10社に制裁金の支払いを命じた、と報じられています。

 日本には、中国の問題となると単細胞的な反応しかできない人が多く、やっぱり中国は悪い、と考えてしまう人が多そうです。そもそもカルテルや独占は悪いことです。日本でも摘発されます(ただし、日本では独禁法がゆるく、公正取引委員会は積極的に取り締まりを行っていないように思われます)。

たまたまシャーロック・ホームズさんが中国に滞在していたので、彼の推理を聞いてみました。


「うん、まずその部品が何かというのが重要だね。もし、「完成車」の価格が不当に高くつり上げられている、としてその価格を下げさせたなら、中国の消費者の利益になる。消費者余剰と生産者余剰を比べる、というあれだね(この場合、消費者余剰と生産者余剰を合わせた総余剰も増加する)。こんなのは初歩的だよ。最近アフガニスタンから帰ってきたばかりで頭が少々鈍っている僕の助手のワトソン君でも理解できる・・・はずだ。

 これに対して、日本のメディアの中には、中国は外資系企業たたきをして、自国の自動車産業を保護しようとしている、と言っている人もいるけど、そういう人は最近頭をどこかにぶつけていないか確かめてみたほうがいい。外資系企業に価格を下げさせるなら、その外資系企業の利益はおそらく減るが、価格低下により販売は増える。だから中国企業はむしろ厳しい状況に立たされる。独占を解消させることは消費者の利益になる。これが基本だよ。

 しかし、今回の事件は事情が異なる。対象になっているのは「自動車部品」だ。ベアリングらしい。次のブルームバーグと日経の記事がわりと詳しく書いている。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NAL3G26KLVRA01.html

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM20H0F_Q4A820C1MM0000/

 重要なのは自動車部品だということだ。つまり、それを購入するのは、一般的な消費者ではなくて、完成車メーカーだ。ブルームバークの記事によると、今回摘発された部品メーカーから供給を受けていたのは、

              5社、20車種以上で使用

発改委の発表資料によると、価格操作が行われたとされる部品はトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、スズキ、米フォード・モーターの20車種以上のモデルに使用されていたという。


 だから、中国当局が独禁法を適用して、日本の部品メーカーの価格を下げさせるなら、利益を得るのは誰だろう。そう、これらの完成車メーカーだ。

 「不二越は「当局の調査に協力的だった」という理由で制裁金の支払いを免れた」――こりゃ逃げられない、と思ったんだろう。ということから考えると、中国当局は憶測で捜査したのではなく、事実をすでにつかんでいたと思われる。つまり、誰かがリークしていたということだね。

 部品メーカーの価格が下がれば、上記の完成車メーカーが利益を得るのだから、その情報をリークしたのはその中――トヨタ、ホンダ、日産、スズキ、フォード――の誰かだと推測したくなるだろう。ここで推理を止めてしまうなら面白くない。もう少し妄想を暴走させてみよう。

 僕の直感はトヨタが怪しいと指摘している。この中で「系列」的経営を今でも多くの残しているのはトヨタだ。日産は系列を止めた。トヨタは今でも、グループ企業への役員派遣を行っている。トヨタから派遣された役員は、派遣先の企業のためにその企業を経営するというよりは、トヨタのためになるように派遣先の企業を経営しようとする。

 日本の部品メーカーの中にトヨタに協力的な役員や社員がいた(他のメーカーから出向している社員がいないというわけではないけどトヨタの割合が多いんじゃないか)。その役員や社員が部品価格カルテルの情報をつかんだ。

 もちろん、部品メーカーの価格カルテルに対して、これらの大手完成車メーカーが結託したとも考えられるが、こういうのは個人か少ない人数のグループが行ったと見たほうがいいだろう。それがトヨタだという確証はまったくないんだけど。またリークがあったという確証もないんだけど(もちろんカルテルは法律違反なので、これをリークしたからといって責められる理由はない。)

 どうだね、ワトソン君。中国って面白いだろ?」

「シャーロック、中国に来て、もしかして、もしかして、止めていたアヘンをまた始めたんじゃないか?」

「いや、ワトソン君、僕はナチュラル派でね、日本の危険ドラックとやらというのは体に合わないんだな。」

TPP報道の「裏」を推測してみる――自動車の安全基準

  TPPの日米二国間協議で、アメリカが自動車の安全基準の「緩和」を求めている、と報道されています。このような報道によって、多くの人は、安全基準の「緩和」によって、「危険な」自動車が入ってくる、と受け取ってしまうかもしれません(実際そういう人は多いでしょう)。メディアは(あるいは関係省庁は)、意図的にそういう誤読をねらっているのかもしれません(TPPの協議内容が秘密にされているため、こういう情報操作はより簡単になります)。

 自動車の強度に関する安全基準では、アメリカのほうが厳しいはずです。アメリカのほうが大型車の割合が多く、そのため衝突に対するより強い強度や安全性が求められるからです。

