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もし貧乏人が経済学を学んだら

7章

ローマー、『上級マクロ経済学』:演習問題 7.6

7.6 消費の過剰平滑を検証するためのフレームワーク
13050501

   
(1) 

13050502
   (2)
とする。

(a) これらの仮定から、E[Ct+1]=C(よって消費はランダムウォークに従うこと)を示せ。

(もうひとつの問題は省略。E[Ct+1]=Cが示されるので、次にE[Ct+2]=Cが成り立ち、同様に期間を将来へずらしていくと、E[Ct+s]=Cが成り立つとわかります。これを、証明する式(左辺)に代入する。)

(b) ΔY=ΦΔYt-1+uであると仮定せよ(uはホワイトノイズ)。Yが Et-1[Y] を1単位上回ったとすれば(つまり u=1 とすれば)、消費はどれだけ増加するか。

(c) Φ>0の場合、所得に生じたショック(所得とその期待値との乖離)(u)と消費に生じたショック(消費とその期待値との乖離)(C-Et-1[C])とでは、どちらの分散が大きいか。このモデルでは、消費者は、貯蓄や借り入れにより、所得との相対で消費の流れを平滑化するか。説明せよ。
(←この問題の後半部分は省略します。答えは、貯蓄や借り入れを増やすかどうかはわからない。)

**********
(a)
(1)式は、t+1期にも成り立つので、Ct+1を求め、その期待値をとると、
13050504



 となります。At+1に(2)式を代入すれば、
13050505



 E[Et+1[・]]=E[・]なので、最後の項のEt+1[・]は、E[・]になります。
 ここからの計算のポイントは、総和記号の中の項をそれぞれ表記して計算することです。
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13050507




13050508


13050509



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13050511



13050512



13050513



 最後の項の r/(1+r){・・・} は、(1)式のCです。従って、
13050514



 となり、E[Ct+1]=Cとなることがわかります。この関係から、t 期において、t+1期の消費については、今期の消費水準と同じだろうということしかわからず、t+1期の消費の変化については予測できないので、消費はランダムウォークに従います。

(b)
 t 期において、t-1 期には予測されていなかった所得の増加(この場合は1)があった場合、そのために変化した t 期の実際の消費と、t-1期において期待されていた、その消費水準との差はどのくらいになるか、という問題です。
 具体的には、t 期の実際の消費水準Cから、t-1期におけるその期待値との差(C-Et-1[C])を計算します。
 t-1期における、t 期の消費の期待値は、(1)式から、
13050518



13050519
   (3)

 
 となります。ここで、Et-1[E[・]]=Et-1[・] という関係を使っています。また、Aは、(2)式から t-1期にわかっている( t-1期の変数で表すことができるので)ので、期待値をはずせます。
 C-Et-1[C]は、(1)式から(3)式を引けばよいので、
13050520

13050521



13050522

   (4)

 総和記号の中の項をそれぞれ表記すると、次のようになります。
13050523



13050524



13050525

   (5)


 ここで、所得の変化は次のように仮定されています。
13050526
   (6)
 t 期に所得が1単位増えたので、u=1 です。また ΔY=1 です。Yt-1 は変化していないので、ΔYt-1 はゼロです。
 そこで、(5)式のそれぞれの項を計算していきます。
 まず、「Yが Et-1[Y] を1単位上回った」ということなので、
13050527   
。(7)
 次に、E[Yt+1]-Et-1[Yt+1] を計算します。まず、(6)式は、t+1期にも成り立ちます。
13050528
   (8)
 また、この(8)式から、
13050529
      (9)
 となります。uはホワイトノイズなので、その期待値はゼロです。
 そこで、E[Yt+1]-Et-1[Yt+1] を計算すると(Yt+1に、Yt+1= Y+ ΔYt+1 を代入する)、
13050530

13050532

 となります。t-1期には、t+1期に所得の変化が起こることはわかっていません(所得の変化が起こるのは t期)。従って、最後の項はゼロです。
13050533

 (7)式から、Y- Et-1[Y] =1、また(9)式から、E[ΔYt+1]=Φ なので、
13050534   (10)

 同様に、E[Yt+2]-Et-1[Yt+2] を計算します。
 まず、
13050535

 が成り立ちます。この関係を使えば、E[ΔYt+2] は、
13050536

13050537
   (11)

 となります。E[Yt+2]-Et-1[Yt+2] を計算すると、
13050538

13050539

13050540


13050541

 E[Yt+1]-Et-1[Yt+1] は、(10)式から 1+Φです。E[ΔYt+2] は(11)式から Φです。従って、
13050542
   (12)

 同様な計算を行えば、次の関係も導けます。
13050543
    (13)


