M B K 48

もし貧乏人が経済学を学んだら

6章

ローマー、『上級マクロ経済学』:演習問題 6.5

6.5
 伸縮的価格設定を行う企業と硬直的価格設定を行う企業の2種類からなる経済を想定しよう。pは伸縮的な価格設定を行う企業の価格、pは硬直的な価格設定を行う企業の価格である。伸縮的価格設定企業は、m が既知となってから価格を設定するのに対し、硬直的な価格設定企業は m が既知となる前に価格を設定する。したがって、伸縮的価格設定企業は価格を p= p=(1-Φ)p+Φm に設定し、硬直的価格設定企業は価格を p= Ep= (1-Φ)Ep+ΦEm に設定する(Eは硬直的価格設定企業が価格を設定する時点での変数の期待値を表す)。
 企業のうちのq の割合のものが硬直的価格設定を行うものと仮定せよ。よって p = qp+(1-q)pである。
(a) を、p、m およびこのモデルのパラメーター(Φと q)で表せ。
(b) を、Em およびこのモデルのパラメーターで表せ。
(c)
(i)
m の予期された変化(つまり、硬直的価格設定企業が価格を設定する時点ですでに予想されている変化)により、y は影響を受けるか。理由を述べよ。
(ii) m の予期せざる変化により、y は影響を受けるか。理由を述べよ。

********** 
(a) q の割合の企業が硬直的に価格設定を行うので、平均価格は次の式で表されます。
13062301
   (1)

 伸縮的に価格設定を行う企業の価格は、
13062302
   (2)
 なので、これを(1)式に代入すれば次の式を得ます。
13062303


13062304


 pを左辺に移項すれば、次の式になります。
13062305


 この式から pを求めれば、
13062306
   (3)

 となります。次の(b)の計算では、次の形にしておいたほうが便利かもしれません。
13062307

   (4)

(b) 硬直的に価格設定する企業の価格は次の式です。
13062308
   (5)

 この(5)式の p に、(1)式を代入すると、
13062309

 
 となります。硬直的に価格設定する企業は、自分の価格 pはわかっているので、E[p]= pとなります。したがって、(6)式は次のようになります。
13062310
   (6)

 ここで、(4)式から E[p] を計算すると、
13062311


 ここでも、硬直的に価格設定する企業は、自分の価格 pはわかっているので、E[p]= pとなります。したがって
13062312
   (7)

 となります。この(7)式を、(6)式の E[p] に代入すれば、pは次の式になります。
13062313


13062314

13062315


 最初の項を左辺へ移項すれば、
13062316


13062317


13062318
    (8)

(c)
 まず、平均的価格は、(1)式で表されます。
13062301
   (1)

 pに(4)式を代入すれば、次のようになります。
13062319


 次に、pに(8)式を代入すれば、次のようになります。
13062320


13062321

   (9)
 p = m-y なので、これを(9)式の左辺の p に代入すれば、
13062322


 したがって、y は次の式になります。
13062323
   (10)

(i)mの予期された変化
 
ここで「予期された変化」、「予期されたなかった変化」というのは、予期できた・できなかったということが問題になっているわけではありません。「予期された変化」というのは、予期されていたので、硬直的価格設定する企業が「価格を変更する」場合です。いっぽう、「予期されたなかった変化」というのは、予期されていなかったので、硬直的価格設定する企業が「価格を変更しない」場合です。

 まず、m の変化が予期されていた場合は、m の期待値と実際の m が等しくなるということですから、E[m]= m ということです。したがって、(10)式から y は変化しません。
 
 いっぽう、平均的価格は、(9)式で表されます。(9)式の2番目の項は0になります。したがって、平均的価格は、E[m](この場合、これは m に等しい)の変化だけ上昇することになります。これは、m の変化分が産出量にはまったく影響を与えず、その変化分がそのまま物価上昇につながる、ということを意味します。

