M B K 48

もし貧乏人が経済学を学んだら

ソローモデル

ソローモデルのキモ(離散時間モデル・連続時間モデル)

 
ソローモデル(Solow model)では、労働者1人当たり(あるいは効率労働1人当たり)の資本ストックの時間変化が重要です(これだけを計算すればいい! そこから、定常状態[均斉成長路]では1人当たりの資本ストックが一定になるという結論が得られます)。

労働者1人当たりの資本ストック(資本ストックを K、労働者数をLとすると)= K/L 。
あるいは技術進歩を想定すると、効率労働当たりの資本ストック(技術も加えた労働者1人当たり。前の変数に加えてAを技術・知識のレベルとすると)= K/(AL) 。

 以下、その計算をしてみます。技術進歩を想定した効率労働当たりで考えます(技術進歩を想定しない労働者1人当たりの場合は、A=1 にすればいい)。効率労働当たりの資本ストックを

$k=\displaystyle \frac{K}{AL}$   (1)

 とし、生産関数は、通常想定される性質を備えているものとします。$F(0)=0$, $ F^{\prime}(0)=\infty$, $F^{\prime}(\infty)=0$, $F^{\prime}(K)>0$, $F^{\prime\prime}(K)<0$. また、生産関数は一次同次とします(それぞれの生産要素をt倍すると、生産量もt倍になる)。

$F(tK,tL)=tF(K,L)$   

 したがって、効率労働当たりの生産関数($f(k)$)は、経済全体の生産関数を AL で割ったものと等しくなります。

$\displaystyle \frac{F(K,AL)}{AL}=F(\frac{K}{AL}, 1)=f(k)$   (2)


1 離散時間モデル
 
技術進歩、人口(労働者人口)の増加率をそれぞれ、g, n とすると、技術進歩の変化と労働者人口の変化は次の式で表されます。

$A_{t+1}=(1+g)A_{t}$   (3)

$L_{t+1}=(1+n)L_{t}$   (4)

 経済全体での資本の蓄積過程は次の式で表されます($\delta$ は資本消耗率です)。

$K_{t+1}=sF(K_{t}, A_{t}L_{t})+(1-\delta)K_{t}$   (5)

 効率労働当たりの資本ストックの時間変化を計算すればいいので、t+1期とt期での効率労働当たりの資本ストックの差($\Delta k_{t+1}$)を計算します。

$\Delta k_{t+1}=k_{t+1}-k_{t}$

$=\displaystyle \frac{K_{t+1}}{A_{t+1}L_{t+1}}-k_{t}$

 第一項に、(3) 式、(4) 式、(5) 式を代入すれば、

$=\displaystyle \frac{sF(K_{t}, A_{t}L_{t})+(1-\delta)K_{t}}{(1+g)A_{t}(1+n)L_{t}} - k_{t}$

$=\displaystyle \frac{K_{t+1}}{A_{t+1}L_{t+1}}-k_{t}$

$=\displaystyle \frac{sF(K_{t}, A_{t}L_{t})+(1-\delta)K_{t}}{(1+g)A_{t}(1+n)L_{t}} - k_{t}$

$=\displaystyle \frac{s}{(1+g)(1+n)} \frac{sF(K_{t}, A_{t}L_{t})}{A_{t}L_{t}} + \frac{1-\delta}{(1+g)(1+n)} \frac{K_{t}}{A_{t}L_{t}} - k_{t}$

 (1)式、(2)式から、

$=\displaystyle \frac{s}{(1+g)(1+n)} sf(k_{t}) + \frac{1-\delta}{(1+g)(1+n)} k_{t} - k_{t}$

$=\displaystyle \frac{sf(k_{t}) - (g+n+gn+\delta)k_{t}}{(1+g)(1+n)}$

 したがって、離散時間モデルでの効率労働当たりの時間変化を表す式は次の式になります。

$\displaystyle \Delta k_{t+1}=\frac{sf(k_{t}) - (g+n+gn+\delta)k_{t}}{(1+g)(1+n)}$   (5)

 定常状態(均斉成長路)では、$\Delta k_{t+1}=0$ になるので、定常状態での効率労働当たりの資本ストックを $k^{*}$ とすると、

 $sf(k^{*}) - (n+g+gn+\delta)k^{*}= 0$  (6)

 が得られます。
 生産関数 $f(k_{t})$ の性質($F(0)=0$, $ F^{\prime}(0)=\infty$, $F^{\prime}(\infty)=0$, $F^{\prime}(K)>0$, $F^{\prime\prime}(K)<0$)と $ (g+n+gn+\delta)k_{t}$が直線であることに留意して、$sf(k_{t})$ と $ (g+n+gn+\delta)k_{t}$ を別々に描けば、次の図になります。

15080301















 上の図で $k_{t}<k^{*}$ となる $k_{t}$ の範囲では、$sf(k_{t})$ が $ (g+n+gn+\delta)k_{t}$ より上になる、つまり、$sf(k_{t}) > (g+n+gn+\delta)k_{t}$ となります。したがって、(5)式の値がプラスになるので、 $k_{t}$ は増加します。上の図で $k_{t}>k^{*}$ となる $k_{t}$ の範囲では、$sf(k_{t})$ が $ (g+n+gn+\delta)k_{t}$ より下になる、つまり、$sf(k_{t}) < (g+n+gn+\delta)k_{t}$ となります。したがって、(5)式の値がマイナスになるので、 $k_{t}$ は減少します。

 $sf(k_{t})$ と $ (g+n+gn+\delta)k_{t}$ との交点( (6)式の解である、$k_{t}=k^{*}$ となるとき)が定常状態( $k_{t}$ の時間変化が止まる点)になります。


2 連続時間モデル
 連続時間モデルの場合、技術進歩、人口増加(労働者人口増加)は次の式で表されます。

$A(t) = A(0)e^{gt}$   (7) 

$ L(t) = L(0)e^{nt}$   (8)

