M B K 48

もし貧乏人が経済学を学んだら

1章

ローマー、『上級マクロ経済学』:演習問題 1.8

1.8 
 米国の産出量のうち投資が占める割合が、恒久的に 0.15 から 0.18 に上昇するとする。資本分配率は3分の1であると仮定せよ。
(a) 投資比率の上昇がなかった場合に比べ、産出量は最終的にどのくらい増加するか。
(b) 投資比率の上昇がなかった場合に比べ、消費は最終的にどのくらい増加するか。
(c) 投資比率の上昇が消費に与える短期的影響はどのようなものか。また、投資比率の上昇がなかった場合の水準に消費が戻るまでにはどのくらい時間を要するか。

**********
(a) 均斉成長経路におけるで効率労働1単位当たりの産出量( y* )の貯蓄率( s )(=投資比率)に関する弾力性は(導出は省略。27~28ページにあります)、
140310 (1)

   (1)

 となります(28ページの(1.27)式)。資本分配率(= α )が3分の1ならば、0.5 です。
 投資比率が 0.15 から 0.18 に増加したので、増加した割合は 20%(003/0.15)です。したがって、産出量の増加率は、0.5 X 20% = 10% になります。

(b) 均斉成長経路における効率労働1単位当たりの消費量( c* )は、
140310 (2) 
  (2)

 で表されます。s で微分すれば、
140310 (3)
   (3)

 (2)式から、y* = c* / (1-s) なので、(3)式に代入すれば、
140310 (4)


 となります。したがって、消費量の貯蓄率に対する弾力性は、
140310 (5)


140310 (6)


140310 (7)
   (4)

 となります。貯蓄率(投資比率)が 0.15 から 0.18 に増加した場合なので、s を 0.165 とし(0.15と0.18の平均です)、(4)式の第二項、つまり産出量の弾力性は 0.5 なので、(4)式の値は、
140310 (8)


 になります。貯蓄率の増加は20%なので、消費量の増加は、6% (0.30X20%)になります。

(c) 時点 t における消費量は、
140310 (10)
   (5)
 です。(5)式から、貯蓄率が 0.15 のときの c は 0.85y 、貯蓄率が 0.18 のときは 0.82y  です。したがって、この貯蓄率の増加によって、
 0.03y/0.85y = 0.035,
 c は貯蓄率が変化した瞬間、3.5% 減少することになります(下の図を参照)。
 問題(b)から、最終的に消費量は 6%増加することがわかっています。したがって、消費量の変化は次の図のようになります(横軸の数字の単位は10年です)。
14030901












 消費は(5)式で表され、s は外生的に決まっているので、消費の時間に対する変化の割合は、産出量の場合と同じです。産出量の時間に対する変化を表す式(29~30ページ。あるいはこの補足を参照)から、時点 t における消費を表す式は、
140310 (11)
   (6)

 となるとわかります( c(0)は時点0での消費量)。λの値は産出量の場合と同じなので、
140310 (12)

 です。(6)式にこの値を代入し、(6)式を変形すれば、
140310 (13)
   (7)

 となります。
 右辺の分母の c(t)-c* は、時点 t における消費量から、最終的に到達する均衡成長路の消費量までの残りの距離(消費量の差)を表しています。貯蓄率が変化したとき、消費量は 3.5% 減少し、最終的に 6% 増加するので、貯蓄率が変化した時点を 0 とすると、残りの距離は 9.5%ということになります( c(0)-c* = 9.5%) 。
 今ここで求めたいのは、消費が元の水準に戻る時点です。その時点では、時点0における水準から 3.5% 増加しているので、均衡成長路までの残りの距離は 6% です(上の図も参照)。したがって、消費量が元の水準(貯蓄率が変化する時点0より前の水準)に戻ったとき、(7)式の右辺の値は、
140310 (14)


 になります。両辺の対数をとれば、
140310 (15)

 となります。これを解けば、
140310 (16)

 したがって、消費が元の水準に戻るのは11.2年後ということになります。

ローマー、『上級マクロ経済学』:演習問題 1.9

1.9 
 労働と資本がそれぞれ限界生産物に応じて報酬を得ているものとする。また、w は ∂F(K,AL)/∂L を、r は ∂F(K,AL)/∂K - δ を表すものとする。
(a) 労働の限界生産物 (w) が A[f(k) - kf’(k)] であることを示せ。
(b) 資本と労働がそれぞれ限界生産物に応じて報酬を受けているのであれば、収穫一定の場合、生産要素に支払われている総額は純生産量に等しいことを示せ。つまり、wL+rK = F(K,AL)-δK であることを示せ。
(c) 資本の収益率 (r) は、経時的にみてほぼ一定水準にある。同様に、資本、労働それぞれに配分される産出のシェアもほぼ一定である。ソロー・モデルに基づく経済は、均斉成長路上においてこれらの特性を示しているか。均斉成長路における w と r の成長率を求めよ。
(d) 当初経済はk* よりも低い水準のkのもとにあると仮定する。k が k* に近づくにつれ、w は均斉成長路での成長よりも速く成長するか、遅く成長するか、あるいは同じ成長率で成長するか。r についてはどうか。

