M B K 48

もし貧乏人が経済学を学んだら

2章

ローマー、『上級マクロ経済学』:演習問題 2.16

2.16 ダイアモンドモデルにおける社会保障
(a)完全賦課型社会保障(pay-as-you-go social security)
 政府が若年層に T だけ課税し、この税収をそのまま高齢層への給付金にあてるものとする。よって、老年層の人々はそれぞれ (1+n)T を受け取る。( n は人口増加率)
(i) このモデルの変更により、kt+1 を kの関数で表した式、(2.60)はどのような影響を受けるか(あるいは受けないか)。
(ii) 均斉成長路における k の値についてはどうなるか。
(iii) 当初、経済が動学的に効率的な均斉成長路にあったとすると、T をほんの少し上昇させた場合、現在の世代と将来の世代の厚生にどのような影響があるか。当初の均斉成長路が動学的に非効率であったとしたらどうか。

(b)完全積立型社会保障(fully funded social security)
 政府が若年層に T だけ課税し、この税収を資本の購入にあてるものとする。よって、時点 T で生まれた個人は、年老いた際に (1+rt+1)T を受け取るものとする。
(i) このモデルの変更により、kt+1 を kの関数で表した(2.60)はどのような影響を受けるか(あるいは受けないか)。
(ii) 均斉成長路における k の値についてはどうなるか。

**********
 モデルの詳細な説明は89ページから。

 t 期に生まれた個人の生涯にわたる( t 期と t+1 期の)効用は、
150202 (1)

   (1)
です。
 t 期には労働から所得を得(その所得は Awです。技術・知識の増加率は 0 で A は一定と想定されています)、社会保障費 T を払い、残りで消費し(C1,t )、貯蓄します(s)。したがって、t 期の予算制約式は、
150202 (2)
   (2)
 です。
 t+1期には、t 期の貯蓄( t+1 期には(1+rt+1)s になっています)と政府からの給付金((1+n)T)で消費(C2,t+1 )します。したがって、t+1 期の予算制約式は、
150202 (3)   (3)

 です。
 (2)式と(3)式をまとめれば( sを求め、代入する)、
150202 (4)
   (4)


 となります。

 (4)式の制約のもと、(1)式を最大にする条件(1階の条件)を求めれば、
150202 (5)
   (5)


 が導出されます。(5)式から C2,t+1 を C1,t で表せば、
150202 (6)



 となります。これを(4)式に代入すれば、
150202 (7)
   
。   (6)


 この(6)式から、C1,t
150202 (8)

   (7)

 と表せます。
 ここで、t 期の貯蓄 sは(2)式から
150202 (9)

 です。C1,t に(7)式を代入すれば、
150202 (10)



150202 (11)

   (8)

 となります。

 この経済では、経済全体の t  期の貯蓄が t+1 期の経済全体の資本ストックになるので(94ページ、(2.57)式 [注1])、経済全体の資本ストック Kt+1 は、
150202 (12)
   (9)
 です。効率労働当たりの t+1 期の資本ストック kt+1 は、(9)式を ALt+1 で割ればよいので、また、Lt+1=(1+n)Lなので、
150202 (13)

   (10)

 となります。sに、(8)式を代入すれば、
150202 (14)



150202 (15)

   (11)

 となります。
 ここで、w=f(k)-f’(k)k, f(k)=kα なので、w=(1-α)kα です。これを(11)式に代入すれば、kt+1 は、
150202 (19)

   (12)

 となります。(2.60)式は、(12)式の[・・・]の中の第2項が0の場合です。そして、その第2項はマイナスなので( T/A の前の分数がプラス)、この賦課型の社会保障の導入によって、また、T を増加させると、t+1 期の資本ストックは減少することになります。
 (12)式をさらに変形すれば、
150202 (20)
   (13)


 となります。
150202 (21)



 とおくと、(13)式は、
150202 (22)
 


 と表わせます。これを図で示せば、次のようになります。
15020235













 賦課型社会保障によって、若年世代から老年世代に T の所得移転をすると、賦課型社会保障がない場合、つまり T=0 の場合(これが(2.60)式です)に比べて、Bkα が下にシフトします(上の図では k の添え字の t が抜けています・・・)。そのため、均衡(均斉成長路)における(つまり、kt+1=kとなるとき。したがって、kt+1=kの45°線との交点の) k の値は、低下します。

