M B K 48

もし貧乏人が経済学を学んだら

Eggertsson

ニューケインジアンのIS曲線と労働供給曲線 (Eggertsson の場合)

 2年ぐらいまえに Gali の本を参考にして書きましたが、かえってわかりにくくなっているので、書き直しました。ポイントは、対数化し、それぞれの項をテイラー展開で1次近似 です。テイラー展開を使う、他の近似の方法もあります(例えば、便利な方法として、
$X_{t}\simeq\overline{X}e^{\tilde{X}_{t}}$
 
$e^{\tilde{X}_{t}}\simeq 1+\tilde{X}_{t}$.  ここで、$\overline{X}$ は定常値。$\tilde{X}_{t}$ は定常値からのかい離値)。
 が、このモデルでは、以下の方法が一番かんたんだと思います。

$\displaystyle \hat{Y}_{t}= E_{t}[\hat{Y}_{t+1}]-\frac{1}{\sigma}(i_{t}-E_{t}[\pi_{t+1}]-r^*_{t})$

エガートソン(Eggertsson) の論文(例えばこれ)に出てくるこの方程式の導く方法は、以下のようになります。

----------
 モデルの各家計の効用関数は以下のものです。
$E_{t}\displaystyle \sum_{T=t}^{\infty}\beta^{T-t}[u(C_{T})-\psi_{T}v(l_{T})]\xi_{T}$   (1)

 予算制約は次の式です。
$P_{t}C_{t} +B_{t}=(1+i_{t-1})B_{t-1}+P_{t}W_{t}l_{t}+\displaystyle \int_{0}^{1}\Pi_{t}(i)di-T_{t}$   (2)

 β は主観的時間割引因子、$C_{t}$ は消費、$l_{t}$ は労働供給で、関数 u(・) は消費の効用関数で、関数 v(・) は労働の不効用を表す関数です。ショック $\xi_{t}$ は、人々が、消費の効用と労働の(不)効用を合わせた現在の効用を、将来の効用と比較して、大きくしたり小さくしたりする主観的な因子です。消費と労働が一定でも(その場合、本来なら効用は一定ですが)、これが大きくなると効用が大きくなり、これが小さくなると効用が小さくなる。ショック $\psi_{t}$ は、人々が、消費の効用と比較して、労働の(不)効用を大きくしたり、小さくしたりする主観的な因子です。これが大きくなると、労働の(不)効用が大きくなり、逆に小さくなると労働の(不)効用が小さくなる。
 予算制約式(2)の $B_{t}$ は債権で、$i_{t}$ は名目金利、$W_{t}$ は実質賃金で、$\Pi_{t}(i)$ は、企業 i から家計が受け取る所得(株の配当金のようなもの)です。ニューケインジアンモデルでは企業が独占的競争をしていて、企業はプラスの利潤を得ることができます。その分賃金は低くなる(つまり、マークアップが存在する)。その利益が家計に還元されると想定されているわけです。

(2)式の予算制約の下で、(1)式の効用最大化の問題を解きます。
ラグランジュ方程式を使うと、ラグランンジュ方程式は次のようになります。
$L\displaystyle \equiv {}_{ }E_{t}\sum_{T=t}^{\infty}[\beta^{T-t}\{u(C_{T})-\psi_{T}v(l_{T})\}\xi_{T}$
$+\displaystyle \lambda_{T}\{(1+i_{T-1})B_{T-1}+P_{T}W_{T}l_{t}+\int_{0}^{1}\Pi_{T}(i)di -T -P_{T}C_{T} -B_{T}\}]$
   (3)

 t 期と t+1 期の部分だけを書き出すと(以下の計算で必要ない変数は書いてません)。

$L=\{u(C_{t})-\psi_{t}v(l_{t})\}\xi_{t} +\lambda_{t}(P_{t}W_{t}l_{t}- P_{t}C_{t} -B_{t}\cdots)$

$+E_{t}[\beta\{u(C_{t+1})-\psi_{t+1}v(l_{t+1})\}\xi_{t+1}$

$+\lambda_{t+1}\{(1+i_{t})B_{t} + P_{t+1}W_{t+1}l_{t+1} -P_{t+1}C_{t+1}\cdots\}]$
     (4)

 $C_{t}$,$l_{t}$,$B_{t}$,$C_{t+1}$ で(4)式を微分し1階の条件を求めると、

$\displaystyle \frac{\partial L}{\partial C_{t}}= u_{c}(C_{t})\xi_{t}-{}^{ }\lambda_{t}P_{t}=0$   (5)
                (添え字は、その変数による微分を表しています)

$\displaystyle \frac{\partial L}{\partial l_{t}}= -\psi_{t}v_{l}(l_{t})\xi_{t} + \lambda_{t}P_{t}W_{t}=0$   (6)

$\displaystyle \frac{\partial L}{\partial B_{t}}= -\lambda_{t}+E_{t}[\lambda_{t+1}(1+i_{t})]=0$   (7)

$\displaystyle \frac{\partial L}{\partial C_{t+1}} = E_{t}[\beta u_{c}(C_{t+1})\xi_{t+1}- \lambda_{t+1}P_{t+1}]=0$  (8)

 (5)式から $\lambda_{t}$ を求め、(8)式から $\lambda_{t+1}$ を求め、(7)式に代入すると、

$\displaystyle \frac{u_{c}(C_{t}) \xi_{t}}{P_{t}} = \beta(1+i_{t}) E_{t}[\frac{u_{c}(C_{t+1}) \xi_{t+1}}{P_{t+1}}]$

 が得られます。少し変形すると、

$1= E_{t}[\displaystyle \beta (1+i_{t}) \frac{u_{c}(C_{t+1})}{u_{c}(C_{t})} \frac{\xi_{t+1}}{\xi_{t}} \frac{P_{t}}{P_{t+1}}]$   (9)

 となります。次に(5)式から $\lambda_{t}$ を求め、(6)式に代入すると、

$-\psi_{t}v_{l}(l_{t})\xi_{t} +  u_{c}(C_{t})\xi_{t}W_{t}=0$

 が得られます。少し変形すれば、

$W_{t}=\displaystyle \frac{\psi_{t}v_{l}(l_{t})}{u_{c}(C_{t})}$   (10)

 となり、消費(消費の限界効用)、労働供給(労働の限界効用)、賃金の関係を表す式になります(Eggertsson の論文に載っているもの)。


(1) IS曲線の導出
 まず(9)式に関して、両辺の対数をとります。

$0 = E_{t}[\log\beta+\log(1+i_{t})+\log u_{c}(C_{t+1})-\log u_{c}(C_{t})$

$+\log\xi_{t+1}-\log\xi_{t}+\log P_{t}-\log P_{t+1}]$
   (11)

 Eggertsson は、次のような表記を使っています。
$\pi_{t+1}=\log P_{t+1}-\log P_{t}$, 
$\overline{r}\equiv\log\beta^{-1}$,  
$i_{t}=\log(1+i_{t})$.
( $\log P_{t+1}-\log P_{t}$ を $\pi_{t+1}$ とするのは、 $\log P_{t+1}-\log P_{t}=(P_{t+1}-P_{t})/P_{t}$
と近似できるからで
す。また、$i_{t}$ は、$i_{t}$ が 0 に近いときには、$\log(1+i_{t})$ と近似できるからです。)
 これらの表記を使えば、(11)式は、

