M B K 48

もし貧乏人が経済学を学んだら

2015年04月

ピーター・A・ダイアモンドのココナッツ・モデル

   
 英語のwikipediaがとてもいいです(
こちら。以下はそのwilipediaにしたがって、まとめたものです)。モデルを単純化して、かなり詳しく説明しています。教科書にそのまま載っててもいいくらい。ただし、最後の式が違います。正しくは(この記事の最後に示しますが)、$V_{e}-V_{u}=(ey+fc)/(r+f+e)$. ピーター・A・ダイアモンド(Peter A. Diamond)の元の論文は、
"Aggregate Demand Management in Search Equilibrium" (1982)
です(このタイトルで検索すれば、pdfファイルが見つかると思います)。


ダイアアモンドのココナッツモデル
島の人はココナッツを取って生活している(実は、取らなくても生活できるんだけど)。ココナッツを取るには費用 c がかかるが、食べると効用 y が得られる。ただし、島には自分で取ったココナッツは食べてはいけないという掟がある。他の人とトレードして初めて(食べて)効用を得る。

 ココナッツの木を見つける確率は f 。ココナッツを持っている人に出会う確率は b とします。島の人口のうち、すでにココナッツを持っていて、交換相手を探して人の割合は e 。

 ココナッツ探しに参加する人が多いほど、ココナッツを持っている人に出会う確率は大きくなるはずだから、b はe の関数で、$b'(e)>0$ ( e による一階微分はプラス)と想定できます。e の増加にしたがって、b も増加するから。

 すでにココナッツを取り、ココナッツを持って、交換する相手を探している状態の価値を $V_{e}$ (添え字が e になっているのは、このモデルを雇用に当てはめると、雇用されている状態に当たるから)、ココナッツを持っていなくて、ココナッツの木(ヤシの木)を探している状態の価値を $V_{u}$ とします(添え字が u になっているのは、失業に当たるから)。その場合、それぞれ価値の割引現在価値は、次の式で表されます(この式の導き方はローマーの『上級マクロ経済学』を参照。モデルは違うものですが、9章、9.4節、509ページ)。

$rV_{e}= b(e) (y+V_{u}-V_{e})+\displaystyle \frac{dV_{e}}{dt}$   (1)
$rV_{u}= f (-E[c]+V_{e}-V_{u})+\displaystyle \frac{dV_{u}}{dt}$   (2)

ここで、r は主観的時間割引率です。c はココナッツを取るためのコストです。ここでは、その値は、現時点ではわからないことになっていて、期待値で表されています。

 ココナッツをすでに手に入れ、交換相手を探している人の時間変化は次の式で表されます。

$\displaystyle \dot{e}= f(1-e)-b(e)e    (\dot{e}=\frac{de}{dt})$      (3)

 右辺の第1項は、ココナッツの交換市場に入ってくる人の割合です(inflow)。ココナッツを入手しているの割合が e なので、1-e の人がココナッツを探しています。ココナッツの木(ヤシ)を見つける確率が f なので、f(1-e) の人がココナッツを見つけ、ココナッツの交換市場に入ってくるわけです。

 右辺第2項は、ココナッツの交換市場から退出する人の割合です。e の割合の人がココナッッツを持っていて、交換相手を探しています。そのうち $b(e)$ の割合(確率)の人が交換相手を見つけるので、$b(e)e$ の人が交換相手を見つけ、ココナッツを交換し、消費し、再びココナッツを探す状態(u)に戻っていきます。つまり、ココナッツの交換市場から退出するわけです。したがって、その右辺の第1項と第2項の差が、ココナッツを手に入れ、交換相手を探している人(ココナッツ市場にいる人。状態 e の人)の増加率になります。

 定常状態では、変数の変動が止まる点なので、$de/dt=0$ となります。$b(e)$ の例として、$b'(e)>0$ になればいいので、$b(e)=e$ という単純な関数を想定すると、(3)式は、

$\dot{e}= f(1-e)-e^{2}$    (4)

 となります。定常状態では、$de/dt=0$ なので、

$e^{2}+fe-f=0$

 が成り立つことになります。したがって、定常状態では、

$e^*= \displaystyle \frac{1}{2}(-f+\sqrt{f^{2}+4f })$

 の割合の人が、ココナッツの交換市場にいることになります。

 しかし、$de/dt=0$ となる、もうひとつの定常状態(均衡)があります。島の人が、他にココナッツを持っている人がいなくて、交換できる相手がいない、と思ってしまうと、誰もココナッツを取ろうとしません(コストだけを払うことになるから)。そうなると、ココナッツの交換市場に入ってくる人がいなくなるので、(4)式の右辺の第1項は 0 になります。その場合、(4)式は $de/dt=-e^2$ となり、定常状態( $de/dt=0$ )では、 e の値が $e^*=0$ となります。これは、ココナッツを取り、交換する人が 0 になることを意味します。誰もココナッツを取らない状態も定常状態(均衡)になるわけです。

 誰もココナッツを取ろうとしない状態は、定常状態(均衡)ですが、最適(パレート最適)ではありません。みんなでココナッツを取って、交換したほうが効用を高めることができるからです(パレート改善の余地がある)。

 通常、経済学では、市場にまかせておけば、最適な均衡に到達できる、と想定されています。しかし、このモデルは、市場にまかせておいても、最適な均衡には到達できない可能性があることを示しています。理由は、均衡が、個人の合理的な最適化(効用最大化)で決まる(これが通常の経済学の想定)だけではなくて、他の人の行動によって左右されるからです。みんなが、ココナッツを取るのはコストがかかるし、他にココナッツを持っている人はいないだろう、と思ってしまうと、ココナッツを取らないこと(それは最適ではないのに)が均衡になってしまうわけです。