 この問題のポイントは、賦課型社会保障によって若年層から老年層に直接所得移転すると、その所得移転は資本蓄積のサイクルに入ってこないので、将来の資本蓄積が減少してしまう、ということです。


(b)
 効用関数は同じです。
150202 (1)

   (1)
 t 期の予算制約式は同じです。
150202 (2)
   (2)
 t+1 期には、t 期の貯蓄( t+1 期には (1+rt+1)sになっています)と政府からの給付金――これは t 期に資本投資したものが返ってくるので (1+rt+1)T となります――で消費( C2,t+1 )します。したがって、t+1 期の予算制約式は、
150202 (24)
   (14)

 となります。この(14)式と(2)式をまとめれば、予算制約式は、
150202 (25)

   (15)

 となります。(15)式の制約で、(1)式の最大化問題を解くと、1階の条件として、
150202 (5)

   (5)

 が導出されます(これは(a)の場合と同じです)。
 (5)式から、C2,t+1 を C1,t で表せば、
150202 (6)



 となります。これを(15)式に代入すれば、
150202 (27)

   (16)
 が得られます。
 t 期の貯蓄 sは(2)式から、
150202 (9)

 なので、これに(16)式を代入すれば、s
150202 (28)


150202 (29)

   (17)

 となります。
 t+1 期の経済全体の資本ストックは、
150202 (30)

 です(今度は T も資本投資されるので、これが t+1 期の資本ストックに加わります)。
 t+1 期の効率労働当たりの資本ストックは、
150202 (31)

   (18)

 です。この(18)式の sに(17)式を代入すれば、
150202 (32)



150202 (33)


 となります。これは(2.60)式と同じです。つまり、「完全積立型社会保障」を行えば、(a)の「完全賦課型社会保障」を行った場合に生じる  t+1 期の資本ストックの低下を完全に防ぐことができます。ただし、これは個人の貯蓄の一部を政府が肩代わりしているからです(極論すれば、個人が最適化できるなら、政府がこの社会保障を行う必要がない。だから、Tがあっても、T=0 でも同じ結果になる)。

 このように「完全積立型社会保障」では非効率性が発生しないことになりますが、Tの値を決めているのが政府である、というところに問題があります。政府が個人の最適化を打ち消すようなTの値を決めてしまうと、つまり、Tを大きくしすぎると、過剰蓄積になり、非効率性が発生することになります。
 

注1)
「資本消耗率はないものとしよう」ということになっていますが(91ページ)、t 期の貯蓄がそのまま t+1 期の資本ストック Kt+1 になるのは、資本消耗率100%のときではないでしょうか?(原文でも資本消耗なしを想定するとなっています)。
ΔKt+1= Kt+1- K= sF(K)- δK
sF(K)[貯蓄量] = Kt+1 となるのは、δ=1 のとき。
 ただし、このモデルで資本消耗率100%というのは非現実的な想定ではありません。世代重複モデルでは、1期間が人生の半分(労働所得を得る期間)で長いため。


ローマー、『上級マクロ経済学』:演習問題 2.9

2.9 ラムゼイ=キャス=クープマンズ・モデルにおける資本課税 
 均斉成長経路上にあるラムゼイ=キャス=クープマンズ・モデルの経済について考えてみよう。ある時点(時点0 と呼ぶことにする)において、政府が政策を転換し、投資による所得に一定率τで課税すると仮定せよ。よって、家計にとっての実質利子率は r(t) = (1-τ)f’(k(t)) となる。政府は、この税金によって得られる収入を一括所得移転により均等に家計に還元するものとする。さらに、この税制変更は予期されていなかったと仮定せよ。
(a) この課税は、c=0 曲線および k=0 曲線にそれぞれどのように影響するか。
(b) この経済は、税制変更に対し、時点0 においてどういう変化を示すか。時点0 以降はどう変化するか。
(c) 新しい均斉成長路において、c と k は、以前の均斉成長路における値と比べてどう変化しているか。
(d) (本問はBarro, Mankiw, and Sala-i-Martin [1995] にもとづいている。)
 このような経済が多数存在するものと仮定せよ。各国において、労働者の嗜好は同じであるが、投資所得に対する税率は異なるものとする。また、各国とも均斉成長路上にあるものと仮定する。
(i) 均斉成長路における貯蓄率 (y* -c)/* y はτの減少関数であることを示せ。
(ii) τが低く、k が高い高貯蓄国の国民は、低貯蓄国に投資する誘因を持つか。
(e) (c)の答えから考えて、投資に補助金を与え(すなわちτ<0 とする)、この補助金の財源を定額税によりまかなう政策は、経済厚生を増加させるといえるか。
(f) 政府が課税による税収を国民に還元しないで、自ら財、サービスの購入に利用した場合、(a)と(c)の答えはどのように変わるか。

