2.
代表的家計から構成される2期間モデルで考えよう。財は一種類のみである。代表的家計は、生涯効用を最大にするように各期間の消費を決定する。第1期の消費を $C_{1}$ で、第2期の消費を $C_{2}$ で表すと、代表的家計の効用は
$u(C_{1},C_{2})=\displaystyle \ln C_{1}+\frac{1}{1+\theta}\ln C_{2}, \hspace{10pt}\theta>0$   (1)
である。この家計は、第1期には $Y_{1}$ だけの所得を受け取り、消費するとともに、第2期の資本 $K$ を蓄積する。すなわち、
$Y_{1}=C_{1}+K$   (2)
である。第2期には、資本を投入して生産を行うが、生産に用いられた資本は $\delta$ の率で消耗する(資本消耗は $\delta K$ で与えられる)。代表的家計は、生産された財に加えて、残った資本も消費することができる。生産関数は
$F(K)=AK^{\alpha}, \hspace{10pt}0<\alpha<1$   (3)
であるとする。ここで、$A$ は生産性を表す正の定数である。
(1) 代表的家計の効用最大化のための1階条件を求めなさい。
(2) $\delta=1$ であるとし、最適消費 $C_{1}$ および $C_{1}$ を求めなさい。
(3) $\delta=1$ であるとし、$A$ の上昇が効用水準に与える影響を求めなさい。
(4) 政府を導入する。政府は、第2期の生産に $\tau\hspace{4pt}(0<\tau<1)$ の率で税を課すものとする。この課税によって得られた税収はすべて一括所得移転 $T$ として、第2期において家計に戻されるとしよう(すなわち、政府の予算制約は $T=\tau F(K)$ であるが、家計は $T$ を外生的とみなしている)。$\delta=1$ であるとし、税率 $\tau$ の上昇が資本蓄積に与える影響を求めなさい。
(1)
 第2期の予算制約式は、生産された財に加えて、残った資本も消費できるので、

$F(K)+(1-\delta)K=C_{2}$   (4)

 です。ラグランジュ方程式を次のように設定します。

$L\displaystyle \equiv\ln C_{1}+\frac{1}{1+\theta}\ln C_{2}+\lambda(Y_{1}-C_{1}-K)+\mu[F(K)+(1-\delta)K-C_{2}]$

 $C_{1}$,$C_{2}$,$K$ で偏微分し、1階の条件を求めると、

$\displaystyle \frac{\partial L}{\partial C_{1}}=\frac{1}{C_{1}}-\lambda=0$  (5)

$\displaystyle \frac{\partial L}{\partial C_{2}}=\frac{1}{(1+\theta)C_{2}}-\mu=0$  (6)

$\displaystyle \frac{\partial L}{\partial K}=-\lambda+\mu[F^{\prime}(K)+(1-\delta)]=0$  (7)

 (5)、(6)式から $\lambda$, $\mu$ を求め、(7)式に代入して、整理すれば、

$-\displaystyle \frac{1}{C_{1}}+\frac{F^{\prime}(K)+(1-\delta)}{(1+\theta)C_{2}}=0$

$\displaystyle \frac{C_{2}}{C_{1}}=\frac{F^{\prime}(K)+(1-\delta)}{1+\theta}$  (8)

 となります。


(2)
 $\delta=1$ なので、(8)式は、

$C_{1}=\displaystyle \frac{1+\theta}{F^{\prime}(K)}C_{2}$  (9)

 となります。また、(4)式から第2期の予算制約式は、

$C_{2}=F(K)$  (10)

 となります((4)式に $\delta=1$ を代入する)。また、$F^{\prime}(K)=\alpha AK^{-(1-\alpha)}$ です。この2式を(9)式に代入すれば、

$C_{1}=\displaystyle \frac{(1+\theta)AK^{\alpha}}{\alpha AK^{-(1-\alpha)}}=\frac{1+\theta}{\alpha}K$  (11)

 を得ます。これを(2)式の第1期の予算制約式に代入すれば、

$Y_{1}=\displaystyle \frac{1+\theta}{\alpha}K+K=\frac{\alpha(1+\theta)}{\alpha}K$

 となります。この式から $K$ を求めれば、
$K=\displaystyle \frac{\alpha}{\alpha+(1+\theta)}Y_{1}$  (12)

 です。(12)式を(11)式に代入すれば、最適消費 $C_{1}$ が求まります。

$C_{1}=\displaystyle \frac{1+\theta}{\alpha+(1+\theta)}Y_{1}$  (13)

 最適消費 $C_{2}$ は、(10)式から $C_{2}=F(K)=AK^{\alpha}$ なので($AK^{\alpha}$ の $K$ に(12)式を代入すれば)、

