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もし貧乏人が経済学を学んだら

ラムゼイモデル

Maxima でラムゼイモデル (ラムゼイモデルで r>g)

  最近になってようやく、Maxima というフリーソフトがあることに気づきました。無料のソフトでここまでできれば十分じゃないでしょうか?(といっても使いこなせていないのでよくわかりません。また、プログラムに関してはまったくの素人なので評価もできません。)
img_JIRO

 ぜいたく言うな、なんといってもタダだ



 Maxima のページ(http://maxima.sourceforge.net)からダウンロードするだけで使えます(このページは英語ですが、日本語のマニュアルがインターネット上にいろいろあります)。

 前回の記事で、ラムゼイ・モデルの場合、r (資本収益率、資本からのリターン)の変化や、g (経済成長率)の変化を取り出して示すことははできない(できない?)、と書きました。そこで、今回は、Maxima を使って、ラムゼイモデルの r と g の変化を示してみようと思います(といっても、やはり r と g の変化を方程式のかたちで明示的に示すことはできません)。また、Maxima を使ってラムゼイモデルにおける均衡にいたる経路(サドルパス)を描いてみます。

 しかし、連続時間モデルのままでは解けません。そこで、最初に、ラムゼイモデルを離散時間モデルに直すことが必要です。

 経済の人口増加率は n,知識・技術の増加率を g とします。t期の知識・技術のレベルをA,労働力人口を Lとすると、t+1 期の知識・技術のレベルは A t+1=(1+g)A,t+1 期の労働力人口は Lt+1=(1+n)Lです。
 生産関数は収穫一定とします(つまり、生産要素を t 倍すると、生産量も t 倍になる)。次の関係が成り立ちます。
150214 (1)   (1)

 個人の最適化は次の目的関数を最大化することです(ρは主観的時間割引率です)。また、このモデルの個人は全員同質であると想定します。
150214 (2)
   (2)

 以下、1人当たりの消費 c と資本ストック k には、後から出てくる効率労働当たりの消費と資本と区別するためにハット( ^ )をつけて表記します。
img_JIRO





  
 以下、1人当たりで計算していきますが、1人当たりで考えるのは、個人の最適化(効用最大化)は、個人が1人当たりで考えて行われる、と想定しているからです(ローマーや Barro and Sala-i-Martin の教科書に出てくるラムゼイモデルは「家計当たり」です)。
 個人の予算制約は次のものです。
150214 (3)   (3)

 wは t 期の時間当たり賃金、hは t 期の労働時間、rは t 期の資本1単位からのリターン、iは t 期の1人当たりの投資です。(3)式は、個人は、労働所得と資本所得を所得とし(左辺)、消費と投資に支出する(右辺)、ということを表しています。この(3)式を制約条件として最適化問題を解こうとすると、変数が多すぎます、そこで。
 経済全体では、次の関係が成り立っています(政府支出と税金はなしです)。
150214 (4)
   (4)
 生産(左辺)が消費と投資(右辺)になる、ということを表しています。この(4)式を労働力人口 Lで割ります。生産関数は収穫一定と想定しているので、
150214 (5)



 が成り立ちます。そこで、Lで(4)式をで割ると、
150214 (6)
   (5)
 となります。この(5)式と(3)式を比べると、
150214 (7)

 とならなければならない、とわかります。そこで、(3)式の左辺を f(k^ ) に変えれば、
150214 (6)
   (6)
 です。少し変形すれば、
150214 (8)
   (7)
 となります。これが制約条件になるのですが、最適化問題を解こうとするとまだ変数が多いので、iを消したい(つまり、c と k だけの式にしたい)、そこで。
 経済全体の資本蓄積過程は、次の式で表されます。
150214 (9)

 Kは t 期の経済全体の資本ストックです。Lt+1で割り、1人当たりに直します。
150214 (10)



 Lt+1=(1+n)Lなので、
150214 (12)


 iに(7)式から iを求め代入すれば、
150214 (13)
   (8)

 となります。この(8)式を最適化問題の制約条件とします。ラグランジュ方程式を設定します。
150214 (14) 



 一階の条件として、
150214 (15)
   (9)


150214 (16)
   (10)


150214 (17)
   (11)


 が得られます。ここで、u(・), f(・) の添え字は、その変数で微分した関数であることを表しています。
(9)式、(10)式、(11)式から、
150214 (18)