**********
(a)
 政策が変更される前の消費の動学は
140222 (1)
   (1)

 で表されます。
 政策が変更された後は、資本所得に課税され、 実質利子率が r(t) = (1-τ)f’(k(t)) となるので、
140222 (2)
   (2)


 となります。均斉成長路では c=0 となるので、(2)式から( (2)式の右辺の分子が 0 になる)、
140222 (3)
   (3)
 という関係が得られます。新たな均斉成長路での効率労働単位当たりの資本ストック(それを k*new とすると)は(3)式を満たすものです。変形すれば、
140222 (4)
   (4)

 となります。
 いっぽう、政策変更前の均斉成長路での効率労働単位当たりの資本ストックは( (1)式の右辺の分子が 0 になるものなので)
140222 (5)
   (5)

 の関係を満たすものです。
 (4)式と(5)式の右辺を比較すると、τは 0<τ<1 なので、
140222 (6)


 という関係が成り立ちます。したがって、
140222 (7)

 

 となります。これは、生産関数 f(・) は限界生産性逓減の関数( f’(・)>0,f”(・)<0 )なので、k*new は k* より小さくなる、ということを意味します。
140222 (8)
 

 したがって、c=0 の軌跡は左にシフトします(下の図を参照)

 いっぽう、効率労働当たりの資本ストックの動学は
140222 (9)
   (6)
 で表されます。均斉成長路では k=0 となるので、
140222 (10)   (7)

140222 (11)
   (8)
 という関係が得られます。k=0 の曲線は(7)式、(8)式を満たすものです。
 資本所得に課税されて減少する所得は、再び一括所得移転で帰ってくるので、家計の所得は変化しません。言い換えれば、τは(6)式、(7)式、(8)式には入ってきません。したがって、k=0 曲線はこの政策変更によって変化しません。

14022301







   図1




 (b)
 
k (資本ストック)は不連続に、瞬時的に変化することができません(これは c=0曲線のことではありません。)。いっぽう、家計の消費 c は、変化(ショック)が生じた時点で、不連続に、瞬時的に変化(ジャンプ)できます。
 0 時点で政策変更が発表されると(これは予期されていないものです)、資本所得に課税されることになり、貯蓄(投資)に対するリターンが少なくなるので、家計は貯蓄を減らし、消費を増やします。したがって、c は 0時点で上方にジャンプします。その後は鞍点経路(サドルパス)に従って、新たな均衡に移動します。(上の図を参照)

(c)
 上の図からわかるように、均斉成長路上の効率労働単位当たりの資本ストック k と消費 c は、ともに低下します。
 新たに導入された資本課税は「ゆがみ」を与えていることになります。最初の均衡で達成できていた、家計にとっての生涯効用最大化が、この税金のために達成できなくなったということです。

  このケースが与える現実的なインプリケーションは、法人税のような資本課税はなくしたほうがいい、というものになります。ただし、このインプリケーションが成り立つ条件は、最初の均衡が最適である、ということ(そこでの資本ストックが過剰蓄積でないということ)です。過剰蓄積になっている場合は、資本課税をしたほうが最適になります。

(d)(i)
 (3)式から、均斉成長路ではτが増加すると、f’(k*) が大きくなり、k* が小さくなる、ということがわかります。したがって k はτの減少関数です。
140222 (12)
   (8)

  貯蓄率を s とすると、f(k(t))-c(t) = sf(k(t)) なので(本来、ラムゼイモデルでは s は時間とともに変化するので s(t) としたほうがいいですが、ここで関心があるのは均斉成長路上での変化なので(つまり時間変化が止まっている)、問題ありません)、(5)式は
140222 (13)

 と表すことができます。均斉成長路では k=0 なので、
140222 (14)
 