 $A(0)$, $L(0)$ は初期値です。(7)式から、

$\displaystyle \frac{\dot{A}(t)}{A(t)} = \frac{gA(0)e^{gt}}{A(0)e^{gt}} = g$   (9)

 が成り立ちます。ここで、ドット(・)は、時間で微分することを表しています。同様に、$L(t)$ に関して、

$\displaystyle \frac{\dot{L}(t)}{L(t)} = n$   (10)

 が成り立ちます。
 連続時間モデルの場合、経済全体の資本の蓄積過程は次の式で表されます。

$\dot{K}(t) = sY(t) - \delta K(t)$   (11)

 ここで、$Y(t)=F(K(t), L(t))$ です。生産関数は一次同次なので、(2)式と同様に、

$\displaystyle \frac{Y(t)}{A(t) L(t)}=\frac{F(K(t),A(t) L(t))}{A(t)L(t)}=f(k(t))$   (12)

 が成り立ちます。
 離散時間モデルの場合と同様に、効率労働当たりの資本ストック $k(t)$ の時間変化を計算します。また、離散時間モデルと同様に、$k(t)=\frac{K(t)}{A(t)L(t)}$ です。連続時間モデルでは、$k(t)$ の時間変化は、$k(t)$ を時間tで微分することで得られます。そこで、$k(t)=\frac{K(t)}{A(t)L(t)}$ の両辺を時間tで微分します。

$\displaystyle \dot{k}(t) = \frac{\dot{K}(t)}{A(t)L(t)} - \frac{\dot{A}(t)L(t) +A(t)\dot{L(t)}}{[A(t)L(t)]^{2}} K(t)$

 $\dot{K}(t)$ に(11)式を代入すれば、
 
$= \displaystyle \frac{sY(t)-\delta K(t)}{A(t)L(t)} - (\frac{\dot{A}(t)}{A(t)}+\frac{\dot{L}(t)}{L(t)})\frac{K(t)}{A(t)L(t)}$

 $k(t)=\frac{K(t)}{A(t)L(t)}$ なので、また(9)式、(10)式から、

$= s\displaystyle \frac{Y(t)}{A(t)L(t)} - \delta k(t) - (g+n)k(t)$

 (12)式から、

$= sf(k(t)) - (\delta+g+n)k(t)$

 したがって、連続時間モデルでの効率労働当たりの時間変化を表す式は次の式になります。

$\dot{k}(t) = sf(k(t)) - (g+n+\delta)k(t)$   (13)

 定常状態(均斉成長路)では、$\dot{k}(t) = 0$ になるので、離散時間モデルと同様に定常状態での効率労働当たりの資本ストックを $k^{*}$ とすると、

  $sf(k^{*}) - (n+g+\delta)k^{*}= 0$   (14)

 が得られます。
 離散時間モデルの場合と同様に、$sf(k(t))$ と $ (g+n+\delta)k(t)$ を別々に描けば、次の図になります。以下は離散時間モデルと同じです。

15080302















 上の図で $k(t)<k^{*}$ となる $k(t)$ の範囲では、$sf(k(t))$ が $ (g+n+\delta)k(t)$ が上になる、つまり、$sf(k(t)) > (g+n+\delta)k(t)$ となります。したがって、(13)式の値がプラスになるので、 $k(t)$ は増加します。上の図で $k(t)>k^{*}$ となる $k(t)$ の範囲では、$sf(k(t))$ が $ (g+n+\delta)k(t)$ より下になる、つまり、$sf(k(t)) < (g+n+\delta)k(t)$ となります。したがって、(13)式の値がマイナスになるので、 $k(t)$ は減少します。

 $sf(k(t))$ と $ (g+n+\delta)k(t)$ との交点( (14)式の解である、$k(t)=k^{*}$ となるとき)が定常状態( $k(t)$ の時間変化が止まる点)になります。




ピケティの r>g をソローモデルで考えてみた(2): 付録(ラムゼイモデル・モドキ)

 ピケティは、「ソローモデルはあまりいいモデルではない」と語っています(日経ビジネスのインタビュー)。私もまったく同感です。そこで、ピケティの r>g をソローモデルで考えてみました。以前にも「ピケティの r>g をソローモデルで考えてみた」という記事を書いていますので、第二弾になります(前回の記事はこちら)。

 ピケティは、ソローモデルの欠点として、資本をひとつしか想定しておらず、「資本の中身を分けていない(例えば、土地、住宅、工場など)」ということを挙げていますが、それ以外に意識していると思われるのは、ソローモデルでは定常状態において r=g となり、ピケティの主張する r>g が支持されない、ということかもしれません( r は資本の収益率(資本からのリターン)、g は経済成長率)。

 しかし、ソローモデルでは、定常状態では r=g となりますが、定常状態から変化するときには、r と g に差が生じます。前回の記事でそれを示しました。例えば、知識や技術の増加率 (以下 a ) や人口増加率 (以下 n ) が減少すると、r>g となります(下の図。逆に知識・技術の増加率や人口増加率が増加すると g>r になります)。
14121409













 前回の記事では、ソローモデルから導かれる方程式からこのような図を推測しましたが、ソローモデルの場合、生産関数を定めれば、r や g を明示的に示すことができます。そこで今回は、生産関数に kα というコブダグラス型の生産関数を当てはめて、r と g の変化を見てみようと思います( k は効率労働当たりの資本ストック)。

(ソローモデルの導入部については、前回の記事を参照してください。)
 ソローモデルでは、k の変化は次の式に従います。
150209 (1)
   (1)
 ドット(・)は時間微分を表しています。a は知識・技術の増加率、n は人口増加率、δ は資本消耗率、s は貯蓄率です。f(k) に kα を代入すれば、
150209 (2)
   (2)
 となります。このままでは、この微分方程式は解けないので、両辺を kα で割ります(この方法は Barro and Sala-i-Martin の Economic Growth にのっています)。
150209 (3)
   (3)
 v(t)= k(t)1-α とおくと、(3)式は、
150209 (4)


