M B K 48

もし貧乏人が経済学を学んだら

ローマー、『上級マクロ経済学』

ローマー、『上級マクロ経済学』 4章220ページ「異時点間の1階の条件」の計算

 ローマーが書いていない部分の計算をしてみました。ただし、まだ途中です(かなり大変です)。完成したら(まだ先になると思いますが)更新します。

(1) (4.23)式の対数化

$\displaystyle \frac{1}{c_{t}}=e^{-\rho}E_{t}[\frac{1}{c_{t+1}}(1+r_{t+1})]$ 
  (4.23)

 両辺を対数化し(テイラー展開で1次まで近似)、定常状態の関係、つまり、$1=e^{-\rho}(1+r^*)$  を使うと(途中の計算は今回は省略。更新したときに書きます)、

$\displaystyle \tilde{C}_{t}-E_{t}[\tilde{C}_{t+1}]+\frac{r^*}{1+r^*}E_{t}[\tilde{r}_{t+1}]=0$   (1)

 が得られます。

(2) (4.4)式の対数化
$r_{t}=\displaystyle \alpha(\frac{A_{t} L_{t}}{K_{t}})^{1-\alpha}-\delta$
   (4.4)
 次の形に変えます。
$r_{t}+\displaystyle \delta=\alpha(\frac{A_{t} L_{t}}{K_{t}})^{1-\alpha}$

 両辺を対数化(テイラー展開で1次まで近似)、定常状態の関係を使えば、

$\displaystyle \frac{r^*}{r^*+\delta} \tilde{r}_{t}=(1-\alpha)(\tilde{A}_{t}+\tilde{L}_{t}-\tilde{K}_{t})$   (2)

 が得られます。この(2)式の $\tilde{r}_{t}$ を $\tilde{r}_{t+1}$ の式に変え( t を t+1 にする)、(1)式の $\tilde{r}_{t+1}$ に代入して、(1)式の  $\tilde{r}_{t+1}$ を消去します(残りの計算は省略)。

 計算していくと、$\tilde{K}_{t+1}$, $\tilde{C}_{t+1}$, $\tilde{L}_{t+1}$ のように、t+1 期の変数が出てきます。$\tilde{K}_{t+1}$ には、(4.52)式を代入し、$\tilde{C}_{t+1}$, $\tilde{L}_{t+1}$ には、(4.43)式と(4.44)式の t を t+1 に変え、代入します。そうすると、再び $\tilde{K}_{t+1}$ が出てくるので、そこに再び(4.52)式を代入します。

 $\tilde{A}_{t+1}$,$\tilde{G}_{t+1}$ を変換するには、(4.8)式、(4.11)式を使います。
$\tilde{A}_{t}=\rho_{A}\tilde{A}_{t-1}+\varepsilon_{A,t}$   (4.8)

$\tilde{G}_{t}=\rho_{G}\tilde{G}_{t-1}+\varepsilon_{G,t}$   (4.11)

 つまり、
$E_{t}[\tilde{A}_{t+1}]=\rho_{A}\tilde{A}_{t}$

$E_{t}[\tilde{G}_{t+1}]=\rho_{G}\tilde{G}_{t}$

 となるので、これを代入します。


(3)資本の動学方程式(4.2)式の対数化

$K_{t+1}=K_{t}+Y_{t}-C_{t}-G_{t}-\delta K_{t}$
$=(1-\delta)K_{t}+Y_{t}-C_{t}-G_{t}$
   (4.2)

 を対数化すると、

$\overline{K}\tilde{K}_{t+1}=(1-\delta)\overline{K}\tilde{K}_{t}+\overline{Y}\tilde{Y}_{t}-\overline{C}\tilde{C}_{t}-\overline{G}\tilde{G}_{t}$ 
  (3)