   (12)

 が得られます。これがこのモデルのオイラー方程式(t 期の消費と t+1 期の消費の関係を表す式)になります。効用関数、生産関数をそれぞれ次のような対数型効用関数、コブ・ダグラス型生産関数とすると、
150213 (9)
   (13)
 (12)式は、
150214 (19)

   (14)

 となります。これを効率労働当たりに直したいです( 効率労働当たり= AL1単位当たりにする)。なぜなら、技術・知識の増減、人口の増減を想定している場合、効率労働当たりに直したほうが、定常状態を考えるときに簡単だからです。技術・知識の増減、人口の増減を想定している場合、定常状態でも、1人当たりのcやkは変化しています。効率労働当たりでは一定と想定できます。
 効率労働当たりの消費を cとすると、(14)式の左辺は、次のようになります。
150214 (20)



 この関係を使って、(14)式の左辺を効率労働当たりの消費に変えると、
150214 (21)

   (15)

 となります。右辺の分子にある、生産関数の1人当たりの資本ストックによる微分は、効率労働当たりに直しても同じです。なぜなら (効率労働当たりの資本ストックを k とします。k =K/(A) です)、
150214 (22)




150214 (23)



 が成り立つからです。したがって、(15)式の右辺を効率労働当たりに直すと、
150213 (8)



 という関係が得られます。生産関数が f(k)=kα ((13)式)なら、
150213 (10)

   


 となります。cを右辺に移項すれば、
150213 (11)

   (16)

 となります。

 既出の(8)式も効率労働当たりに直したいです。(8)式のk^ ,ck^ を k ,c に変える場合、k^ =A, c^ =Aなので、
150214 (24)


 となります。A t+1=(1+g)Aなので、
150214 (25)


 これを整理すれば、
150213 (2)


 となります。生産関数が f(k)=kα ((13)式)の場合、
150213 (12)
   (17)

 となります。この(16)式と(17)式が、効率労働当たりの資本ストックと効率労働当たりの消費の時間変化を表す式です(これを使ってプログラムで計算します)。適当な初期値を与えれば、その後の変化がわかります。

 定常状態を求めておくと、定常状態では、ct+1 = c=c,kt+1 = kt+1 =k になります( は定常値を表します。先に述べたように、効率労働当たりでないとこの関係が使えません)。 定常状態では、(10)式の左辺が 1 になります。
150213 (13)
   (18)

 この関係から、kの定常値 kが求まります。
150213 (14)
   (19)

 また、(17)式から、定常状態では次の関係が成り立ちます。
150213 (15)


 cの式に直せば、
150213 (16)
   (20)
 となります。これに、kを代入すれば、cが求まります。

(1)α=0.36, g=0.02, n=0.01, ρ=0.02, δ=0.1 の場合
 定常状態における k と c の値は、(19)式、(20)式から、
k* = 3.894507656030513
c* = 1.124344360296009
  になります。その均衡から外れた場所から、どのように均衡にたどり着くのかを見てみます。

[a:0.36,n:0.01,g:0.02,delta:0.1,rho:0.02]$
k1[0]:1$
c1[0]:0.5$ 
k1[i]:=(k1[i-1]^a-c1[i-1]+(1-delta)*k1[i-1])/((1+g)*(1+n))$
c1[i]:=(a*k1[i]^(a-1)+1-delta)*c1[i-1]/((1+g)*(1+n)*(1+rho))$

 パラメーターと初期値を与え、(16)式、(17)式から、k と c の漸化式を上記のようにつくります。k と c の値を組み合わせて、リストをつくります。

R1:makelist([k1[i],c1[i]],i,0,30)$

 (R1はリストの名前。Ramsey のRのつもりですが) このリストの離散値をグラフで表示させれば(plot2d(discrete データ名)  という形で離散値データをグラフで表示させる)、 初期値以後の経路が示されます。また、上記の$記号をセミコロン(;)に変えて、プログラムを実行させれば、それぞれの数値も示してくれます。ただし、上記の初期値では、均衡にたどりつけません。