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(↑かなり古いデータですが。インターネット上ではこれしか見つからなかった。
ttp://www.mlit.go.jp/hakusyo/transport/shouwa57/ind020206/frame.html 
これに関しては、国沢光宏氏のこの記事も参考に。全然関係ないですが、国「沢光」宏氏にはなんか親近感を感じる・・・ )

 そもそも、自動車の安全基準で、昔から日本とアメリカが対立しているのは、安全基準の内容に関してではありません。安全基準の認証制度に関してです。
http://www.jasic.org/j/08_publication/pamphlets/pdf/harm.pdf

 アメリカは、メーカーによる自己認証制度をとっています。メーカーは事前検査を受けずに販売することができ、政府が事後的に抜き取り検査などで確認する仕組みです。日本は、政府による事前認証制度を採用しています。新たに販売される自動車は、すべて政府による事前検査を通らなければなりません。国交省は、認証制度は政府による事前認証でなければならない、と強固に主張しています。

 「消費者の安全のため」と言いますが、他の理由はないのでしょうか

 政府が事前に認証するということは、国交省などの関係省庁(官僚)が権限を持っているということです。すべての自動車メーカーは、政府の認証機関の認証を得なければ自動車を販売することができません。国交省などの省庁は、その権限を手放したくないのではないでしょうか? (これはいくつかの省庁が消費税の軽減税率を支持するのと同じ構造です。省庁は、どの商品に軽減税率を適用するかを決める権限をもつことになります。こうなるとメーカーや企業は、省庁に逆らいにくくなる。)

 また、審査機関が国交省の官僚の天下り先になります(これに関しても国沢光宏氏のこの記事)。また、そのような審査を行うことで財源(予算)がついてきます。

 世界の各国は自動車の相互認証に向けて進んでいます。各国認証(それぞれの国による独自認証)の場合、例えば、ヨーロッパで販売されている自動車を日本に輸出しようとすると、ヨーロッパで認証審査を受け、日本で再び認証審査を受けなければなりません。これは2重の検査をしていることになり、大きなコストがかかるだけでなく、無駄が多いです。そのため各国は相互認証制度――製造国の認証だけを受けるだけでよい、という制度をつくろうとしています。ヨーロッパから日本に輸入される自動車は、ヨーロッパだけで認証検査を受ければよく、日本における認証検査を受ける必要はなくなります。

 国交省は表向きは相互認証制度を支持しているようですが、本当に相互認証制度を受け入れる意思があるのでしょうか(各国で相互認証がまとまらず、紛糾するのを望んでいないか?)

 もう一点、TPPの自動車分野では、アメリカが、系列店による販売を解消しろ、と要求していると報道されています。これを聞いて、アメリカの押し付けだとかアメリカの横暴だとか言うひとがいますが、TPP全体を受けいるかどうかという問題は別にして、この要求受け入れることで、日本がデメリットを受けることは少ないと思われます。むしろ、デメリットよりもメリットのほうが大きい。系列店による販売を解消したところで、アメリカメーカーの自動車の販売が伸びるとは考えられません。むしろ、日本の(販売シェアという点で)「弱小メーカー」にとってメリットがあります。

 系列店による販売では、メーカーがどのくらいの販売店網をもっているかで、ある程度、そのメーカーの販売台数が決まってしまいます。小さい販売店網しかもっていないメーカーは、いいものをつくっても販売を伸ばすことができません。より良いものがよりたくさん売れる、という「健全な市場」のほうが望ましいはずです。

ソローモデルの演習問題

 質問をいただきました。だいぶ遅くなりましたが、解答例を書いておきます。

「ソロー・モデルとラムゼイ・モデルに関しての質問です。
ソロー・モデルにおいて、貯蓄率の低下が以下の経済変数にもたらす効果について、図を示しながら説明せよ。
1.①効率労働あたり投資、②効率労働あたり資本、③効率労働あたり消費、④一人あたり所得、各々の水準の変化と、新しい均衡水準。
2.⑤効率労働あたり資本の成長率、⑥一人あたり所得の成長率、⑦(国全体の)所得成長率、各々の変化と新しい均衡での成長率。」

 ローマーの『上級マクロ経済学』の31ページから、「1.4 貯蓄率の変化がもたらす影響」(こちらは貯蓄率の増加)の反対のパターンです。お持ちでしたら、その部分を参照するとヒントになると思います。


 知識(技術)の増加率を g、人口増加率を n とすると、知識と人口は次の式で表せます。A(0),L(0) は初期値です。
140813 (1)
   (1)
 資本の動学は、
140813 (2)
   (2)
 です。ここで、s:貯蓄率、δ:資本消耗率です。
 効率労働1人当たりの資本は、
140813 (3)

   (3)
 で表されます。
 (3)式の両辺を時間で微分すると、
140813 (4)



 (2)式、K(t) = sY(t)-δK(t) を代入すると、
140813 (5)



 (1)式から、A(t)/A(t)= g ,L(t)/L(t)= n なので、これを代入すれば、
140813 (6)