(ii)mの予期されなかった変化
 今度は E[m] は m と等しくなりません( m ≠ E[m])。したがって、(10)式から y は変化することになります。
 例えば、実際の m が、期待された m、つまり E[m]よ りも大きかった場合 ( m>E[m] )、(10)式の
 m-E[m] がゼロより大きくなる( m-E[m]>0 )ので、y は増加します。

 平均価格の変動については、まず(9)式を次のように書き換えると、
13062326

   (11)
 
 となります。m の変化が予期されていないので、E[m] の変化はゼロです。したがって平均価格は、m の変化のうちΦ(1-q)/{Φ+(1-Φ)q} の割合(左辺)だけ増加します。
 q は硬直的価格設定する企業の割合なので、0≦q≦1 です。Φは現実的な値としては、0<Φ<1 です(Φは実質値の硬直性を表していて、Φの値が小さいとその硬直性が大きくなります)。
 その場合、
13062327


 です。したがって、m の増加が 1 とすると、平均価格 p の増加は、1 より小さくなります(その増加しなかった分が、産出量 y の増加になります)。先ほどの、m の変化が予期されていた場合は、mの増加が 1 ならば、p の増加も 1 です。

 これがどうして起こるかは、まず硬直的価格設定する企業が価格を変更しないからです。(8)式から硬直的価格設定する企業の価格は E[m] に等しくなりますから、この場合、価格の変化はゼロです。
 次に、柔軟的価格設定する企業の価格がこれの影響を受けます。もう一度(3)式を引用すると。
13062306
   (3)

 m の変化が予期されなかった場合、硬直的価格設定する企業は価格を調整しないので、pの変化はゼロです。
 柔軟的価格設定する企業は、m の予期されなかった変化に対応して価格を調整することができます。しかし、(3)式は、柔軟的価格設定する企業が、硬直的価格設定する企業に合わせて価格調整する(右辺の第1項)ということを表しています。
 つまり、硬直的価格設定する企業の価格 pの変化がゼロならば、柔軟的価格設定する企業も、その項、(3)式の第1項をゼロにするということです。
 そして、m の変化のうちのΦ/{Φ+(1-Φ)q}の割合だけ(第2項)、価格を上昇させることになります。
 その係数は(0<Φ<1ならば)、Φ/{Φ+(1-Φ)q}<1です。したがって、m が1だけ増加した場合、柔軟的価格設定する企業の価格の増加は、1 より小さくなります。柔軟的価格設定する企業は、m の変化に対応できるのに、m の増加分をそのまま価格に反映させないわけです。
 それは、柔軟的価格設定する企業が、硬直的価格設定する企業の価格に合わせて((3)式の第1項)価格調整するから、つまり、硬直的価格設定する企業に「引きずられる」から、と言えます。

 また、(10)式から y はq が大きくなると、より増加することがわかります。これは硬直的価格設定する企業の割合が大きくなると、より y が増加するということです。
 いっぽう、(11)式から p はq が大きくなると、増加の割合が減少することがわかります。これは硬直的価格設定する企業の割合が大きくなると、より p の増加が抑えられるということです。といっても、q は硬直的価格設定する企業の割合なので、この値が大きくなれば、全体の価格変動も硬直的になる、というのは直感的にわかります。

 また y を実質値の硬直性を表すΦで微分すると、次の式になります。
13062325



 q<1 なので、m>E[m] ならば、この値は負です。Φが小さくなると(実質値の硬直性が大きくなると)、y の増加が大きくなるとわかります。

**********

ローマー、『上級マクロ経済学』:演習問題 6.13

6.13 カルボ型価格設定とニュー・ケインジアンのフィリップス曲線

Mankiw and Reis の論文 ("Sticky Information versus Sticky Prices")にも導出方法が載っています。

********** 
6.13 
 本章第10節のモデルで、各期において企業のうちαの割合のものが新価格を設定できるものとし、当該企業はランダムに選ばれるものとする。αは、0<α<1を満たすものとする。したがって、ある企業が t 期に価格を設定したとして、その価格が t+j 期において維持される確率は (1-α)である。
(a) (6.73)から、t 期に価格調整を行う企業の当該価格 x は、
13061306