 言葉を変えて言えば、経済の均衡は、ある部分、自己実現的である、ということです。みんなが、そうなるだろうと思うと、その予想が(望ましいものではなくても)実現してしまうわけです。

 これは、(1)式、(2)式を使っても、確かめることができます。定常状態では、$\displaystyle \frac{dV_{e}}{dt}=0$,$\displaystyle \frac{dV_{u}}{dt}=0$ になるので、

$rV_{e}= b(e) (y+V_{u}-V_{e})$   (5)

$rV_{u}= f (-c+V_{e}-V_{u})$   (6)

 となります(ここで、$E[c]=c$ としています。そうなる例としては、ヤシの木の高さは同じで、コストはどれも同じだとみんな思っている場合)。(5)式から(6)式を引いて、$V_{e}-V_{u}$ を求めます。

$r(V_{e}-V_{u})=b(e)y+fc-(b(e)+f)(V_{e}-V_{u})$

$V_{e}-V_{u}=\displaystyle \frac{b(e)y+fc}{r+f+b(e)}$

 $b(e)=e$ なら、$V_{e}-V_{u}$  は

$V_{e}-V_{u}=\displaystyle \frac{ey+fc}{r+f+e}$   (7)

 となります。$V_{e}-V_{u}$  がコスト c よりも大きくなければ、誰もココナッツをとろうとしません。したがって、みんながココナッツを探し、ココナッツを取り、交換を始める条件は、

$V_{e}-V_{u}=\displaystyle \frac{ey+fc}{r+f+e}>c$   (8)

 となります。ここで、$e=0$ の場合、つまり、誰もココナッツを取ろうとしない状態の場合、(7)式は、

$V_{e}-V_{u}=\displaystyle \frac{fc}{r+f}$

 となります。右辺は c より大きくなっています。

$(\displaystyle \frac{f}{r+f})c>c$

 $V_{e}-V_{u}$  がコスト c よりも大きい場合は、誰もココナッツをとろうとしないことになるので、これは $e=0$ となることと整合的です。したがって、$e^*=0$ (誰もココナッツを取ろうとしない状態)は、均衡になっているわけです。

 いっぽう、(8)式の条件から、ココナッツの交換が始まる条件は、 

$e>\displaystyle \frac{rc}{y-c}$

 となります。$b(e)=0$ と仮定していたので、元の $b(e)$ で表記すれば、その条件は、

$b(e)>\displaystyle \frac{rc}{y-c}$

 となります。政府が何か経済政策によって、$e^*=0$ ではなくて、人々がココナッツ市場に参加する「最適な」均衡が達成されるようにするには、(1)コスト c を補助し、c を下げる(上記の不等式の右辺は小さくなります)、(2)同じことですが、利益(効用) y に上乗せする、(3)スパルタ教育をし、忍耐力を鍛える(時間割引率rを下げることになるから)、(4)STAP細胞技術を支援し、人の首をキリンのように長くする、というような方法が考えられます。

マーシャル・I・スタインボーム、「アメリカが消費税を導入すべきでない4つの理由」

Marshall I.  Steinbaum, "The hottest tax idea in Washinton is actually terrible"
要約です。
ーーーーーーーーーー

消費税は、共和党も民主党も賛成する珍しい政策になっている。ビル・ゲイツも賛成している。彼らはみんなまちがっている。理由は主に次の4つ。

1.貯蓄をするのは金持ち
消費税が望ましいとされる理論的根拠は、貯蓄に課税するので(消費税なら、消費だけに課税されるので、貯蓄には課税されない)、倹約している人に不公平というものだ。しかし、貯蓄という道楽ができるのは、ほとんど金持だけだ。

納税しているアメリカ人の下位90%は、ネットで見て貯蓄0以下(貯蓄していても、住宅ローンなど、なんらかの債務をかかえている)。それに対して、所得上位1%の貯蓄率は37%。このような貯蓄の違いが、格差の原動力になっているのだから、貯蓄を課税から免除することになれば、金持ちに大きな減税をすることになる。だから、消費税導入は格差を広げる。

だったら、消費税に累進税率を導入すればいいじゃないか、という人がいる。ビル・ゲイツもそれに賛成している1人。これは非現実的な考えだ。そのビル・ゲイツを例にとってみよう。

ビル・ゲイツの2014年の資産は781億ドル(9.4兆円)。彼の年間所得は、その資産に対する4%のリターンだと想定してみよう。そして、消費額がわからないので、ワシントン州メダイナで資産価格1.475億ドル(177億円)の住宅(ビル・ゲイツの自宅のこと)を「毎年」買うことにする。それでも貯蓄率は96.2%になる。

ビル・ゲイツの所得税の限界税率が20%だと想定して(実際より低いが)、所得の3.7%に当たる消費に消費税で課税し、その所得税と同じ税額を得ようとすると、ビル・ゲイツの消費税率は430%(!!)でないといけない(←所得税率/3.7)。5ドルのビックマックを買うのに、26.47ドル(!!!)払わなければいないことになる

こんな高い消費税率は現実的に実施不能。だから、累進税率の消費税を採用しても、金持ちの税率を低くすれば、あるいは、累進税率を採用しなければ、消費税は、ビル・ゲイツのような金持ちに有利な税金になってしまう。

2.貯蓄を免税しても、社会全体の貯蓄は増えない
というデータがある。(こちらこちら(pdf))
そのように資本税や所得税を減税しても、結局、経済成長につながらず、政府から金持ちに所得移転することになるだけ。

