M B K 48

もし貧乏人が経済学を学んだら

2015年11月

京大経済院試 2014 第2問(マクロ)1 (2)

1. (2)

労働者を雇用し、生産活動を行う企業を考える。雇用量を$L$、賃金率を$w$で表す。労働者の努力水準$e$は賃金率$w$に依存しており、

$e=e(w),\hspace{5pt}e^{\prime}>0$


と表すことができる。この企業の生産水準は

$AF(e(w)L),\hspace{5pt}F^{\prime}>0,\hspace{5pt}F^{\prime\prime}<0$

によって決定される。ここで、$A$は生産性を表す正の定数である。この企業の利潤は

$\Pi=AF(e(w)L)-wL$   (1)

で表される。企業は雇用量と賃金率の双方を自由に選択できるものとするとき、企業によって設定される賃金が、生産性$A$とどのような関係にあるのか議論しなさい(最適点の周辺では $e^{\prime\prime}<0$ が成立しており、二階の条件は満たされているものとする)。


 企業は雇用量と賃金の両方を自由に選択できるので、(1)式を$L$, $w$で微分し1階の条件を求めると、

$\displaystyle \frac{\partial\Pi}{\partial L}=AF^{\prime}(e(w)L)e(w)-w=0$   (2)

$\displaystyle \frac{\partial\Pi}{\partial w}=AF^{\prime}(e(w)L)Le^{\prime}(w)-L=0$   (3)

 となります。(2)式から、

$AF^{\prime}(e(w)L)=\displaystyle \frac{w}{e(w)}$   (4)

 が得られます。また、(3)式から、

$AF^{\prime}(e(w)L)e^{\prime}(w)-1=0$   (5)

 が得られます。(4)式を(5)式の$AF^{\prime}(e(w)L)$に代入すれば、

$\displaystyle \frac{e^{\prime}(w)w}{e(w)}=1$   (6)

 となります。したがって、この(6)式から、生産性$A$は賃金$w$に影響を与えない、ということがわかります( (6)式に$A$が入ってないから)。(6)式は、努力水準$e(w)$の賃金$w$に対する弾力性が 1 になることを表わしています。つまり、企業は、努力水準$e(w)$の賃金$w$に対する弾力性が 1 になるように、生産性$A$とは関係なく賃金を決めることになります。 

ギボンズ(Gibbons) 『ゲーム理論』、練習問題 2.15

 前半部分は、sugiさんの解答にあります。
http://blog.livedoor.jp/sugi5_4/archives/36901819.html
 ですので、前半部分は簡単に、後半部分を中心に書きます。

(1)
 逆需要関数は $p=a-Q$ です。$Q$ は $n$ 企業の生産量の合計です。

$Q=q_{1}+q_{2}+\displaystyle \cdots+q_{i}+\cdots+q_{n}=\sum_{i=1}^{n}q_{i}$   (1)

 企業 $i$ の利潤は、

$\pi_{i}=[a-(q_{1}+q_{2}+\cdots+q_{i}+\cdots+q_{n})]q_{i}-cq_{i}$   (2)

 となります。ここで、(1)式の $n$ 企業の生産量の合計 $Q$ から、企業 $i$ の生産量 $q_{i}$ だけを引いた 、残りの $n-1$ の企業の生産量の合計を $q_{-i}$ と表記すれば、(2)式は、

$\pi_{i}=(a-c-q_{-i})q_{i}-q_{i}^{ 2}$

 と表わせます。利潤最大化する生産量は、

$q_{i}=\displaystyle \frac{a-c-q_{-i}}{2}$   (3)

 となります。(3)式の生産量をそれぞれの企業ごとに個別に記せば、

$q_{1}=\displaystyle \frac{a-c-(q_{2}+q_{3}+\cdots+q_{n})}{2}$
$q_{2}=\displaystyle \frac{a-c-(q_{1}+q_{3}+\cdots q_{n})}{2}$
$\vdots$
$q_{i}=\displaystyle \frac{a-c-(q_{1}+\cdots q_{i-1}+q_{i+1}+\cdots q_{n})}{2}$
$\vdots$
$q_{n}=\displaystyle \frac{a-c-(q_{1}+\cdots+q_{n-1})}{2}$

 となります。これらの式を足し合わせます。左辺は $n$ 企業の生産量の合計になります。右辺の分子の (・・・) の中には、$q_{1},q_{2},\displaystyle \cdots,q_{i},\displaystyle \cdots,q_{n}$ がそれぞれ $n-1$ 個あります。したがって、上記の式を足し合わせると、