 と書き換えることができます。a+n+δ=b とおけば、
150209 (6)


 となります。この微分方程式の解は、
150209 (7)
   (4)
 です。ここで、vは v の定常値、v(0) は v の初期値です。

 ところで、定常状態では (1)式((2)式)の左辺が 0 になります。したがって、kを k の定常値とすると、
150209 (8)
   

 が成り立ちます。この式から、v の定常値 vは、
150209 (9) 
    (5)


 となります。これを(4)式に代入すれば、
150209 (10)
   (6)

 となります。
 ここでは、技術進歩や人口増加率が変化し、定常状態から移動する状況を考えたいです。そこで、b の初期値を b(0) とすると、(5)式から、v(0)=s/b(0) です。これを(6)式に代入すれば、
150209 (11)
   (7)

 となります。

 ソローモデルでは、貯蓄率 s は外生的に決まり、モデルの内部から決まりません。しかし、個人が合理的なら、効用を最大化するように貯蓄率を決定すると思われます。そこで、個人は消費を最大化するように貯蓄率を決める、と想定してみます。消費は一般的に次の式で表されます。
150209 (12)

 生産関数を代入すれば、
150209 (13)

 です。定常状態において、消費を最大化するように貯蓄率を決めたとすると、
150209 (14)
   

 を最大化するように、s を決めることになります。(5)式から kを求め、代入すれば、
150209 (15)


 です。これを最大化する s は α です(計算は省略 )。そこで、(7)式に s=α を代入すれば、
150209 (17)
   (8)

 となります。例えば、α=1/3 として、b が 4% から 8% に増加した場合、k は次の式にしたがって変化します。
150209 (18)



 資本の収益率は一般的に次の式で表されます(これは企業の利潤最大化から求まります)。
150209 (19)

 f(k) に k(t)α  を代入すれば、
150209 (20)

 v(t)= k(t)1-α  なので、
150209 (21)
   (9)

 という簡単な式で表すことができます。

 次に、経済成長率 g は次の式で表されます(この式の導出は、前回の記事を見てください)。
150209 (22)
   (10)

 v(t) の時間微分は、
150209 (23)

 となります。この関係を使えば、k(t)/k(t) は、
150209 (24)



150209 (25)



 (8)式から、v(t) を計算し、代入すれば、

150209 (26)



150209 (27)



 分子は v(t) から α/b を引いたものに等しいです。したがって、
150209 (28)

   (11)

 これを(10)式に代入すれば、g(t) は、
150209 (29)



 となります。少し変形すれば、
150209 (30)



150209 (31)

   (12)

 という簡単なかたちで表すことができます。
 (9)式と(12)式を比べると、どちらにも - δの項があるので、r と g の差に δ は影響を与えない、ということがわかります。そこで、ここでは r と g の差を見たいので、δ を無視することにします。 δ=0 とすれば、r と g はそれぞれ、
150209 (32)
   (13)

150209 (33)

   (14)

 
 となります。(8)式、(13)式、(14)式を使い、パラメーターを決めれば、いろいろな条件での r と g の変化を知ることができます。(以下、α(=s)=1/3 としています。また、それぞれの図は maxima で描いています。プログラムは末尾。)

(1) t=0 の時点で、b (知識・技術の増加率や人口増加率)が 4% から 8% に増加した場合
14021001


















 g>r となります。ポイントは、r はゆっくりと変化するのに対して、g は最初の時点で不連続に変化する(これは(10)式のかたちからわかります。これについては前回の記事)、ということです。そのために g のほうが速く変化します。これは他の条件でも同じですし、ラムゼイモデルでも同じです(ラムゼイモデルの資本の動学方程式は、ソローモデルと同じです)。

(2) t=0 の時点で、b (知識・技術の増加率や人口増加率)が 8% から 4% に低下した場合
14021002



 















(3) t=0 で、それまで 4% だったb が 8% に増加し、80年後 ( t=80 ) に、8% から 4% に戻った場合
14021003


















 b (知識・技術の増加率と人口増加率)が増加するときは、g>r となり、b が減少するときは、r>g になる、ということがわかります。
 つまり、ソローモデルでは、定常状態では r=g となりますが、定常状態から変化するとき(あるいは、定常状態が変化するとき)には、r と g は異なった変化をするので(g のほうが速く変化する)、r と g にギャップが生じるのです。この結論は、ラムゼイモデルにも当てはまります。ラムゼイモデルでは、定常状態でも r>g となりますが、定常状態から移るときには、その差は一定ではなくなる。

(4)ラムゼイモデルモドキ
 前に書いたように、ソローモデルでは貯蓄率 s が内生的に決まりません。個人の主観的時間割引率を考慮し、それにもとづく将来までの効用最大化の条件をソローモデルに組み込み、そのような欠点を修正したものがラムゼイモデルです。
 
 しかし、ラムゼイモデルでは、ソローモデルのようにそれぞれの変数を明示的に導出できません(通常、資本の動学(上の(1)式)と消費の動学を線形近似して導 出します。離散時間モデルに変えれば r と g の「変化」は示せます。こちら)。
 そこで、ここでは貯蓄率はやはり外生的に一定の値に固定されているとし(つまり、s=α )、主観的時間割引率の影響だけが導入されたとします。ラムゼイモデルの場合、定常状態における r は、
r=ρ+θg
 となります(例えばマンキューの記事。拙訳はこちら)。ここで、ρ は主観的割引率、g は知識・技術の増加率(上の a )、θ は効用関数の湾曲度(異時点間代替率の逆数)です。対数型効用関数の場合、θ=1 です。θ=1の場合、r は
r=ρ+g
 となります。

 そこで、定常状態でr が ρ の分だけ高くなる(つまり、r=ρ+g)、という条件だけを、上のソローモデルに導入してみます(貯蓄率はそのまま s=α で一定とします。 ただし、これは正確にラムゼイモデルを再現したものではありません。消費の動学方程式を無視しています)。

