10.12 金融政策に関する権限を委任する場合における、低率のインフレとショックに対する柔軟性のトレードオフ (Rogoff [1985])

 生産量が
131123 (1)
   (1) 
 により与えられ、社会的厚生関数が
131123 (2)

   (2)
 (γは平均γ分散 σγの確率変数)であると仮定せよ。πはγ が既知となる前に決まる。これに対し政策立案者は、γが既知となった後で π を選択する。政策当局の目的関数は
131123 (3)

   (3)
 であると仮定せよ。

(a) 政策当局の選択する π  π,γ,c の関数で表わせ。
(b) πe の値を求めよ。
(c) 真の社会的厚生関数
131123 (2)


 の期待値を求めよ。
(d) 社会厚生の期待値を最大化する C の値を求めよ。この結果はどう解釈できるか。

**********
(a)
 政策決定者の目的関数を最大化する π の値を求めます。政策決定者の目的関数を Wとおくと、
131123 (4)
   (3)

 y に(1)式を代入すれば、
131123 (5)


 となります。これを最大化するπを求めればいいので、πで微分し、1階の条件を求めると、

131123 (6)


 これを満たすπを求めれば、π は次の式になります。
131123 (7)
   (4)


(b)
 人々は政策決定者が上記の(4)式のインフレ率を選択する(目標にする)ということを知っています。したがって、期待インフレ率は(4)式 ( bcγ/a ) の期待値になります。
131123 (8)


 γは平均γ分散σγの確率変数と仮定されているので、γの期待値、E[γ] はγ―  です。したがって、期待インフレ率は次の式になります。
131123 (9)
   (5)


(c)
 社会的厚生関数を Wとおくと、
131123 (10)

   (2)
 この式の期待値を計算すればいいわけです。
131123 (11)


 (1)式の y を代入すれば、
131123 (12)


 次に、(4)式のπ、(5)式のπを代入すれば、
131123 (13)


131123 (14)



131123 (15)
   (6)


 ある確率変数 X の分散と期待値には、次の関係が成り立ちます。
131123 (16)
   (7)

 E[X] の式に直せば、次の関係も成り立ちます
131123 (17)
   (8)

 したがって、この(7)式、(8)式から、γの分散 (σγ) と期待値にも、次の関係が成り立ちます。
131123 (18)
   (9)

131123 (19)
   (10)

 (9)式、(10)式を(6)式に代入すれば、社会的厚生関数 Wとの期待値は、以下のようになります。
131123 (20)

   (11)

(d)
 (11)式の社会的厚生関数の期待値を最大化する C の値を求めます。(11)式を C で微分し、1階の条件を求めれば、
131123 (21)



 となります。これを満たす C の値を求めれば、
131123 (22)
 
   (12)



 となります。

 (4)式から、C が大きくなると、インフレ率πが大きくなるということがわかります。したがって、保守的な政策決定者ならば、目的関数(3)式の C の選択では、低い値を選択すると想定できます。
 C の値は、(1)式の産出量、(2)式の社会厚生に影響を与えません ((1)式と(2)式には C がないので)。政策決定者が低い C の値を選択しても、産出量、社会厚生には影響を与えないことになります。したがって政策決定者が低いインフレ率を重視しているのなら、低い C の値を選択します。

 しかし、(12)式から、C はσγ(γの分散)の増加関数になっています。(γは(2)式から、産出量が社会厚生に与える影響の大きさを表しています。)
 γが平均値からかい離する割合が大きくなると期待されるときには、大きな C の値を選択しなければ、社会厚生を最大化できないことになります((12)式は社会厚生を最大化する C の値)。
 したがって、産出量が社会厚生に与える影響の変動が大きいと期待されるときには、低いインフレ率を重視せず、大きな C の値を選択する政策決定者が望ましくなります。