$0 = E_{t}[-\overline{r} +i_{t}++\log u_{c}(C_{t+1})-\log u_{c}(C_{t})$

$+\log\xi_{t+1}-\log\xi_{t}- \pi_{t+1}]$
   (12)

 となります。

 ここで、一般的に変数 $X_{t}$ の対数値は、$X_{t}$ の定常値を $\overline{X}$ とすると(そして、$X_{t}$ はその定常値から大きくはずれないとして)、テイラー展開の1次までの近似で、

$\displaystyle \log X_{t}\simeq\overline{X}+\frac{1}{\overline{X}}(X_{t}-\overline{X})$

 と近似できます。右辺の第2項、$(X_{t}-\overline{X})/\overline{X}$ は定常値からの乖離値( $X_{t}$ と $\overline{X}$ の差の $\overline{X}$ に対するパーセンテージ)なので、これをハット(^)付きの変数で表せば、

$\log X_{t}\simeq \log\overline{X} + \hat{X}_{t}$   (13)

と表せます。

 この近似を使えば、$\xi_{t}$ は、

$\log\xi_{t}\simeq \log\overline{\xi} +\hat{\xi}_{t}$   (14)

 と近似できます( $\overline{\xi}$ は、$\xi_{t}$ の定常値)。同様に、$\xi_{t+1}$ は、

$\log\xi_{t+1}\simeq \log\overline{\xi} +\hat{\xi}_{t+1}$    (15)

 と近似できます。

 次に、$\log u_{c}(C_{t})$ をテイラー展開で1次まで近似すると($C_{t}$ の定常値 $\overline{C}$ の近傍で)、

$\displaystyle \log u_{c}(C_{t}) \simeq \log u_{c}(\overline{C}) +\frac{u_{cc}(\overline{C})}{u_{c}(\overline{C})}(C_{t}- \overline{C})$

  右辺第2項の分子と分母に C をかけます。

$= \displaystyle \log u_{c}(\overline{C})+ \frac{u_{cc}(\overline{C}) \overline{C}}{u_{c}(\overline{C})} \frac{C_{t}- \overline{C}}{\overline{C}}$

 $(C_{t}-\overline{C})/\overline{C}$ は定常値からのかい離値なので、ハットをつけて表すと( $\hat{C}_{t}$ )で表すと、

$= \displaystyle \log u_{c}(\overline{C})+ \frac{u_{cc}(\overline{C}) \overline{C}}{u_{c}(\overline{C})} \hat{C}_{t}$   (16)

 となります。

 ここで、$\hat{C}_{t}$ の係数 $u_{cc}(\overline{C}) \overline{C}/u_{c}(\overline{C})$ の意味を考えるために、

$u(C_{t})=\displaystyle \frac{C_{t}^{ 1-\sigma}}{1-\sigma}$

 という効用関数を考えてみます。$C_{t}$ で微分し、限界効用を求めると、

$u_{c}(C_{t})= C_{t}^{ -\sigma}$

 この関数のかたちから、限界効用の弾力性は -σ になるとわかります。限界効用の弾力性を計算するときには、

$\displaystyle \frac{u_{cc}(C_{t}) / u_{c}(C_{t})}{1/C_{t}}=\frac{u_{cc}(C_{t}) C_{t}}{u_{c}(C_{t})}$

 を計算します。計算してみると、

$\displaystyle \frac{u_{cc}(C_{t}) C_{t}}{u_{c}(C_{t})} = \frac{-\sigma C_{t}^{ -\sigma-1} C_{t}}{C_{t}^{ -\sigma}} = -\sigma$

 になります。
 つまり、(16)式の $\hat{C}_{t}$ 係数、$u_{cc}(\overline{C}) \overline{C}/u_{c}(\overline{C})$ は、限界効用の弾力性にマイナスをつけたものです。そこで、$ u_{cc}(\overline{C}) \overline{C}/u_{c}(\overline{C})=-\sigma$ とおくと、(16)式の $\log u_{c}(C_{t})$ は、

$\log u_{c}(C_{t})\simeq \log u_{c}(\overline{C}) - \sigma \hat{C}_{t}$  (17)

 と表すことができます。同様に $\log u_{c}(C_{t+1})$ は、

$\log u_{c}(C_{t+1})\simeq \log u_{c}(\overline{C}) - \sigma \hat{C}_{t+1}$   (18)

 となります。

 そこで、(14)式、(15)式、(17)式、(18)式を、(12)式の $\xi_{t}$,$\xi_{t+1}$,$\log u_{c}(C_{t})$,$\log u_{c}(C_{t+1})$ に代入すれば、(12)式は、

$0=E_{t}[-\overline{r} +i_{t}- \sigma\hat{C}_{t+1}+\sigma\hat{C}_{t}+ \hat{\xi}_{t+1}-\hat{\xi}_{t}-\pi_{t+1}]$

 となります。t+1 期の変数にのみ期待値オペレーターをつけると、

$0=-\overline{r} +i_{t}- \sigma E_{t}[\hat{C}_{t+1}]+\sigma\hat{C}_{t}+E_{t}[ \hat{\xi}_{t+1}] -\hat{\xi}_{t}- E_{t}[\pi_{t+1}]$  (19)

 となります。
 Eggertsson は、自然利子率 $r^*_{t}$ を $r^*_{t}= -\overline{r}+\hat{\xi}_{t}-E_{t}[\hat{\xi}_{t+1}]$ と想定しています。 $r^*_{t}$ をつかって、(19)式を書き換えれば、

$0=i_{t}- \sigma E_{t}[\hat{C}_{t+1}]+\sigma\hat{C}_{t}+r^*_{t}- E_{t}[\pi_{t+1}]$

 となります。このモデルでは、投資(資本)を想定せず、生産量=消費量 ( $Y_{t}=C_{t}$ )と想定しているので、

$\displaystyle \hat{Y}_{t}= E_{t}[\hat{Y}_{t+1}]-\frac{1}{\sigma}(i_{t}-E_{t}[\pi_{t+1}]-r^*_{t})$

 が得られます(Eggertsson の表記とσが違いますが、σを上記のように定義すれば、この式で正しいです)。
 

(2) 労働供給曲線の導出
 (10)式の対数をとり、$\log W_{t}$ を右辺へ持っていくと、

$0=\log v_{l}(l_{t}) -\log W_{t}-\log u_{c}(C_{t}) +\log\psi_{t}$   (20)

 になります。定常状態では、(20)式から、

$0= \log v_{l}(\overline{l})-\log W-\log u_{c}(\overline{C})+\log\overline{\psi}$  (21)

 が成り立ちます。 
 まず、$\log v_{l}(l_{t})$ をテイラー展開で1次まで近似します。

$\displaystyle \log v_{l}(l_{t}) \simeq \log v_{l}(\overline{l}) +\frac{v_{ll}(\overline{l})}{v_{l}(\overline{l})}(l_{t}-\overline{l})$

 右辺の第2項の分子と分母にlをかければ、

$= \displaystyle \log v_{l}(\overline{l}) +\frac{v_{ll}(\overline{l}) \overline{l}}{v_{l}(\overline{l})} \frac{l_{t}-\overline{l}}{\overline{l}}$