(4a) t=0 で b (知識・技術の増加率や人口増加率)が 4% から 8% に増加し、80年後 ( t=80 )に 4% に戻った場合 (ρ=3%)

14021004


















 b(知識・技術の増加率と人口増加率)が増加したときには、r と g のギャップが縮まり、b が減少したときには、そのギャップが広がる、ということがわかります。


(4b) b=2% という状態で、t=0 に b=4% に増加し、50年後 ( t=50 ) にさらに b=6% に増加し、100年後 ( t=100 ) に b=2% に戻った場合
14021005


















 やはり、b(知識・技術の増加率と人口増加率)が増加しているときは、r と g のギャップが縮まり、b が減少したときは、そのギャップが広がる、ということがわかります。(以下のプログラムのパラメーターをいろいろ変えれば、違った条件での変化を見ることができます。)

 ピケティが挙げている図は以下のとおり(似ているかな?)。
piketty10_9












(山形浩生氏のピケティサポートページから)

 以上のモデル(ソローモデル、ラムゼイモデル)は個人の「格差」を想定していないモデルです。したがって、これらのモデルから、個人の格差がなくても r>g は生じる、ということが示されます。ここからどのようなインプリケーションを引き出すかは人によって異なるでしょう(例えば、r>g は「自然な状態」なので、それを変えるような政策をとるべきではない、とか。私はこういう議論に組しませんが)。いっぽう、格差が定常状態になっているのなら、政策や対策を議論するときに、格差を想定していないモデルで考えるのは適切ではないかもしれません(日本の消費税擁護論のほとんどは、そういうモデルになっていませんか?)。

(1)
v(t):=(a/b)+(a/c-a/b)*exp(-(1-a)*b*t);
r(t):= if t<0 then c else a/v(t);
g(t):= if t<0 then c else b-a*b*(v(t)-a/b)/v(t);
[a:1/3,b:0.08,c:0.04];
plot2d([r(t),g(t)],[t,-20,100],[y,0,0.12],
[legend, "r", "g"],[xlabel, "t"]);

(2)
v(t):=(a/b)+(a/c-a/b)*exp(-(1-a)*b*t);
r(t):= if t<0 then c else a/v(t);
g(t):= if t<0 then c else b-a*b*(v(t)-a/b)/v(t);
[a:1/3,b:0.04,c:0.08];
plot2d([r(t),g(t)],[t,-20,100],[y,0,0.12],
[legend, "r", "g"],[xlabel, "t"]);


(3)
v1(t):=(a/b)+(a/c-a/b)*exp(-(1-a)*b*t);
v2(t):=(a/c)+(a/d-a/c)*exp(-(1-a)*c*(t-t1));
r(t):= if t<0 then c elseif t>t1 then a/v2(t) else a/v1(t);
g(t):= if t<0 then c elseif t>t1 then c-a*c*(v2(t)-a/c)/v2(t)
 else b-a*b*(v1(t)-a/b)/v1(t);
[a:1/3,b:0.08,c:0.04,t1:80,d:r(t1)];
plot2d([r(t),g(t)],[t,-50,160],[y,0,0.12],
[legend, "r", "g"],[xlabel, "t"]);


(4a)
v1(t):=(a/b)+(a/c-a/b)*exp(-(1-a)*b*t);
v2(t):=(a/c)+(a/d-a/c)*exp(-(1-a)*c*(t-t1));
r(t):= if t<0 then c+rho elseif t>t1 then rho+a/v2(t) else rho+a/v1(t);
g(t):= if t<0 then c elseif t>t1 then c-a*c*(v2(t)-a/c)/v2(t) else
 b-a*b*(v1(t)-a/b)/v1(t);
[a:1/3,b:0.08,c:0.04,rho:0.03,t1:80,d:r(t1)-rho];
plot2d([r(t),g(t)],[t,-50,160],[y,0,0.12],
[legend, "r", "g"],[xlabel, "t"]);

(4b)
v1(t):=(a/c)+(a/b-a/c)*exp(-(1-a)*c*t);         
v2(t):=(a/d)+(a/c2-a/d)*exp(-(1-a)*d*(t-t1));    
v3(t):=(a/b)+(a/d2-a/b)*exp(-(1-a)*b*(t-t2));     
r(t):= if t<0 then b+rho elseif t>t2 then rho+a/v3(t) elseif t>t1 then rho+a/v2(t) else rho+a/v1(t);
g(t):= if t<0 then b elseif t>t2 then b-a*b*(v3(t)-a/b)/v3(t) elseif t>t1
 then d-a*d*(v2(t)-a/d)/v2(t) else c-a*c*(v1(t)-a/c)/v1(t);
[a:1/3,b:0.02,c:0.04,d:0.06,rho:0.03,t1:50,t2:100,c2:r(t1)-rho,d2:r(t2)-rho];
plot2d([r(t),g(t)],[t,-50,180],[y,0,0.12],
[legend, "r", "g"],[xlabel, "t"]);

ピケティの r>g をソローモデルで考えてみた

 と書きましたが、私はピケティの『21世紀の資本』を読んでいません。だからこの記事はピケティの本の解説をするものではありません。 r (資本からのリターン)が g (経済成長率)よりも大きくなるのはどういうときか? という問題をソローモデルで検証してみることが目的です

 まず、通常ソローモデルにおいて想定されているように、生産は資本と労働を生産要素として行われると想定します。生産関数は、
141215 (1)

 というかたちのものとします(これは「労働節約型」の生産関数で「ハロッド中立的」と呼ばれるものです。Y = AF(K,L) という「ヒックス中立的」の生産関数でも、以下の議論のインプリケーションは変わりません)。 Y:生産量, K:(社会全体の)資本, L:(労働)人口, A:知識(技術)です。

 効率労働1単位当たりで考えたほうが(知識+労働者1単位当たりの生産関数や資本で考える)、技術進歩や人口増減の問題を取扱いやすいです。効率労働1単位当たりの資本を k とすると、k は
141215 (6)
   (1)