 となります。s の式に直せば、
140222 (15)



 です。τで微分すれば、
140222 (16)



140222 (17)


 f’(k*)k*/f(k*) は、(効率労働1単位当たり)産出量の資本ストックに対する弾力性なので、これを αとおけば、
140222 (18)


 α<1 (通常1/3ぐらい)なので、また(8)式から、これは 0 より小さくなります。したがって、τが増加すれば、貯蓄率は下がります。

(d)(ii) τが低く、kが高い高貯蓄国の国民は、低貯蓄国に投資する誘因を持つか。

答え: 持たない。

 すべての国は「同質」です。したがって、同じρやθの値をもちます。そうすると、(3)式
140222 (3)
  (3)
 の右辺はすべての国で同じになる、ということです。 (3)式の右辺、ρ+θg が同じであるため、τが低く、k が高い高貯蓄国の (1-τ)f’(k) と、他の低貯蓄国の (1-τ)f’(k) も同じ値になります。低貯蓄国では、貯蓄が低いために k が低くなっており、f’(k) は大きくなっています(これは低貯蓄国では課税前のリターンは大きいということです)。しかし、その分τも大きくなっているわけです。

(e) 投資に補助金を与え(すなわちτ<0 とする)、この補助金の財源を定額税によりまかなう政策は、経済厚生を増加させるといえるか。

答え: 厚生を増加させない。

 新しい均斉成長路への移動は、前と反対になります。下の図のようになります。
14022302





   図2





今度は、投資のリターンが増えるので、家計は 0時点で貯蓄(投資)を増やし、消費を減らします。c は下方にジャンプします。その後、鞍点経路(サドルパス)にしたがって、新たな均衡(均斉成長路)へ移動していきます。
 新たな均斉成長路では、以前より、効率労働当たりの消費も資本ストックも増加しているのに、どうして厚生が悪化しているのか?

 まず、家計は最初の均衡(均斉成長路)において、生涯効用を最大化するようにすでに調整しています。

 新たな均斉成長路では消費水準は高くなりますが、そこに至るまでに、いったん経済は下にシフトするので、家計は低水準の消費と、したがって低水準の効用の期間を長い時間経験することになります。

 そのために、将来、消費水準が高くなったとしても、それに伴う生涯効用の増加分は、新たな均衡に至るまでの間の生涯効用の減少分を上回らないのです(将来の効用は割引現在価値で評価されます)。したがって、この政策は最適ではありません。

(e) 省略。
 今度は、図1の k=0 曲線も下にシフトします。

ローマー、『上級マクロ経済学』:演習問題 2.5

2.5
 
式(2.1)および式(2.2)で表される効用を持つ家計について考えよう。実質利子率は一定と仮定し、また、この家計の初期時点における財産と生涯労働所得の現在価値の和(式(2.6)の右辺)をWとしよう。効用を最大化するCの成長経路をr、Wおよび効用関数のパラメータで表せ。

**********
 問題2.4とほとんど同じで、効用関数の形が違うだけです。

 ローマーの本書の家計当たり+効率労働当たりではなくて、単純な家計当たりのケースです。
 (2.1)式は家計の効用関数で、以下のものです(これは、家計当たりの生涯の効用を現在価値に直した総和を表しています)。
13040601

   (1)

 (2.6)式は、家計の予算制約で、以下のものです。ここでは、実質利子率がrで一定なので、(2.6)式の R(t) が rt に変わります。

13041601   (2)


 
 この式の右辺が、「家計の初期時点における財産(1項目)と生涯労働所得の現在価値(2項目)の和」です。、この問題では、それをWと置いてます。
 時点tでの瞬時的な効用関数は以下のものです。(2.2)式。
13040602
   (3)

**********
 この問題と同じ条件での家計当たりの最適化については、こちらの記事に書きました → こちら
 途中までは同じです。その部分については、上記の記事を参照してください。違っている点は、上記の記事では、利子率が時間とともに変化することになっていますが、この問題では、利子率は一定、ということです。従って、上記の記事の r(t) を r に、R(t) を rt に直せば、この問題の場合になります。