 となる。x を、pと E[x t+1] の式で表せ。また両辺から pを引き、t 期に価格を設定する企業の相対価格 (x -p) を、p-p、E[x t+1-pt+1]、E[π t+1] で表せ(ただし π t+1= pt+1- p)。
(b) t 期における平均価格(対数値)である pは、
13061327



 に等しい。pを x と pt-1 の式で表せ。以上を用いて、インフレ率 π = p-pt-1 を x -pで表せ。
(c) (b)の結果を、(a)の答えの中の x -pと E[x t+1-pt+1] に代入し、インフレ率 π を E[π t+1] とyの式で表せ。

********** 
(a)
 6.8節(355ページから)では、代表的企業 i が現在(0期)に、将来までを見据えて価格を設定した場合の最適価格 pを導出しています(その部分の補足はこちら)。
13061301

   (6.73)

 ここで、ωは、ω=/π∑πτ で、πは、0期に設定した価格を t 期まで変更しない確率です。πを使って、(6.73)式を書き換えれば、
13061302




 となります。この問題では t 期に価格を設定することになっているので、代表的企業が t 期に、将来の期間を見すえて(将来価格を変更しない場合を想定して)、利潤最大化するように設定する価格 xは、次の式になります。
13061303




 代表的企業が各期に価格を変更する確率がαと想定されているので、(6.73)式の πt  が、π= 1-αになるということです。πを 1-αとおけば、
13061304


   (1)


 分母の ∑(1-α)は、初項1、公比 1-αの等比数列の和なので計算できます。
13061305



 従って、(1)式の xは、次のようになります。
13061306

   (2)

 (これが上記の問題文中の式)

 次に、(2)式は、t+1 期にも成り立ちます。
13061307

  

 期待値演算繰り返しの法則から、E[Et+1[・]] = E[・] です。従って、
13061308

   (3)

 となります。

 次に、(2)式を総和記号を使わずに書けば、次のようになります。
13061309


13061310
   (4)

 (3)式についても同様に、総和記号を使わずに書けば、次のようになります。
13061311


13061312
   (5)

 (4)式の2番目の項から以降の項は、(5)式の右辺に1-αをかけたものです。これをわかりやすくするために(4)式を変形すると、
13061313

13061314


 この{・・・}の中が(5)式の右辺(つまり、E[xt+1] )に等しくなっているわけです。従って、(4)式は次のように表すことができます。
13061315
   (6)
********** 
 次に、x-pを計算するために、(6)式の両辺から pを引きます。
13061316
   (7)

 右辺からαpを引いて、αpを足します。
13061317


 さらに右辺から(1-α)E[pt+1 ] を引いて、(1-α)E[pt+1 ] を足します。
13061318

13061319

 π+1= E[pt+1 ]-pなので、
13061320

13061321 
   (8)
となります。

(b)
 t 期には、αの割合の企業が xの価格に変更し(最適化)し、1-αの割合の企業は、以前の期間に設定した価格を引き継いでいます。
 t-1 期の平均価格が pt-1だったとすると、すべての企業(1の割合の企業)が同じ pt-1 の価格をつけている、と仮定してもかまわないことになります(実際にはそれぞれの価格は異なりますが、すべての企業が pt-1 の価格をつけていると仮定しても、平均価格は同じ pt-1になります)。
 そこで t 期には、そのうちのαの割合の企業が最適価格 xに変更したと想定できます。一方、残りの1-αの企業は、pt-1の価格をつけていると想定することができます(実際の価格は違う)。
 従って、t 期の平均価格は、次のように表すことができます。
13061322
   (9)
 (9)式は、t-1 期にも成立します。従って、
13061323