 です。(t) はそれぞれの変数が時間の関数であることを表しています。

 知識(技術)の増加率を a ( g と表記されることが多いですが、ここでは経済成長率と区別するために a とします)、人口増加率を n とします(注1)。
141215 (2)
   (2)
 この式から
141215 (4)
     (3)

 になるということが簡単にわかります。

 生産関数は収穫一定であると想定します。効率労働当たりの生産関数を f(k) とすると、
141215 (7) 
  (4)

が成り立ちます。

 資本の増加率は次の式に従うと想定します。
141215 (5)
   (5)
 これは、貯蓄から資本消耗(δは資本消耗率)を引いたものが、資本の増加分になることを表しています。

 効率労働当たりの資本 k の変化を見たいので、k の時間微分を考えます(以下、時間を表す t を省略します。時間によって変化する変数は、Y, K, L, A です)。またドット(・)は、時間微分を表しています。つまり、ドットは
141215 (29)


 を表しているということです。

 (1)式を時間 t で微分すると、
141215 (8)



 となります。Kに(5)式を代入すれば、
141215 (9)


141215 (10)


141215 (11)

 これが効率労働当たりの資本 k の時間変化を表す式になります。
141215 (12)
   
 (6)
 左辺は k を時間微分したものなので、この値がプラスならば k は増加し、マイナスならば k は減少します。
 sf(k) と (a+n+δ)k を別々に描けば、次の図のようになります。

14121401









 図1




 通常、資本の限界生産物は逓減すると想定できるので、生産関数 f(k) は図のように湾曲したかたちになります。(a+n+δ)k の直線は、平衡投資(break even investment)と呼ばれます。効率労働単位当たりの資本 k を一定に保つために必要な投資の量を表しているからです。 

 sf(k) と (a+n+δ)k が交わる k の値を kとすると、k<kならば、図1から、sf(k)>(a+n+δ)k となります( sf(k) が上になるので)。したがって、その範囲では(6)式の値がプラスになり、 k は増加します。k>kならば、sf(k)<(a+n+δ)k となります( (a+n+δ)k が上になるので)。その範囲では(6)式がマイナスになり、 k は減少します。

 したがって、k は kに収束することになります。k が kに収束した状態は、均斉成長路と呼ばれます。

 ソローモデルでは、貯蓄率 s が外生的に決定されるので、モデルから s がこのくらいになる、ということを言うことができません。しかし、社会は消費を最大化するように意思決定するように思われます(それが合理的な判断だからです)。そこで、消費を最大化するように s を決めたと想定してみます。

 消費は所得(=生産量)から貯蓄を引いたものです。効率労働当たりの消費は、次のように表されます。
141215 (13)

 効率労働当たりの消費を見るために、図1に f(k) を加えれば、次の図のようになります。f(k) と sf(k) の差が消費になります。
14121402










 図2






 均斉成長路では、k は sf(k) と(a+n+δ)k の交点になります。この状態で消費 c が最大になるのは、平衡投資の直線 (a+n+δ)k と、f(k) の接線が平行になるときです。貯蓄率 s が調整され、この消費最大化の状態が達成される k の値は、「黄金律水準」と呼ばれます。

 では、経済成長率(生産量成長率)はどのようになるでしょうか。成長率を g とすると、
141215 (14)


141215 (15)




141215 (16) 



 
141215 (17)



141215 (18)



141215 (19)



 ここで
141215 (28)


 は生産関数 f(k) の資本に対する弾力性です( F(K,AL) の K に対する弾力性も同じ値になります)。これを αとおけば(通常、α=1/3 ぐらいと想定されています)、成長率は
141215 (20)
   (7)

 で表されます。(6)式を代入すれば、
141215 (21)
   (8)

 となります。

 均斉成長路では、kは 0 になります。したがって、均斉成長路の成長率は
141215 (25) 

  (9)
 です(注2)。 この成長率の値は、均斉成長路にいるなら k が黄金律水準になっているかどうかにかかわらず、a+n です。

 いっぽう、資本からのリターンを r とすると、r は
141215 (22)
   (10)

 となります(これは利潤最大化の条件から求められます)。
 経済が均斉成長路上にいて、かつ黄金律水準が達成されているなら(つまり、貯蓄率 s が調整され消費が最大化されるように調整されるなら)、f(k) の接線が、平衡投資の直線 (a+n+δ)k と平行になります。したがって、
141215 (23) 

  (11)
 となります。そうすると、資本からのリターン r は、(10)式から、
141215 (24) 

 (12)
 
 となります。

ソローモデルでは、経済が長期均衡(=均斉成長路上で消費最大化が達成されている)にいるなら、 r = g になるのです。

 しかし、経済が常に長期均衡にいるなんてことはありません。また、技術の進歩や人口増加率は変化します。また、経済が長期均衡に至るには時間がかかります(ソローモデルで考えると数十年の単位です)。

 そこで、知識の増加率 (a) と人口増加率 (n) に変化が生じた場合を考えてみます(このモデルでは、a と n の変化は同じ影響を与えるので、ここではまとめてしまいます)。つまり、
① a と n が増加した場合
② a と n が減少した場合

の2つ場合です。

14121403














 図3



 ① a+n が増加する場合、平衡投資の直線 (a+n+δ)k の傾きが大きくなります(赤い直線)。したがって、k は k の位置から減少していきます。しかし、k は(6)式の動学方程式にしたがって変化します。そのため、すぐに B のレベル(あるいは E のレベル)にシフトしません。時間をかけてゆっくりと減少していきます。消費を最大化する黄金律水準に k が調節されるとすると、k は B のレベルで均衡するのではなくて、少し大きな水準になると思われます(E あたりの k )。

 反対に② a+n が減少する場合、平衡投資の直線 (a+n+δ)k の傾きが小さくなります(青い直線)。したがって、k は D の位置から時間をかけてゆっくり F の位置に移動します。