 (7)、(10)、(12)、(13)式を(5)式に代入すれば、次のようになります。
13050523



13050544



13050545



13050546




13050547



 分子が同じ項をまとめます。
13050548



13050549



13050550




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13050552



13050553



 {・・・} の中は、公比が1/(1+r) の等比数列になっています(初項がそれぞれ違いますが)。従って、
13050554



13050555


 今度は、{・・・} の中が初項1、公比がΦ/(1+r) の等比数列なので、
13050556

   (14)


 となります。この値を(4)式に代入すれば、C-Et-1[C]が求まります。
13050557
   (15)

 Φ>0ならば、(15)式の左辺の(1+r)/(1+r-Φ)は1より大きくなります。(1+r)/(1+r-Φ)>1。

 これは、所得が1単位増加すると、消費の増加は、所得の増加以上になる(1以上になる)、ということを示しています。
 こうなる理由は、t 期(今期)の所得が増加したので、将来の所得も同じ方向に動く(この場合は増加する)と期待されるからです。
 これは、将来の各期の所得の、t-1 期における期待値と、(所得の増加が起こった)t 期における期待値との差が、上で計算したように、1、1+Φ、1+Φ+Φ、1+Φ+Φ+Φ・・・ としだいに増加していくことからわかります。つまり、t 期に所得が1単位増加したことで、将来の所得も増加すると期待されているのです。そのため、今期の消費が、所得の増加以上に押し上げられます。

 逆の場合(所得が減少した場合)も同様です。今期の所得が減少すれば、将来の所得も同じ方向に動く(減少する)と期待されます。この場合には、今期の所得が減少したので、将来の所得も減少すると期待されるわけです。従って、消費は、所得の減少以上の割合で削減されます。

(c)
 (b)では、t 期の所得が1単位増加した場合を考えましたが、 増加した場合は、その1単位を uに変えればいいだけです。

 もう一度、各期の所得の、t 期における期待値と、t-1期における期待値との差を計算します。
13050558

 ΔY=ΦΔYt-1+uを代入すれば、
13050559

13050560

 uは、ホワイトノイズなので、その期待値(Et-1[u])はゼロです。従って、
13050568
   (16)
 となります。

 次に、E[Yt+1]-Et-1[Yt+1] を計算します。まず、E[ΔYt+1] を計算します。
13050562
   (17)
 そこで、E[Yt+1]-Et-1[Yt+1] を計算すると、
13050530

13050532

13050533

(16)式から、Y-Et-1[Y]=u 、(17)式から、E[ΔYt+1]=Φuなので、
13050563

 同様に、
13050564
 

 となります。従って、t 期に所得が uだけ変化した場合、t期に実現される消費と、t-1期に期待された水準との差は、
13050565
   (18)

 となります(これは、上の(15)式に uをつけたものです)。

 ある確率変数Xの分散と、その確率変数Xを定数倍した変数(aX)の分散との間には、V(aX)=aV(X) という関係があるので、(18)式から、t 期の消費と t-1期に期待されていたその水準との差 (C-Et-1[C]) の分散と、t 期に生じた所得のショック uの分散との関係は、次のようになります。
13050567

   (19)
 ここで、(16)式から、u=Y-Et-1[Y] なので、uの分散は、t 期の所得と t-1期に期待されていたその水準との差 (Y-Et-1[Y]) の分散です。
 問題(b)の場合と同様に、(1+r)/(1+r-Φ)>1 です。従って、(19)式は、C-Et-1[C]の分散のほうが Y-Et-1[Y] の分散よりも大きくなる、ということを示しています。
 所得の変化があった場合、消費の変化の割合は、所得の変化の割合よりも大きくなる、という(b)で得られたインプリケーションと同じ結果が示されます。

ローマー、『上級マクロ経済学』:演習問題 7.13

7.13 絶対的危険回避度一定の効用のもとでの予備的貯蓄
 2期間生きる個人が、絶対的危険回避度一定の効用関数
13040201
 (1)

 を有しているものとする。利子率はゼロであり、この個人は当初資産を有していないものとし、したがって個人の生涯予算制約は、C+ C= Y+ Y となる。Yに不確実性ないが、Yは平均 Y、分散 σ の正規分布に従うものとする。
(a) 時点効用関数 U(C)=e -γC についてみた場合、U”’(C)の符号はどうなるか。
(b) この個人の期待生涯効用を、Cと、外生的パラメーター、Y、Y、σ、γ の関数で表せ(ヒント:問題7.5の(b)のヒントを参照せよ。)
(c)を、Y、Y、σ、γ の式で表せ。不確実性が存在しない場合、Cの水準はどうなるか。不確実性が増加することで、Cにどのような影響があるか。