 1階の条件として、次の式が導出されます(λ はラグランジュ乗数)。
13041602
  (4)
 ここでは、時点効用関数が上記の(3)式なので、u’(C(t)) = C(t)-θ  です。従って、(4)式は次のようになります。
13041603
   (5)
 (5)式は、すべての時間 t について成り立つので、時間t で微分しても成り立ちます(この辺りの計算は、上記の記事と同じです)。
13041604


 dC(t)/dt を C(t) と表せば、
13041605
   (6)
 ここで、(5)式からλを求めます。
13041606

 これを(6)式に代入すれば、次の式を得ます。
13041607

13041608

 右辺を整理すれば、
13041609

 両辺を e-ρtC(t)-θ で割ります。
13041610


 整理すれば、消費成長に関する式が得られます。
13041611
   (7)


**********
 (7)式の左辺は、C(t) の対数値を時間で微分したものです。つまり、
13040613


13040614


 従って、(7)式は、次のように書き換えることができます。
13041612
   (8)

 (8)式の両辺を、0 から t まで積分します。
13041613



13041614


 両辺の指数をとります。
13041615


13041616 
    (9)

**********
 この問題では、時点tでの消費C(t)を、家計の生涯資産((2)式の予算制約式の左辺)を使って表します。まず、家計の生涯資産をWとする、ということなので、
13041617



 このWを使って表記すれば、(2)式の予算制約式は、次のようになります。
13041618

   (10)

 左辺のC(t)に(9)式を代入し、左辺を計算すれば、
13041619



13041620



 ここで、時点 t でのこの経済の人口 L(t) は、初期時点の人口が L(0) で、人口増加率を n とすると、L(t)=L(0)ent なので、L(t)をこの式で書き換えています。
13041621

   (11)

 {ρ-r+θ(r-n)}/θ > 0 です。(11)式は、生涯資産Wに等しいので、もし{ρ-r+θ(r-n)}/θ < 0ならば、生涯資産が発散してしまい、家計は無限の効用を達成できることになってしまうからです(この議論は、ローマーの本書では、61ページにあります)。
 {ρ-r+θ(r-n)}/θ > 0 ならば、(11)式は次の値になります。
13041622


13041623


 これがWに等しいので、C(0)を求めれば、
13041624


 これを、(9)式に代入すれば、次の関係が得られます。
13041625



 この関係から得られるインプリケーションは、問題2.4の対数型の効用関数の場合と同じでしょう。
 異時点間の代替性(=1/θ)が入ってくる、ということと、初期消費に実質利子率が影響を与える、ということが違う点です。対数型の効用関数の場合は、θ=1なので、その場合は、{  }の中の実質利子率 r が消え、初期消費に実質利子率が影響を与えなくなります。


ローマー、『上級マクロ経済学』:演習問題 2.4

2.4
 
式(2.1)における時点効用関数が u(C) = ln C であると仮定せよ。式(2.6)の制約のもとで式(2.1)を最大化する家計について考えてみよう。各時点でのCを、この家計の初期時点における財産と労働所得の現在価値の和、r(t) の経路、および効用関数のパラメータの関数で表せ。

**********
 ローマーの本書の、家計当たり+効率労働当たりではなくて、単純な家計当たりのケースです。
 (2.1)式は、家計の生涯の効用関数で、以下のものです。
13040601

   (1)

 (2.6)式は、家計の予算制約で、以下のものです。
13040603
   (2)


 この式の右辺が、問題文中の「この家計の初期時点における財産(1項目)と労働所得の現在価値(2項目)の和」です。

 家計当たりの最適化については、こちらの記事に書きました → こちら
 途中までは同じです。その部分については、上記の記事を参照してください。

 1階の条件として、次の式が導出されます(λ はラグランジュ乗数)。
13041411
   (3)
 ここでは、時点効用関数が lnC(t) なので、u’(C(t)=1/C(t) です。従って、(3)式は次のようになります。
13041412


 C(t)の式に直すと、
13041413
   (4)

 (4)式は、すべての時間 t について成り立つので、(4)式を時間 t で微分すると、
13041415
   (5)

 R(t) を時間 t で微分すると、r(t)になる、という関係を使っています(これについては上記の記事を参照)。
 ここで、(4)式から λ を求めます。
13041414

   (6)

 これを(5)式に代入すれば、
13041416



13041417

 C(t) を移項すれば、次の関係が得られます(この問題の場合の消費成長に関するオイラー方程式)。
13041418

    (7)