  適当に値を入れながら、探していくと・・・  最初の効率労働当たりの資本ストック k が 1 のとき、均衡にたどり着くのは、消費の初期値が 0.54815 のときです。そこで、それより低い c=0.5 のときと、それより高い c=0.58 のときも合わせてグラフに描くと次のようになります。

k1[0]:1$
c1[0]:0.5$ 
k1[i]:=(k1[i-1]^a-c1[i-1]+(1-delta)*k1[i-1])/((1+g)*(1+n))$
c1[i]:=(a*k1[i]^(a-1)+1-delta)*c1[i-1]/((1+g)*(1+n)*(1+rho))$

k2[0]:1$
c2[0]:0.54815$ 
k2[i]:=(k2[i-1]^a-c2[i-1]+(1-delta)*k2[i-1])/((1+g)*(1+n))$
c2[i]:=(a*k2[i]^(a-1)+1-delta)*c2[i-1]/((1+g)*(1+n)*(1+rho))$

k3[0]:1$
c3[0]:0.58$ 
k3[i]:=(k3[i-1]^a-c3[i-1]+(1-delta)*k3[i-1])/((1+g)*(1+n))$
c3[i]:=(a*k3[i]^(a-1)+1-delta)*c3[i-1]/((1+g)*(1+n)*(1+rho))$

[a:0.36,n:0.01,g:0.02,delta:0.1,rho:0.02]$
R1:makelist([k1[i],c1[i]],i,0,30)$
R2:makelist([k2[i],c2[i]],i,0,30)$
R3:makelist([k3[i],c3[i]],i,0,13)$

plot2d([[discrete,R1],[discrete,R2],[discrete,R3],x^a-(n+g+g*n+delta)*x,[parametric, 3.894507656030513, t,[t,0,1.7]],[parametric, 1, t,[t,0,0.6]]],[x,0,14],[y,0,1.7],[color,blue,red,green,magenta,gray,gray],[legend, "c(0):0.5", "0.54815","0.58","","",""],[xlabel, "k"],[ylabel, "c"]);

15021201

















 ピンクの曲線は、定常状態 kt+1 = kt+1= k  が成り立つ軌跡(つまり、(20)式)を表しています。k=3.894507656030513 のグレーの直線は、定常状態 ct+1 = c= cが成り立つ軌跡(つまり、(18)式、(19)式が成り立つ k の値です)を表しています。その両者の交点が均衡です。最初の効率労働当たりの資本ストック k が 1 のとき、均衡にたどり着くのは、c の初期値が 0.54815 のときだけ(赤いライン)とわかります。この赤いラインがいわゆるサドルパス(鞍点経路)です。

 それぞれの変数の時間変化も簡単に示せます。離散時間 ( i=0,1,2, ・・・ )とそれぞれの変数で新たなリストをつくって表示させれば、その変数の時間変化を示すことができます。サドルパスを通って均衡に近づいていく場合、c と k の両方が増加することは上の図からもわかりますが、例えば、c の場合、次のプログラムを上記のプログラムに続けて実行させるだけです。

Cdata:makelist([i, c2[i]], i, 0, 30)$
plot2d([discrete,Cdata],[x,-5,30],[y,0,1.5],[xlabel, "t"],[ylabel, ""],[legend, "c"]);

15021203

















 r (資本の収益率、資本からのリターン) を示す場合には、次の r の式にもとづいて、それぞれの k の値から r を求め、それをリストにして表示します。
150213 (17)
 (21)

 上記のプログラムに続いて、次のプログラムを実行させます。
rdata:makelist([i, a*k2[i]^(a-1)-delta], i, 0, 30)$
plot2d([discrete,rdata],[x,-5,30],[y,0,0.4],[xlabel, "t"],[ylabel, ""],[legend, "r"]);
15021204


















(2) n (人口増加率)と g (知識・技術の増加率)が、それぞれ2%と3%から、1%と2%に低下した場合
 つまり、経済成長が低下する場合です。他のパラメーターの値は、上記の場合と同じとします。
 n (人口増加率) と g(知識・技術の増加率)が、それぞれ2%と3%のとき、定常状態における k と c の値は、(19)式、(20)式から、
k*=3.182306091427404
c*=1.037750016414477
 です。しかし、n と g が変化した後に、その初期値から出発すると、新たな均衡にだどりつきません。それは、初期値をその値にして、上記のプログラムを実行させればわかります(下の図の青いライン)。
 