 が成り立ちます。
 これを(9)式の pt-1に代入すれば、
13061324


 同様に再帰的に代入を繰り返していけば、
13061325


13061326


 となります。従って、pは、次のように表すことができます(これが上記の問題文中の式です)。
13061327



 ********** 
 (9)式から、pt-1 を求めると、
13061344


 となります。π= p-pt-1 に代入すれば、
13061345

13061346


13061347
   (10)

 となります。

(c)
 (10)式から、x -pの式に直せば、次の式を得ます。
13061348
   (11)

 t+1 期にも同じ関係が成り立つので、
13061349
   (12)

となります。
 この(11)式と(12)式を(8)式に代入すれば、次の式になります。
13061350



13061351


 πの式に直せば、
13061335



 となります。t 期の利潤を最大化する価格 pは、p= p+Φy となります(355ページ)。これを代入すれば、
13061336

   (13)

 となります。αΦ/(1-α)=β とおくと、以下の式を得ます(ニューケインジアンのフィリップス曲線NKPC)。
13061337


 ********** 
 ローマーは丁寧にいろいろヒントをくれますが(かえってわかりにくい。上のページ、何度も修正しました)、上記の(13)式(NKPC)は、(6)式と(9)式から導出できます(もう一度掲載すると)。
13061315
   (6)
13061322
   (9)
 (9)式から、xを求めると、
13061328
   (14)

 t+1期にも同じ関係が成り立つので、
13061329
   (15)

 となります。この(14)式と(15)式を、(6)式に代入します。また、p=p+Φyを代入すれば、(6)式は次のようになります。
13061338


13061339


 求めたいのはインフレ率の関係です。π= p-pt-1 、π+1= E[pt+1 ]-pなので、p-pt-1
[pt+1 ]-pの項をどんどんつくっていく、という方針で計算していきます。
13061340


13061341


 さらに計算を続けると、
13061342


13061343

   (16)

 となります。この(16)式の最後の項の係数、{・・・}の中は0になります。従って、
13061342


 となります。π= p-pt-1、π+1= E[pt+1 ]-pなので、
13061336



 という関係を得ます。


**********

ローマー、『上級マクロ経済学』:演習問題 6.7

5月29日更新: 最後のところ修正しました。

6.6 メニュー・コストによる複数均衡 (Ball and D. Romer [1991])
 不完全競争下にある企業が多数存在する経済を想定しよう。企業が p =p以外の価格設定を行うことにより p =pに設定する場合と比べて失う利潤は K(p -pであるとする (K>0)。これまでと同様、p= p + Φy,y= m-p とせよ。各企業は名目価格を変更するのに固定費用 Z を要するものとする。
 当初、m はゼロで、経済は伸縮的価格設定のもとで生じる均衡状態にあるものとする。よって、y = 0,p =m = 0 が成り立っている。ここで、m が m’に変化したものと仮定せよ。
(a) 全体のうち割合 f の企業が価格を p に変更するものと仮定せよ。価格を変更する企業は、価格を p に設定し、変更しない企業はゼロのままであるから、p = fpが成り立つ。このことを用いて、p,y,pを m’,f の関数で表せ。
(b) 企業が価格調整を行う誘引、K(0-p=Kp*2  を f の関数としてグラフに描け。Φ<1とΦ>1の場合分けに留意せよ。
(c) 企業は、価格調整による利益が Z より小さければ価格を調整せず、Z と等しければどちらでも構わないと考える。この場合、すべての企業が価格調整を行うことと、どの企業も価格調整を行わないことが両方均衡となるような状況は存在しうるか。これらのいずれも均衡でないような状況はありうるか。

**********
13052601
   (1)
13052602
    (2)
  変数は、対数値です。従って、「当初、y=0,p=0,m=0 」ということは、水準値で言えば、Y=1、P=1、M=1 ということです。
 ここで、P は一般物価水準、Pは企業が利潤最大化する価格、M は総需要に関する一般的な変数です。