 になります。$v_{ll}(\overline{l}) \overline{l}/v_{l}(\overline{l})$ は、労働の(不)効用関数の「限界」(不)効用の弾力性です。これを Eggertsson が定めているように、ω とし、 $(l_{t}-\overline{l})/\overline{l}$ は定常値からのかい離値なので、ハットをつけて表すと( $\hat{l}_{t}$ )、

$\log v_{l}(l_{t}) \simeq\log v_{l}(\overline{l}) +\omega \hat{l}_{t}$   (22)

 となります。

 (13)式の対数値の近似を用いれば、他の変数もそれぞれ、

$\log W_{t}=\log\overline{W}+\hat{W}_{t}$   (23)

$\log\psi_{t}=\log\overline{\psi}+\hat{\psi}_{t}$    (24)

 と近似できます。$\log u_{c}(C_{t})$ は、(17)式から、

$\log u_{c}(C_{t})\simeq \log u_{c}(\overline{C}) - \sigma \hat{C}_{t}$   (17)

 です。
 そこで、(22)、(23)、(24)、(17)式を、(20)式の $\log v_{l}(l_{t})$,$ W_{t}$,$\psi_{t}$,$\log u_{c}(C_{t})$ に代入すれば、

$0=\log v_{l}(l) +\omega \hat{l}_{t}-(\log\overline{W}+\hat{W}_{t})-\log u_{c}(\overline{C}) - \sigma\hat{C}_{t}+\log\overline{\psi}+\hat{\psi}_{t}$

$=\omega \hat{l}_{t}-\hat{W}_{t}-\sigma\hat{C}_{t}+\hat{\psi}_{t}+(\log v_{l}(\overline{l})-\log\overline{W}-\log u_{c}(\overline{C})+\log\overline{\psi})$

 第2項の(・・・)の中は、(21)式から0です。したがって、

$0=\omega \hat{l}_{t}-\hat{W}_{t}-\sigma \hat{C}_{t}+\hat{\psi}_{t}$

 となります。$\hat{W}_{t}$ を左辺に移項すれば、

$\hat{W}_{t}= \omega\hat{l}_{t}+\sigma\hat{C}_{t}+\hat{\psi}_{t}$

 が得られます。

エガートソン(Eggertsson)、「流動性の罠の状態でデフレと闘う方法:無責任になることにコミットせよ」(2)

Gauti B. Eggertsson, "How to Fight Deflation in a Liquidity Trap: Commting to Being Irresponsible"
(2003)
 上記の論文の「結論」の翻訳です。英語の原文は → こちら
「イントロダクション」だけ翻訳するつもりでしたが、結論も短かったので翻訳しました。

前の部分(「イントロダクション」は → こちら
前の部分も少し修正しています(税の費用(訳注)と goal independent central bank のところ)。

----------
エガートソン、「流動性の罠の状態でデフレと闘う方法:無責任になることにコミットせよ」

結論
 このモデルが現在の日本に与えるインプリケーションは、どのようなものだろうか。ここ数年間、日本の名目利子率はゼロ付近でへばりついている。さらに、多くの指標がデフレを示しているし、失業率も高くなっている。また、政府は大きな財政赤字を計上してきた。このモデルは、日本のデフレショックの原因については説明していないが(それは1990年台初めの、銀行部門の問題のためかもしれないし、資産市場の崩壊のためかもしれない)、しかし、このモデルは、インフレ期待を高め、実質利子率を下げ、経済全体に刺激を与えことで、流動性の罠の状態においてもデフレを排除する方法について、いくつかのアイディアを提供している。このモデルを日本に適用すると、2つの疑問が浮かんでくる。第1のものは、どうして赤字財政は、日本においてインフレ期待をつくるのに失敗しているのか、ということだ。第2に、私たちのモデルでは、実物的な資産を公開市場操作で買入れることがデフレを抑える方法になる、と示しているのに、どうして日銀はそれを行わないのか、ということだ。この疑問を、順番に見ていこう。

 過去10年以上にわたって、日本の公共部門の負債は、主に赤字財政支出のために、GDP比で見て1990年の34.5%から2001年の130%へと2倍以上に増加している。どうして、これでもインフレ期待が生まれなかったのか? Eggertsson(2001)は、答えを示している。中央銀行が目標において独立的(goal independent)だからである。私たちの結論の背後にある仮定は、金融政策と財政政策とは、社会の厚生を最大化するために協調するものだ、というものである。しかし、すべての場合においてこれが当てはまるわけではない。Eggertsson(2001)で示されている非常にシンプルな例を考えてみよう。日銀が、1920年代のように金本位制を行うことができると仮定してみよう。その場合、M=k・gold である(ここでkは定数である)。赤字財政支出がgoldに影響を与えることができない限り(私たちのモデルでは、そんなことは期待できないのだが)、赤字財政支出は、産出にも物価にも影響を与えない。つまり、赤字財政支出が、将来の貨幣供給に関する中央銀行の選択に影響を与えるからこそ、赤字財政支出は、需要を増加させることができるのである。金本位制の中央銀行というのは、独立した目標の(goal independent) 中央銀行の一例にすぎない。原理的にはそのような中央銀行は、社会の厚生最大化とは違った目標を持つことができるのである。より興味深い独立した目標の中央銀行の例は、代表家計の効用は最大化するが、政府支出が社会の厚生に与える影響には、目を向けない中央銀行である。このような目的を持つ中央銀行にとっての損失の基準は、2次のテイラー展開による(訳注 代表家計の厚生の損失を2次のテイラー展開で近似した)π+λという関数である(研究では通常このように想定されている)。この場合、Eggertsson(2001)で示されているように、赤字財政支出は、物価にも産出にもまったく影響を与えない。その場合の均衡は、名目利子率が政府の唯一の手段となっている場合には、セクションⅢで示したものと同じになる。この論文で紹介した財政政策を通しての経路は、財政政策と金融政策が社会的厚生を最大化するために協調している時だけ、有効に働くのである。

 では、2番目の疑問(訳注 なぜ実物資産の買入を行わないのか)を見てみよう。最初に、独立した目標の中央銀行(例えば、π+λという損失関数をもった中央銀行)がデフレを抑えることができるのかどうか、もう一度見てみよう。例えば、そのような中央銀行が貨幣を発行し、外貨や実物的な資産を買入れたと想定してみよう。それはインフレ期待を増加させるだろうか? 費用がかかる税(costly taxation) というのは、政府や独立した目標の中央銀行に、自分自身のバランスシートを心配させる、つまり、キャピタルゲインとキャピタルロスを心配させるいい脅し文句(parable)だと言えるだろう(訳注1)。従って、公開市場操作による外貨や実物資産の買入が効果を持つようにするためには、中央銀行に自分自身のキャピタルゲインやキャピタルロスを心配させればいいのである。独立した目標の中央銀行が、キャピタルロスを心配するだろうか? もし中央銀行がキャピタルロスを負ったなら(例えば、価値が下がる実物資産を買ったことで)、中央銀行が、その埋め合わせをするためにできることは、次の2つの方法のうちの1つしかない。つまり、貨幣を発行するか、財務省に税金を集めてもらか、である。最初の方法は、過度なインフレを引き起こすことを意味し、2番目の方法は、財務省の補填により救済してもらうことを意味し、それは独立性の喪失につながる。たいていの中央銀行にとって、この選択は、火事で死ぬか、溺れ死ぬかのどちらかの選択をせまられるようなものである。従って、独立した目標の中央銀行がキャピタルロスを心配する、と期待できる有力な根拠があるのである。そして、この心配があるために、中央銀行に為替介入や実物資産の買入をさせることが、将来の政策にコミットする手段として有効になるのである。

