1.6 
 ソロー・モデルに基づく均斉成長経路上にある経済を想定しよう。議論を単純にするため、技術進歩はないものとする。ここで、人口増加率が減少したと考えよう。
(a) 均斉成長路上にある労働者1人当たり資本、労働者1人当たり産出量および消費量はどうなるか。新しい均斉成長路に移行するにしたがって、これらの変数はどのような経路をたどるか。簡単な図で示せ。
(b) (1人当たりではなく)総産出量は人口増加率の減少によりどのような影響を受けるか。

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(a)
 k (効率労働1単位当たりの資本ストック)の動学 (dk/dt) を表す式は、技術進歩がない場合(つまり g = 0 の場合)、次の式になります(本書の1.18式)
140113 (1)
   (1.18)
 経済が均斉成長路にいるとき、k は一定の値になります。k( = dk/dt )= 0 となります。 したがって、均斉成長路における k を k* とすると
140113 (2)

 が成り立ちます。この式から k* は、sf(k)(貯蓄=投資)と (n+δ)k の交点で与えられるとわかります。
(n+δ)k は、k* を維持するために必要な資本の増加分を表していて、「平衡投資」 (break even investment) と呼ばれます。
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   図1




 人口増加率 n が減少すると、(n+δ)k の傾きが小さくなります。したがって、均斉成長路における k(=k* ) は増加します。
 (n+δ)k の傾きが小さくなったとき、当初効率労働当たりの資本ストックは k* のままです。したがって、貯蓄(=投資) sf(k) が、新たな平衡投資 (n+δ)k を上回ります。そのため資本ストックは増加していきます。より詳しい動学は27ページから説明されていますが、k の増加率は最初は大きく、その後だんだん少なくなっていきます。
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   図2


 効率労働当たりの産出量 y は f(k) なので、
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   図3



 消費は、c=(1-s)y なので、y の変化と同じような変化を辿ります。(注)

(b) 総産出量は効率労働当たりの産出量に労働者数をかけたものなので(この問題の場合、技術進歩は想定されていないのでAは考えなくてよい)。
140113 (3)

 対数値を時間で微分すると、変化率になります。総産出量Yの変化を見たいので、Yの対数値を時間で微分すると、
140113 (4)



 Y = Ly なので、
140113 (5)




140113 (6)


   (1)

 労働人口 L は n の増加率で増加すると想定されています。L(t) = L(0)exp(nt) です。したがって、L/L = n になります。均衡成長路では y は一定の値になるので、dy/dt = 0 です。
 (1)式から、総産出量は労働人口の増加率と同じ n の増加率で増加するとわかります(技術進歩を想定すると、n+g の増加率で増加します)。
 したがって、人口増加率 n が減少すると、Yの増加率も減少します。総産出量の変化は(Yの対数値で表すと)次のようになります。
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注) 27ページからの議論にしたがって図1、図2の変化を示すと次の図のようになります。

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 t = 0 で変化(s あるいは n,g)が起こり、産出量(消費)、資本ストックが増加する場合です。
 t > 0 のグラフは -exp(-λt)+2 (λ=0.4)です。31ページの数値例ではλ= 0.04 ですが見やすくするために 0.4 にしています。したがって、横軸の数値の単位は10年です。