更新:6月6日、抜けている文章がありましたので追加しました。

Lars Christensen, "Mr. Kuroda, please "peg" inflation expectations to 2% now"

 クリステンセンの6月4日のブログの記事の翻訳です。
 「黒田総裁は、ゴルフでもしていればいい。」 やっぱり、そうですか? じゃあ、やはり黒田人形がますます必要になりますね・・・
  
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黒田総裁、今後インフレ期待を2%に「ペッグ」してください

 日銀の黒田総裁は、4月初めに15年にわたる不況から日本を脱出させる戦略を発表し、いいスタートを見せていた。円は弱くなり、日経平均株価は上昇し、多くの重要な期待インフレ率の指標も上昇し始めた。しかし、ここ2週間、黒田総裁の努力は、困難に直面している。日経平均は足踏みし、市場は、黒田総裁が日本の期待インフレ率を2%に上昇させるという約束を達成できないのではないか、と不安視しているようだ。

 ここ2週間で黒田総裁に対する信認が弱まっていることを確認する一番いい方法は、市場のインフレ期待を見ることだ。下のグラフは、日本の市場が予想する5年の期待インフレ率(訳注 5年ブレーク・イーブン・インフレ率)を示している。

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 このグラフが示していることは、はっきりしている。黒田総裁は、最初は期待インフレ率を押し上げるのに成功していた。しかし、このグラフは同様に、ここ2週間で期待インフレ率が急激に下がったことも示している。

 もし日経平均での売りの理由を探したかったら、このグラフだけを見ればよい。デフレを終わらせるという黒田総裁のやる気(コミットメント)に対して、市場が信用を失い始めてから、日経平均は下がっているのだ。

 私は、最近の日本の期待インフレ率の低下の主要な原因は、国債の金利が上昇し始めたときに、日銀がまずい対応をしたからだ、と思っている。
 つまり、黒田総裁自身を含む日銀の政策委員のコメントは、日銀が不可能なことを達成しようとしている、と示しているのだ。つまり、国債の名目金利を上げることなしに量的緩和するなんてことは不可能だ。そんなことをするから、日銀の目標に対してみんなを混乱させてしまう。そして、期待インフレ率を低下させることになっているわけだ。

 ミルトン・フリードマンを読んだことがある人なら誰でも、金融緩和をすれば、期待インフレ率が上がるにつれて、人々が国債の名目金利は上昇すると期待する、ということを知っている。実際、高い国債の名目金利は、将来のインフレ率に対する市場の期待が上昇したことを示す、非常にはっきりとした兆候である。

 もし日銀が国債の金利の上昇に懸念を示し続けるなら、日銀の日本をデフレから脱出させるという努力は、水の泡となるだろう。つまり、将来の量的緩和が国債の金利を低くしたままという条件で行われるなら、日本がデフレの中にとどまるのは必至である。

2%の期待インフレ率を固定為替レート政策と考えよ 
 従って、私は、日銀は国債の金利を憂慮するのはすぐに止めるべきで、その代わり、将来のインフレに対する市場の期待形成に100%集中するべきだと考えている。先週私は、黒田総裁が次の政策をそのまま発表するべきだと示した(以下の引用よりもう少し長いが)。

 期待インフレ率は上昇していますが、その値はどの期間で見ても、インフレ率2%の目標よりもかなり低いです。従って、私たちはもし必要なら、月ごとのマネタリーベースをさらに増加する準備ができています。私たちは、その必要性を、市場の将来の期待インフレ率に基づいて判断するつもりです。
 私たちは、特に、2年と5年のブレーク・イーブン・インフレ率をターゲットにしています。市場の期待が私たちのインフレ目標を反映するように、私たちが行動する、ということを市場関係者のかたにも理解してもらいたいと思います。つまり、期待インフレ率を2%にする、ということです。それ以上でも、それ以下でもありません。

 別の言い方をすれば、日銀は、市場が抱く将来のインフレ期待を2%に「ペッグ」すべきだ、ということである。これを考える一番いい方法は、インフレターゲットを固定為替レートのようなものとして考えてみることである。

 固定為替レートを採用している中央銀行が、その固定された為替レートを維持するために通貨を買ったり売ったりすると約束するように、日銀は、基本的に市場のインフレ期待がいつでも2%になるように、日本のインフレ連動国債を買ったり売ったりすると約束するべきである。

 これをAS-ADモデルで示してみよう(ピーター・ドーマン、これを見てるかい?)。最初、期待インフレ率が2%だったと想像しよう。そこで、総需要に負のショックがあったと想定しよう――例えば、日本の政府が財政支出を10%削減した、と想定しよう。これは、AD曲線を左にシフトさせる。
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 最初、負の総需要ショックは、期待インフレ率を2%以下に押し下げる(グラフのp’のレベルである)。しかし、日銀が固定為替レート流のインフレ目標政策を実行しているなら、市場の期待インフレ率の低下により、日銀がインフレ連動債を買い入れることになる。これは、もちろん、日本のマネタリーベースを自動的に増加させることになり、同時に期待インフレ率を2%に押し戻すだろう。

 これはまた、このような政策をしていれば、ここ2週間の日本の株式市場の変動など起こらなかっただろう、ということも意味している。

 実際、日銀は、市場のインフレ期待を2%に「ペッグ」するためにあらゆることをする、という政策を何度も繰り返し聞かせる以外には、市場とのコミュニケーションをとる必要はまったくない。この政策は、完全に自動的に行われるだろうから、黒田総裁は暇になった時間でゴルフを楽しむことができるだろう。実際、この政策が市場に信認されるようになるにつれて、日銀が買ったり売ったりする国債の量は、非常に少なくなるだろう。

 例えば、デンマーク中央銀行や香港の通貨当局のような信認された固定為替レートを採用している中央銀行が、実際にFX市場に介入することは、非常に少ない。なぜなら、市場の期待が、彼らの仕事を代わりにやってくれるからだ。同様に、日銀が、今私が示したことを宣言すれば、市場の将来のインフレ期待は、それに従って2%に上昇し、そこにとどまるだろう。最初は、日銀自身がマネタリーベースを増やして、その政策が信認されるようにしなければいけない。しかし、私は、将来の量的緩和の必要性は、急速に消えるのではないかと思う。

 また、このような金融政策は、上記のものとは異なる総需要に対するショックに対しても、そのまま移すことができる――中国の成長率の低下とか、ユーロ圏の新たな混乱とか、アメリカの量的緩和の縮小とか、世界的な金融の混乱とか、日本の緊縮財政とかにも対応できるだろう。

 黒田総裁、これは単純なことだ。あたなに対する信認の低下を止めるためにあなたがやらなければいけないことは、今すぐ期待インフレ率を2%に「ペッグ」することだ。待っている時間が長くなればなるほど、あなたが日本をデフレから脱出させる可能性も低くなるだろう。