(a)
 f の割合の企業が価格を利潤最適化する価格 pに変更するので、m が m’に変化する以前の一般物価水準を pとすると、m の変化後の一般物価水準 p は、ローマーが書いているように、
p = fp+(1-f)p= fp+(1-f)0 = fp*   (3)
 となります(p= 0 なので)。
 
 まず、利潤最大化価格 pを m と p で表すために、(2)式を(1)式に代入します。
13052603
   (4)
 ここで、m が m’に変化すると、一般物価水準は(3)式で表される価格に変化するので、(3)式の p を(4)式に代入すれば、
13052604

 pの式に直せば、以下のようになります。
13052605

   (5)

(他の変数は、省略します。)

(b)
 代表的企業 i が、価格を利潤最大化する価格 pに変更した場合と、変更しなかった場合の利潤差は、ローマーが書いているように、次のものです(これは、企業の利潤を2次のテイラー展開で近似した式から導出されます。こちらこちらを参照)。
13052606
   (6)

 つまり、企業は価格を修正しないと、Kp*2 だけの利潤を失うわけです。しかし、その利潤を得る費用、つまりメニューコスト Z がそれ以上なら企業は価格を変更しません。
 この利潤差は、(6)式に(5)式を代入すれば、以下のように表せます。
13052607

   (7)

 これを f の関数として描くために、f による1階微分、2階微分を求めると、
13052608

   (8)

13052609

   (9)


① Φ<1の場合
13052610



 1階微分、2階微分が共に正なので、Kp*2 は、f の増加関数で、増加率が増加する関数です。従ってΦ<1 の場合は、以下の図1の Km’より下側の関数になります。

② Φ>1の場合
13052611



 1階微分は負、2階微分は正なので、Kp*2 は、f の減少関数で、減少率が減少する関数です。従って、Φ>1の場合は、以下の図1の Km’より上側の関数になります。
13052615







   図1




(c)
① Φ<1の場合
13052616







   図2




  代表的企業 i は、Kp*2 (価格を変更しないことで得ることができない利潤)が Z よりも大きければ、価格を変更します。
 価格を変更する企業の割合が、Kp*2 の曲線と Z との交点から 1(B点)までの場合、Kp*2>Z なので、代表的企業は価格を変更します。
 代表的企業が直面している状況は、他の企業にとっても同じなので、他の企業も価格を変更します。そのために、価格を変更する企業の割合は増えていきます(1に近づいていき=B点へ移動していきます)。
 そして、すべての企業が価格を変更した(B点にいる)場合、代表的企業も価格を変更します。だからB点は均衡です。
 次に、価格を変更する企業の割合が、0(A点)から Kp*2 の曲線と Z との交点までの場合、Kp*2<Z なので、代表的企業は価格を変更しません。この場合も、代表的企業が直面している状況は、他の企業にとっても同じなので、他の企業も価格を据え置きます。従って、価格を変更する企業は、ほとんど増えません。
 次に、すべての企業が価格を変更しない場合(A点にる)場合、代表的企業も価格を据え置きます。従って、A点は均衡点です。
 Kp*2 の曲線と Z との交点は、均衡点になりません(均衡はそこから離れていく)。
 均衡は、AかBのどちらかになります。
 Φ<1の場合には、均衡は複数になるわけです。

① Φ<1の場合
13052617









   図3

  価格を変更する企業の割合が、0(A点)から fEQ(C点)まで場合、Kp*2>Z なので、代表的企業は価格を変更します。しかし、代表的企業が直面している状況は、他の企業にとっても同じなので、他の企業も価格を変更するはずです。そうなると価格を変更する企業の割合は、増えていくはずなので、その割合 f は増加していきます。従って、A点から離れていくので、A点は均衡点になりません。
 次に、価格を変更する企業の割合が、fEQ(C点) より大きく、1(B点)までの場合、Kp*2<Z なので、代表的企業は価格を変更しません。
 しかし、代表的企業が直面している状況は、他の企業にとっても同じはずなのに、他の企業の多数が価格を変更しているのは矛盾しています。従って、B点は均衡点ではありません。
 この場合、均衡点はC点です。
 従って、Φ>1の場合は、C点のみが均衡点になります。