3.資本蓄積は格差を広げる
消費税が経済成長にプラスの影響を与える根拠は、人々が貯蓄を増やすため、資本蓄積が進み、経済が成長し、労働者がより生産的になる(賃金も増える)、と想定されるから。しかし、ピケティの『21世紀の資本』が示しているように、資本ストックが増加すると、資本分配率(総資本所得の所得に対する割合)も増加する。そして、資本を所有している多くは金持ちなのだから、金持ちの所得が増え、格差が広がることになる。

資本が過剰になれば、追加の資本は無用になるので、資本所得は増加し続けない、と主張するなら、どうして消費税によって貯蓄を促し、資本が過剰(無用になる)になるまで資本を増やさなければいけないのか。そうではなくて、資本が不足している(現実はそうなっていないと思われるが)から、さらなる資本蓄積が必要だ、ということなら、資本所得は低下しないことになるから、格差が広がることになる。


4.経済は、実際、これ以上の貯蓄を欲していない
金融危機以後、多くの先進国の名目金利は、ゼロ付近になっている。この「ゼロ下限」と呼ばれる現象は、貯蓄が過剰であることを意味する。貯蓄が過剰で、行き場を失っている。これは、需要不足のためだ。需要のもっとも重要な構成要素は消費なのだから、消費により課税するのはまったく逆効果。


ローマー、『上級マクロ経済学』 4章220ページ「異時点間の1階の条件」の計算

 ローマーが書いていない部分の計算をしてみました。ただし、まだ途中です(かなり大変です)。完成したら(まだ先になると思いますが)更新します。

(1) (4.23)式の対数化

$\displaystyle \frac{1}{c_{t}}=e^{-\rho}E_{t}[\frac{1}{c_{t+1}}(1+r_{t+1})]$ 
  (4.23)

 両辺を対数化し(テイラー展開で1次まで近似)、定常状態の関係、つまり、$1=e^{-\rho}(1+r^*)$  を使うと(途中の計算は今回は省略。更新したときに書きます)、

$\displaystyle \tilde{C}_{t}-E_{t}[\tilde{C}_{t+1}]+\frac{r^*}{1+r^*}E_{t}[\tilde{r}_{t+1}]=0$   (1)

 が得られます。

(2) (4.4)式の対数化
$r_{t}=\displaystyle \alpha(\frac{A_{t} L_{t}}{K_{t}})^{1-\alpha}-\delta$
   (4.4)
 次の形に変えます。
$r_{t}+\displaystyle \delta=\alpha(\frac{A_{t} L_{t}}{K_{t}})^{1-\alpha}$

 両辺を対数化(テイラー展開で1次まで近似)、定常状態の関係を使えば、

$\displaystyle \frac{r^*}{r^*+\delta} \tilde{r}_{t}=(1-\alpha)(\tilde{A}_{t}+\tilde{L}_{t}-\tilde{K}_{t})$   (2)

 が得られます。この(2)式の $\tilde{r}_{t}$ を $\tilde{r}_{t+1}$ の式に変え( t を t+1 にする)、(1)式の $\tilde{r}_{t+1}$ に代入して、(1)式の  $\tilde{r}_{t+1}$ を消去します(残りの計算は省略)。

 計算していくと、$\tilde{K}_{t+1}$, $\tilde{C}_{t+1}$, $\tilde{L}_{t+1}$ のように、t+1 期の変数が出てきます。$\tilde{K}_{t+1}$ には、(4.52)式を代入し、$\tilde{C}_{t+1}$, $\tilde{L}_{t+1}$ には、(4.43)式と(4.44)式の t を t+1 に変え、代入します。そうすると、再び $\tilde{K}_{t+1}$ が出てくるので、そこに再び(4.52)式を代入します。

 $\tilde{A}_{t+1}$,$\tilde{G}_{t+1}$ を変換するには、(4.8)式、(4.11)式を使います。
$\tilde{A}_{t}=\rho_{A}\tilde{A}_{t-1}+\varepsilon_{A,t}$   (4.8)

$\tilde{G}_{t}=\rho_{G}\tilde{G}_{t-1}+\varepsilon_{G,t}$   (4.11)

 つまり、
$E_{t}[\tilde{A}_{t+1}]=\rho_{A}\tilde{A}_{t}$

$E_{t}[\tilde{G}_{t+1}]=\rho_{G}\tilde{G}_{t}$

 となるので、これを代入します。


(3)資本の動学方程式(4.2)式の対数化

$K_{t+1}=K_{t}+Y_{t}-C_{t}-G_{t}-\delta K_{t}$
$=(1-\delta)K_{t}+Y_{t}-C_{t}-G_{t}$
   (4.2)

 を対数化すると、

$\overline{K}\tilde{K}_{t+1}=(1-\delta)\overline{K}\tilde{K}_{t}+\overline{Y}\tilde{Y}_{t}-\overline{C}\tilde{C}_{t}-\overline{G}\tilde{G}_{t}$ 
  (3)

 が得られます。他の式の対数化の場合でも同様ですが、$X_{t}\simeq\overline{X}e^{\tilde{X}_{t}}$ (ここで、$\overline{X}$ は定常値。$\tilde{X}_{t}$  は定常値からのかい離値)という関係を使い、それを代入し、$e^{\tilde{X}_{t}}\simeq 1+\tilde{X}_{t}$  という近似を使うと便利です(場合に応じて、便利なほうを使う)。
 (3)式には、$\tilde{Y}_{t}$ があるので、$\tilde{Y}_{t}$ を消去しなければなりません。生産関数(4.1)式を使います。
$Y_{t}=K_{t}^{ \alpha}(A_{t}L_{t})^{1-\alpha}$   (4.1)
 この(4.1)式を対数化すると、