 しかし、中央銀行がリスクを嫌うなら、落とし穴が待ち構えている。中央銀行は、不確実なリターンの資産を買うことを躊躇するかもしれない。そして、短期の政府債権以外のほとんどの資産のリターンは、不確実である。例えば、もし中央銀行が貨幣を発行し、外貨を購入したなら、将来、インフレか高いキャピタルロスかのどちらかの選択をせまられる可能性が、いつでもかなりの確率で生じるのである。従って、金利ゼロ制約が生じているときには、中央銀行は、リスクを嫌うために、リスクを伴う行動を抑制するだろう。このことは、そのようなリスクを伴う行動によって、産出や物価の安定といった、中央銀行独自の目標が達成されるときでさえ、当てはまるのである(訳注 リスクがあるときには、そういう目標すら達成しようとしない)。ここから引き出されるインプリケーションは、たとえ中央銀行が、流動性の罠から逃れるためのいくつかの政策を自分自身の武器庫に持っていたとしても、中央銀行が独立性を心配していれば、その使用に抑制がかけられてしまう、ということである。この論文で示したデフレバイアスの原因は、唯一の政策の道具が、短期の債権の公開市場操作だけだから、ということだった。この仮定は、他の手段を広範囲に使用すればバランスシートを毀損する可能性が出てくる、ということを考えれば、中央銀行の行動を説明するものとして妥当だろう。こういう場合のようにリスクをあまりにも恐れる中央銀行を、デフレ解消に効果的にコミットさせるためには、財務省と中央銀行との協調が必要なのである。

訳注)「税の費用」については、前の部分(「イントロダクション」)の注を参照してください。

エガートソン(Eggerstsson)、「流動性の罠の状態でデフレと闘う方法: 無責任になることにコミットせよ」(1)

Gauti B. Eggertsson, "How to Fight Deflation in a Liquidity Trap: Commting to Being Irresponsible"
(2003)
上記の論文の「イントロダクション」の翻訳です。英語の原文は → こちら

2006年の「流動性の罠」論文(nigth_in_tunisiaさんによる翻訳はこちら)の後半や、「財政乗数と政策協調」(2006 これもnigth_in_tunisiaさんによる翻訳はこちら)にも同じことが述べられています。

----------
エガートソン、「流動性の罠の状態でデフレと闘う方法:無責任になることにコミットせよ」

 政府が、どれだけ貨幣を印刷してもインフレにも産出にも影響を与えることができず、物価と経済活動に対するコントロールを失ってしまうなんてことがあるのだろうか。ケインズの『一般理論』以来、この問題は、活発に論じられてきた。ケインズの答えはイエスであり、フリードマンや他のマネタリストたちの答えはノーである。低い名目利子率では、貨幣供給の増加は経済に影響を与えない、とケインズは主張した。これは流動性の罠と呼ばれているものだ。現在の日本のゼロの短期の名目利子率は(大恐慌以来となるアメリカの非常に低い短期の名目利子率とともに)、この古い問題を再び重要なものにしている。日銀は過去5年間、マネタリーベースを2倍にしたが、それでも経済はデフレに苦しんでいて、成長は停滞、ないしはマイナスである。やはりケインズが正しかったのだろうか? 名目利子率がゼロのときには、貨幣供給は無関係になるのだろうか? この論文で私は、ミクロ的基礎がある異時点間の一般均衡モデルを使い、合理的期待を想定して、この問題をもう一度考えてみようと思う。実は、ケインズの主張が正しくなるためには、2つの極端な過程が必要になる。ひとつは、リカードの等価定理が有効であること。2つめは、政府が将来の政策にコミットできないことである。しかし、この2つの仮定が有効でないとしても、フリードマンの主張が正しくなるわけではない。貨幣供給の役割は、貨幣数量説が想定するよりも、もっと微妙な(subtle)――いや、もっと面白い (interesting)―― ものなのである。

 A. デフレバイアス: 信認問題としてのデフレ

 この論文の第一の意義は、名目利子率ゼロの状態でのデフレは、信認の問題としてモデル化できることを示したことである。このデフレの考え方は、現在の日本のデフレ(その点では、大恐慌期のアメリカのデフレでもいい)についてのこれまでの議論とは、かなり対照的である。これまでのデフレ議論は、デフレを中央銀行や悪い政策ルールによる間違いのせいにしてきた(例えば、Friedman and Shcwartz (1963), Krugman (1998), Buiter (1999), Bernanke (2000) and Benabib and others (2002))。しかし、この論文では、デフレを中央銀行や悪い政策ルールの無能さのせいだとはとらえていない。むしろ、それは、大きな負の需要ショックがあったときに、中央銀行の政策に抑制がかけられていて、コミットすることができないために生じる直接の結果なのである。クルーグマン(1998)が示しているように、流動性の罠の状態では貨幣供給が増加しても、民間部門がその増加は将来反転すると期待したなら、効果がなくなる。クルーグマンの分析は、なぜ日銀がマネタリーベースを2倍にしてもインフレ期待に影響を与えなかったか、について説明してくれる。しかし、民間部門がその貨幣供給が「永久」(peramanent)であると期待したなら、その貨幣供給は有効になるはずだ。私はこの論文で、ある状況では、大きな需要ショックにより金利ゼロの制約が生じると、民間部門は「いつでも」(always)現在の貨幣供給が将来反転すると予測する、ということを示している。この結論を引き出す中心的な仮定は、政府というものは「裁量的で」(discretionary)、そのために将来の政策にコミットできない、というものである(訳注1)。この結論が示唆していることは、日銀がインフレターゲットを宣言するべきだ、というクルーグマンの提案(1998)は、他の追加的な政策が実行されなければ効果がない、ということだ。なぜなら、一言で言って、それは信用されないからだ。これまで検討されてこなかった、この裁量的な政策が生み出すデフレバイアスという考え方は、Kydland and Prescott(1977) や、Barro and Gordon(1983) のインフレバイアスを反転したものと言ってもいい。このデフレバイアスを生み出す重要な仮定は、政府がひとつの政策の道具しかもっていない、ということである。つまり、その政策とは、公開市場操作による短期の政府債権の買取によって行われる貨幣供給だけだ、ということである。デフレバイアスの背後にある中心的な考えは単純である: 総需要は、現在と将来の実質利子率のレベルに依存する、というものだ。だから、金利ゼロの制約があっても、金融政策は、インフレ期待を増加させることで、実質利子率を下げることができ、総需要を増加させることができる。従って、大きなデフレショックのために、金利ゼロの制約が生じたとき、政府は将来の実質的なリターンを下げるために、将来のインフレを約束するインセンティブを持つことになる。しかし、そのデフレショックが収まったとき、そのときの最適インフレ率は、政府が以前に約束した値よりも低くなる。そうなると今度は政府は、前の約束を反故にするインセンティブを持つのである。従って、政府が将来の政策にコミットできず、人々が合理的なら、最適インフレターゲットは信用されないのである。結果は、金利ゼロの制約が生じた状態での過度なデフレである。次の2つのセクションでは、ではどうすれば、政府が将来の政策にコミットできなくても、新たな政策の道具を追加することでデフレを排除できるのかを示そうと思う。