k1[0]:3.182306091427404$
c1[0]:1.037750016414477$
k1[i]:=(k1[i-1]^a-c1[i-1]+(1-delta)*k1[i-1])/((1+g)*(1+g))$
c1[i]:=(a*k1[i]^(a-1)+1-delta)*c1[i-1]/((1+g)*(1+n)*(1+rho))$

k2[0]:3.182306091427404$
c2[0]:1.00365$ 
k2[i]:=(k2[i-1]^a-c2[i-1]+(1-delta)*k2[i-1])/((1+g)*(1+n))$
c2[i]:=(a*k2[i]^(a-1)+1-delta)*c2[i-1]/((1+g)*(1+n)*(1+rho))$

[a:0.36,n:0.01,g:0.02,delta:0.1,rho:0.02]$
R1:makelist([k1[i],c1[i]],i,0,15)$
R2:makelist([k2[i],c2[i]],i,0,30)$

plot2d([[discrete,R1],[discrete,R2],x^a-(n+g+delta+n*g)*x,x^0.36-0.1506*x,[parametric, 3.894507656030513, t,[t,0,1.7]],[parametric, 3.182306091427404, t,[t,0,1.04]]],[x,0,14],[y,0,1.6],[color,blue,red,magenta,green,gray,gray],[legend, "c(0): 1.03775","1.00365","","","",""],[xlabel, "k"],[ylabel, "c"])$

 (k1,c1 が、n と g が低下する前の均衡におけるk と c の値を初期値として出発した場合、k2,c2 が均衡に到達できる経路、つまり、 c を 1.037750016414477 から1 .00365 に低下させて出発した場合)
15021205

















 n=0.02,g=0.03 のときの均衡は緑の曲線とグレーの直線の交点です。そして、n=0.01,g=0.02 に低下したとき、その均衡から出発すると、青いラインの経路にしたがって、左上に移動していきます。経済が新たな均衡に到達するためには、c を低下させなければなりません。まず瞬時的に c を 1.037750016414477 から1.00365 に低下させ、サドルパス(赤いライン)に乗るようにし、そこから均衡に向かっていく、ということがわかります(赤いライン)。
 (この図を見ると、g (知識・技術の増加率) が低下しているのに消費が増えていて変だと思われるかもしれませんが、これは「効率労働当たり」の消費です。「1人当たり」の消費成長率は低下しています。)


 この場合、 r と g (経済成長率)はどのように変化するでしょうか? r (資本収益率)は(21)式を使い、上記の方法で示すことができます。g (経済成長率)は連続時間モデルの場合、
150213 (18)


 となります(知識・技術の増加率 g と区別するために、ここでは gと表記しています)。離散時間モデルでは時間微分が使えないので、最後の項を次のように変えます。
150213 (19)
   (22)


 この式をもとにして、gのリストをつくって表示させます。(ただし、(22)式のかたちからわかるように、i=0 の時点の gのデータが欠けます。グラフに示したとき、その部分が欠けてしまうので、以下のプログラムでは、i=-1 のときの k,c 値 (k(-1),c(-1)) を(19)式、(20)式から逆算して求め、その値をもとにして、i=0 のときの gを求め、リストに加えています。)

rdata:makelist([i, a*k2[i]^(a-1)-delta], i, 0, 30)$
G1data:makelist([i, g+n+a*(k2[i]-k2[i-1])/k2[i-1]], i, 1, 30)$
Gdata:cons([0,0.0429],G1data)$

plot2d([[discrete,rdata],[parametric,t,0.071612,[t,-5,0]],[discrete,Gdata],[parametric,t,0.05,[t,-5,0]],[parametric, 0, t,[t,0.0429,0.05]]],[x,-5,30],[y,0,0.09],[xlabel, "t"],[ylabel, ""],[color,red,red,blue,blue,blue],[legend, "r","","g", "",""]);

15021206

















 前回の記事で紹介したソローモデルの場合と同様に、知識・技術の増加率( g ) と人口増加率( n )が低下すると、r と g のギャップが広がるということがわかります。ソローモデルの場合と同様に、g は瞬時的に下がりますが、r はゆっくりとしか低下しないからです。