$\tilde{Y}_{t}=\alpha\tilde{K}_{t}+(1-\alpha)(\tilde{A}_{t}+\tilde{L}_{t})$

 が得られます。これを(3)式の $\tilde{Y}_{t}$ に代入し、$\tilde{Y}_{t}$ を消去します。この場合も、(3)式の左辺の $\tilde{K}_{t+1}$ に(4.52)式を代入します。

 導出される方程式は、上記の(1)、(2)から1つと、(3)から1つの2つ。$\tilde{K}_{t}$ ,$\tilde{A}_{t}$,$\tilde{G}_{t}$ の係数を比較します。
 9の未定係数( $a_{CK}$,$a_{CA}$,$a_{CG}$,$a_{LK}$,$a_{LA}$,$a_{LG}$,$b_{KK}$,$b_{KA}$,$b_{KG}$ )を含んだ9つの方程式が得られるので(そのうち3つは、ローマーが示している(4.48)式~(4.49)式)、その連立方程式を解いてその未定係数を求める、という手順になると思います(線形方程式ではないんですが、解けるんでしょうか・・・)。


まだ東京でフリードマンなんか信用して消耗してるの?――フリードマンのk%ルールなんていらない

 このタイトルは、高知の池田氏を意識していますが、東京で消耗している池田氏も意識しています。で、東京で消耗している池田氏は、かつてツイッターでこんなことをつぶやいています。

私は、リフレ派の自称エコノミストにはLjungqvist-SargentよりGali http://t.co/hnpA9shczT をおすすめしたいですね。読める人はほとんどいないと思うけど。https://twitter.com/ikedanob/status/371862848995344384


 東京で消耗している池田氏が Gali の本を読んでいるなら、同じ東京で消耗している池田氏の次のようなフリードマン評価(「フリードマンの敗北と勝利」、こちら)は不思議ですね。

 というのは、Gali の本の中では、貨幣供給を一定にするフリードマン的金融政策は、ニューケインジアンモデルが出てくる前の2章ですでに否定されているからです(はっきりそう書かれているわけではありませんが)。

(以下の記事のフリードマン・ルールは、「名目金利を0にする」というフリードマン・ルールではなくて、貨幣供給を一定にするのが望ましいという、k%ルールと呼ばれるものを想定しています。というのは、中央銀行が名目金利を0にする「フリードマン・ルール」を実行しようとすると、「貨幣量を調整しなければならない」からです。つまり、k%ルールに従わないことになる。)

(1)
 でも、フリードマンのk%ルール(貨幣成長率をk%にする、というように一定にするのが望ましい)は一部の人に信用されているようです。理由は、貨幣成長を「一定」にしているから「安定」するだろう、というように、「一定」と「安定」という「言葉」(概念)が結びつくからでしょう。しかし、単純なモデルから、これはまったく逆だと示すことができます。必要なのは、フィッシャー方程式と貨幣需要方程式だけ。

150401 (2)
   (1)
150401 (1)
   (2)


 フィッシャー方程式((1)式)が(対数化)近似されたものなので、貨幣需要方程式((2)式)も対数化します。
150401 (3)   (3)

 この(3)式の iにフィッシャー方程式を代入すれば、
150401 (4)

 πt+1=pt+1-pなので、

150401 (5)

 となります。整理すれば、

150401 (6)
   (5)
150401 (7)
   (6)

 この(6)式から、pはある一定の値に収束するとわかります( E[pt+1] の前の係数 η/(1+η)  が1より小さいから)。ショックは、需要ショック、技術ショック、コストプッシュショック(インフレショック)のどれでも、第3項 ηr-y の変化にあらわれます(ショックの種類によって変数は変わりますが)。ここで、中央銀行がショックを吸収するように、貨幣供給 mを変化させれば、ショックが pに波及する影響は軽減されます。しかし、フリードマンルールのように貨幣供給( m)を一定にしていると、ショックは、pの変化により直接的に影響を与えることになります。そのため、フリードマンルールに従っていると、一見すると、貨幣供給を一定の割合にしているので物価が安定するように思われますが、実は、物価をより大きく変動させることになるのです。

 pをインフレ率に変えても同じことが言えます。(6)式の期間tをひとつ前の期間にずらせば( t を t-1 に変える)、
150401 (8)

   (7)

 (6)式から、(7)式を引けば、
150401 (9)
   (8)

 となります。やはり、インフレ率はある一定の値に収束します( E[πt+1] の前の係数 η/(1+η)  が1より小さいから)。この場合も、ショックは第3項に現れます。そして、やはり中央銀行が貨幣供給を一定にしていると( Δm(貨幣量の変化)=0 かある一定の値)、ショックは直接的にインフレ率に影響を与えることになります(ここから先の計算は 注1)。

 Δm=0 のフリードマン的金融政策を行っていた場合と、テイラールール的な金融政策(Gali の21ページの例、 i=ρ+1.5π)を行っていた場合では、技術ショックに対するインフレ率の変化は、次のように異なったものになります。

friedman_rbc




 図1
 赤いライン
 Δm=0

 青いライン
 テイラールール






 フリードマンルールは、貨幣成長率を一定にするため、経済を安定させるものであるように思われますが、実は、より大きく経済を変動させるのです。クルーグマンは『クルーグマン教授の経済学入門』で、FRBが貨幣総量を固定するというフリードマン的金融政策に縛られなくなってからのほうが経済は安定している、と書いています(151ページ)。上の例から、これは理論的にも説明できるわけです。