 B.流動性の罠から逃れる方法:赤字財政支出

 この論文の第2の意義は、政府は赤字財政支出によってデフレを避けることができる、と示していることである。赤字財政支出によってこれが達成できる理由は、次のようなものである。もし政府が減税をし、負債の名目額を増加させ、税の費用 (cost) を高くしたなら、インフレ期待が増加する(つまり、民間部門は、将来貨幣供給が増加すると予測するということである)。なぜなら、負債の名目額が増加すれば、政府は、その負債の実質価値を減らすために、インフレを起こすインセンティブを持つからである。従って、デフレを避けるためには、政府は減税し、民間部門がデフレではなくてインフレを期待するようにすればよい。期待インフレが高くなれば、実質的なリターンは減少し、総需要を高め、物価水準が高くなるだろう。この結論の背後にある中心的な仮定は、インフレ目標政策を信認させるような税の費用が存在する、ということである(訳注2)。

 赤字財政支出は、仮に政府が、フリードマンが言うところの、インフレを起こすためにヘリコプターから貨幣を巻く、というような政策を行った場合とちょうど同じ効果をもつ。名目利子率ゼロの状態では、貨幣と債権とが完全に代替的になっている。つまり、両者はまったく同じものになっている:政府は利子を生まない、名目額を記した紙を発行しているのである。従って、政府がヘリコプターから紙幣をばら撒いても、政府債権をばら撒いても、大差がなくなっている。上記のフリードマンのモデルは、赤字財政支出と同じメカニズムを通して物価水準を引き上げるだろう。しかし、だからといって貨幣数量説が肯定されるわけではない。というのも、ヘリコプターから貨幣をばら撒くことが物価を上げるのは、貨幣供給を増加させるからではないからだ。それがインフレを引き起こすのは、貨幣と債権の合計と定義できる政府の負債を増加させるからである。名目利子率ゼロの状態では、物価水準を決めるのは、政府の負債である。なぜなら、それが将来の貨幣供給に対する期待を決めるからである。

C.流動性の罠から逃れる方法: 実質的な資産と外貨の買入

 この論文の第3の意義は、公開市場操作によって、政府債権以外の資産を買うことで、財政赤字支出と同じ経路によってデフレを避けることができる、と示していることである。減税とヘリコプターから貨幣を撒くことは、政府の負債を増加させる2つの方法にすぎない。政府の負債は、貨幣を刷って(あるいは名目額の債権を発行して)、実質的な資産、例えば株や外貨を買っても、増加させることができる。私はこの論文で、これらの方法は、政府の負債(貨幣+債権)を増加させることで、政府のインフレを起こすインセンティブを変化させるので、物価を上昇させ、産出を増加させることができる、と示している。これは、バーナンキ(2000)が与えてくれたヒントを形式化したものである。

 明らかな流動性の罠の状態であっても、貨幣政策者は、名目総需要と物価水準を増加させる手段を持っている。これが正しいということは、裁定の議論――経済学的な点から言って最も説得力のある議論だと思うが―を考えてみればわかるだろう。貨幣当局は、好きなだけ貨幣を発行できる。従って、もし物価水準が本当に貨幣の発行量と関係ないならば、貨幣当局は、発行した貨幣によって無限の量の財や資産を買うことができるようになってしまうだろう。しかし、これは明らかに均衡において不可能である。従って、名目利子率がゼロ下限の制約を受けていても、貨幣の発行は最終的に物価水準を上げるはずである。

 バーナンキの「明らかに不可能な均衡」に対する反論は、リカードの等価定理に対する反論と解釈できるだろう。もしリカードの等価定理が正しければ、政府負債の増加は、効果がないことになる。名目利子率ゼロの状態では、貨幣と債権が完全にお互いの代替物になっているので、リカードの等価定理は、貨幣供給にも当てはまる。この論文では、税の費用を想定することで、バーナンキが言及した「明らかに不可能な均衡」を排除している。政府が貨幣を発行し資産を購入すれば、民間部門がインフレを期待するので、つまり、将来の貨幣供給が増加すると期待するので、物価水準が増加する。リカードの等価定理が成り立たなくなることで(つまり、税の費用が存在するということである)、流動性の罠を排除することができるのである。この金融政策の経路は、実質的な資産や外貨を購入するときのポートフォリオ効果に依存しない。従って、この論文は、Meltzer(1999)やMcCallum(1999)が提案した、ポートフォリオの経路に依存した為替介入に対する補足となる方法を提供しているともいえる。

 Eggertsson(2001)が「独立した目標を持つ中央銀行」(goal independent central bank)と呼ぶ、もっともらしい制度的環境の下では、驚くべき注目すべき結果が得られる(訳注3)。つまり、中央銀行が独立した目標をもっていると、赤字財政支出は、産出にも物価にもまったく影響を与えない、ということである。この定義によれば、「独立した目標をもつ」中央銀行は、社会の厚生を最大化する目標を持たない。従って、この論文の結論は、政府は流動性の罠から脱出するために赤字財政支出をするべきである、というケインズの結論に、回り道をして到達しているだけではない。赤字財政支出が産出と物価を上昇させるのは、中央銀行と、それと強調する財政政策が、社会の厚生を最大化する政策で協調しているときだけだ、ということも示しているのである。 Eggertsson(2001)で示されているように、またこの論文の結論で述べられているように、日銀がそうした目標から独立しているために、日本の負債の名目額が増加しているにもかかわらず、日本はインフレ期待を引き起こすことができないのである。

 この論文では、デフレ圧力は、一時的な、外生的なショックがあり、そのために総需要がシフトしたために発生したと想定している。それゆえ、この論文では、アメリカの大恐慌期の、あるいは現在の日本のデフレショックの原因は何か、というような疑問には答えていない。これらのデフレショックは、例えば、株式市場の暴落とか銀行問題のような、いろいろな要因が組み合わさって起きている可能性が高い。しかし、この論文では、デフレ圧力は所与のものとし、次の問題に集中することにした。金利ゼロの制約があったとしても、政府は、どうすればデフレを解消できるのか、ということである。

 この論文の残りの概要は次のようなものである。セクションⅡでは、モデルを提示する。セクションⅢは、デフレバイアスについて説明する。セクションⅣでは、赤字財政支出によってデフレを解消できることを示し、セクションⅤでは、非標準的な公開市場操作でも同じ目的が達成できることを示す。セクションⅥでは、結論を述べ、このモデルがどのくらい日本のケースに当てはまるのか検討する。補遺Ⅰ-Ⅴは、技術的な問題の議論を含んでいる。

続き(結論部分だけ)は、こちら

----------
訳注1) ここで「裁量的」というのは、政府はその都度、最適だと思う政策を、自らの意思で判断して「裁量的に」行う、ということ。そのため、例えば、インフレターゲットを宣言しても、デフレが収まれば、「裁量的に」判断して、その約束を反故にする可能性が高い、ということ。