**********
 以上の結果から、Φ>1のほうが経済は安定する、ということがわかります。
 Φ<1の場合は、代表的企業は、他の企業と同じ行動をとろうとします。これは、他の企業についても同じです(他の企業も、その企業以外の他の企業と同じ行動をとろうとする)。総需要が起こった直後は、価格を変更した企業は、少ないわけですから、その他の企業は価格を変更しようとしません。従って、すべての企業の平均価格は粘着的になり、平均価格の変動は遅れます。
 一方、Φ>1の場合は、代表的企業は、均衡値の価格から価格が離れれば、他の企業の行動に関係なく、価格を変更します。この場合は、均衡値の価格の周りで平均価格が変動することになりそうです。

 ローマーのモデルの場合、Φ=γー1 で、γー1 は、実質賃金の実質産出量に対する弾力性で、1/(γー1) が労働供給の実質賃金に対する弾力性になります(324-25ページ)。
13052612


13052613


 従って、Φが小さいということは、実質賃金の(実質産出量に対する)弾力性が低い(=実質値の硬直性が高い)、また、労働供給の(実質賃金に対する)弾力性が高い、ということを意味します。Φが大きい場合は、その逆です。

 

ローマー、『上級マクロ経済学』:演習問題 6.6

6.6
 
不完全競争下で価格設定を行う多数の企業からなる経済を想定せよ。代表的企業 i の利潤は、総産出量 y と企業の実質価格 r により決まる。つまり、π =π(y,r )であり、π22 <0とする(右下の添字は偏微分を表す)。r(y)は y の関数としての利潤最大化価格である。このr(y)は、π(y,r(y))= 0 を満たすことに留意せよ。
 現在、生産量がある水準 yにあり、企業 i の実質価格が r(y)であるとする。ここで、マネーサプライに変化が起こったが、他の企業は価格を変更せず、その結果総産出量が新しい水準 yに変化したものと仮定せよ。
(a) 企業が価格調整を行う誘引は、
13052106

で与えられる。その理由を説明せよ。
(b) 上記式を y=y近傍で yに関してテイラー展開(2次まで)し、
13052143


 であることを示せ。
(c) (b)の式のどの部分が実質値の硬直性の程度に対応しているか。また、どの部分が利潤関数の不感応性の程度に対応しているか。
**********

 最初、添え字の使い方がわからなくて悩みました。
 利潤関数は、産出量 y と相対的(実質的)価格 r の関数です。
13052101

 添え字の1は、y で微分することを表しています添え字の2は、r で微分することを表しています
13052102

 従って、π12 は、y で偏微分し、続けてrで偏微分することを表しています。π22 は、r で2階微分することを表しています。 
13052103

 そして、相対的価格 r は、産出量 y の関数と想定されています。
13052105

 そのために、利潤関数 π を産出量 y で微分するときには、注意が必要です(π を y で微分するだけでなく、πを r で微分して、r を y で微分した関数をかけないといけない)。
 そして、r(y) が利潤最大化する相対的価格なので、πは、r(y) で最大値を持ちます。つまり、π を r で微分した関数πは、r=r(y)でゼロになります。ローマーが書いているように、π(y,r(y))= 0 です。また、π22<0 なので、利潤関数 π は、上に凸の関数です(下の図1を参照)。
13052301









**********
(a)
13052106
  
 (1)
 最初の項は、マネーサプライの増加が起こった後の1期に、価格を変更した場合の利潤です。2番目の項は、マネーサプライの増加が起こった1期においても、0期に利潤最大化した価格をそのまま据え置いた場合の利潤です。