 しかし、ラムゼイモデルの場合、ソローモデルに比べて、収束していく速度(r と g の差が一定の値に収束する速度)がソローモデルに比べて速いということもわかります(前回のソローモデルが g+n=8% から 4% への低下で、今回のラムゼイモデルが g+n=5% から 3% への低下で、比較しにくいですが)。

 こうなる理由は、ソローモデルが貯蓄率一定を想定しているのに対して、ラムゼイモデルでは、個人が将来を考え、消費と貯蓄(投資)を調整しているからです。そのために調整が速く行われます。ラムゼイモデルでは、定常状態でも r>g となりますが(ソローモデルでは、定常状態では r=g )、逆にラムゼイモデルでは、定常状態への収束は速くなります(いっぽう、ソローモデルでは、定常状態では r=g となりますが、いったん差ができると、r>g の差がかなりの期間持続する、という結論が得られます。ただし、ソローモデルには個人の最適化が組み込まれていない、という問題がありますが)。

 ピケティは、ソローモデルもラムゼイモデルも、格差を想定していないモデルは現実を説明するときにはあまり信用できないと考えているので、どっちもどっちということでしょう(例えば、こちら)。

ラムゼイモデルで人口減少を見る

 以前に同じような記事を書きましたが、説明が正確でなかったので訂正版を書きました。

 結論から言うと、ラムゼイモデルでは人口減少の「現実的な」影響を説明することができないように思います。

 以下、知識(技術)の増加率を g、人口成長率を n、時間割引率(時間選好率)を ρ とします。また、消費の効用関数の限界効用の弾力性(にマイナスを掛けたもの)をθとします(異時点間の代替性は、1/θ となります)。資本消耗はないと想定します。

(1)ローマ、『上級マクロ経済学』のモデル
 資本の動学は、
140811 (1)
   (1)
 消費の動学は、
140811 (3)

   (2)

で表されます( k(t) = dk(t)/dt です) 。
 定常状態では、dc/dt 、dk/dt  が 0 になります( dc/dt =0、dk/dt =0)。
 まず、dk/dt =0 の軌跡を求めると、(1)式の左辺が 0 になるということなので、定常状態での効率労働当たりの資本ストックを k とすると、
140811 (2)
   (3)
 が成り立ちます。消費 c は、生産関数 f(k) と直線 (n+g)k との差になる、ということです。
14081109










   図1


 したがって、dk/dt =0 の軌跡をを (k,c) の空間に描けば(c は、 f(k) から (n+g)k を引いたものです) 、図2のような上に凸の曲線になります。

 次に、dc/dt =0 の軌跡を求めると、(2)式の左辺が 0 になるということなので、
140811 (4)
  (4)
 が成り立ちます。したがって、dc/dt =0 の軌跡は、(4)式を満たす k になります。これは、図2のような縦の直線になります((4)式に c がないので)。
14081101







   図2



 定常状態は、dk/dt =0 と dc/dt =0 との交点です。図2の E です。

 ここで人口増加率 n が低下したとします。
 (2)式、あるいは(4)式には n がないので、dc/dt =0 の直線はシフトしません。

 いっぽう、(1)式、あるいは(3)式には n が入っています。したがって、dk/dt=0 の軌跡は変化します。(3)式から、n が小さくなると、c が大きくなる、とわかります。dk/dt=0 の軌跡は上へシフトします(下の図3)。

14081102







   図3



 定常状態は、dk/dt =0 と dc/dt =0 との交点です。経済は図3のEから、新たな定常状態へ向かって上へ移動します。ラムゼイモデルでは、消費 c はジャンプ変数(操作変数)です。瞬時に変化できます(いっぽう、資本 k は状態変数で、すぐに変化できない。資本ストック k は「その経済において歴史的に決定されており・・・不連続に変化することはできない」。対照的に、消費 c は、「変化(ショック)の生じたその時点において不連続に変化(ジャンプ)できる(ローマー、78ページ) 注1)。
 したがって、この場合( kの変化は生じないので)、新たな均衡への移動は、瞬時に(比較的短い時間で)行われます。
 効率労働当たりの資本 k は変化せず、効率労働当たりの消費が増加することになります。ただし、経済全体のGDP(産出量)は減少します。経済成長率は次の式で表されます。
150209 (22)


 a は知識・技術の増加率。a も資本ストック(第3項)も変化していなくて、n(人口増加率)が減少するので、経済成長率は減少します。

 こういうこと(1人当たりの消費が増加する)が、人口が減少している今の日本で起こっている(あるいは起こった)と考えるのは難しい。

(2)ブランシャール("Lectures on Macroeconomics") のモデル
 資本の動学は、ローマーと同じ、
140811 (1)