訳注2) 減税し財政赤字が積み重なっていくと、増税せざるを得なくなる。ただし、税には「費用」が伴う。そのために、政府は、負債を下げるために、インフレを起こすインセンティブを持つ。
 税の「費用」については、本論文(英語)の8ページに言及があります。
"... there is an output cost of taxation (e.g. due to tax collection costs as in Barro (1979) captured by the function s(τ). For every dollar collected in taxes   s(τ) units of output are waisted without contributing anything to utility."
 税金は、産出を減らしますが、その産出を減らした分のある割合(ここではs(τ))は、効用を高めることにつながらず、無駄になる、ということのようです。
 ただし、Eggertssonは後に(2008、2009年の論文)、労働税や資本税の減税のような減税は逆効果、一方、売上税(消費税)や投資減税は有効だと主張しています。

訳注3) 「独立した目標をもつ中央銀行」: それ自身の独立した目標に従い、社会の厚生の最大化や財政政策などの目標には関心をもたないこと。こちらに定義があります(最初に紹介したnigth_in_tunisiaさん訳は、こちら

エガートソン (Gauti Eggertsson)、「労働のパラドックス」(5)

前の部分からの続きです。
(1) 1 イントロダクション "Introduction" は→ こちら
(2) 2 モデルの設定、3 長期と短期  → こちら
(3) 4 人々がより多く働こうとするとどうなるのか → こちら
(4) 5 ゼロ金利政策の奇妙な世界、6 労働のパラドックス → こちら

今回は、これ↑の続きです。5回目。
本文中で数式に言及されていて、その式が前の部分にある場合があります。
----------
7 他の政策に対するインプリケーション: 減税、ニューディール、石油価格の高騰

 労働のパラドックスは、他の政策に関しても、驚くべきインプリケーションを与える。最初に見た代表家計の1階の条件をもう一度見てみよう。

13011108


 
 賃金所得に比例する労働税は、ψt  =1/(1-τ )という形で、ψt  とちょうど同じように入ってくるだろう(訳注 ψ:人々が、労働の不効用と比較して、どのくらい消費の効用を評価するか、ということに影響を与える)。そうなると、そこから得られるインプリケーションは、もちろん、このような形の一時的な労働税のカットは、このモデルに従うと収縮的になる、というものである。このような労働税の減税?(this specification of labor tax) は標準的なものだが、これは多くの点で特異な結果をもたらす。これは、Eggertsson(2009) でさらに論じられているが、強調すべきことである。ここでは線形化した企業の価格方程式を考えてみよう。この式は限界コストの式に労働供給の式を代入して得たものである(訳注 (16)式に(18)式を代入)。
13011318

 
 この方程式では、ψ^ とちょうど同じように入ってくる複数の騒乱(disturbances)が示唆される。もっとも明らかなのは、パラメーターθ (これは企業の独占力を表す指数である)の変化や、他の労働市場でのマークアップ率の変化である(例えば、労働組合の交渉力の増加など)。そして、このモデルでは、名目利子率がゼロのときは、この企業や労働組合の独占力の増加は拡張的であると示されるのである。これは、Eggertsson (2008b) で詳しく説明されている点である。ある条件の下での他の限界コストの増加、例えば石油価格の増加によるものなどに対しても、同じ分析を適用できる。

 結論に移る前に、これまで論じてこなかったひとつの問題について述べておくのは、価値があるだろう。このモデルでは、労働市場は完全に伸縮的であると想定してきた。従って、労働市場で労働需要が労働供給といつでも均衡するように、賃金は下方に修正される。この想定をしたのは、単に説明を容易にしたかったからである。そうすれば、労働のパラドックスをよりはっきり示すことができるからだ。しかし、ニューケインジアンモデルでは、賃金決定のプロセスで何らかの硬直性を想定するのが、きわめて普通になっている。そのような硬直性は、このモデルから得られた結果を変更するだろうか。それは労働のパラドックスをより悪化させるだろうか。答えは、賃金決定におけるそのような硬直性は、状況を少し改善する、というものである。理由は、労働供給の増加が、伸縮的な賃金の場合と比べて物価水準の強い下落圧力につながらないからである。賃金決定における硬直性は、Chari, Kehoe, and McGrattan (2006) の言葉で言えば、プラスの「労働ウェッジ」(labor wedge) と考えることができるだろう。それは、私たちがここでのモデルでマイナスの「労働ウェッジ」と考えてきたψ^ のショックを部分的に相殺するのである。

 実際、名目利子率のゼロ制約のひとつの特異的な特徴は、価格や賃金の強い硬直性が経済の安定化効果を持つことである。価格について言えば、その効果を簡単に見る方法は、この論文の図3において、価格変更が頻繁に行われれば、労働需要曲線をさらにフラットにし、均衡点Bをさらにより少ない雇用量へと、さらにより少ない賃金へと押しやる、ということを確認すればよい。理由は、価格の柔軟性が高くなると、人々が将来は物価がさらに低下し、そのため人々のデフレ期待を高めるからである。次にそれが実質利子率を高くし、需要をさらに収縮させる。この可能性――つまり、賃金や価格のより高い柔軟性は、経済に対して不安定化効果をもつ――は、最初にトービン (Tobin 1975) によって指摘され、さらにデロングとサマーズ (De Long and Summers, 1986) によって分析された。その2つの論文では、価格の柔軟性が「一般的に」不安定化要素になる、と論じられている。一方、この論文では、価格の柔軟性が不安定化要素になるのは、名目利子率ゼロによってつくられた特別な環境においてのみ当てはまると論じている。そこで私は、次のように推測した。より柔軟な価格を想定しているカルボ (Calvo) 型の価格設定 (1983) とは別の価格設定メカニズムを想定したとしても、実際、十分に労働のパラドックスが発生しうる、ということである。

 ここまで労働に対する選好を、ξに対して1対1で変化すると想定してきた(訳注1)。しかし、の変化が永久的だとしたら、どうなるだろうか。その場合は、結果ははっきりとはわからない。それは、パラメーターの値によって変わってくるだろう。いくつかの要因が働く。労働の永久的な増加は、永久的な産出量の増加につながる。それが需要の増加につながる。一方、いったん名目利子率の制約が働かなくなれば、労働の永久的な増加によるデフレ圧力が生まれるだろう。それは前の場合とは反対方向に働く。従って、労働の永久的な変化の状況でも労働のパラドックスが発生するかどうかは、実証的な研究を待つことになる。

8 結論
 この論文の主要な論点は、総労働供給の増加、つまりより多く働こうと思うことは、名目利子率がゼロの状況では逆効果になる、というものである。これが労働のパラドックスである。同じ議論は、ある仮定の下で、他の供給を増やそうとする動きに対しても適応できる。限界税率を下げることや、石油価格の低下、企業や労働者の独占力を低下させることなどである。一方、私は別の論文(Eggertsson 2009) で、逆に名目利子率ゼロの状況では、総支出を刺激することを直接狙った政策が非常にうまくいくことを示した。そのような政策には、売上税の一時的なカットや投資減税(控除)(investment tax credits) や政府支出が含まれる。


訳注1) 労働に対する選好なのでξt ではなくて、ψt  のような気がしますが、そのままにしました。 ξ=人々が、将来の効用と比較して、どのくらい現在の効用を評価するか、ということに影響を与える。

エガートソン (Gauti Eggertsson)、「労働のパラドックス」(4)