 が得られます。他の式の対数化の場合でも同様ですが、$X_{t}\simeq\overline{X}e^{\tilde{X}_{t}}$ (ここで、$\overline{X}$ は定常値。$\tilde{X}_{t}$  は定常値からのかい離値)という関係を使い、それを代入し、$e^{\tilde{X}_{t}}\simeq 1+\tilde{X}_{t}$  という近似を使うと便利です(場合に応じて、便利なほうを使う)。
 (3)式には、$\tilde{Y}_{t}$ があるので、$\tilde{Y}_{t}$ を消去しなければなりません。生産関数(4.1)式を使います。
$Y_{t}=K_{t}^{ \alpha}(A_{t}L_{t})^{1-\alpha}$   (4.1)
 この(4.1)式を対数化すると、

$\tilde{Y}_{t}=\alpha\tilde{K}_{t}+(1-\alpha)(\tilde{A}_{t}+\tilde{L}_{t})$

 が得られます。これを(3)式の $\tilde{Y}_{t}$ に代入し、$\tilde{Y}_{t}$ を消去します。この場合も、(3)式の左辺の $\tilde{K}_{t+1}$ に(4.52)式を代入します。

 導出される方程式は、上記の(1)、(2)から1つと、(3)から1つの2つ。$\tilde{K}_{t}$ ,$\tilde{A}_{t}$,$\tilde{G}_{t}$ の係数を比較します。
 9の未定係数( $a_{CK}$,$a_{CA}$,$a_{CG}$,$a_{LK}$,$a_{LA}$,$a_{LG}$,$b_{KK}$,$b_{KA}$,$b_{KG}$ )を含んだ9つの方程式が得られるので(そのうち3つは、ローマーが示している(4.48)式~(4.49)式)、その連立方程式を解いてその未定係数を求める、という手順になると思います(線形方程式ではないんですが、解けるんでしょうか・・・)。


ラムゼイモデルで人口減少を見る

 以前に同じような記事を書きましたが、説明が正確でなかったので訂正版を書きました。

 結論から言うと、ラムゼイモデルでは人口減少の「現実的な」影響を説明することができないように思います。

 以下、知識(技術)の増加率を g、人口成長率を n、時間割引率(時間選好率)を ρ とします。また、消費の効用関数の限界効用の弾力性(にマイナスを掛けたもの)をθとします(異時点間の代替性は、1/θ となります)。資本消耗はないと想定します。

(1)ローマ、『上級マクロ経済学』のモデル
 資本の動学は、
140811 (1)
   (1)
 消費の動学は、
140811 (3)

   (2)

で表されます( k(t) = dk(t)/dt です) 。
 定常状態では、dc/dt 、dk/dt  が 0 になります( dc/dt =0、dk/dt =0)。
 まず、dk/dt =0 の軌跡を求めると、(1)式の左辺が 0 になるということなので、定常状態での効率労働当たりの資本ストックを k とすると、
140811 (2)
   (3)
 が成り立ちます。消費 c は、生産関数 f(k) と直線 (n+g)k との差になる、ということです。
14081109










   図1


 したがって、dk/dt =0 の軌跡をを (k,c) の空間に描けば(c は、 f(k) から (n+g)k を引いたものです) 、図2のような上に凸の曲線になります。

 次に、dc/dt =0 の軌跡を求めると、(2)式の左辺が 0 になるということなので、
140811 (4)
  (4)
 が成り立ちます。したがって、dc/dt =0 の軌跡は、(4)式を満たす k になります。これは、図2のような縦の直線になります((4)式に c がないので)。
14081101







   図2



 定常状態は、dk/dt =0 と dc/dt =0 との交点です。図2の E です。

 ここで人口増加率 n が低下したとします。
 (2)式、あるいは(4)式には n がないので、dc/dt =0 の直線はシフトしません。

 いっぽう、(1)式、あるいは(3)式には n が入っています。したがって、dk/dt=0 の軌跡は変化します。(3)式から、n が小さくなると、c が大きくなる、とわかります。dk/dt=0 の軌跡は上へシフトします(下の図3)。