 です。消費の動学は、ローマーとはちがうものです。
140811 (5)

   (5)

 (この式の導出はこちらを参照してください。注2)。

 人口増加率nが減少した場合、dk/dt =0 の軌跡の変化は、ローマーの場合と同じです。上へシフトします(下の図4)。
 dc/dt =0 の軌跡の変化は、ローマーの場合と違います。それを求めると、(5)式の左辺 dc/dt が 0 になる、ということなので、
140811 (6)
   (6)
 が成り立ちます。これは図2と同じ縦の直線です。

 しかし、(6)式の場合、n が減少すると、f’(k) が減少します。f’(k) が減少すれば、k は増加します。したがって、n が減少すると、dk/dt =0 の軌跡は右にシフトします(下の図4)。
14081110






 図4




 経済は、新たな均衡 E’に移動するのですが、これだけではどのような動きをするのかわかりません。均衡に到達する経路は、鞍点経路(サドルパス)です。サドルパスが E よりも上にあるか、下にあるかで経済の動きが違うものになるからです。

(a) サドルパスが E よりも上にある場合
14081104









   図5

 経済は、まず、サドルパスまで上へジャンプします。消費 c はジャンプ変数で、瞬時に変化できます。その後、サドルパスに従って、新たな均衡 E’へ長い時間をかけて進んでいくことになります。

 このパターンの場合、最初、効率労働当たりの消費が瞬時的に増え、その後、効率労働当たりの資本と消費がじわじわと増加していくことになります。

(b) サドルパスが E よりも下にある場合
14081105








   図6


 経済は、まずサドルパスまで下へジャンプします。その後、サドルパスに従って、資本と消費を増やしながら、新たな均衡へゆっくりと進んでいきます。

 このパターンの場合、最初、効率労働当たりの消費が瞬時的に減少し、その後、効率労働当たりの資本と消費がじわじわと増加していくことになります。
 いったん消費を減少させるのは、将来、1人当たりの資本ストックが増加すること――正確に言えば、将来の1人当たりの資本ストックを増加させれば効用最大化できること――がわかっています(ラムゼイモデルは合理的期待モデルです)。資本を増加させるために、いったん消費を減らすのです。

 さて、上の3つのパターンのどれが、現在の日本の人口減少の状況に近いでしょうか。
 3つめのパターンが今の日本の状況に近いように思えます(消費が一時的に減るから)。しかし、消費がいったん減少するのは、将来、1人当たりの資本ストックが増加すると人々が期待している(そして、消費も増加する)からです。これが今の日本の状況に当てはまるとは思えません。


 なぜ、図6で新たな均衡 E’が右上にあるのに、経済は右上に動かずに、下に移動するのか?

 E から右上に動いていくと、下の図7のように、(位相図の動学にしたがい)紫の矢印のにしたがって F の方向に進み、消費が増大し、資本を食いつぶすことになります。わざわざ厚生を悪化させる方向に進むのは非合理的です。 
14081106







   図7



 消費(ジャンプ変数、操作変数)は調整可能です。経済は縦方向には自由に動けます。新たな均衡 E’に到達する経路はサドルパス(だけ)です。経済は新たな均衡E’に到達できるように、消費を不連続に変化させ(消費を減少させ)、サドルパスに乗るようにするのです。



注1) 斎藤他『マクロ経済学』のラムゼイモデルの説明に物足りなさを感じるのはこの点です。
消費 c は、ジャンプ変数(操作変数)で不連続に変化できる。いっぽう資本 k は、状態変数で連続的にしか変化できない(この説明は、チャンの『現代経済学の数学』にもあります)。
 この区別が書かれていません。
 そのため、上の図7のような、Fに至る経路が起こりうるかのような印象を与える説明になっています。


注2) なぜ、ローマーのモデルでは、消費の動学方程式に人口増加率 n が入ってこず、ブランシャールのモデルでは人口増加率 n が入ってくるのかわかりません。想定している予算制約式が違います。ブランシャールの場合、資本の動学方程式を予算制約式にしています。
140811 (1)

 逆に、ローマーの予算制約式の仮定をどのように変えれば、人口増加率 n が入ってくるようになるのかわかりません。たぶん、効用最大化の単位が家計当たり[家計の効用を最大化する]か、1人当たり[1人の個人の効用を最大化する。こちらには人口増加率の n が入ってくる]か、という違いだと思うのですが・・・ どうでしょうか?


