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もし貧乏人が経済学を学んだら

2014年10月

クルーグマン、「アベノミクス沈む」

クルーグマンがブログ(10月28日)で日本について書いています。
"Notes on Japan"

その最後のほうにこういう文章があります。

When I see, say, the IMF inserting into its latest Japan survey (pdf) a section titled “Maintaining focus on fiscal sustainability” my heart sinks (and so, maybe, does Abenomics);

最近のIMFの報告書で、IMFが「日本は財政健全化にも傾注せよ」というセクションを入れているのを見ると、気分が沈んでしまうよ(もしかすると、アベノミクスも沈むかもね)

 日本では、この文章だけを見て、クルーグマンが「アベノミクスは失敗する」と言っている、と誤読する(あるいは意図的に誤読する)輩 が出てくるかもしれません。

 クルーグマンが言っているのは、まだデフレ圧力があるときに、あるいは経済が完全に回復していないときに(あるいは、消費税のショックから回復していないときに)、財政健全化を強調することは逆効果になる(再び日本をデフレに陥らせる、再び日本を景気後退に陥らせかねない)、ということです。

[インフレ期待はまあまあいい数値になっている、というところの次から部分訳]

しかし、日本が「小心の罠」に陥ってしまうのではないか、と僕は心配している。

消費税の影響は、多くの人の懸念が正しかったことを証明した。短期的な景気刺激策は、中期的な財政健全化の範囲内で行わなければならない、という考えは、一見すると正しいように思われる。しかし、[日本の消費税増税の例は]それが、実際、悲劇的な結果をもたらすと証明してくれた。アメリカの文脈で言うと、現在の経済を助ける努力が、将来の福祉国家という議論に巻き込まれて、結局、ほとんど効果を上げない、ということになる。こういう見方が当てはまらない場合でも、デフレ圧力が明らかにさしせまった危険になっているときに、財政健全化を主張することは、本来最も必要な政策から政策をそらし、むしろマイナスの影響をもたらすものになってしまいがちなんだ――ちょうど日本で[消費税増税後に]それが起こったように。最近のIMFの報告書でIMFが「日本は財政健全化にも傾注せよ」というセクションを入れているのを見ると、気分が沈んでしまうよ(もしかすると、アベノミクスも沈むかもね)。財政健全化に反対するのは難しい。しかし、現在の状況では、財政健全化に傾注することは、本当に必要な目標から目をそらすことになる。そして、日本には、そんなことをしている余裕はないんだよ。


マンキュー、「ルールに従うべきか、従わないべきか?」

Follow or Break the Rule?
http://gregmankiw.blogspot.jp/2014/09/follow-or-break-rule.html
 
マンキューの9月17日のブログの翻訳です。

更新:すでに himaginary さんの翻訳がありました。最近インターネットをあまり見ていなかったので、気づいていませんでした。以下は、Reis のコメントの翻訳だと思ってください。

**********
ルールに従うべきか、従わないべきか? Follow or Break the Rule?

ラース・クリステンセンが、僕が数年前に提唱したテイラールール(こちら、収録された本はこちら)の最新のデータを紹介している(下の図)。このルールは、アラン・グリーンスパンの1990年代の政策金利を近似するものとして提案したものだ。ラースが描いてくれたデータは以下のものだ。

mankiw-rule











このルール(グリーンのラインのもの)は、1990年代だけのデータにもとづいてつくったものだ。赤いラインは、パラメーターを後の期間のデータで修正したものだ(訳注)。

グラフの数字がプラスになったことだけを見ると、このルールに従えば、FEDはフェデラルファンドレート(政策金利)を上げる時期に来ている、ということになる。このルールが「大安定期」にも十分適応できると考えるなら、これは、FEDは、経済は定常状態に戻ったと考え、利上げを開始すべきだ、ということを意味するのだろうか?

答えは、そうかもしれない、しかし、必ずしも今ではない、というものだ。今日、このルールを解釈しようとすると、二つの問題に直面するからである。

第一の、そして、かなりはっきりとした問題は、ここ数年間、労働市場で奇妙なことが起こっている、ということである。失業率(このルールの式の右辺の項のひとつだ)が、労働市場のゆるみ(slack)を表す信頼できる指標になっていないようなのだ。

第二の、そして、より解釈が難しい問題は、やはりこの問題につきまとう「ゼロ下限」(zero lower bond)の問題だ。ここ数年間、このルールによると、目標金利は、かなり大きくマイナスの値にしなければならなかった。現在、そのマイナスの領域からは脱出したことになる。しかし、過去の「まちがい」(訳注 本来マイナスにすべきだが、できなかったこと)の影響を無視して、現在の金利を決めるべきなのだろうか。つまり、FEDは政策金利を、非常に長い間、「高すぎる」値にしてきた(マイナスではなくて、ゼロにしてきた、ということ)、したがって、その影響を補正するために、しばらくの間、金利を「低すぎる」値に設定すべきだ(つまり、ルールが示すプラスの値ではなくて、より長い間ゼロ金利を維持するべきだ)、という議論に説得力があるのである。そのような政策をうまく行うことで、FEDは、経済がゼロ下限に直面したら、長期金利をより大きく低下させるようとする。このような政策に従ったほうが、マイナスの領域を脱したからといって、ルールに従って、盲目的に金利を上げるよりも、より大きな経済の安定につながるだろう。

FEDが利上げする時期は、もうすぐやって来るのかもしれない。しかし、僕は、現在がその時だとは思わない。

更新: リカード・レイスが次のような有益な指摘をしてくれた。

過去の不足を補うために、現在、利上げすべきではない、というもうひとつの(関連する)議論があります。それは金利に関するものではありません。それは物価水準に関するものです。本来、金融政策の目標は、物価水準ですし、金融政策を評価する指標も、物価水準です。

個人消費支出(PCE)デフレーターを見ると、2%の物価水準目標に対して、明らかな不足があります。2%の物価水準目標は、グリーンスパンの時代には達成されていました。また、経済は、2008年の終わりまで、1992年を基準にした目標値に乗っていました。しかし、2009年から最新のデータまでで見ると、ギャップがあるのです。

物価水準目標政策は、定常状態では最適です(Ball, Mankiw, and Reis)、しかし、ゼロ下限の危険に対しても最適な政策なのです(Woodford)。現在、物価水準での不足分に追いつく必要があります。しかし、調査やマーケットからわかる期待インフレ率を見ると、キャッチアップに必要な上昇分が期待できないのです。これは金融政策が、依然として、引き締めすぎである、ということを示しています。



訳注:
ラース・クリステンセンのエントリーに対するマンキューの反論。クリステンセンが、マンキュー・ルールに従うと、FEDは利上げしなければいけないということを示している、と指摘し、だからマンキュー・ルールは最適ではない、と主張したのに対し、マンキューは、クリステンセンはルールを額面通りに解釈しすぎている(考慮しなければいけない問題がある)、と反論したわけです。ただし、両者とも、まだFEDが利上げする時期ではない、という結論に関しては同じです。

グリーンのライン:
フェデラルファンドレート = 8.5 + 1.4× (コアインフレ率 - 失業率)

赤いライン:
フェデラルファンドレート = 9.9 + 2.1× (コアインフレ率 - 失業率)

コアインフレ率(日本のコアコアCPIに当たる)は、個人消費支出(Personal Consumer Expenditure)。

プロフィール

沢ひかる

貧乏人。

経済学「部」とは無縁です。

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