14081102







   図3



 定常状態は、dk/dt =0 と dc/dt =0 との交点です。経済は図3のEから、新たな定常状態へ向かって上へ移動します。ラムゼイモデルでは、消費 c はジャンプ変数(操作変数)です。瞬時に変化できます(いっぽう、資本 k は状態変数で、すぐに変化できない。資本ストック k は「その経済において歴史的に決定されており・・・不連続に変化することはできない」。対照的に、消費 c は、「変化(ショック)の生じたその時点において不連続に変化(ジャンプ)できる(ローマー、78ページ) 注1)。
 したがって、この場合( kの変化は生じないので)、新たな均衡への移動は、瞬時に(比較的短い時間で)行われます。
 効率労働当たりの資本 k は変化せず、効率労働当たりの消費が増加することになります。ただし、経済全体のGDP(産出量)は減少します。経済成長率は次の式で表されます。
150209 (22)


 a は知識・技術の増加率。a も資本ストック(第3項)も変化していなくて、n(人口増加率)が減少するので、経済成長率は減少します。

 こういうこと(1人当たりの消費が増加する)が、人口が減少している今の日本で起こっている(あるいは起こった)と考えるのは難しい。

(2)ブランシャール("Lectures on Macroeconomics") のモデル
 資本の動学は、ローマーと同じ、
140811 (1)

 です。消費の動学は、ローマーとはちがうものです。
140811 (5)

   (5)

 (この式の導出はこちらを参照してください。注2)。

 人口増加率nが減少した場合、dk/dt =0 の軌跡の変化は、ローマーの場合と同じです。上へシフトします(下の図4)。
 dc/dt =0 の軌跡の変化は、ローマーの場合と違います。それを求めると、(5)式の左辺 dc/dt が 0 になる、ということなので、
140811 (6)
   (6)
 が成り立ちます。これは図2と同じ縦の直線です。

 しかし、(6)式の場合、n が減少すると、f’(k) が減少します。f’(k) が減少すれば、k は増加します。したがって、n が減少すると、dk/dt =0 の軌跡は右にシフトします(下の図4)。
14081110






 図4




 経済は、新たな均衡 E’に移動するのですが、これだけではどのような動きをするのかわかりません。均衡に到達する経路は、鞍点経路(サドルパス)です。サドルパスが E よりも上にあるか、下にあるかで経済の動きが違うものになるからです。

(a) サドルパスが E よりも上にある場合
14081104









   図5

 経済は、まず、サドルパスまで上へジャンプします。消費 c はジャンプ変数で、瞬時に変化できます。その後、サドルパスに従って、新たな均衡 E’へ長い時間をかけて進んでいくことになります。

 このパターンの場合、最初、効率労働当たりの消費が瞬時的に増え、その後、効率労働当たりの資本と消費がじわじわと増加していくことになります。

(b) サドルパスが E よりも下にある場合
14081105








   図6


 経済は、まずサドルパスまで下へジャンプします。その後、サドルパスに従って、資本と消費を増やしながら、新たな均衡へゆっくりと進んでいきます。

 このパターンの場合、最初、効率労働当たりの消費が瞬時的に減少し、その後、効率労働当たりの資本と消費がじわじわと増加していくことになります。
 いったん消費を減少させるのは、将来、1人当たりの資本ストックが増加すること――正確に言えば、将来の1人当たりの資本ストックを増加させれば効用最大化できること――がわかっています(ラムゼイモデルは合理的期待モデルです)。資本を増加させるために、いったん消費を減らすのです。

 さて、上の3つのパターンのどれが、現在の日本の人口減少の状況に近いでしょうか。
 3つめのパターンが今の日本の状況に近いように思えます(消費が一時的に減るから)。しかし、消費がいったん減少するのは、将来、1人当たりの資本ストックが増加すると人々が期待している(そして、消費も増加する)からです。これが今の日本の状況に当てはまるとは思えません。


 なぜ、図6で新たな均衡 E’が右上にあるのに、経済は右上に動かずに、下に移動するのか?