140813 (7)
   (4)
 したがって、
140813 (8)
   (5)
 sf(k(t))>(n+g+δ)k(t) のときは、(5)式はプラスです。したがって、効率労働当たりの資本ストックは増加します。逆に、sf(k(t))<(n+g+δ)k(t) のときは、(5)式はマイナスです。効率労働当たりの資本は減少します。
 したがって、k(t) は、sf(k(t))=(n+g+δ)k(t) となる k の値に収束します(下の図を参照)。以下、その値(均斉成長路での効率労働当たりの資本ストック)を kとします。

 ここで、貯蓄率 s が低下した場合、下の図のように、sf(k) は下にシフトします。
14081301










   図1



 kは左にシフトします(減少する)。

(上の質問では、効率労働当たりの投資から始まっていますが、資本の変化の説明から始めます。)

② 効率労働当たりの資本
 上の図のように、減少します。減少の割合は、最初が大きく、次第に減少の割合は減っていきます。その変化を時間を横軸にとって描けば、次の図のようになります。
14081303










  図2


 ローマーの『上級マクロ経済学』では、具体的な関数を求めています(29ページ)。

140813 (11)
 (この式の導出はこちらを参照してください。)
 ここで、λは、
140813 (13)

 です。

140813 (14)

 とすると、また、初期値 k(0)=2、均衡値=1 とすると、
140813 (15)
   (6)
 となります。これをグラフに描けば、次の図になります(時間の単位は10年です)。
14081302








   図3



 効率労働当たりの所得
 図1から、f(k) は、k の減少にしたがって減少するとわかります。14081304次の図のようになります。









 図4





 k(t) が(6)式の、k(t)=exp(-0.04t)+1 ならば、そして f(k)=kα (α=1/3)ならば、f(k)=(exp(-0.04t)+1)(1/3) です。

① 効率労働当たりの投資
 効率労働当たりの投資は sf(k) です。最初、s の低下だけ減少します。その後、f(k) の減少にしたがって減少していきます( f(k) の変化は、上の図4)。
14081305










   図5

 (図が正確ではありません。s<1 なので、図5は減少率が大きすぎるかもしれません。s<1なので、sf(k)の減少は、f(k)よりも小さくなります)。

 ③効率労働当たり消費
 均衡での消費を cとすると、
140813 (16)
   (7)
 です。最初、s が低下するので、消費は増加します。その後、f(k) の減少にしたがって、減少していきます。最初の均衡水準より、消費が高くなるか、低くなるかはこれだけではわかりません。

 どちらになるかは、次の手続きで調べます。
 (5)式から、均衡では次の式が成り立ちます。
140813 (17)   (8)

 これを(7)式に代入すれば、
140813 (18)

 となります。両辺を s で微分します。
140813 (19)


140813 (20)
   (9)

 ∂k/∂s>0 です(貯蓄率が増えれば、資本ストックは増えるから)。 したがって、
1) f’(k)>(n+g+δ) のときは、(9)式はプラスです。貯蓄率が増加すると、均衡水準での消費も増加し、貯蓄率が減少すると、消費(均衡水準)も減少します(この問題の場合)。
2) f’(k)<(n+g+δ)のときは、(9)式はマイナスです。貯蓄率が増加すると、均衡水準での消費は減少し、貯蓄率が減少すると、消費(均衡水準)は増加します(この問題の場合)。

 以下の図は、消費水準が元の水準よりも低くなる場合( f’(k)>(n+g+δ) のとき)です。
14081306










   図6



④ 1人当たり所得
(これって、効率労働当たりの所得のまちがいではないですか? 効率労働当たりの所得なら上の f(k) です)。
1人当たりの所得は、均衡水準で一定の値になりません。1人当たりの所得を y(t) とすると、
140813 (21)

 両辺の対数をとると、
140813 (22)

140813 (23)

 均衡では f(k) は一定の値をとります。したがって、ln f(k(t)) は一定の値になります。一人当たりの所得は、g の割合で増加します(成長率 g)。1人当たりの所得の対数値を図で示せば、下のようになります( tは貯蓄率が下がった時点です)。
14081308










   図7



⑤ 効率労働当たり資本の成長率
 効率労働当たりの資本は、均衡では一定の値になります(図1参照)。(5)式が 0 になるということなので、その時の成長率は 0 です。(5)式、
140813 (8)
   (5)
 から、s が低下すると、k(t) がマイナスになるとわかります。したがって、s が低下した時点で、効率労働当たりの資本の成長率はマイナスになります。その後、0 に近づいていきます(新たな均衡に近づいていく)。
14081307








   図8



⑥ 1人当たり所得の成長率。
均衡(均斉成長路)では g です(図7参照)。貯蓄率が下がった時点で、低下し、再び g に近づいていきます。

⑦ 国全体の所得の成長率
 労働者全体(国全体)の所得を Y(t)と すると、
140813 (24)

 です。両辺の対数をとると、
140813(25)

140813(26)

 均衡では f(k(t)) は一定の値をとります。したがって、均衡では ln Y は g+n の割合で増加することになります。
14081309








   図9





 所得の成長率は、最初、g+n。貯蓄率が低下すると、低下し、再びg+nに近づいていきます。



プロフィール

沢ひかる

貧乏人。

経済学「部」とは無縁です。

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