ソローモデル(Solow model)では、労働者1人当たり(あるいは効率労働1人当たり)の資本ストックの時間変化が重要です(これだけを計算すればいい! そこから、定常状態[均斉成長路]では1人当たりの資本ストックが一定になるという結論が得られます)。

労働者1人当たりの資本ストック(資本ストックを K、労働者数をLとすると)= K/L 。
あるいは技術進歩を想定すると、効率労働当たりの資本ストック(技術も加えた労働者1人当たり。前の変数に加えてAを技術・知識のレベルとすると)= K/(AL) 。

 以下、その計算をしてみます。技術進歩を想定した効率労働当たりで考えます(技術進歩を想定しない労働者1人当たりの場合は、A=1 にすればいい)。効率労働当たりの資本ストックを

$k=\displaystyle \frac{K}{AL}$   (1)

 とし、生産関数は、通常想定される性質を備えているものとします。$F(0)=0$, $ F^{\prime}(0)=\infty$, $F^{\prime}(\infty)=0$, $F^{\prime}(K)>0$, $F^{\prime\prime}(K)<0$. また、生産関数は一次同次とします(それぞれの生産要素をt倍すると、生産量もt倍になる)。

$F(tK,tL)=tF(K,L)$   

 したがって、効率労働当たりの生産関数($f(k)$)は、経済全体の生産関数を AL で割ったものと等しくなります。

$\displaystyle \frac{F(K,AL)}{AL}=F(\frac{K}{AL}, 1)=f(k)$   (2)


1 離散時間モデル
 
技術進歩、人口(労働者人口)の増加率をそれぞれ、g, n とすると、技術進歩の変化と労働者人口の変化は次の式で表されます。

$A_{t+1}=(1+g)A_{t}$   (3)

$L_{t+1}=(1+n)L_{t}$   (4)

 経済全体での資本の蓄積過程は次の式で表されます($\delta$ は資本消耗率です)。

$K_{t+1}=sF(K_{t}, A_{t}L_{t})+(1-\delta)K_{t}$   (5)

 効率労働当たりの資本ストックの時間変化を計算すればいいので、t+1期とt期での効率労働当たりの資本ストックの差($\Delta k_{t+1}$)を計算します。

$\Delta k_{t+1}=k_{t+1}-k_{t}$

$=\displaystyle \frac{K_{t+1}}{A_{t+1}L_{t+1}}-k_{t}$

 第一項に、(3) 式、(4) 式、(5) 式を代入すれば、

$=\displaystyle \frac{sF(K_{t}, A_{t}L_{t})+(1-\delta)K_{t}}{(1+g)A_{t}(1+n)L_{t}} - k_{t}$

$=\displaystyle \frac{K_{t+1}}{A_{t+1}L_{t+1}}-k_{t}$

$=\displaystyle \frac{sF(K_{t}, A_{t}L_{t})+(1-\delta)K_{t}}{(1+g)A_{t}(1+n)L_{t}} - k_{t}$

$=\displaystyle \frac{s}{(1+g)(1+n)} \frac{sF(K_{t}, A_{t}L_{t})}{A_{t}L_{t}} + \frac{1-\delta}{(1+g)(1+n)} \frac{K_{t}}{A_{t}L_{t}} - k_{t}$

 (1)式、(2)式から、

$=\displaystyle \frac{s}{(1+g)(1+n)} sf(k_{t}) + \frac{1-\delta}{(1+g)(1+n)} k_{t} - k_{t}$

$=\displaystyle \frac{sf(k_{t}) - (g+n+gn+\delta)k_{t}}{(1+g)(1+n)}$

 したがって、離散時間モデルでの効率労働当たりの時間変化を表す式は次の式になります。

$\displaystyle \Delta k_{t+1}=\frac{sf(k_{t}) - (g+n+gn+\delta)k_{t}}{(1+g)(1+n)}$   (5)

 定常状態(均斉成長路)では、$\Delta k_{t+1}=0$ になるので、定常状態での効率労働当たりの資本ストックを $k^{*}$ とすると、

 $sf(k^{*}) - (n+g+gn+\delta)k^{*}= 0$  (6)

 が得られます。
 生産関数 $f(k_{t})$ の性質($F(0)=0$, $ F^{\prime}(0)=\infty$, $F^{\prime}(\infty)=0$, $F^{\prime}(K)>0$, $F^{\prime\prime}(K)<0$)と $ (g+n+gn+\delta)k_{t}$が直線であることに留意して、$sf(k_{t})$ と $ (g+n+gn+\delta)k_{t}$ を別々に描けば、次の図になります。