 E から右上に動いていくと、下の図7のように、(位相図の動学にしたがい)紫の矢印のにしたがって F の方向に進み、消費が増大し、資本を食いつぶすことになります。わざわざ厚生を悪化させる方向に進むのは非合理的です。 
14081106







   図7



 消費(ジャンプ変数、操作変数)は調整可能です。経済は縦方向には自由に動けます。新たな均衡 E’に到達する経路はサドルパス(だけ)です。経済は新たな均衡E’に到達できるように、消費を不連続に変化させ(消費を減少させ)、サドルパスに乗るようにするのです。



注1) 斎藤他『マクロ経済学』のラムゼイモデルの説明に物足りなさを感じるのはこの点です。
消費 c は、ジャンプ変数(操作変数)で不連続に変化できる。いっぽう資本 k は、状態変数で連続的にしか変化できない(この説明は、チャンの『現代経済学の数学』にもあります)。
 この区別が書かれていません。
 そのため、上の図7のような、Fに至る経路が起こりうるかのような印象を与える説明になっています。


注2) なぜ、ローマーのモデルでは、消費の動学方程式に人口増加率 n が入ってこず、ブランシャールのモデルでは人口増加率 n が入ってくるのかわかりません。想定している予算制約式が違います。ブランシャールの場合、資本の動学方程式を予算制約式にしています。
140811 (1)

 逆に、ローマーの予算制約式の仮定をどのように変えれば、人口増加率 n が入ってくるようになるのかわかりません。たぶん、効用最大化の単位が家計当たり[家計の効用を最大化する]か、1人当たり[1人の個人の効用を最大化する。こちらには人口増加率の n が入ってくる]か、という違いだと思うのですが・・・ どうでしょうか?


ローマー、『上級マクロ経済学』:補足(1)

上級マクロ経済学
上級マクロ経済学 [単行本]

**********
第1章
1.5 量的なインプリケーション
収束の速度 
(29ページ)

 効率労働当たりの資本ストックの動学は、
140207 (1)
   (1)
 です。これは時間 t に関する微分方程式ですが、これを効率労働単位当たりの資本ストック k の式と考えます。つまり、
140207 (2)
   (2)
 です。テイラー展開で定常状態での k の値 kの近傍で近似します(1次の項まで)。
140207 (3)

   (3)
 定常状態では、つまり k=kのとき、(1)式は 0 になります。つまり k(k) = 0 です。したがって、(3)式の右辺の第1項はゼロです。
140207 (4)

   (4)
140207 (5)
 
 とおけば、(4)式は次のように表すことができます。

140207 (6)
   (5)

**********
 一般的に1次の微分方程式の解は次のように求めます(以下は中田真佐男氏の『動学マクロ経済学に必要な数学』をもとにして書いています)。
140207 (7)
   (6)
 x を右辺へ移項します。
140207 (8)

 両辺に eat をかけます。
140207 (9)
   (7)

 このようにするのは、次の関係を使いたいからです。
140207 (10)


140207 (11)
   (8)
 (7)式の両辺を積分します。

140207 (12)
   (9)

 (8)式を使い、(9)式の左辺を計算すると、(9)式は次のようになります。
140207 (13)
     (b は任意の定数)

 次に右辺を計算すれば、
140207 (14)


140207 (15)


 両辺を eat で割り、γx - b を A とおけば、
140207 (16)
   (10)

 となります。
 定常状態での y の値を yとすると、定常状態では y は変化せず一定の値になるので、y =0 になります。したがって(6)式から( (6)式に y =0 を代入すれば)、
140207 (17)

140207 (18)


 が得られます。これを(10)式に代入すれれば、
140207 (19)
   (11)
 となります。t =0 のときの y の値を y(0) とすると、(11)式から、
140207 (20)

 この関係から(11)式の A を書き換えれば、(11)式は、
140207 (22)
   (12)

 となります。

  つまり、(6)式の微分方程式
140207 (7)

 の解は、
140207 (22)