**********
(a)
 
上の問題文にあるとおり、
140201 (1)
   (1)

 です。収穫一定を想定しているので、
140201 (3)
   (2)
 となります。ここで k は効率労働1単位当たりの資本ストックを表しています(つまり、k = K/AL です)。
 (1)式に(2)式を代入すれば、
140201 (4)


140201 (5)


 k=K/AL を最後の項の k に代入すれば (また ∂f(k)/∂k = f’(k) なので)、
140201 (6)


140201 (7)



140201 (8)


 k=K/AL なので、
140201 (9)
   (3)
 となります。

(b)
 問題文にあるとおり、
140201 (2)
   (4)

 です。まず、F(K,AL)/∂K を計算します。
140201 (10)


140201 (11)


140201 (12)


140201 (13)

 したがって、これを(3)式に代入すれば、
140201 (14)
   (5)
 となります。

 次に wL+rK を計算します。(3)式と(5)式から
140201 (15)

140201 (16)

140201 (17)

 AL f(k) = F(K,AL), AL k = K なので
140201 (16)

140201 (17)

 再び AL k = K という関係を使えば、
140201 (20)

140201 (21)

 となります。

(c)
 (5)式から、r の成長率 r・/r (=(dr/dt)/r )は、次のようになります。
140201 (22)

   (6)


 ここで、
140201(23)



 となります。これを(6)式に代入すれば、
140201 (24)

   (7)

 となります。ここで k・は、
140201 (25)

 で、均斉成長路では k・= 0 です(20ページ)。したがって、(7)式から、均斉成長路での r の成長率は 0 になります。
140201 (26)
   (8)

 これは均斉成長路では、r の成長率は 0 になり、一定の値になることを示しています。

 次に、(3)式から、w の成長率 w・/w (=(dw/dt)/w )は、次のようになります。
140201 (27)




140201 (28)



140201 (29)

   


140201(34)



 A の成長率は g です(16~17ページ)。したがって、
140201(35)
 
   (9)


 再び均斉成長路では k・=0 なので、均斉成長路上での w の成長率は、(9)式に k・=0 を代入して、
140201 (30)
   (10)

 となります。これは均斉成長路では、w の成長率は A の成長率 g と同じになり、一定の割合 g で増加することを示しています。

(d)
 
経済が、均斉成長路上での資本ストックより低い資本ストックの位置にいるとき、つまり、k<k*  のとき、
資本ストックの動学から(資本ストックは増えていくので)、k・>0 です。 f”(k) は生産関数 f(k) の形状から、f”(k)<0 です。
140201 (31)

 したがって、(7)式
140201 (24)



 から、r の成長率はマイナスになります ( f’(k)-δ>0 です。f’(k)-σ= r で、r は実質利子率を表しています。技術の増加率 g はプラス、人口増加率も 0 以上と想定されているので、産出量成長率はプラス、したがって r もプラスと想定できます)。
140201 (33)


 均斉成長路に到達するまで、r の成長率がマイナスになり、(8)式から均斉成長路では、r の成長率が 0 になり、r は一定の値に落ち着くことになります。r の成長率と r の変化を図で示すと次のようになります。
14020104










14020103













 w の成長率は、(9)式から、 
140201(35)
   
   (9)


 です。ここでも、
140201 (31)

 また、(3)式から、A[f(k)-kf’(k)]= w であり、 f(k)-kf’(k) > 0 と想定できるので、
140201(36)



 となります。したがって、(9)式から、均斉成長路に到達する以前では、w・/w が g より大きくなります。
140201 (32)


 これは均斉成長路に到達するまでは、w は g より大きな割合で成長し、均斉成長路に到達した後は、g の一定の割合で成長することを示しています。w の成長率と w の変化を図で示すと次のようになります。
14020101












14020102














 

ローマー、『上級マクロ経済学』:演習問題 1.7

1.7 
 均斉成長経路上で効率労働1単位当たりの産出量( y* )の人口増加率( n )に関する弾力性を計算せよ。もし α(k*) =1/3 ,g = 2% ,δ= 3% であれば、人口増加率が2%から1%に減少した場合の y*  の上昇はどれだけか。

**********
均斉成長経路上で効率労働1単位当たりの産出量( y* )の人口増加率( n )に関する弾力性は、
140120 (1)
   (1)

 です。
 まず∂y*/∂n を計算します。y* = f(k*) の両辺を n で微分すると
140120 (2)
   (2)

 となります。

 k (効率労働1単位当たりの資本ストック)の動学 (dk/dt) を表す式は本書の(1.18)式です。
140120 (3)
   (1.18)
 経済が均斉成長路にいるとき(k=k*のとき) 、k( = dk/dt )= 0 となります。 したがって、(1.18)式の右辺は0です。
140120 (4)

 第2項を右辺へ移項すれば、
140120 (5)   
   (3)

 となります。この(3)式はすべての n に関して成立するので、(3)式の両辺を n で微分しても成立します。したがって、
140120 (6)
   (4)

