質問をいただきました。だいぶ遅くなりましたが、解答例を書いておきます。

「ソロー・モデルとラムゼイ・モデルに関しての質問です。
ソロー・モデルにおいて、貯蓄率の低下が以下の経済変数にもたらす効果について、図を示しながら説明せよ。
1.①効率労働あたり投資、②効率労働あたり資本、③効率労働あたり消費、④一人あたり所得、各々の水準の変化と、新しい均衡水準。
2.⑤効率労働あたり資本の成長率、⑥一人あたり所得の成長率、⑦(国全体の)所得成長率、各々の変化と新しい均衡での成長率。」

 ローマーの『上級マクロ経済学』の31ページから、「1.4 貯蓄率の変化がもたらす影響」(こちらは貯蓄率の増加)の反対のパターンです。お持ちでしたら、その部分を参照するとヒントになると思います。


 知識(技術)の増加率を g、人口増加率を n とすると、知識と人口は次の式で表せます。A(0),L(0) は初期値です。
140813 (1)
   (1)
 資本の動学は、
140813 (2)
   (2)
 です。ここで、s:貯蓄率、δ:資本消耗率です。
 効率労働1人当たりの資本は、
140813 (3)

   (3)
 で表されます。
 (3)式の両辺を時間で微分すると、
140813 (4)



 (2)式、K(t) = sY(t)-δK(t) を代入すると、
140813 (5)



 (1)式から、A(t)/A(t)= g ,L(t)/L(t)= n なので、これを代入すれば、
140813 (6)


140813 (7)
   (4)
 したがって、
140813 (8)
   (5)
 sf(k(t))>(n+g+δ)k(t) のときは、(5)式はプラスです。したがって、効率労働当たりの資本ストックは増加します。逆に、sf(k(t))<(n+g+δ)k(t) のときは、(5)式はマイナスです。効率労働当たりの資本は減少します。
 したがって、k(t) は、sf(k(t))=(n+g+δ)k(t) となる k の値に収束します(下の図を参照)。以下、その値(均斉成長路での効率労働当たりの資本ストック)を kとします。

 ここで、貯蓄率 s が低下した場合、下の図のように、sf(k) は下にシフトします。
14081301










   図1



 kは左にシフトします(減少する)。

(上の質問では、効率労働当たりの投資から始まっていますが、資本の変化の説明から始めます。)

② 効率労働当たりの資本
 上の図のように、減少します。減少の割合は、最初が大きく、次第に減少の割合は減っていきます。その変化を時間を横軸にとって描けば、次の図のようになります。
14081303










  図2


 ローマーの『上級マクロ経済学』では、具体的な関数を求めています(29ページ)。

140813 (11)
 (この式の導出はこちらを参照してください。)
 ここで、λは、
140813 (13)

 です。

140813 (14)

 とすると、また、初期値 k(0)=2、均衡値=1 とすると、
140813 (15)
   (6)
 となります。これをグラフに描けば、次の図になります(時間の単位は10年です)。
14081302








   図3



 効率労働当たりの所得
 図1から、f(k) は、k の減少にしたがって減少するとわかります。14081304次の図のようになります。









 図4





 k(t) が(6)式の、k(t)=exp(-0.04t)+1 ならば、そして f(k)=kα (α=1/3)ならば、f(k)=(exp(-0.04t)+1)(1/3) です。

① 効率労働当たりの投資
 効率労働当たりの投資は sf(k) です。最初、s の低下だけ減少します。その後、f(k) の減少にしたがって減少していきます( f(k) の変化は、上の図4)。
14081305










   図5

 (図が正確ではありません。s<1 なので、図5は減少率が大きすぎるかもしれません。s<1なので、sf(k)の減少は、f(k)よりも小さくなります)。

 ③効率労働当たり消費
 均衡での消費を cとすると、
140813 (16)
   (7)
 です。最初、s が低下するので、消費は増加します。その後、f(k) の減少にしたがって、減少していきます。最初の均衡水準より、消費が高くなるか、低くなるかはこれだけではわかりません。

 どちらになるかは、次の手続きで調べます。
 (5)式から、均衡では次の式が成り立ちます。
140813 (17)   (8)

 これを(7)式に代入すれば、
140813 (18)

 となります。両辺を s で微分します。
140813 (19)


140813 (20)
   (9)

 ∂k/∂s>0 です(貯蓄率が増えれば、資本ストックは増えるから)。 したがって、
1) f’(k)>(n+g+δ) のときは、(9)式はプラスです。貯蓄率が増加すると、均衡水準での消費も増加し、貯蓄率が減少すると、消費(均衡水準)も減少します(この問題の場合)。
2) f’(k)<(n+g+δ)のときは、(9)式はマイナスです。貯蓄率が増加すると、均衡水準での消費は減少し、貯蓄率が減少すると、消費(均衡水準)は増加します(この問題の場合)。

 以下の図は、消費水準が元の水準よりも低くなる場合( f’(k)>(n+g+δ) のとき)です。
14081306










   図6



④ 1人当たり所得
(これって、効率労働当たりの所得のまちがいではないですか? 効率労働当たりの所得なら上の f(k) です)。
1人当たりの所得は、均衡水準で一定の値になりません。1人当たりの所得を y(t) とすると、
140813 (21)

 両辺の対数をとると、
140813 (22)

140813 (23)

 均衡では f(k) は一定の値をとります。したがって、ln f(k(t)) は一定の値になります。一人当たりの所得は、g の割合で増加します(成長率 g)。1人当たりの所得の対数値を図で示せば、下のようになります( tは貯蓄率が下がった時点です)。
14081308










   図7



⑤ 効率労働当たり資本の成長率
 効率労働当たりの資本は、均衡では一定の値になります(図1参照)。(5)式が 0 になるということなので、その時の成長率は 0 です。(5)式、
140813 (8)
   (5)
 から、s が低下すると、k(t) がマイナスになるとわかります。したがって、s が低下した時点で、効率労働当たりの資本の成長率はマイナスになります。その後、0 に近づいていきます(新たな均衡に近づいていく)。
14081307








   図8



⑥ 1人当たり所得の成長率。
均衡(均斉成長路)では g です(図7参照)。貯蓄率が下がった時点で、低下し、再び g に近づいていきます。

⑦ 国全体の所得の成長率
 労働者全体(国全体)の所得を Y(t)と すると、
140813 (24)

 です。両辺の対数をとると、
140813(25)

140813(26)

 均衡では f(k(t)) は一定の値をとります。したがって、均衡では ln Y は g+n の割合で増加することになります。
14081309








   図9





 所得の成長率は、最初、g+n。貯蓄率が低下すると、低下し、再びg+nに近づいていきます。