**********
(a)省略。プラスになります。3階微分が正、ということが、以下の不確実性の問題と結びついていると思います(確かめていませんが)。

(b)
 1期と2期を合わせた生涯の効用関数が(1)式になるので、1期から見た、その期待値を求めます。
13040202
  (2)

 予算制約(C+ C= Y+ Y )から、C= Y+ Y-Cなので、(2)式の Cに代入すれば、
13040203


13040204
   (3)

 ここで2番目の期待値の項を考えます。確率変数の積の期待値は、それぞれの変数の期待値をかけたものと、共分散との和になります。
13032128

 従って、(3)式の期待値の項は、
13040206


13040207


 Y、Cは1期目にわかっている変数なので、共分散の項はゼロです。また最初の期待値も、期待値をはずせます。(3)式は次のようになります。
13040205
   (4)

 ここで、問題7.5のヒントを使います(問題7.5については、この記事)。問題7.5のヒントでは、確率変数 x が正規分布に従う場合、eの期待値は次のようになる、というものでした(ここで、μ は x の平均で、σは分散です)。
13040208


 確率変数 x が正規分布に従う場合、x を定数倍して、-ax としても上記の関係は成り立ちます(これについては、上記の問題7.5の記事を参照)。その場合、e-ax (=exp(-ax)) の期待値は、次のようになります。
13040209
 

 この関係を使って、(4)式のE[e-γY]を書き換えます。2期目の所得には不確実性が存在し、平均 Y、分散 σ2  の正規分布に従うことになっています(以下2期目の所得の平均の、2期目を表す添え字を省略しています)。
13040210


 これを(4)式に代入します。そうすると、1期、2期を通した生涯効用の、1期目から見た期待値(期待生涯効用は、次のように表せます。
13040211


13040212


13040213
   (5)


(b)
 この個人にとっての最適化は、1期と2期を合わせた生涯効用を最大化することです。(5)式が生涯の期待効用なので、その(5)式を最大にするように、1期目の消費水準を決めることになります。
 そして、(5)式の効用関数は、1期目の消費Cに関して、Cを増加させていくと、あるところまでは増加し、それ以後は減少します(上に凸の関数になっています)。従って、(5)式を最大にする Cを求めるには、(5)式をCで微分し、ゼロと置いて、その関係を満たす Cを求めればいいわけです。
13040214


 
 右辺=0 と置いて、
13040215


13040216


13040217


13040218
  (6)

 両辺の対数をとれば、
13040219

  (7)

(i)2期目の所得に不確実性がない場合
 σは、2期目の所得Yの分散です。2期目の所得に不確実性がなければ、(7)式の γσ/2 の項はゼロになります(分散が不確実性の大きさを表すので)。その場合、1期めの消費Cは、(Y+ Y)/2 となり、2期を通した合計の所得の平均になります。つまり、恒常所得仮説に従って消費することになります。

(ii)2期目の所得に不確実性がある場合
 逆に、2期目の所得Yに不確実性があれば、(7)式の γσ/2 がプラスになり、1期目の消費 Cは減少します。また、その所得水準は、恒常所得仮説に従う場合よりも少なくなります。
 そして、その不確実性が大きくなれば、σが大きくなるので、消費の削減幅はより大きくなります。

 また(7)式から、γ が大きくなっても、1期目の消費 Cが減少する、ということがわかります。この γ は、危険回避度の係数ですから、これが大きくなれば、2期目の所得に不確実性が生じた場合、消費が削減される、というのは理解できます(将来の「危険」が増えるわけなので)。

ローマー、『上級マクロ経済学』:演習問題 7.5

 実は Solution Manual を持っているので答えはわかっているのです(こんなものが web上に転がっているとは思わんかった・・・)。古い版のものなので、この翻訳(原書第3版)に載っている問題が全部載っているわけではありませんが。
 ところで、以下↓の問題の答え、上のSolution Manual の答えは違うような気がします(分散の分母の2を忘れているような・・・)。

7.5
 効用関数は、U(C)=C1-θ/(1-θ)。 実質利子率 r、割引率 ρ。
(a)t と Ct+1 とを関連づけるオイラー方程式を求めよ。
(b)所得の対数値が正規分布に従っており、その結果 Ct+1 の対数値も正規分布に従っているものとしよう。σを時点 t に入手可能な情報のもとでの分散を表すものとする。(a)で求めた式を lnC、E[lnCt+1]、σおよびパラメータ r、ρ、θ で表せ(ヒント: 変数 x が平均 μ、分散 V の正規分布に従っているのであれば、E[e=eμV/2 が成り立つ)。
(c)省略[表記変えるだけです。]
(d)r と σがそれぞれ変化した際に期待消費成長 (E[lnCt+1-lnC]) はどう変化するか。σが期待消費成長に与える影響について、本章6節の予備的貯蓄に関する議論の観点から論じよ。
**********