 が成り立ちます。この式から ∂k* /∂n を求めると、
140120 (7)
   (5)


 となります。この(5)式を(2)式に代入すれば、
140120 (8)
   (6)


 を得ます。
 ここで、(3)式から貯蓄率 s を求めると、
140120 (9)


 となります。これを(6)式の s に代入すれば、
140120 (10)




140120 (11)
   (7)



 となります。

 そこで(1)式の効率労働1単位当たりの産出量( y* )の人口増加率( n )に関する弾力性を計算します。
(1)式は
140120 (12)


 と表せます。(7)式を代入すれば、効率労働1単位当たりの産出量( y* )の人口増加率( n )に関する弾力性は
140120 (13)






 となります。f’(k*)k*/f(k*)は、(効率労働1単位当たり)産出量の資本ストックに対する弾力性なので、これを
αとおけば、
140120 (15)

   (8)

 となります。

**********
 求めたいのは人口増加率が2%から1%に減少したときの産出量の弾力性です。(8)式でその弾力性を計算する場合、人口増加率 n は中間をとって0.015とします。g=2%,δ=3% なので、(8)式を計算すると
140120 (16)


140120 (17)

 となります。

 [産出量の増加率]=[産出量の人口増加率に関する弾力性]×[人口増加率の増加率] です。人口増加率の増加率(Δn/n)は、人口増加率が2%から1%した場合なので、(0.01-0.02)/0.02 です。したがって、
140120 (18)


140120 (19)

 人口増加率が2%から1%に減少すると、産出量は6%増加することになります。

ローマー、『上級マクロ経済学』:演習問題 1.6

1.6 
 ソロー・モデルに基づく均斉成長経路上にある経済を想定しよう。議論を単純にするため、技術進歩はないものとする。ここで、人口増加率が減少したと考えよう。
(a) 均斉成長路上にある労働者1人当たり資本、労働者1人当たり産出量および消費量はどうなるか。新しい均斉成長路に移行するにしたがって、これらの変数はどのような経路をたどるか。簡単な図で示せ。
(b) (1人当たりではなく)総産出量は人口増加率の減少によりどのような影響を受けるか。

**********
(a)
 k (効率労働1単位当たりの資本ストック)の動学 (dk/dt) を表す式は、技術進歩がない場合(つまり g = 0 の場合)、次の式になります(本書の1.18式)
140113 (1)
   (1.18)
 経済が均斉成長路にいるとき、k は一定の値になります。k( = dk/dt )= 0 となります。 したがって、均斉成長路における k を k* とすると
140113 (2)

 が成り立ちます。この式から k* は、sf(k)(貯蓄=投資)と (n+δ)k の交点で与えられるとわかります。
(n+δ)k は、k* を維持するために必要な資本の増加分を表していて、「平衡投資」 (break even investment) と呼ばれます。
solow07







   図1




 人口増加率 n が減少すると、(n+δ)k の傾きが小さくなります。したがって、均斉成長路における k(=k* ) は増加します。
 (n+δ)k の傾きが小さくなったとき、当初効率労働当たりの資本ストックは k* のままです。したがって、貯蓄(=投資) sf(k) が、新たな平衡投資 (n+δ)k を上回ります。そのため資本ストックは増加していきます。より詳しい動学は27ページから説明されていますが、k の増加率は最初は大きく、その後だんだん少なくなっていきます。
solow05









   図2


 効率労働当たりの産出量 y は f(k) なので、
solow06








   図3



 消費は、c=(1-s)y なので、y の変化と同じような変化を辿ります。(注)

(b) 総産出量は効率労働当たりの産出量に労働者数をかけたものなので(この問題の場合、技術進歩は想定されていないのでAは考えなくてよい)。
140113 (3)

 対数値を時間で微分すると、変化率になります。総産出量Yの変化を見たいので、Yの対数値を時間で微分すると、
140113 (4)



 Y = Ly なので、
140113 (5)




140113 (6)


   (1)

 労働人口 L は n の増加率で増加すると想定されています。L(t) = L(0)exp(nt) です。したがって、L/L = n になります。均衡成長路では y は一定の値になるので、dy/dt = 0 です。
 (1)式から、総産出量は労働人口の増加率と同じ n の増加率で増加するとわかります(技術進歩を想定すると、n+g の増加率で増加します)。
 したがって、人口増加率 n が減少すると、Yの増加率も減少します。総産出量の変化は(Yの対数値で表すと)次のようになります。
solow04

















注) 27ページからの議論にしたがって図1、図2の変化を示すと次の図のようになります。

solow03












 t = 0 で変化(s あるいは n,g)が起こり、産出量(消費)、資本ストックが増加する場合です。
 t > 0 のグラフは -exp(-λt)+2 (λ=0.4)です。31ページの数値例ではλ= 0.04 ですが見やすくするために 0.4 にしています。したがって、横軸の数値の単位は10年です。



プロフィール

沢ひかる

貧乏人。

経済学「部」とは無縁です。

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