 この場合、成長率 g はどうなるでしょうか? (8)式を再掲しておきます。
141215 (30)
   (8)


① a+n が増加し、a’+n’ になった場合( a+n < a’+n’ )
 a+n が増加し、a’+n’ になった場合、(8)式の右辺の第1項、第2項が a+n であるため、その分成長率は増加します(ジャンプアップします)。そして、a+n が増加すると、図3のように平衡投資の直線 (a+n+δ)k が左にシフトします。したがって、(8)式の第3項はマイナスになります(資本 k はゆっくりとしか移動できず、sf(k) が (a+n+δ)k よりも下にくるため)。第3項はマイナスになりますが、(8)式の右辺が a+n よりも小さくなることは、資本消耗率 δ がかなり大きくならない限り、ありません( α= 1/3 ぐらいであることに注意)。そのため、a+n の増加が起こった時、g は a+n と a’+n’ の間のどこかのレベルまでジャンプアップすることになります。
 そして、k が左にシフトしていくにしたがって、(8)式の第3項は、マイナスから 0 に増加していきます。そのため g は増加し、a’+n’ に近づいていきます(以下の図では、t = t で変化が起こると想定しています)。

14121404









 図4


 
② a+n が減少し、a’+n’になった場合(a+n>a’+n’)
 a+n が減少し、a’+n’ になったとすると、(8)式から、その分成長率は減少します(下の図のように、瞬時的に下がります)。そして、a+n が減少すると、平衡投資の直線 (a+n+δ)k が右にシフトします。したがって、(8)式の第3項はプラスになります( sf(k) が (a+n+δ)k よりも上になるため)。この場合も、(8)式の第3項はプラスになりますが、(8)式の右辺が a+n よりも大きくなることは起こりません。そして、k が右にシフトしていくにしたがって、(8)式の第3項はプラスから 0 に減少していきます。そのため g は減少を続け、a’+n’ に近づいていきます。
14121405









図5



では、資本からのリターン r はどうなるでしょうか?
 
(10)式から、
141215 (31) 

  (10)

 です。図3から、a+n が増加し、k が D から E へ左に移動すれば、f(k) の接線の傾きは大きくなるとわかります。したがって r は増加します。反対に a+n が減少し、k が D から F へ右に移動すれば、f(k) の接線の傾きは小さくなるとわかります。したがって r は減少します。

 この増減は k の移動にともなっておこるので、g の変化のような不連続のものではなく、少しづつ変化するものになります。
 (10)式を時間で微分すると、
141215 (26)


141215 (27)
   (13)

 となります。f”(k) は k の値によらずマイナスです。

① a+n が増加し、a’+n’ になった場合( a+n<a’+n’ )
 r の変化の場合は、最初に黄金律水準が達成されていて(そのため r = a+n になる)、変化の後、再び黄金律水準が時間をかけて達成される(そのため r = a’+n’ になる)と想定しています。
 図3から、 a+n が増加すると、平衡投資の直線が左にシフトするので、sf(k)-(a+n+δ)k はマイナスです。f”(k) の値はマイナスです。したがって、(13)式の値はプラスになります。そして、均斉成長路では sf(k)-(a+n+δ)k が 0 になるので、(13)式の値はしだいに 0 に近づいていきます。つまり、最初に大きく増加し、次第に増加率が小さくなっていきます。r は次のような変化になります。
14121406






 図6







② a+n が減少し、a’+n’ になった場合( a+n<a’+n’ )
 図3から、平衡投資の直線が右にシフトするので、sf(k)-(a+n+δ)k はプラスです。f”(k) の値はマイナスです。したがって、(13)式の値はマイナスになります。そして、均斉成長路では sf(k)-(a+n+δ)k が 0 になるので、(13)式の値はしだいにマイナスから 0 に近づいていきます。最初に大きく減少し、その減少率が少なくなっていきます。r は次のような変化になります。
14121407





 図7








g (成長率)と r (資本のリターン)を重ね合わせて描くと次のようになります。
14121408





 図8







14121409





 図9







 (8)式の成長率 g には a+g の項があります。したがって、a+g が変化すると、その影響を直接受けます(その時点でジャンプする)。しかし、資本からのリターン r ((10)式)は、資本 k のレベルにしたがってゆっくり変化するだけです。a+n が変化すると、先に g が大きく変化し、r の変化は遅れるのです。

 具体的に言えば、知識の蓄積や技術開発が進み、人口増加率が増加すると、成長率はすぐに増加します。しかし、資本からのリターンは、よりゆっくりと増加していきます。そのため、g>r という状態が続くのです。ソローモデルにしたがえば、均斉成長路(長期均衡)に至るには数十年かかります。技術進歩が連続し、人口が増加し続けていれば、g>r という状態がずっと続くことになります。

 逆に、知識や技術進歩の低下が起こったり、あるいは人口増加率が減少すると、成長率はすぐ低下します。しかし、資本からのリターンはよりゆっくりとしか減少しません。そのため、r>g という状態が続くことになります。

 20世紀には、電力化、IT革命など大きな技術進歩が連続して起こりました。また、人口も増加しました。ソローモデルから解釈すれば、そのため g>r という状態が続いたと考えられます。
 しかし、21世紀に入る前後から、コンピューター化やコンピューターを応用した技術が進んでいるとはいえ、かつての技術革新のようなインパクトのある大きな技術革新が起きなくなっていると言えます。また、人口増加率も停滞しています。ソローモデルにしたがえば、そのために r>g になったと考えられます。

 続きはこちら(今度は具体的に生産関数を想定して検証しています)。



注1) 指数関数を使えば、
141215 (3)

 となります。

注2) このモデルの場合、均斉成長路での賃金の成長率は a になります。
 賃金の増加率がaになることからわかるように、労働者は技術進歩による利益を受け取ることができています。したがって、この場合の技術は、労働者を「完全に」不要にしてしまうものではありません。ただし、このモデルの技術 A は労働節約的なので、労働を「節約する」ものであることは変わりません( A が増加すると、ある程度労働を不要にします。A の増加率が増加すると賃金が増加するのは、「同じ」労働量でよりたくさん生産できるようになるからです)。