(b)
 (1)式の Gを yの関数と考え、2次のテイラー展開で、y=yの近傍で近似すると以下のようになります。
13052107



13052108

   (2)


 まず、最初の項は、(1)式の yに yを代入した値ですから、ゼロになります。
13052109
   (3)

 次に、2番目の項の係数を計算します。
13052110

   (4)

 (4)式の最初の項の計算では、上に書いたように利潤関数πが yの関数で、rも yの関数なので、πを yで微分するときに、πを yで微分した項に、πを r で微分して、r を y1 で微分した関数をかけた項を加える必要があります。
13052111



13052112



 dr(y)/dy を r’(y) と表せば、
13052113


 となります。
 次に(4)式の2番目の項は、

13052114



 となります。この場合は、r(y)は、yの関数ではないので、yで微分するときには無関係です。
 従って、(4)式、∂G/∂yは次のようになります。
13052115



13052116
   (5)
 yに yを代入すれば、
13052117



13052118


 となります。最初の項と最後の項は同じものです。π(y,r(y))は、最初の仮定から、0になります
(r(y)は、0期の利潤を最大化する価格なので、π(y,r(y))=0 です)。
13052119


 つまり、Gをテイラー展開した(2)式は、最初の項に続いて、次の1次の項、∂G/∂y|(y-y) も、ゼロになるわけです。

 次に(2)式の最後の項の係数(Gの2階微分、∂G/∂y)を計算します。(5)式を yで微分すればいいので、
13052120




13052121
   (6)

 となります。まず(6)式の最初の項は、
13052122



13052123


 となります。次に(6)式の2番目の項は、
13052124



13052125


13052126


13052127


 となります。(6)式の最後の項は、
13052128



 です。従って、∂G/∂yは、次のようになります。
13052129




13052130


13052131
   (7)

 ここで、π12=π21です(どちらの変数を先に微分しても同じになる)。また、π(y,r(y))は、最初の仮定から 0 です(r(y)は、1期の利潤を最大化する価格なので、π(y,r(y))=0 です)。
 従って、(7)式は、次のように整理できます。
13052132




13052133


 yに yを代入すれば、
13052134




13052135


13052136


 となります。最初の項と最後の項は同じなので、整理すれば
13052137


13052138
   (8)

 となります。
 ここで、π(y,r(y))=0 という関係を使います。その両辺を yで微分すれば、
13052140


 π22(・・・)を右辺へ移項すれば、
13052141


 これを(8)式に代入すれば、次のようになります。
13052142




 これを(2)式に代入すれば、(2)式は次のように表すことができます。
13052143

   (9)

(c)
 
まず、上記の(9)式から、π22 の値が小さくなれば、(π22<0なので)言い換えると π22 の絶対値が大きくなれば、また r’(y) の変化が大きくなれば(減少しても、増加しても)、価格を変更した場合と、変更しなかった場合との利潤差が大きくなる(Gが増加する)、ということがわかります。その利潤差が大きくなれば、企業が価格を変更するインセンティブは高まります。
 π22 は、利潤関数を相対的(実質的)価格で2階微分したものですから、利潤関数のカーブの度合いを表しています。利潤関数のカーブの度合いが小さくなると、つまり、π22の絶対値が小さくなると、企業が価格を変更するインセンティブは弱まります。
 r’(y)は、利潤最大化する相対的(実質的)価格を、実質産出量 y で微分したものなので、実質産出量に対する相対的価格の変化の割合を表しています。つまり、この値の絶対値が小さくなることは、実質値の硬直性が高くなることを意味します。従って、上記の(9)式は、実質値の硬直性が高くなると、企業が価格を変更するインセンティブは弱くなる、ということも表しています。

プロフィール

沢ひかる

貧乏人。

経済学「部」とは無縁です。

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