$C_{2}=F(K)=AK^{\alpha}=A\left[\frac{(1+\theta)Y_{1}}{\alpha+(1+\theta)}\right]^{\alpha}$   (14)

 となります。


(3) 
 (14)式から、$A$ の変化は第1期の消費 $C_{1}$ に影響を与えません(注1)。(14)式から、$A$ が増加すると、第2期の消費は $C_{1}$ 増加します。したがって、$A$ が増加すると、代表的個人の生涯効用は増加します。


(4)
 税の導入によって、第2期の予算制約式が変わります。

$(1-\tau)F(K)+(1-\delta)K+T=C_{2}$

 $\delta=1$ なので

$(1-\tau)F(K)+T=C_{2}$   (15)

 です。第1期の予算制約式は税がない場合と同じです((2)式)。ラグランジュ方程式を次のように設定します。

$L\displaystyle \equiv\ln C_{1}+\frac{1}{1+\theta}\ln C_{2}+\lambda(Y_{1}-C_{1}-K)+\mu[(1-\tau)F(K)+T-C_{2}]$

 $C_{1}$,$C_{2}$,$K$ で偏微分し、1階の条件を求めると($C_{1}$,$C_{1}$ に関する条件は問題(1)と同じです)、

$\displaystyle \frac{\partial L}{\partial C_{1}}=\frac{1}{C_{1}}-\lambda=0$  (5)

$\displaystyle \frac{\partial L}{\partial C_{2}}=\frac{1}{(1+\theta)C_{2}}-\mu=0$  (6)

$\displaystyle \frac{\partial L}{\partial K}=-\lambda+\mu(1-\tau)F^{\prime}(K)=0$  (16)

 (5)、(6)式から $\lambda$, $\mu$ を求め、(16)式に代入して、整理すれば、

$\displaystyle \frac{C_{2}}{C_{1}}=\frac{(1-\tau)F^{\prime}(K)}{1+\theta}$

$C_{1}=\displaystyle \frac{1+\theta}{(1-\tau)F^{\prime}(K)}C_{2}$

 (15)式を $C_{2}$ に代入すれば、

$C_{1}=\displaystyle \frac{(1+\theta)[(1-\tau)F(K)+T]}{(1-\tau)F^{\prime}(K)}$

 となります。これを(2)式の第1期の予算制約式に代入します。

$Y_{1}=\displaystyle \frac{(1+\theta)[(1-\tau)F(K)+T]}{(1-\tau)F^{\prime}(K)}+K$

$=\displaystyle \frac{(1+\theta)[(1-\tau)F(K)+T]+(1-\tau)F^{\prime}(K)K}{(1-\tau)F^{\prime}(K)}$

 $T=\tau F(K)$ なので(注2)、

$Y_{1}=\displaystyle \frac{(1+\theta)F(K)+(1-\tau)F^{\prime}(K)K}{(1-\tau)F^{\prime}(K)}$

 $F(K)=AK^{\alpha}$,$F^{\prime}(K)=\alpha AK^{-(1-\alpha)}$ をそれぞれ代入すれば、

$Y_{1}=\displaystyle \frac{(1+\theta)AK^{\alpha}+(1-\tau)\alpha AK^{\alpha}}{(1-\tau)\alpha AK^{-(1-\alpha)}}$

$=\displaystyle \frac{(1+\theta)+(1-\tau)\alpha}{(1-\tau)\alpha}K$

 この式から $K$ を求めれば、

$K=\displaystyle \frac{(1-\tau)\alpha}{(1+\theta)+(1-\tau)\alpha}Y_{1}$  (17)

 となります。(17)式は $\tau$ の減少関数なので、税率 $\tau$ が増加すると、資本蓄積 $K$ は減少します。



注1)これは、効用関数が対数型であるためです(別の効用関数に変えて計算してみるとわかります)。$A$ が増加すれば、生産の増加に伴う第2期の所得が増加するので、第1期の消費を減らし、$K$ を増加させれば、生涯効用を高めることができます(代替効果)。しかし、第2期の所得が増加すれば、生涯を通した所得が増加するので、第1期の消費を増加させれば、生涯効用を高めることができます(所得効果)。対数型効用関数では、この代替効果と所得効果がお互いに相殺するので、$A$ の増加は、第1期の消費に影響を与えません。

注2)$T$ が代表的個人にとって外生的である、というのは、代表的個人が効用最大化するときに外生的とみなしていればいいので、つまり、1階の条件を求めるときに、外生的とみなしていればいいので、ここで $T$ に $\tau F(K)$ を代入するのは問題ないと思います。というか、そうしないと答えが求まりません・・・