(2)
 テイラールールは、名目金利を通して波及するので、名目金利が0付近にあるとき(流動性の罠に陥っているとき)には効果がなくなる、というのは、そのとおりです。しかし、名目金利が0付近になると(というよりも、一般的に、インフレ率をある一定の値に安定させる点で)、フリードマンルールは、テイラールール以上に無能さを露呈します。

 ある一定のインフレ率 π* に収束させるテイラールールは、
150401 (11)
   (9)
 となります(これが π* に収束することは 注2)。そして、このルールで貨幣供給がどのように変化しているかを計算すると((9)式を(3)式の貨幣需要式の iに代入し、(8)式を導出したのと同じ計算をする)、
150401 (12)
   (10)

 となります。この(10)式は、見方を変えれば、インフレ率を π* に収束させたいとき、中央銀行が行わなければならない貨幣供給の調整を表しています。ここで、インフレ率の目標値を0%、つまり π*=0 とし、前期1%だったインフレ率が、今期0%になったと想定してみます。つまり、πt-1=1% から π=0% になり、目標値が達成された。目標値が達成されたのだから、中央銀行は何もしなくていいように思われるかもしれません。しかし、(10)式に πt-1=1% と π=0% を代入すると、Δm=ηΦπ となります。つまり、(10)式は、貨幣供給を ηΦπ% 増やすことを命じています(代表的なパラメーター η=4,Φπ=1.5で、ηΦπ=6%)。なぜなら、ここで貨幣供給を増やさないと、インフレ率が目標値0%を通り過ぎて、そのままマイナスになってしまうからです。でも、中央銀行がフリードマンルールに従っていたら、貨幣供給を変化させないので、その目標は達成できません。目標を通り越して、そのままデフレに陥ります。

 つまり、最適な金融政策は貨幣量を調整するものなのです。ところが、フリードマンルールは貨幣量の調節を禁じています。フリードマンルールは、中央銀行が最適な金融政策を行うのを拘束するルールになってしまっているわけです。(ここで、貨幣量を調節するということは、ルールをころころかえることではありません。どっかの政党が言っているような「柔軟な金融政策」をすることではありません。)


注1)
 フリードマンルールを想定し、(8)式の Δmを0にすると、
150401 (10)
   (11)
   
 となります。
 ショックは第三項、ηΔr-Δy にあらわれます。ここでは、技術ショックを想定し、その項を計算します。以下、Gali の Monetary Policy, Inflation, and the Business Cycle の2章のモデルにしたがいます。技術ショックは、 次のようなAR(1)過程に従います。
150327 (3)
   (12)
  また、(12)式から、
150327 (4)
   
150327 (5)
   (13)
 が成り立ちます。(13)式の計算では、かく乱項の期待値は0になる(E[εt+1]=0)、という関係を使っています。
 ここで、消費をとおした個人の最適化から
150401 (14)
   (14)

 が成り立ちます。この(14)式から、
150401 (15) 
   (15)
 が得られます。産出量は、定常値(自然産出量、次の式の右辺の第2項)と技術変動による変動分に分解できるとします(Gali の本の2章の(18)式)。
150401 (16)
   (16)
 (16)式と(12)式を使って、E[Δyt+1] を計算すると
150401 (17)

 (13)式を使えば、
150401 (19)
   (17)
 となります。また、Δy を計算すると
150401 (20)
   (18)
 です。そこで、Δrを計算すると、
150401 (21)

 (15)式から、
150401 (22)

 (17)、(18)式を代入すれば、
150401 (23)

150401 (24)

 となります。続けて、ηΔr-Δyを計算すると、
150401 (25)

150401 (26)

150401 (27)

 これを(11)式に代入すれば、πが求まります。
150401 (28)


150401 (29)
   (19)
 上のインパルス応答で、インフレ率が大きく上下動したのは、at  とat-1 の前の係数が片方はプラス、片方はマイナスだからです。Gali のモデルのパラメータで計算すると、-Ψya[ση(2-ρ)+1] は -5.4 で、Ψya(1+ση) は 5 です。t 期に 1 のショックがあったとすると、まず、(12)式から、a=1,いっぽう at-1 は 0 なので、(19)式の下の部分(第2項と第3項)は -5.4 です。次に、t+1 期では、ショックは(12)式にしたがうので、(19)式の第2項は、0.9×(-5.4) で、-4.86 です。第3項は、Ψya(1+ση)a となるので、5 です。したがって、(19)式の下の部分(第2項と第3項)は1.6 になります。このように、-5.4 から 1.6 に変動しているため、図1のようにインフレ率がマイナスからプラスに大きく変動するわけです。

 図1を描くための残りの計算は、(12)式と(19)式をつかって、くりかえし再帰的に代入して、πを求めるか、(12)式と(19)式の連立方程式から、πを求めるかのどちらかの方法になります。後者の場合、コンピューターのプログラムを使えばかんたんにできますが、2×2行列なので、Blanchard and Kahn method にしたがって、手で計算してもできます。


注2)
 テイラールール
150401 (11)

 を、(1)式のフィッシャー方程式に代入します。
150401 (33)

 整理すれば、
150401 (34)



 となります。この式から πt+k を求め、再帰的に代入を繰り返していけば、
150401 (35)



 となります。
 

 

Gali, "Monetary Policiy" 4章 表4.1を計算するには(2):フリードマンルール編

  この節では、厚生損失関数(welfare loss function)にもとづいて、代表的な金融政策ルールを評価しています。

4.4.2 厚生損失関数によってフリードマンルール的な金融政策を評価する

(1)厚生損失関数
 基準とする厚生関数は前回のテイラールール的な金融政策を評価した場合と同じです。表4.1は、次の式で計算されています。
150330 (3)
    (1)


  表4.1の産出ギャップとインフレ率の標準偏差は、次の式で計算されています。
150330 (4)