 になるということです。

**********
 これを(5)式に当てはめれば、(5)式の効率労働労働当たりの資本ストックの微分方程式の解が、
140207 (23)
   (13)
 になるとわかります。この式は、効率労働単位当たりの資本ストック k は、毎単位時間、定常状態での均衡値 kまでの残りの距離(つまり、k(0)-k)の e-λt の割合だけ、kに近づいていくことを表しています。
140207 (24)
 と置いているので、λを計算します。

140207 (24)


140207 (25)


140207 (26)
   (14)
  k=kのとき、(1)式は 0 になります。つまり k(k) = 0 です。したがって、
140207 (27)

 この式から s を求めると、
140207 (28)


 となります。これを(14)式に代入すれば、
140207 (29)

   (15)

 となります。[ ・ ] の中の f’(k)k/f(k) は産出量の、効率労働単位当たりの資本ストック k に対する弾力性です。これをα とおけば、(15)式は、
140207 (30)

 となります。n+g+δが6%程度と考えると( n =1~2%、g =1~2%、δ=3~4% / 年 と考えると)(31ページ)、
140207 (31)

 です。これは、k が、均衡値kまでの距離の4%を毎年進んでいくことを表しています。
 例えば、均衡値までの距離の半分を進む時間は、
140207 (32)

 を解けば求まります。
140207 (33)

 つまり、17年です。

 グラフで示すと下のようになります。初期値 k(0)=1、 定常値(均衡値)k=2 です。横軸の時間の単位は10年です。

solow03

ローマー、『上級マクロ経済学』:補足(21)

第8章 投資
8.9 金融市場の不完全性
情報の非対称性のもとでの契約の形態
(472ページ)

 「したがって最適な契約は、外部投資家に対し必要な収益率を提供しつつも、投資家が産出量の確認する状況が生じる割合を最小化するような契約である。」

 ここでは、そのような契約の例として、次のような契約を想定し、それにもとづいて分析が行われます。

(1) 「もしプロジェクトの収益がある境界水準を越えた場合、企業家は投資家に D を支払い、投資家は産出量の確認をおこなわない。」
(2) 収益が D を下回った場合、投資家は確認費用(以下 C )を支払い、産出量のすべてを受け取る。

 投資家の受け取り(確認費用 C を支払う必要がある場合はそれを引いた純受け取り)は、以下の図の赤いラインになります。
13090604






 




 
   (図1)





 プロジェクトの産出量が D 以下の場合は、確認費用 C を支払い産出量を受け取るので、その純受け取りは y-C です(図の黒い直線が y-C です)。産出量が D 以上の場合は、D を受け取るので、y>D では、受け取りは D で一定になります(水平の直線)。
 この図からわかるように、産出量が D<y<D+C の範囲では、投資家の受取は、C を払って産出量を確認して産出量を受け取るよりも多くなります。これが、「外部投資家に対し必要な収益率を提供しつつも、投資家が産出量の確認する状況が生じる割合を最小化する」役割を果たしているわけです。

 プロジェクト産出量は、0 から 2γの間で「一様分布」している、と仮定されています。
13090601










 産出量の確率密度関数を f(y) とすると、f(y) = 1/(2γ) で一定になります。
 産出量の期待値を求めれば、
13090504



13090505
   (1)

 となります。

 産出量がこのように分布しているので、例えば、産出量が 0 から d の間になる確率は d/(2γ) です。その確率は、下の図の色がついている部分の面積です。
13090602










 計算で求めれば(産出量が 0 から y の間になる確率を P(y) とすると)、
13090502



13090503
   (2)

 となります。
 上の図のように、産出量が 0 から d になる場合の期待値(産出量が 0 から d になる条件での期待値=条件付期待値)は、
13090506





13090507 


   (3)

 となります。これは、産出量が 0 から d になる場合の平均産出量が d/2 になる、ということも表わしています。

 そこで、このケースの場合の投資家の期待純受取を求めます(475ページ)。以下 R(D) は、投資家の受取の期待値です。
13090603










(1) 産出量 y が y<2γの場合。
 産出量 y が Dより大きかった場合(上の図の①の場合)は、投資家の受取は D なので、その期待値は、
13090508