**********
 (7)式の左辺は、C(t)の対数値を時間 tで 微分したものです(より一般的に言えば、ある変数の対数値を時間で微分すると、その変数の成長率になる)。つまり、
13040613


13040614


 従って、(7)式は次のように書くこともできます。
13041419
   (8)

 (8)式の両辺を、時間 t を積分変数として、0 から t まで積分します。
13041420

   (9)

 右辺の積分は、次のようになります(前の場合と逆で、r(τ) を積分すれば R(τ) になります)。
13041421
 

 従って、(9)式は次のようになります。C(0)は、初期時点の(時間0のときの)消費です。
13041422


 両辺の指数をとります。
13041423


13041424


 時間tでの消費 C(t)は、次のようになります。
13041425
   (10)

 **********
 この問題では、C(t)を、家計の初期時点における財産と労働所得の現在価値の和で表せ、ということなので、まず、「家計の初期時点における財産と労働所得の現在価値の和」をWとします。Wは、予算制約式、(2.6)式(上の(2)式)の右辺です。つまり、
13041426



 従って、(2.6)式(上の(2)式)の、家計の予算制約式は次のように表記できます。
13041427
 
   (11)

 この(11)式に、(10)式の C(t) を代入します。また、時点 t でのこの経済の人口 L(t) は、初期時点の人口が L(0) で、人口増加率を n とすると、L(t)=L(0)ent です。(11)式の L(t) を書き換え、左辺を計算すると、
13041428



13041429

 

13041430

   (12)

 ここで、ρ-n>0 です。もし、ρ-n<0 ならば、(12)式は生涯資産を表しているので((12)式=W ということ)、ρ-n<0 の場合には、生涯資産(生涯賃金)が時間の経過とともに、どんどん大きくなる(発散する)ことになります。そうなると、その増大する資産によって、家計は消費によって、無限大の効用を達成できることになってしまいまい、最適化の解を持ち得ないことになります。従って、ρ-n>0 でなければなりません(この議論は、61ページ)。ρ-n>0 ならば、(12)式は収束値をもち、次のようになります。
13041431
   (13)
 
 これが生涯資産(賃金)Wに等しいので、時点0での初期消費C(0)は、次の式で表すことができます。
13041432
   (14) 

 これを(10)式に代入すれば、
13041433
   (15)

 となります。

 (14)式、(15)式は、1人当たりの消費です。ローマーの本書での設定からそうなっています。そのため、家計の効用最大化を考えるときに((1)式の効用関数と(2)式の予算制約式において)、家計の人数 L(t)/H を、その1人当たりの消費 C(t)にかけています。
 そして、(14)式、(15)式から、個人は基本的には、恒常所得仮説に従う、ということがわかります。
 まず、(14)式は、個人の時点0での初期消費を表していますが、W/(L(0)/H) は、一人当たりの生涯資産です(家計の生涯資産Wを、家計の人数 L(0)/H で割っているので)。
 従って、(14)式は、個人はその生涯資産のうちの、時間割引率から人口増加率を引いた割合を、時点0で消費する、ということを表しています。
 そして、(15)式から、この時点0 での消費水準 C(0) が、各時点での消費の基準になる、ということがわかります。例えば、(15)式から、もし R(t)=ρt ならば(消費成長が0ならば、R(t)=ρt のときが均衡状態です)、時点 t での消費は、時点0の初期消費 C(0) と同じになるからです。
 つまり、(15)式は、個人は各時点 t において、初期消費 C(0) を基準として、実質利子率 R(t) と個人の主観的割引率 ρ とを比べ、その差に合わせて消費量を調節する (C(0)と同じ水準から増やしたり、減らしたりする)、ということを表しているわけです。 

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 Solution Manuals には違う計算方法が載っています。

 冒頭の1階の条件から、(4)式が得られます。再掲すると、
13041413
     (15)

 これを予算制約式、(11)式の左辺のC(t)に代入します。
13041434

   

 L(t)=L(0)ent なので、代入すると、
13041436



 この積分は、上の(13)式で計算したものです。左辺を計算すると、
13041437



13041438


 これが、Wに等しいので、
13041439


 1/λ は、次のように表すことができます。
13041440


 これを(16)式に代入すれば、(14)式になります。
13041433


プロフィール

沢ひかる

貧乏人。

経済学「部」とは無縁です。

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