   (2)

150330 (5)
   (3)

 (インフレ率のほうに4をかけているのは年率に換算するためです。)

 今回も、技術ショックを与えます。
150330 (17)   (4)

 4.4.1.2節、あるいは、前節の4.4.2節と同様に ρ=0.9 です。

 実は、これだけなら、3.4.2.2節の貨幣成長率一定(実際には成長率0)の金融政策を行っている状況で技術ショックを与えたケースと同じです。したがって、そのモデル(そのシミュレーションはすでにやりました)で上記の(1)式、(2)式、(3)式を計算すればいいだけです。

 しかし、今回は、貨幣需要ショックがある状況で、上記の技術ショックを与えるシミュレーションもするので、貨幣需要ショックがない場合は、両方できるようにしておいて(つまり、ショックを2つ想定する)、貨幣需要ショックをゼロにしたほうがかんたんです。

 で、例によって、その貨幣需要ショックをモデルにどのように与えるか、という説明はありません。

 貨幣需要ショック(の増減)が次のようなAR(1)過程に従うとすると、
150330 (16)   (5)


 現実のデータとの比較から、εζの標準偏差は 0.063 になる、と書いてあるので、正規分布にしたがう乱数を発生させ、εζを再現し(εζが平均0,標準偏差が 0.063 になるようにし)、(5)式の貨幣需要ショックを発生させた上で技術ショックを与えればいいでしょう。

(2)貨幣成長率一定の金融政策ルール
 3.4.2.2節と金融政策は同じなのですが、貨幣需要ショックを導入する必要があります。まず、市場での実質貨幣残高と貨幣需要との均衡を表す式は、
150329 (4)
   (6)
 です。右辺が貨幣需要を表していて、左辺は実質貨幣残高(real balance) です。つまり、 l= m-pです。これに(右辺に)に貨幣需要ショックが加わります。
150330 (15)
   (7)
 ζが貨幣需要ショックを表しています。ニューケインジアンのIS曲線やフィリップス曲線は、自然産出量 yからのかい離値 yを変数としているので、(7)式の yを yで書き換えたいです。
 まず、y は、産出量 yの、「自然産出量 y」からのかい離値なので、
150330 (8)

 です。yを表す式に変えれば、
150329 (10)
   (8)
 となります。次に、自然産出量 yt の、「自然産出量の定常値 y」からのかい離値を y^とすれば、
150329 (9)
  (9)

 と表せます。(8)式の yt に(9)式を代入すれば、 yt (産出量の水準値)は、
150329 (11)


 と表わせます。これを(6)式に代入すれば(しばらく、貨幣需要ショック ζを無視しておいて)、
150329 (12)
(10)

 となります。左辺の lも定常値からのかい離値で表したいです。lの定常値をlとすると、(10)式は、定常状態では、
150329 (13)
   (11)
 となります( y,y^は定常状態では0)。(10)式から(11)式を引けば、
150329 (24)
   (12)
 となります。今回のケースでは、これに(右辺の貨幣需要に)貨幣需要ショックが加わるので、
150330 (19)
   (13)

 となります。ここで、l^という変数を導入し、l^
150330 (20)
   (14)

 と定義すれば、(13)式は、
150330 (21)
   (15)

 と表せます(どうしてこういう変更をするかというと、貨幣需要ショックの変化が(5)式になるので、その(5)式にあわせて、ζを消去したいからです。が、そもそもどうして(5)式で、貨幣需要ショックを ζで表さないのかわからない。ショックで0[水準値で1]からの変化なのだから、 ζでいいでは、と思うのですが。ここは Gali の設定に盲目的にしたがっています)。
 そして、技術ショックを想定する場合は、毎回同じ変更をしますが、y^は、
150329 (25)


 です(48ページ、(18)式)。これを(11)式に代入すれば、
150330 (22)
   (16)

 となります。これで、貨幣需要を表す式の変更は終わりです。

 次に、3.4.2節の貨幣成長一定の金融政策のところで、実質貨幣残高 l= m-pの変化を表す式として、
150329 (7)

 を導出しました。今回のケースでは、貨幣供給ショックはないので、Δm=0 です。したがって、
150329 (22)
   (17)   
 となります。ただし、(16)式に合わせて、l^を l^に変更しなくてはいけません。(14)式の定義から、
150330 (24)


 となるので、これを(17)式に代入すれば、
150330 (25)

150330 (26)
 

150330 (27)
   (18)

 となります。

 残りの条件式は、基本的なニューケインジアンモデルと同じです。
150322 (16)
   (19)

 技術ショックを想定する場合は、毎回同じ変更をしますが、r(自然利子率)を aの式に変えます。r
150327 (6)

 と表されます(これの導出は、3.4.2.1節の説明を見てください)。これを(19)式の r^t に代入すれば、
150327 (8)
   (20)

 となります(これも、技術ショックを想定するときは、毎回同じですが)。ニューケインジアンのフィリップス曲線は、
150322 (12)   (21)

 です。これで方程式がそろいました。

(3) Generalized Schur Method / Blanchard Kahn Method
 上記の方程式を簡単なかたちに変えるために、Schur method  か Blanchard and Kahn method のどちらかで、計算します(具体的なプログラムの作り方は、Schur method はこちら / Blanchard and Kahn method はこちら)。
 解くべき方程式は、(4)、(5)、(16)、(18)、(20)、(21)式です。少し変形して再掲すれば、
150330 (17)

150330 (16)


150330 (28)

150330 (23)


150327 (10)

150322 (20)


  行列を使って表記すれば、
150330 (29)










150330 (30)










 となります。したがって、以下のプログラムで計算するときの行列 B,A,G は、

150330 (31)