13090509
   (3)

 となります。
  次に産出量 y が D より少なかった場合(上の図の②の場合)は、投資家は確認費用 C を払い、産出量を受け取ります。つまり y-C です。
 産出量が 0 から D になる場合の平均産出量はD/2になります((3)式)。産出量が 0 から D になる確率は、(2)式から D/(2γ) なので、純受取の期待値は、平均産出量 D/2 から確認費用 C を引いた値に D/(2γ) をかけた ( D/2-C)D/(2γ) になります(これがローマーの説明)。
 計算で求めれば、
13090510



13090511

   (4)

 です。したがって、y<2γの場合の投資家の受取の期待値は、(3)+(4)なので、
13090512
   (5)

 となります。

(2) D が2γより大きかった場合。
 この場合、産出量はDより小さくなるので(産出量は 2γより大きくならない)、確認費用 C を払い産出量を受け取ります。産出量の期待値は、(1)式からγです。したがって、この場合の投資家の受取の期待値は、

R(D) =γ- C   (6)
 
 です。

 D の変化に対して投資家の期待受取がどのように変化するかを見るために(5)式を変形すると、
13090512


13090513

   (7)

13090514


13090515

   (8)

 となります。これは上に凸の2次関数です。
 したがって、投資家の期待受取 R(D) と D との関係は、次のグラフになります。
13090609





   図2




 D が増加するにつれて R(D) は増加し、D = 2γ-C で最大値 (2γ-C)/4γをとります((8)式から)。D>2γでは、γ- C で一定です((6)式から)。

**********
 実は投資家の期待受取 R(D) は、上記のように計算しなくても求まります。産出量は一様分布しているので、それぞれの産出量が発生する確率は同じです。
 産出量が連続的に変化した場合(下の図の横軸)、投資家の受取の合計は以下の図の面積になります。したがって、期待値はその面積に2γをかければ求まります(あるいは、投資家の受取の合計が以下の図の面積になるので、受取の平均は2γで割ったものです)。下の図の色がついた部分の面積を計算すると、
13090606
















赤い部分は損失分なので、その部分はマイナスにして足します。

13090516



13090517



 これに1/(2γ)をかければ、
13090518



 となります。これは(7)式と同じです。

**********
 投資家の期待受取が図2のように変化する、つまり D = 2γ-C で最大になり、D がそれより大きくなると減少するのは、ローマーの説明によれば、「投資家が産出量を確認する場合、投資家が受け取るネットの額は常に 2γ-C を下回ることにある。したがって、産出量が 2γ-C を上回る場合、D = 2γ-C として確認なしに 2γ-C を受け取るほうが、投資家にとっては D>2γ-C とするよりもよりよい結果となるのである。」(475ページ)

 投資家の期待受取の変化が図2のようになるは、上記の契約(契約1とします)をした場合の受取と、「すべての産出量に対して確認費用 C を払い、産出量を受け取る」という契約(契約2とします)をした場合の受取を比較してみればわかります。
 確認費用 C を払い産出量を受け取る(契約2)場合、投資家の受取は y-C となり、下の図の赤い直線になります。
13090605
















 それに、対して契約1の場合の投資家の受取は、冒頭の図1です。両者を比べれば、

13090607
















 契約1は、契約2に比べて、①の部分が多く、②の部分が少ないわけです。つまり、契約2との差は、①-②になります。
 そこで、Dが増加していくと、①は変化せず、②が減少していきます。そのため投資家の期待受取 R(D) は、D の増加関数になります。
 しかし、D>2γ-C になると、下の図のようになります。
13090608
















 D>2γ-C になると、②の部分はすでになくなっています。そして、Dが増加するにつれて、①は減少します。そのために、D>2γ-C になると、R(D)は減少するのです。

ローマー、『上級マクロ経済学』:補足(23)