ローマー、『上級マクロ経済学』:演習問題 2.9

2.9 ラムゼイ=キャス=クープマンズ・モデルにおける資本課税 
 均斉成長経路上にあるラムゼイ=キャス=クープマンズ・モデルの経済について考えてみよう。ある時点(時点0 と呼ぶことにする)において、政府が政策を転換し、投資による所得に一定率τで課税すると仮定せよ。よって、家計にとっての実質利子率は r(t) = (1-τ)f’(k(t)) となる。政府は、この税金によって得られる収入を一括所得移転により均等に家計に還元するものとする。さらに、この税制変更は予期されていなかったと仮定せよ。
(a) この課税は、c=0 曲線および k=0 曲線にそれぞれどのように影響するか。
(b) この経済は、税制変更に対し、時点0 においてどういう変化を示すか。時点0 以降はどう変化するか。
(c) 新しい均斉成長路において、c と k は、以前の均斉成長路における値と比べてどう変化しているか。
(d) (本問はBarro, Mankiw, and Sala-i-Martin [1995] にもとづいている。)
 このような経済が多数存在するものと仮定せよ。各国において、労働者の嗜好は同じであるが、投資所得に対する税率は異なるものとする。また、各国とも均斉成長路上にあるものと仮定する。
(i) 均斉成長路における貯蓄率 (y* -c)/* y はτの減少関数であることを示せ。
(ii) τが低く、k が高い高貯蓄国の国民は、低貯蓄国に投資する誘因を持つか。
(e) (c)の答えから考えて、投資に補助金を与え(すなわちτ<0 とする)、この補助金の財源を定額税によりまかなう政策は、経済厚生を増加させるといえるか。
(f) 政府が課税による税収を国民に還元しないで、自ら財、サービスの購入に利用した場合、(a)と(c)の答えはどのように変わるか。

**********
(a)
 政策が変更される前の消費の動学は
140222 (1)
   (1)

 で表されます。
 政策が変更された後は、資本所得に課税され、 実質利子率が r(t) = (1-τ)f’(k(t)) となるので、
140222 (2)
   (2)


 となります。均斉成長路では c=0 となるので、(2)式から( (2)式の右辺の分子が 0 になる)、
140222 (3)
   (3)
 という関係が得られます。新たな均斉成長路での効率労働単位当たりの資本ストック(それを k*new とすると)は(3)式を満たすものです。変形すれば、
140222 (4)
   (4)

 となります。
 いっぽう、政策変更前の均斉成長路での効率労働単位当たりの資本ストックは( (1)式の右辺の分子が 0 になるものなので)
140222 (5)
   (5)

 の関係を満たすものです。
 (4)式と(5)式の右辺を比較すると、τは 0<τ<1 なので、
140222 (6)


 という関係が成り立ちます。したがって、
140222 (7)

 

 となります。これは、生産関数 f(・) は限界生産性逓減の関数( f’(・)>0,f”(・)<0 )なので、k*new は k* より小さくなる、ということを意味します。
140222 (8)
 

 したがって、c=0 の軌跡は左にシフトします(下の図を参照)

 いっぽう、効率労働当たりの資本ストックの動学は
140222 (9)
   (6)
 で表されます。均斉成長路では k=0 となるので、
140222 (10)   (7)

140222 (11)
   (8)
 という関係が得られます。k=0 の曲線は(7)式、(8)式を満たすものです。
 資本所得に課税されて減少する所得は、再び一括所得移転で帰ってくるので、家計の所得は変化しません。言い換えれば、τは(6)式、(7)式、(8)式には入ってきません。したがって、k=0 曲線はこの政策変更によって変化しません。