ソローモデルの演習問題

 質問をいただきました。だいぶ遅くなりましたが、解答例を書いておきます。

「ソロー・モデルとラムゼイ・モデルに関しての質問です。
ソロー・モデルにおいて、貯蓄率の低下が以下の経済変数にもたらす効果について、図を示しながら説明せよ。
1.①効率労働あたり投資、②効率労働あたり資本、③効率労働あたり消費、④一人あたり所得、各々の水準の変化と、新しい均衡水準。
2.⑤効率労働あたり資本の成長率、⑥一人あたり所得の成長率、⑦(国全体の)所得成長率、各々の変化と新しい均衡での成長率。」

 ローマーの『上級マクロ経済学』の31ページから、「1.4 貯蓄率の変化がもたらす影響」(こちらは貯蓄率の増加)の反対のパターンです。お持ちでしたら、その部分を参照するとヒントになると思います。


 知識(技術)の増加率を g、人口増加率を n とすると、知識と人口は次の式で表せます。A(0),L(0) は初期値です。
140813 (1)
   (1)
 資本の動学は、
140813 (2)
   (2)
 です。ここで、s:貯蓄率、δ:資本消耗率です。
 効率労働1人当たりの資本は、
140813 (3)

   (3)
 で表されます。
 (3)式の両辺を時間で微分すると、
140813 (4)



 (2)式、K(t) = sY(t)-δK(t) を代入すると、
140813 (5)



 (1)式から、A(t)/A(t)= g ,L(t)/L(t)= n なので、これを代入すれば、
140813 (6)


140813 (7)
   (4)
 したがって、
140813 (8)
   (5)
 sf(k(t))>(n+g+δ)k(t) のときは、(5)式はプラスです。したがって、効率労働当たりの資本ストックは増加します。逆に、sf(k(t))<(n+g+δ)k(t) のときは、(5)式はマイナスです。効率労働当たりの資本は減少します。
 したがって、k(t) は、sf(k(t))=(n+g+δ)k(t) となる k の値に収束します(下の図を参照)。以下、その値(均斉成長路での効率労働当たりの資本ストック)を kとします。

 ここで、貯蓄率 s が低下した場合、下の図のように、sf(k) は下にシフトします。
14081301










   図1



 kは左にシフトします(減少する)。

(上の質問では、効率労働当たりの投資から始まっていますが、資本の変化の説明から始めます。)

② 効率労働当たりの資本
 上の図のように、減少します。減少の割合は、最初が大きく、次第に減少の割合は減っていきます。その変化を時間を横軸にとって描けば、次の図のようになります。
14081303










  図2


 ローマーの『上級マクロ経済学』では、具体的な関数を求めています(29ページ)。

140813 (11)
 (この式の導出はこちらを参照してください。)
 ここで、λは、
140813 (13)

 です。

140813 (14)

 とすると、また、初期値 k(0)=2、均衡値=1 とすると、
140813 (15)
   (6)
 となります。これをグラフに描けば、次の図になります(時間の単位は10年です)。
14081302








   図3



 効率労働当たりの所得
 図1から、f(k) は、k の減少にしたがって減少するとわかります。14081304次の図のようになります。









 図4





 k(t) が(6)式の、k(t)=exp(-0.04t)+1 ならば、そして f(k)=kα (α=1/3)ならば、f(k)=(exp(-0.04t)+1)(1/3) です。

① 効率労働当たりの投資
 効率労働当たりの投資は sf(k) です。最初、s の低下だけ減少します。その後、f(k) の減少にしたがって減少していきます( f(k) の変化は、上の図4)。
14081305










   図5

 (図が正確ではありません。s<1 なので、図5は減少率が大きすぎるかもしれません。s<1なので、sf(k)の減少は、f(k)よりも小さくなります)。

 ③効率労働当たり消費
 均衡での消費を cとすると、
140813 (16)
   (7)
 です。最初、s が低下するので、消費は増加します。その後、f(k) の減少にしたがって、減少していきます。最初の均衡水準より、消費が高くなるか、低くなるかはこれだけではわかりません。

 どちらになるかは、次の手続きで調べます。
 (5)式から、均衡では次の式が成り立ちます。
140813 (17)   (8)

 これを(7)式に代入すれば、
140813 (18)

 となります。両辺を s で微分します。
140813 (19)


140813 (20)
   (9)

 ∂k/∂s>0 です(貯蓄率が増えれば、資本ストックは増えるから)。 したがって、
1) f’(k)>(n+g+δ) のときは、(9)式はプラスです。貯蓄率が増加すると、均衡水準での消費も増加し、貯蓄率が減少すると、消費(均衡水準)も減少します(この問題の場合)。
2) f’(k)<(n+g+δ)のときは、(9)式はマイナスです。貯蓄率が増加すると、均衡水準での消費は減少し、貯蓄率が減少すると、消費(均衡水準)は増加します(この問題の場合)。

 以下の図は、消費水準が元の水準よりも低くなる場合( f’(k)>(n+g+δ) のとき)です。
14081306










   図6



④ 1人当たり所得
(これって、効率労働当たりの所得のまちがいではないですか? 効率労働当たりの所得なら上の f(k) です)。
1人当たりの所得は、均衡水準で一定の値になりません。1人当たりの所得を y(t) とすると、
140813 (21)

 両辺の対数をとると、
140813 (22)

140813 (23)

 均衡では f(k) は一定の値をとります。したがって、ln f(k(t)) は一定の値になります。一人当たりの所得は、g の割合で増加します(成長率 g)。1人当たりの所得の対数値を図で示せば、下のようになります( tは貯蓄率が下がった時点です)。
14081308