150330 (32)








 です。パラメータ-の値は、σ=1,β=0.99,ρa=0.9,ρζ=0.6,Ψya=1,k=0.1275 です。以下のプログラムで計算すると、
C=       0.9               0.                  0.                0.         
              0.              0.6                 0.                0.        
       0.2166638    0.2092668    0.7039169  - 2.557D-16  
       1.665D-16    0.1384615    1.665D-16    8.944D-17
D=         1.                 0.        
               0.                 1.        
         0.2407376     0.3487780  
         1.388D-16      0.2307692  
N=  0.6833362  - 0.7631130  - 0.7039169    0  
        0.2166638  - 0.3907332  - 0.2960831    0
L=  0.7592624  - 1.2718549 
       0.2407376  - 0.6512220
 となります。上記の連立方程式の解は、xt+1=Cx+Dε,y=-Nx-Lεになるので、
= 0.9 at-1+ε
ζ= 0.6 ζt-1+εζ
= -0.6833362 at-1 +0.7631130 ζt-1+0.7039169 lt-1
        -0.7592624 ε+1.2718549 εζ
π= -0.2166638 at-1 +0.3907332 ζt-1+0.2960831 lt-1
         -0.2407376 ε+0.6512220 εζ
 と表すことができます( l,yの上についている ^, は省略しています。厚生損失の計算に必要なのは、yと πなので、yと πだけ表記しています)。


Scilab のコード(Generalized Schur method)

theta=2/3;
beta=0.99;
sigma=1;
rhoa=0.9;
rhoz=0.6;
alpha=1/3;
eps=6;
phi=1;
eta=4;
theta2=(1-alpha)/(1-alpha+alpha*eps);
lambda=(1-theta)*(1-beta*theta)*theta2/theta;
kap=lambda*(sigma+(phi+alpha)/(1-alpha));
psia=(1+phi)/(sigma*(1-alpha)+phi+alpha);

B=[1,0,0,0,0,0;
0,1,0,0,0,0;
0,-1,1,0,0,0;
-psia,0,1,eta,0,0;
-psia*(1-rhoa),0,0,-1/sigma,1,1/sigma;
0,0,0,0,0,beta];

A=[rhoa,0,0,0,0,0;
0,rhoz,0,0,0,0;
0,0,1,0,0,-1;
0,0,0,0,1,0;
0,0,0,0,1,0;
0,0,0,0,-kap,1];

G=[1,0;0,1;0,0;0,0;0,0;0,0];

[S,T,Z,dim] = schur(A,B,'d');

Q=(A+B)*Z*inv(S+T);

Z2=Z';
Z21=Z2(5:6,1:4);
Z22=Z2(5:6,5:6);

N=inv(Z22)*Z21;

Q2=Q';
Q21=Q2(5:6,1:4);
Q22=Q2(5:6,5:6);
S22=S(5:6,5:6);
G1=G(1:4,:);
G2=G(5:6,:);

L=inv(Z22)*inv(S22)*(Q21*G1+Q22*G2);

B11=B(1:4,1:4);
B12=B(1:4,5:6);
A11=A(1:4,1:4);
A12=A(1:4,5:6);

C=inv(B11-B12*N)*(A11-A12*N);
D=inv(B11-B12*N)*(G1-A12*L);


Scilab のコード(Blanchard and Kahn method)

theta=2/3;
beta=0.99;
sigma=1;
rhoa=0.9;
rhoz=0.6;
alpha=1/3;
eps=6;
phi=1;
eta=4;
theta2=(1-alpha)/(1-alpha+alpha*eps);
lambda=(1-theta)*(1-beta*theta)*theta2/theta;
kap=lambda*(sigma+(phi+alpha)/(1-alpha));
psia=(1+phi)/(sigma*(1-alpha)+phi+alpha);

B=[1,0,0,0,0,0;
0,1,0,0,0,0;
0,-1,1,0,0,0;
-psia,0,1,eta,0,0;
-psia*(1-rhoa),0,0,-1/sigma,1,1/sigma;
0,0,0,0,0,beta];

A=[rhoa,0,0,0,0,0;
0,rhoz,0,0,0,0;
0,0,1,0,0,-1;
0,0,0,0,1,0;
0,0,0,0,1,0;
0,0,0,0,-kap,1];

G=[1,0;0,1;0,0;0,0;0,0;0,0];


Z=inv(B)*A;
[R,D1]=spec(Z);
v1=spec(Z);
v2=[v1(1),v1(6),v1(2),v1(5),v1(3),v1(4)];
D2=diag(v2);
M=[R(:,1),R(:,6),R(:,2),R(:,5),R(:,3),R(:,4)];
M1=inv(M);
M11=M1(1:4,1:4);
M12=M1(1:4,5:6);
M21=M1(5:6,1:4);
M22=M1(5:6,5:6);
D11=D2(1:4,1:4);
D22=D2(5:6,5:6);

N=inv(M22)*M21;
C=inv(M11-M12*inv(M22)*M21)*D11*(M11-M12*inv(M22)*M21);

GG=inv(M)*inv(B)*G;
G1=GG(1:4,:);
G2=GG(5:6,:);

L=inv(M22)*inv(D22)*G2;

D=-inv(M11-M12*inv(M22)*M21)*(D11*M12*inv(M22)*inv(D22)*G2-G1);