前の部分からの続きです。
(1) 1 イントロダクション "Introduction" は→ こちら
(2) 2 モデルの設定、3 長期と短期  → こちら
(3) 4 人々がより多く働こうとするとどうなるのか → こちら
今回は、これ↑の続きです。4回目。
本文中で数式に言及されていて、その式が前の部分にある場合があります。

英語の原文はこちら→ http://www.newyorkfed.org/research/staff_reports/sr433.pdf

----------
5 ゼロ金利制約の奇妙な世界

 この節では、短期の名目利子率はゼロであり、産出量の低下と物価の低下が生じている。つまり、景気後退期 (recession) である。この環境が、この論文の中心的なテーマである労働のパラドックスを生み出す。その理由は、労働需要曲線が、今度は、実質賃金に対して右上がりになっているからである。
 そこで今度は、C1の条件が働き、名目利子率ゼロの制約がある場合のショックを考えてみよう。さしあたり、ψ^=0と想定しておこう(ψ:人々が、労働の不効用と比較して、どのくらい消費の効用を評価するか、ということに影響を与える)。このショックについては後で導入しよう。ここでは、
13011206

のショックに焦点を当てよう。
 このショック、rが労働のパラドックスにつながるので、ここで次のような疑問を考えてみよう。このショックはどこから来たのか、ということだ。このモデルの一番単純なヴァージョンでは、rのマイナスのショックは、前の節で見た選好に対するショックと同じである。従って、期間t<τにおける、ξの低下(そして、それは確率μでそれぞれの期間で定常状態に戻る)に対応している(訳注 原文では1-μ になっているが、前の議論から言うと、μだと思います)。突然みんな貯金を増やそうと思う。そして、産出量を定常状態に保とうと、実質利子率が低下するのである(訳注 ξは、人々が、将来の効用と比較して、どのくらい現在の効用を評価するか、ということに影響を与える)。
 しかし、よりソフィスティケートされたな解釈を与えることも可能である。 Curdia and Eggertson (2010) は、Curdia and Woodford (2008) に依拠して、債権市場の摩擦 (financial frictions) に関するモデルが、この論文と同じ方程式で表せることを示している。そのようなよりソフィスティケートされたモデルでは、このショックは、債務者が破綻する確率の外生的な増加に対応している。この解釈の優れたところは、rがリスクフリーの名目利子率と、リスクがある債権に支払われる利子率との差(ウェッジ、wedge)で表すことができる、ということである。これは、実際のデータによっても確認できる。アメリカでは、このウェッジが2008年の金融危機の際に拡大し、rの大きなマイナスのショックの実証的な証拠を提供している。また、この考え方は、大恐慌の分析にも適応できる。Del Negro, Eggertsson, Ferrero, and Kiyotaki (2009) は、同じ議論をもう少し複雑なモデルで示している。彼らの場合は、ある資産は「流動性が低い」"less liquid" のだが、その場合でも、名目利子率の下落と、デフレ圧力を引き起こしている。いずれにせよ、この論文のモデルでは、銀行や債務者の破綻の可能性が増大することで特徴づけられる金融危機が、景気後退の発端と仮定している。

 このモデルの仮定では、rは、それが定常状態に戻るある確率的時間τまでは、つまり短期sの期間では、マイナスのままである。従って、金融政策は次のようなものになる(訳注 (18)式から)。
13011208
(31)

(32)

 そこで、総雇用に関する、需要と供給の図に戻ってみよう。総供給の式は変わっていない。わかりやすいようにもう一度引用しておこう。
13011205
(33)

 変化しているのは、労働需要である。もう一度、期間t≧τでは、π=Y^=l^=0である、ということを思い出そう。また、t<τでは、次の期間のインフレ率は、(確率μで)ゼロか、(確率1-μで)期間tと同じ値、つまりπ=πsである(訳注 「確率1-μ」の部分、原文ではμとなっていますが直しました)。最初に、次の消費のオイラー方程式を考えてみよう。
13011207
(34)

 前の場合(訳注 名目利子率がプラスのとき)との、重要な違いは、今度はショックrが現れていることである。なぜなら、中央銀行が名目利子率をカットすることで、それを相殺することができなくなっているからだ。名目利子率はゼロである(従って、前の場合とは違って、Φππの項が消えている)。(訳注、前の場合との違い→(29)式と比較するとわかりやすい。Φππが消えるのは、(18)式の金融政策のルールから)。そこで、上記の式に、次の企業の価格決定式を組み合わせて
13011114
 (35)
Y^=l^を使って、(35)式を(34)式に代入すれば、次の労働需要式を得る。
13011209

 (36)

 再び、労働需要と労働供給の関係を(l,W)空間で描いてみると役に立つだろう。
13011104








 図3


 
 最初に、μ=1の場合の特別なケースについて考えてみよう。つまり、ショックξ が、期間1の間に定常状態に戻る確率は1である。その場合が、図3に示してある。これは、期間0における均衡の決定にしか対応(適用?)していない(訳注 この文章の意味は? これ=図3のこと?)。均衡は、2本の実線が交わるところ、点Aである。命題2(Proposition 2) から、均衡は定常状態よりも下である。産出量も雇用も「一番いい状態 ?」(first best) よりは下、ということだ。つまり、景気後退期である。

 点Aでは、雇用は、垂直な労働需要曲線のために、完全に需要側によって決定され、しかもショックショックrだけで決まるのである(訳注 (36)式から、μ=1ならWの項が消え、労働需要が賃金と関係なくなる。そして、rの項だけが残るので)。所与の労働需要の量では、賃金は、労働供給曲線が、垂直の労働需要曲線と交わるところで決まる。これは強調しておかなければならない。雇用は、完全に需要によって決まるのである
 また、このモデルにおいて、企業は独占競争企業で、企業が設定した価格で、消費者が需要するなら、その量をどれだけでも生産する、ということも強調しておかなければならない。従って、労働需要は、C=Y の制約の下で、独占競争企業の価格決定式と、消費者のオイラー方程式によって決まるのである。本質的にこの均衡を決めるのは、労働者が需要する、(34)式から決まる生産財の量になる。つまり、その生産財の量が、それを生産するために企業が雇う労働者の数を決めるのである。

 次にμ<1の場合の効果を考えてみよう。今度の場合は、(産出)収縮が、1期間よりも長く続くと期待(予想)される。収縮が将来も続くかもしれないという期待(予想)が、労働需要曲線をシフトさせる(訳注 正確に言えば、図のように、回転)。そのために、労働需要曲線はよりフラットになり、均衡は点Bになる。労働需要曲線はもはや垂直ではなくなっている、しかも右上がりである、ということに注目してほしい(訳注 (36)式から、μ<1ならば、Wの係数がプラスになる。従って、労働需要はWに比例する)。
 こうなる一番の理由はインフレ率である。つまり、期待インフレ率 (1-μ)πが高くなると、(34)式が示すように、需要される産出量が増加する。なぜなら、所与の(一定の)名目利子率の場合(今の場合は名目利子率i=0)、期待インフレ率が増加すれば、実質利子率を同じだけ下げるからだ。そのために、将来の支出に比べて、現在の支出が安くなり、需要を増加させるのである。反対に、期待インフレ率がデフレの場合、(1-μ)πがマイナスの場合、将来の消費に比べて、現在の消費を高くするので、支出を抑圧することにつながるのである。(訳注1)