$q_{1}+q_{2}+\displaystyle \cdots+q_{n}=\frac{n(a-c)-(n-1)(q_{1}+q_{2}+\cdots+q_{n})}{2}$

 となります。整理すれば、

$q_{1}+q_{2}+\displaystyle \cdots+q_{n}=\frac{n(a-c)}{n+1}$   (4)

 となります。対称的なナッシュ均衡では、$q_{1}=q_{2}=\cdots=q_{i}=\cdots=q_{n}$ となるので、ひとつの企業の生産量 (企業 $i$ の生産量 $q_{i}$) は、(4)式の $1/n$ になり (それを $q_{c}$ で表すと)、

$q_{c}=\displaystyle \frac{a-c}{n+1}$   (5)

 となります (この生産量はナッシュ均衡になっています)。利潤は (それを $\pi_{c}$ で表わすことにすると)、

$\displaystyle \pi_{c}=\frac{(a-c)^{2}}{(n+1)^{2}}$   (6)

 となります。

 次に、$n$ 企業が強調し、独占的な生産量を分け合った場合、$n$ 企業の利潤の合計は、$(a-c-Q)Q$ です。この利潤を最大化する生産量は、

$Q=\displaystyle \frac{a-c}{2}$   (7)

 です。この生産量を $n$ 企業で分け合うので、1つの企業の生産量は (それを $q_{m}$ で表わすと)

$q_{m}=\displaystyle \frac{a-c}{2n}$   (8)

 となります。利潤は (それを $\pi_{m}$ で表わすことにすると)、

$\displaystyle \pi_{m}=\frac{(a-c)^{2}}{4n}$   (9)

 となります。

 次に、他の $n-1$ の企業が上記の独占的生産量を生産するときに、1つの企業が逸脱し、利潤最大化する生産量を選んだ場合、その生産量は、他の $n-1$ 企業の生産量に対する最適反応になります。逸脱する企業が生産量 $q$ を選択した場合の利潤は、

$\displaystyle \pi=[a-c-(n-1)\frac{a-c}{2n}-q]q$   (10)

 です。この利潤を最大化する生産量は (それを $q_{d}$ で表わすと)、

$q_{d}=\displaystyle \frac{(n+1)}{4n}(a-c)$   (11)

 とります。利潤は (それを $\pi_{d}$ で表わすことにすると)、

$\displaystyle \pi_{d}=\frac{(n+1)^{2}}{16n^{2}}(a-c)^{2}$   (12)

 となります。

  そこで、この切り替え戦略がサブゲーム完全なナッシュ均衡になるための条件 (逸脱が行われないための条件) を求めると、

$\displaystyle \frac{1}{1-\delta}\pi_{m}\geq\pi_{d}+\frac{\delta}{1-\delta}\pi_{c}$   (13)

 となります。(6)式、(9)式、(12)式を代入すれば、

$\displaystyle \frac{1}{1-\delta}\frac{(a-c)^{2}}{4n}\geq\frac{(n+1)^{2}}{16n^{2}}(a-c)^{2}+\frac{\delta}{1-\delta}\frac{(a-c)^{2}}{(n+1)^{2}}$

 となります。整理すれば、

$\displaystyle \delta\geq\frac{(n+1)^{2}}{(n+1)^{2}+4n}$   (14)

 となります。これが、切り替え戦略が成立するための (切り替え戦略がサブゲーム完全なナッシュ均衡になるための) $\delta$ の条件です。


(2)
 上記の結果から、$\delta$ が(14)式を満たさない場合、(9)式の独占生産量 $q_{m}$ を生産する切り替え戦略は成立しません。

 しかし、逸脱する企業が選択する生産量は、他の $n-1$ 企業の生産量に対する最適反応です。そのため、他の企業は、(9)式の独占的生産量 $q_{m}$ とは異なる生産量を選択することで、逸脱する企業の利潤を変えることができます。上記の問題の場合、逸脱する企業は、他の企業が選択した独占的生産量 $q_{m}$ より大きな生産量を選ぶことで、より大きな利潤を得ます。そして、生産量 $q_{c}$ がナッシュ均衡になっているということは、他の企業が独占的生産量 $q_{m}$ より大きな生産量、つまり、 $q_{m}<q<q_{c}$ を選んだとしても、逸脱する企業は、再び他の企業の生産量よりも大きな生産量を選択することで、より大きな利潤を得ることができる、ということを意味します。