14022301







   図1




 (b)
 
k (資本ストック)は不連続に、瞬時的に変化することができません(これは c=0曲線のことではありません。)。いっぽう、家計の消費 c は、変化(ショック)が生じた時点で、不連続に、瞬時的に変化(ジャンプ)できます。
 0 時点で政策変更が発表されると(これは予期されていないものです)、資本所得に課税されることになり、貯蓄(投資)に対するリターンが少なくなるので、家計は貯蓄を減らし、消費を増やします。したがって、c は 0時点で上方にジャンプします。その後は鞍点経路(サドルパス)に従って、新たな均衡に移動します。(上の図を参照)

(c)
 上の図からわかるように、均斉成長路上の効率労働単位当たりの資本ストック k と消費 c は、ともに低下します。
 新たに導入された資本課税は「ゆがみ」を与えていることになります。最初の均衡で達成できていた、家計にとっての生涯効用最大化が、この税金のために達成できなくなったということです。

  このケースが与える現実的なインプリケーションは、法人税のような資本課税はなくしたほうがいい、というものになります。ただし、このインプリケーションが成り立つ条件は、最初の均衡が最適である、ということ(そこでの資本ストックが過剰蓄積でないということ)です。過剰蓄積になっている場合は、資本課税をしたほうが最適になります。

(d)(i)
 (3)式から、均斉成長路ではτが増加すると、f’(k*) が大きくなり、k* が小さくなる、ということがわかります。したがって k はτの減少関数です。
140222 (12)
   (8)

  貯蓄率を s とすると、f(k(t))-c(t) = sf(k(t)) なので(本来、ラムゼイモデルでは s は時間とともに変化するので s(t) としたほうがいいですが、ここで関心があるのは均斉成長路上での変化なので(つまり時間変化が止まっている)、問題ありません)、(5)式は
140222 (13)

 と表すことができます。均斉成長路では k=0 なので、
140222 (14)
 

 となります。s の式に直せば、
140222 (15)



 です。τで微分すれば、
140222 (16)



140222 (17)


 f’(k*)k*/f(k*) は、(効率労働1単位当たり)産出量の資本ストックに対する弾力性なので、これを αとおけば、
140222 (18)


 α<1 (通常1/3ぐらい)なので、また(8)式から、これは 0 より小さくなります。したがって、τが増加すれば、貯蓄率は下がります。

(d)(ii) τが低く、kが高い高貯蓄国の国民は、低貯蓄国に投資する誘因を持つか。

答え: 持たない。

 すべての国は「同質」です。したがって、同じρやθの値をもちます。そうすると、(3)式
140222 (3)
  (3)
 の右辺はすべての国で同じになる、ということです。 (3)式の右辺、ρ+θg が同じであるため、τが低く、k が高い高貯蓄国の (1-τ)f’(k) と、他の低貯蓄国の (1-τ)f’(k) も同じ値になります。低貯蓄国では、貯蓄が低いために k が低くなっており、f’(k) は大きくなっています(これは低貯蓄国では課税前のリターンは大きいということです)。しかし、その分τも大きくなっているわけです。

(e) 投資に補助金を与え(すなわちτ<0 とする)、この補助金の財源を定額税によりまかなう政策は、経済厚生を増加させるといえるか。

答え: 厚生を増加させない。

 新しい均斉成長路への移動は、前と反対になります。下の図のようになります。
14022302





   図2





今度は、投資のリターンが増えるので、家計は 0時点で貯蓄(投資)を増やし、消費を減らします。c は下方にジャンプします。その後、鞍点経路(サドルパス)にしたがって、新たな均衡(均斉成長路)へ移動していきます。
 新たな均斉成長路では、以前より、効率労働当たりの消費も資本ストックも増加しているのに、どうして厚生が悪化しているのか?

 まず、家計は最初の均衡(均斉成長路)において、生涯効用を最大化するようにすでに調整しています。

 新たな均斉成長路では消費水準は高くなりますが、そこに至るまでに、いったん経済は下にシフトするので、家計は低水準の消費と、したがって低水準の効用の期間を長い時間経験することになります。

 そのために、将来、消費水準が高くなったとしても、それに伴う生涯効用の増加分は、新たな均衡に至るまでの間の生涯効用の減少分を上回らないのです(将来の効用は割引現在価値で評価されます)。したがって、この政策は最適ではありません。

(e) 省略。
 今度は、図1の k=0 曲線も下にシフトします。

プロフィール

沢ひかる

貧乏人。

経済学「部」とは無縁です。

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