(4) 貨幣需要ショックがない場合
 貨幣需要ショックがない場合は、上のコードに続けて(どちらでもいいです)、次のコードを実行します。ζをすべての期間で0にしておきます。技術ショックの大きさは、0.01 です( ε が1期のみ0.01増加する)。そして、(1)、(2)、(3)式の厚生損失、産出量ギャップの標準偏差σ(y)、インフレ率の標準偏差σ(π)を計算します。

n=100;
x=linspace(-1,98,n);
ea=zeros(1,n);
ez=zeros(1,n);
a=zeros(1,n);
z=a;
l=a;
i=a;
y=a;
pi=a;
ea(2)=0.01;

for t=1:n
a(t+1)=C(1,1)*a(t)+D(1,1)*ea(t+1);
z(t+1)=C(2,2)*z(t)+D(2,2)*ez(t+1);
l(t+1)=C(3,1)*a(t)+C(3,2)*z(t)+C(3,3)*l(t)+C(3,4)*i(t)+...
D(3,1)*ea(t+1)+D(3,2)*ez(t+1);
i(t+1)=C(4,1)*a(t)+C(4,2)*z(t)+C(4,3)*l(t)+C(4,4)*i(t)+...
D(4,1)*ea(t+1)+D(4,2)*ez(t+1);
y(t+1)=-N(1,1)*a(t)-N(1,2)*z(t)-N(1,3)*l(t)-N(1,4)*i(t)-...
L(1,1)*ea(t+1)-L(1,2)*ez(t+1);
pi(t+1)=-N(2,1)*a(t)-N(2,2)*z(t)-N(2,3)*l(t)-N(2,4)*i(t)-...
L(2,1)*ea(t+1)-L(2,2)*ez(t+1);

wlos(t)=((sigma+(phi+alpha)/(1-alpha))*y(t)^2+eps*pi(t)^2/lambda)/2;
end;

sum(wlos)

sqrt(sum(y.^2))

4*sqrt(sum(pi.^2))


 結果は、

welfare loss =0.0008461, σ(y)=0.0102146,
σ(π)=0.0125025

 となります。前節で計算したテイラールールのベンチマーク(Φy=0.5/4,Φπ=1.5)が、
welfare loss =0.0030423, σ(y)=0.0055693,
σ(π)=0.0260584
 なので、テイラールールよりもいい結果です。ただし、パラメーターを変えたより厚生損失が少ないテイラールール(Φy=0,Φπ=1.5 あるいは Φy=0,Φπ=5)よりは悪いです(そのシミュレーションはこちら


(5) 貨幣需要ショックがある場合
 貨幣需要ショックを導入するのですが、現実のデータとの比較から、εζ の標準偏差は 0.063 になる、ということですので、正規分布に従う乱数を発生させ、 εζ のデータをつくります。以下の計算では、100期間で計算するので(速く0に収束するので期間はもう少し短くてもいいと思います)、100期間の[Σ(εζ)]^0.5 が  0.063 になるようにします。そのためには、元の乱数の標準偏差を 0.063/10 = 0.0063 にすればいいことになります。平均 0、標準偏差 0.0063 の正規分布にしたがう乱数を発生させるScilab のコードは、
grand(1,n,'nor',0,0.00063)
です。これで、εζ のデータをつくります。
 その状態で、技術ショック 0.01 ( ε が1期のみ0.01増加する)を与えます。

n=100;
x=linspace(-1,98,n);
ea=zeros(1,n);
ez=grand(1,n,'nor',0,0.00063);
a=zeros(1,n);
z=a;
l=a;
i=a;
y=a;
pi=a;
ea(2)=0.01;

for t=1:n
a(t+1)=C(1,1)*a(t)+D(1,1)*ea(t+1);
z(t+1)=C(2,2)*z(t)+D(2,2)*ez(t+1);
l(t+1)=C(3,1)*a(t)+C(3,2)*z(t)+C(3,3)*l(t)+D(3,1)*ea(t+1)+D(3,2)*ez(t+1);
y(t+1)=-N(1,1)*a(t)-N(1,2)*z(t)-N(1,3)*l(t)-L(1,1)*ea(t+1)-L(1,2)*ez(t+1);
pi(t+1)=-N(2,1)*a(t)-N(2,2)*z(t)-N(2,3)*l(t)-L(2,1)*ea(t+1)-L(2,2)*ez(t+1);

wlos(t)=((sigma+(phi+alpha)/(1-alpha))*y(t)^2+eps*pi(t)^2/lambda)/2;
end;

sum(wlos)

sqrt(sum(y.^2))

4*sqrt(sum(pi.^2))

 乱数を発生させているので、毎回の計算でかなりばらつきがあります。そこで、上記の計算を10000回行い平均をとると、次の結果が得られます(それでも、小数点以下5桁ぐらいからばらつきが生じます。また、Gali の表4.1と少し差があります・・・なぜ? 表4.1では、welfare loss が 0.0038)。

welfare loss =0.0037137, σ(y)=0.0160749,
σ(π)=0.0273828


 今度は、テイラールールのベンチマーク(Φy=0.5/4,Φπ=1.5)よりも悪い結果になります。つまり、貨幣量を一定に保つフリードマンルール的金融政策は、貨幣需要の変動がなければ、更生損失が少ないのですが、貨幣需要の変動を想定すると(実際の経済には、もちろんあります)、更生損失が大きくなります。

 インフレ率は、貨幣需要の変化がない場合と、ある場合とで、このくらい差が出ます。

1(b)










赤いライン
welfare loss = 0.00374





 いっぽう、テイラールールは、貨幣需要の変動の影響を受けません。貨幣需要が変動すれば、貨幣量を変化させてそのショックを吸収するからです。これは、前節のモデルに、今回のような貨幣需要の変化と、実質貨幣残高=貨幣需要の方程式を加えてシミュレーションしても確認できます。

プロフィール

沢ひかる

貧乏人。

経済学「部」とは無縁です。

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