 しかし、他の $n-1$ 企業が独占的生産量 $q_{m}$ とは異なる生産量を選択すれば、逸脱する企業の生産量と利潤も変化させます。逸脱する企業の利潤が変化すれば、繰り返しゲームにおける、切り替え戦略が成立する条件も変わってきます(結論から言うと、他の企業は独占的生産量 $q_{m}$ より大きな生産量を選択することで、逸脱する企業の生産量を $q_{c}$ に近づけることになり、逸脱する企業の利潤を下げるので、切り替え戦略が成立するようになります)。そこで、以下、協調する企業が生産量 $q^{*}$ を選択した場合に、$\delta$ が(14)式を満たさない場合でも、切り替え戦略が成立するか、成立する場合には、その $q^{*}$ の値がどうなるかを調べます。

 $n$ 企業が $q^{*}$ の生産量を選択した場合の利潤は(それを $\pi^{*}$ で表すことにすると)、

$\pi^{*}=(a-c-nq^{*})q^{*}$   (15)

 です。次に、逸脱する企業が $q^{*}$ とは異なる生産量を選択する場合、その生産量は、$q^{*}$ に対する最適反応になります。逸脱する企業の利潤は、$[a-c-(n-1)q^{*}-q]q$ です。これを最大化する生産量は  (それを $q_{dev}$ で表すと)、

 $q_{dev}=\displaystyle \frac{a-c-(n-1)q^{*}}{2}$   (16)

 となります。その場合の利潤は (それを $\pi_{dev}$ で表わすことにすると)、

$\displaystyle \pi_{dev}=\frac{[a-c-(n-1)q^{*}]^{2}}{4}$   (17)

 となります。

 そこで、切り替え戦略が成立する条件を求めると、

$\displaystyle \frac{1}{1-\delta}\pi^{*}\geq\pi_{dev}+\frac{\delta}{1-\delta}\pi_{c}$

 となります。逸脱が起こった場合は、問題(1)の場合と同様に、すべての企業が $q_{c}$ を生産するので、右辺の第2項は、(13)式と同じです。$\pi^{*}$ に(15)式、$\pi_{dev}$ に(17)式を代入し、右辺の $\pi_{c}$ には(6)式を代入すれば、

$\displaystyle \frac{1}{1-\delta}(a-c-q^{*})q^{*}\geq\frac{[a-c-(n-1)q^{*}]^{2}}{4}+\frac{\delta}{1-\delta}\frac{(a-c)^{2}}{(n+1)^{2}}$

 となります。整理すれば、

$[(n+1)^{2}-(n-1)^{2}\delta]q^{*2}-2[n+1-(n-1)\delta](a-c)q^{*2}$

$+\displaystyle \frac{(n+1)^{2}-(n+3)(n-1)\delta}{(n+1)^{2}}(a-c)^{2}\leq 0$

 $\Leftrightarrow$

$\displaystyle \left\{[(n+1)^{2}-(n-1)^{2}\delta]q^{*}-\frac{(n+1)^{2}-(n+3)(n-1)\delta}{n+1}\right\}(q^{*}-\frac{a-c}{n+1})\leq 0$

 したがって、切り替え戦略が成立する $q^{*}$ の条件は、

$\displaystyle \frac{(n+1)^{2}-(n+3)(n-1)\delta}{(n+1)[(n+1)^{2}-(n-1)^{2}\delta]}\leq q^{*}\leq\frac{a-c}{n+1}$   (18)

 となります。以下、表記を簡潔にするために、(18)式の生産量の範囲の下限を $q_{-}$ としておきます。つまり、

$q_{-}\equiv\displaystyle \frac{(n+1)^{2}-(n+3)(n-1)\delta}{(n+1)[(n+1)^{2}-(n-1)^{2}\delta]}$

 です。一方、$\displaystyle \frac{a-c}{n+1}$ は、ナッシュ均衡となる、(5)式の $q_{c}$ です。それぞれの企業が同じ生産量 $q$ を生産した場合の利潤、つまり、$(a-c-nq)q$ (これは(15)式と同じ) を図で示すと、図1のようになります。
15




 図1





 利潤を最大化する生産量は、$\displaystyle \frac{a-c}{2n}$ です。これは、(8)式の $q_{m}$ です。しかし、この生産量を選択した場合、切り返し戦略は成立しません。切り返し戦略が成立する範囲の中で、つまり、(18)式の条件を満たす$q$ の中で利潤が最大になるものは、

$q_{-}=\displaystyle \frac{(n+1)^{2}-(n+3)(n-1)\delta}{(n+1)[(n+1)^{2}-(n-1)^{2}\delta]}$

 であることがわかります。

 

プロフィール

沢ひかる

貧乏人。

経済学「部」とは無縁です。

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