 (35)式から、実質賃金とインフレ率が1対1の関係で決まることがわかる。なぜ、前の節の場合と違ってくるのだろうか? 前の節では、中央銀行が、インフレ率(デフレ率)の増加に対して、名目利子率を1対1以上の割合で増加させる(減少させる)ことで対応できた。しかし今の場合は、インフレ率はゼロ以下である。(18)式の金融政策ルールに従えば、中央銀行が目標としているインフレ率よりも下である。そして、中央銀行は、名目利子率をゼロ以下に調整できない。従って、中央銀行は、インフレ率が上昇すれば(正確に言えば、デフレ率が減少すれば)、うれしく思うだろう。そして、インフレ率(将来の期待インフレ率)が増加しても、名目利子率を上げるようなことはしないだろう(訳注2)。なぜ労働需要曲線の傾きが、名目利子率ゼロを境に変化し、今や右上がりになるのかを理解する鍵は、ここにある。(訳注2)

 さらに、(34)式の右の項に、さらに収縮が期待(予測)されていることを示す(1-μ)Y^があることに注目してほしい。人々がさらに将来の収縮を予測すると、短期のショック(まだ続くと予測されている)と期待デフレ率の影響が、マイナスのY^によって、さらに大きくなってしまう。そのために、μが減少するにつれて(つまり、短期が「長くなる」と予測されるわけである)、雇用の低下、賃金の低下、産出量の低下、インフレ率の低下がより大きくなるのである(訳注 上のグラフで、μが小さくなるにつれて、労働需要曲線がフラットになり、労働供給曲線との交点で決まる均衡の産出量が低下していくことがわかる)。実際、雇用と賃金の低下は、μの減少につれて、際限なく低下し、やがてモデルが崩壊する (explodes)。決定的な瞬間μの確率のときに(←訳注 バーが上についています)、2つの直線は平行になり、解は存在しなくなる。(33)式と(34)式から、これが起こるのは、ちょうど条件C2が破られるときだと簡単にわかる。いったん、μを超えてしまうと、このモデルは、一意の有界の解をもたなくなり、わたしたちの手中にある政策では、均衡が達成できない。例えば、Eggertsson (2009) で検討された、μの減少が引き起こす大きな影響のインプリケーションは、ある程度のパラメーターの変化や、比較的小さいショックでも、このモデルでは産出量と雇用の大きな変化が発生する、というものである。これは、数量的な観点から言えば、労働のパラドックスのような問題は、重大な問題になりうる、ということを意味している。そろそろ、その労働のパラドックスを見る時間になったようだ。

6 労働のパラドックス

 労働のパラドックスは、前節の筋書き の中に現れている。選好を表すパラメーター ψが労働供給をシフトさせる。しかし今や、労働需要曲線は、賃金に対して、右下がりではなくて、右上がりになっているのだ! さらに、条件C2のために、労働需要曲線は労働供給曲線よりも傾きが大きくなっている。従って、人々がより多く働こうとする結果は、図4の点Bに示されているように、均衡状態では、みんなより少なく働くことにつながってしまうのだ。
13011210







 図4



 このロジック(筋書き)は、次のようなものだ。労働供給の増加は、総賃金を減少させる。それが今度は、労働者の所得を減少させ、物やサービスに対する彼らの支出を減少させる。このデフレ圧力が、実質利子率を増加させる。しかし、それに対して、中央銀行は名目利子率を下げることで相殺(対処)できない。こうして財に対する需要が減少する。企業は、消費者の財に対する需要を満たすのに必要なだけしか労働者を雇わないので、総雇用量は減少してしまう。
 どうして同じロジックは、通常の状態には適応できないのか。理由は、通常の場合なら、労働供給が右にシフトして、賃金と価格を下げる圧力が生じた場合、中央銀行は、Φπ>1という金融政策ルールに従い、名目利子率を[インフレ率に対して]1対1以上の割合で減少させ、それに対処するからである。そのために、実質利子率が低下し、現在の支出を安くし、産出と雇用を増加させる。しかし、名目利子率ゼロの状態では、名目利子率のゼロ制約のために、これができない。そのために、パラドックスが生じるのだ。


13011212



 図5


 上の直感的な説明は、図5によって、さらにはっきりするだろう。しかし、(著者も含む)ある読者にとっては、動学方程式を見ることで、直感を簡単に結論に発展できるだろう。ψの負のショックがあり(人々はより多く働こうとする)、それが続くと予想されたとする。そうすると、AS関係(図5の右側の式)で、すぐに価格に対するデフレ圧力につながる(訳注 ψがマイナスになれば、インフレ率 πが減少する)。なぜなら、それが企業の賃金コストを下げるからである。このことが、今度は、Aの矢印が示すように、(左側の式の)AD関係の期待インフレ率を減少させる。そして、実質利子率(訳注 i-Eπt+1)を増加させる(なぜなら名目利子率iは、ゼロで固定されているから)。そのために、Bの矢印が示すように、需要を減少させる。しかし、これで話は終わらない。人々は、これが次の期間もかなりの確率で続くと期待する。そのために、Cの矢印で示されるように、さらなる収縮が続くことになる。これは、Egertsson (2009)でさらに議論されているが、労働のパラドックスの数量的な重要性は無視できないものだ、ということを示している。

 倹約のパラドックスについて、少し見ておこう。人々の貯金に対する選好が増加することは、ξが減少することを意味する。それが、rをさらにマイナスにする。そのために、労働需要曲線がマイナス方向に(左に)シフトし、さらに低いインフレ率と低い産出量につながる。内生的な資本蓄積を想定すると、このパラドックスはより興味深いものになるだろう。なぜなら、もしみんなが貯金しようとしたなら、総貯蓄がなくなる(collapse)、と示されるからだ(この論文のモデルでは、生産物はすべて消費されるので、技術的に貯金は不可能である)。これは、Egertsson (2009) で論じられている。その2009年の論文では、内生的な資本蓄積を想定したモデルでも、労働のパラドックスが発生することを確認している。

----------

続きは→ こちら。 


(訳注1) ここで述べられている、賃金と労働需要の関係をまとめると。
賃金が高くなる→インフレ率が上がる→実質利子率を下げる→労働者(=消費者)が消費の計画を変える。実質利子率が下がり、将来に比べて現在の消費が安くなるので、消費を増やす→企業の生産物の需要が増える→労働需要が増える。ということで、賃金と労働需要は、比例することになり、労働需要曲線は右上がりになる。
 反対の場合、デフレの場合。賃金が低下する→インフレ率が下がる→期待インフレ率が下がる→実質利子率が上がる→労働者(=消費者)が、消費の計画を変える。実質利子率が上がり、将来に比べて現在の消費が高くなるので、消費を減らす→生産物の需要が減る→労働需要が減る。同じように、賃金と労働需要は比例し、労働需要曲線は右上がりになる。

(訳注2) 「インフレ率(将来の期待インフレ率)が増加しても、名目利子率を上げるようなことはしないだろう。」目標としているインフレ率よりもまだ低いので。
中央銀行はインフレ率が上がっても、前節の場合のように、名目利子率を上げない。つまり、狙ったインフレ率までは上げない。そのために、インフレ率が上昇すれば、実質利子率が減少する。



プロフィール

沢ひかる

貧乏人。

経済学「部」とは無縁です。

QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