   図7



⑤ 効率労働当たり資本の成長率
 効率労働当たりの資本は、均衡では一定の値になります(図1参照)。(5)式が 0 になるということなので、その時の成長率は 0 です。(5)式、
140813 (8)
   (5)
 から、s が低下すると、k(t) がマイナスになるとわかります。したがって、s が低下した時点で、効率労働当たりの資本の成長率はマイナスになります。その後、0 に近づいていきます(新たな均衡に近づいていく)。
14081307








   図8



⑥ 1人当たり所得の成長率。
均衡(均斉成長路)では g です(図7参照)。貯蓄率が下がった時点で、低下し、再び g に近づいていきます。

⑦ 国全体の所得の成長率
 労働者全体(国全体)の所得を Y(t)と すると、
140813 (24)

 です。両辺の対数をとると、
140813(25)

140813(26)

 均衡では f(k(t)) は一定の値をとります。したがって、均衡では ln Y は g+n の割合で増加することになります。
14081309








   図9





 所得の成長率は、最初、g+n。貯蓄率が低下すると、低下し、再びg+nに近づいていきます。



ローマー、『上級マクロ経済学』:演習問題 1.9

1.9 
 労働と資本がそれぞれ限界生産物に応じて報酬を得ているものとする。また、w は ∂F(K,AL)/∂L を、r は ∂F(K,AL)/∂K - δ を表すものとする。
(a) 労働の限界生産物 (w) が A[f(k) - kf’(k)] であることを示せ。
(b) 資本と労働がそれぞれ限界生産物に応じて報酬を受けているのであれば、収穫一定の場合、生産要素に支払われている総額は純生産量に等しいことを示せ。つまり、wL+rK = F(K,AL)-δK であることを示せ。
(c) 資本の収益率 (r) は、経時的にみてほぼ一定水準にある。同様に、資本、労働それぞれに配分される産出のシェアもほぼ一定である。ソロー・モデルに基づく経済は、均斉成長路上においてこれらの特性を示しているか。均斉成長路における w と r の成長率を求めよ。
(d) 当初経済はk* よりも低い水準のkのもとにあると仮定する。k が k* に近づくにつれ、w は均斉成長路での成長よりも速く成長するか、遅く成長するか、あるいは同じ成長率で成長するか。r についてはどうか。

**********
(a)
 
上の問題文にあるとおり、
140201 (1)
   (1)

 です。収穫一定を想定しているので、
140201 (3)
   (2)
 となります。ここで k は効率労働1単位当たりの資本ストックを表しています(つまり、k = K/AL です)。
 (1)式に(2)式を代入すれば、
140201 (4)


140201 (5)


 k=K/AL を最後の項の k に代入すれば (また ∂f(k)/∂k = f’(k) なので)、
140201 (6)


140201 (7)



140201 (8)


 k=K/AL なので、
140201 (9)
   (3)
 となります。

(b)
 問題文にあるとおり、
140201 (2)
   (4)

 です。まず、F(K,AL)/∂K を計算します。
140201 (10)


140201 (11)


140201 (12)


140201 (13)

 したがって、これを(3)式に代入すれば、
140201 (14)
   (5)
 となります。

 次に wL+rK を計算します。(3)式と(5)式から
140201 (15)

140201 (16)

140201 (17)

 AL f(k) = F(K,AL), AL k = K なので
140201 (16)

140201 (17)

 再び AL k = K という関係を使えば、
140201 (20)

140201 (21)

 となります。

(c)
 (5)式から、r の成長率 r・/r (=(dr/dt)/r )は、次のようになります。
140201 (22)

   (6)


 ここで、
140201(23)



 となります。これを(6)式に代入すれば、
140201 (24)

   (7)

 となります。ここで k・は、
140201 (25)

 で、均斉成長路では k・= 0 です(20ページ)。したがって、(7)式から、均斉成長路での r の成長率は 0 になります。
140201 (26)
   (8)

 これは均斉成長路では、r の成長率は 0 になり、一定の値になることを示しています。

 次に、(3)式から、w の成長率 w・/w (=(dw/dt)/w )は、次のようになります。
140201 (27)




140201 (28)



140201 (29)

   


140201(34)



 A の成長率は g です(16~17ページ)。したがって、
140201(35)
 
   (9)


 再び均斉成長路では k・=0 なので、均斉成長路上での w の成長率は、(9)式に k・=0 を代入して、
140201 (30)
   (10)

 となります。これは均斉成長路では、w の成長率は A の成長率 g と同じになり、一定の割合 g で増加することを示しています。

(d)
 
経済が、均斉成長路上での資本ストックより低い資本ストックの位置にいるとき、つまり、k<k*  のとき、
資本ストックの動学から(資本ストックは増えていくので)、k・>0 です。 f”(k) は生産関数 f(k) の形状から、f”(k)<0 です。
140201 (31)

 したがって、(7)式
140201 (24)



 から、r の成長率はマイナスになります ( f’(k)-δ>0 です。f’(k)-σ= r で、r は実質利子率を表しています。技術の増加率 g はプラス、人口増加率も 0 以上と想定されているので、産出量成長率はプラス、したがって r もプラスと想定できます)。
140201 (33)


 均斉成長路に到達するまで、r の成長率がマイナスになり、(8)式から均斉成長路では、r の成長率が 0 になり、r は一定の値に落ち着くことになります。r の成長率と r の変化を図で示すと次のようになります。
14020104










14020103













 w の成長率は、(9)式から、 
140201(35)
   
   (9)


 です。ここでも、
140201 (31)

 また、(3)式から、A[f(k)-kf’(k)]= w であり、 f(k)-kf’(k) > 0 と想定できるので、
140201(36)



 となります。したがって、(9)式から、均斉成長路に到達する以前では、w・/w が g より大きくなります。
140201 (32)


 これは均斉成長路に到達するまでは、w は g より大きな割合で成長し、均斉成長路に到達した後は、g の一定の割合で成長することを示しています。w の成長率と w の変化を図で示すと次のようになります。
14020101












14020102














 
プロフィール

沢ひかる

貧乏人。

経済学「部」とは無縁です。

QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