(a)導出はローマーの本書に載っているので省略。効用関数を指定しない一般的な形では次のようになります。
13040117


 上記の効用関数では、
13040118
  (1)


(b)
 x = exp(log x ) という関係をつかいます。この関係を使って、(1)式の E[Ct+1-θ] を書き換えると、
13040119
   (2)

 ここで上のヒントを使います。ヒントによれば、変数 x が正規分布に従う場合、以下の関係が成り立ちます(注)
13040120

 ここで、μ は、x の平均、V は分散です。言い換えれば、x は正規分布に従うので、
13040121

 ということです。

 ところで、一般的に確率変数 X を定数倍(a倍)したときの期待値と分散は、次のようになります。
13040122


 この関係から、正規分布に従う変数 x を定数倍(a倍)した場合の、期待値(平均)と分散は、
13040123


 となりますが、これは正規分布の変数 x を a倍して、ax とした場合には、平均が aμ、分散が aV の正規分布になる、ということです。
 ヒントによれば、変数 x が正規分布に従う場合、
13040120

 が成り立ちます。その変数 x を -a 倍した場合にも正規分布になります(イメージとしては、x 方向に a倍して、y軸を軸にして、ページをめくるように、マイナス方向に反転させる)。つまり、ヒントと同じ関係が成り立つわけです(新たな平均は-aμ、分散は aV なので)。
13040124
  (3)

 この関係を使って、(2)式の exp(-θlnCt+1) を書き換えます。この問題の設定では、lnCt+1 が正規分布に従い、分散は σです。平均は指定されていないので、c* としておきます。上の(3)式の x が、lnCt+1になるわけです。
13040125


13040126


13040127
   (4)

 最後の式は、時間に関する変数がなくなるので、期待値をはずせるからです。
 c* は、正規分布に従う lnCt+1 の平均なので、次の関係が成り立ちます。
13040128
  (5)

 そこで、この(5)式を(4)式のc* に代入して、
13040129
   (6)


 ここで、最初の(1)式に戻って、(1)式(の両辺)を対数化します。
13040130


 最後の項のE[Ct+1-θ]に(6)式を代入すれば、
13040131


13040132
       //

13040133
   //

13040134
 (7)


(c)

 (7)式の  E[lnCt+1]を移項すれば、次の式になります。
13040135
 (8)

 左辺は、消費の対数値の差になっていますから、消費の成長率(期待成長率)です。

 まず、実質利子率 r の変化の影響を見るために、(8)式を r で微分します。
13040136



 1/θ(1+r) は正になるので、r が増加すると、期待消費成長は増加する(現在の消費は削減される)、ということが示されます。ただし、r の増加に対して、増加率は減少します(r が分母にあるので)。
 また θ は、限界効用の弾力性です。この値が大きくなると、1/θ(1+r) が小さくなるので、期待消費成長率の増加率が減少する、ということがわかります。
 一方、限界効用の弾力性の逆数、1/θ は、限界効用の(異時点間)代替性です。θ が小さくなれば、つまり、異時点間の代替性(1/θ) が大きくなれば、1/θ(1+r) が大きくなるので、期待消費成長は増加します(より多く将来に消費が回される)。

 次に、不確実性の影響を見るために、(8)式を σで微分します。
13040137



 これも、正になるので、σが大きくなれば、期待消費成長が増加することがわかります。σは t+1 期の消費の分散なので、t+1 期の消費に関する不確実性を表しています。つまり、不確実性が大きくなれば、期待消費成長が大きくなるわけです。これは、現在の消費が削られ、貯蓄に回されることにつながるので、6節の予備的貯蓄のメカニズムと同じです。
 σが(t+1 期の消費の分散=不確実性)が大きくなれば、現在の消費が抑制されることは、上の(7)式からもわかります。σが大きくなれば、lnC(左辺)が減少するので。

**********
注)このヒントを確かめておきます。
 x が正規分布に従い、eの期待値を計算すればいいわけです。
13040140



13040141

  (9)

 指数関数(exp(・))の(  )の中を計算します。
13040142



13040143



13040144



 これを(9)式に戻して、
13040146



13040147



 積分の中は、平均 μ+σの正規分布の確率密度関数になっています。従って、この積分の値は1です。
13040148



**********
正規分布の確率密度関数:
13040102



期待値:
13040103



プロフィール

沢ひかる

貧乏人。

経済学「部」とは無縁です。

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