15080301















 上の図で $k_{t}<k^{*}$ となる $k_{t}$ の範囲では、$sf(k_{t})$ が $ (g+n+gn+\delta)k_{t}$ より上になる、つまり、$sf(k_{t}) > (g+n+gn+\delta)k_{t}$ となります。したがって、(5)式の値がプラスになるので、 $k_{t}$ は増加します。上の図で $k_{t}>k^{*}$ となる $k_{t}$ の範囲では、$sf(k_{t})$ が $ (g+n+gn+\delta)k_{t}$ より下になる、つまり、$sf(k_{t}) < (g+n+gn+\delta)k_{t}$ となります。したがって、(5)式の値がマイナスになるので、 $k_{t}$ は減少します。

 $sf(k_{t})$ と $ (g+n+gn+\delta)k_{t}$ との交点( (6)式の解である、$k_{t}=k^{*}$ となるとき)が定常状態( $k_{t}$ の時間変化が止まる点)になります。


2 連続時間モデル
 連続時間モデルの場合、技術進歩、人口増加(労働者人口増加)は次の式で表されます。

$A(t) = A(0)e^{gt}$   (7) 

$ L(t) = L(0)e^{nt}$   (8)

 $A(0)$, $L(0)$ は初期値です。(7)式から、

$\displaystyle \frac{\dot{A}(t)}{A(t)} = \frac{gA(0)e^{gt}}{A(0)e^{gt}} = g$   (9)

 が成り立ちます。ここで、ドット(・)は、時間で微分することを表しています。同様に、$L(t)$ に関して、

$\displaystyle \frac{\dot{L}(t)}{L(t)} = n$   (10)

 が成り立ちます。
 連続時間モデルの場合、経済全体の資本の蓄積過程は次の式で表されます。

$\dot{K}(t) = sY(t) - \delta K(t)$   (11)

 ここで、$Y(t)=F(K(t), L(t))$ です。生産関数は一次同次なので、(2)式と同様に、

$\displaystyle \frac{Y(t)}{A(t) L(t)}=\frac{F(K(t),A(t) L(t))}{A(t)L(t)}=f(k(t))$   (12)

 が成り立ちます。
 離散時間モデルの場合と同様に、効率労働当たりの資本ストック $k(t)$ の時間変化を計算します。また、離散時間モデルと同様に、$k(t)=\frac{K(t)}{A(t)L(t)}$ です。連続時間モデルでは、$k(t)$ の時間変化は、$k(t)$ を時間tで微分することで得られます。そこで、$k(t)=\frac{K(t)}{A(t)L(t)}$ の両辺を時間tで微分します。

$\displaystyle \dot{k}(t) = \frac{\dot{K}(t)}{A(t)L(t)} - \frac{\dot{A}(t)L(t) +A(t)\dot{L(t)}}{[A(t)L(t)]^{2}} K(t)$

 $\dot{K}(t)$ に(11)式を代入すれば、
 
$= \displaystyle \frac{sY(t)-\delta K(t)}{A(t)L(t)} - (\frac{\dot{A}(t)}{A(t)}+\frac{\dot{L}(t)}{L(t)})\frac{K(t)}{A(t)L(t)}$

 $k(t)=\frac{K(t)}{A(t)L(t)}$ なので、また(9)式、(10)式から、

$= s\displaystyle \frac{Y(t)}{A(t)L(t)} - \delta k(t) - (g+n)k(t)$

 (12)式から、

$= sf(k(t)) - (\delta+g+n)k(t)$

 したがって、連続時間モデルでの効率労働当たりの時間変化を表す式は次の式になります。

$\dot{k}(t) = sf(k(t)) - (g+n+\delta)k(t)$   (13)

 定常状態(均斉成長路)では、$\dot{k}(t) = 0$ になるので、離散時間モデルと同様に定常状態での効率労働当たりの資本ストックを $k^{*}$ とすると、

  $sf(k^{*}) - (n+g+\delta)k^{*}= 0$   (14)

 が得られます。
 離散時間モデルの場合と同様に、$sf(k(t))$ と $ (g+n+\delta)k(t)$ を別々に描けば、次の図になります。以下は離散時間モデルと同じです。

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 上の図で $k(t)<k^{*}$ となる $k(t)$ の範囲では、$sf(k(t))$ が $ (g+n+\delta)k(t)$ が上になる、つまり、$sf(k(t)) > (g+n+\delta)k(t)$ となります。したがって、(13)式の値がプラスになるので、 $k(t)$ は増加します。上の図で $k(t)>k^{*}$ となる $k(t)$ の範囲では、$sf(k(t))$ が $ (g+n+\delta)k(t)$ より下になる、つまり、$sf(k(t)) < (g+n+\delta)k(t)$ となります。したがって、(13)式の値がマイナスになるので、 $k(t)$ は減少します。

 $sf(k(t))$ と $ (g+n+\delta)k(t)$ との交点( (14)式の解である、$k(t)=k^{*}$ となるとき)が定常状態( $k(t)$ の時間変化が止まる点)になります。