8月27日更新: 最後に少し付け加えました。

 前回の補足(20)で、ローマー、『上級マクロ経済学』の中の シャピロ=スティグリッツ モデルの説明(9章4節)を取り上げましたが、シャピロ=スティグリッツの論文自体の説明のほうがすっきりしています。
Carl Shapiro and Joseph E. Stiglitz,
"Equilibrium Unemployment as a Worker Descipline Device" (1984)

 以下、対応している部分(上記論文436ページ)の翻訳。

**********
 労働者は、自分の効用の流列の割引現在価値 (discounted utility stream) を最大化する努力水準を選択する。つまり、怠業する(さぼる)場合の効用と、怠業しない(努力する)場合との効用を比較して、そうするのである。これについて今から考えよう。Vを雇用され怠業する労働者の期待生涯効用とし、Vを雇用され怠業しない労働者の期待生涯効用としよう。そして、Vを失業者の期待生涯効用としよう。怠業する労働者のファンダメンタルな資産価値は次の式で与えられる。
13082601
   (1)

  怠業しない労働者の場合は、
13082602
   (2)

  となる。それぞれの式は、利子率 × 資産価値 (左辺)が、フローの利益(配当金)と期待できるキャピタルゲイン(あるいはキャピタル)ロスの和(右辺)になる、ということを表わすものになっている(原注1)。(1)式と(2)式から、Vと Vを求めれば、
13082603

   (3)

13082604
    (4) 
 
  となる。もし、V≧V となるならば、そして V≧V となる場合だけ、労働者は怠業しないことを選ぶだろう。私たちはこれを「非怠業条件」(no-shrinking condition: NSC) と呼ぶことにする。その条件は、(3)式と(4)式から、
13082605
   (5)


 と表わすことができる。

**********
原注1) 導出は以下の通りである。Vを所与とし、[0,t ]の短い期間に注目すれば、次の式を得る。
13082606

 このようになるのは、[0,t ] の期間の間に失業する確率が bt であり、
13082613

 だからである。Vについて解けば、
13082607


  となる。t → 0 として極限をとれば、(1)式を得る。(2)式も同様に導出できる。


**********
訳注) この原注では雇用されている場合と失業の場合だけで考えている(怠業している状態と努力している状態を区別していない)ので、本文中の式と違うものになっています。それぞれ分けて考えれば本文中の式と同じになります。
(1) そこで まず怠業しない場合、Vを考えてみます。
 [0,t ] の短い期間に注目すれば、
13082608


 の関係を得ます。これは 0 時点での怠業しない状態の価値(左辺)と、0 時点からわずかにはなれた t 時点でのその価値(右辺)が等しいという関係を表わしています。
 右辺について見ると、その状態の価値をある種の資産と考えれば、フローの効用(配当金)が w-e で、0時点から t 時点まで時間が t 経過しているので、その間の利益は (w-e)t となります(右辺の第1項)。そして、資産自体の価値があるので、それを足します。 t 時点での資産の価値は、時間 t の間に失業する確率が bt あり、いっぽう仕事が続いている確率は 1-bt なので、その期待値になります(右辺の第2項)。
 Vの式に直せば、
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 となります。上記の原注に示されているように、t → 0 として極限をとります。
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 このままでは計算できないので、ロピタルの定理を使います(ロピタルの定理については、前回の補足)。分子と分母をそれぞれ微分すれば、
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 となるので、これの極限( t → 0 )を取れば(4)式になります。
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(2)
 次にVを求めると。t 時点で失業している場合と仕事が続いている場合があり、失業している場合、通常の意味で失業した場合(その確率は bt )と、怠業が発覚して失業した場合(その確率は qt )の2通りがあります({ }の中の第1項)。いっぽう、仕事が続いてる確率は 1-bt-qt になります({ }の中の第2項)。したがって、Vは次の式で表わされます。
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 Vの式になおせば、
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 となります。t → 0 として極限をとります。
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 上の場合と同様にロピタルの定理を使えば、
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 となり、本文中の(3)式になります。

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 ところで、ローマーの式と見たところ少し違います。シャピロ=スティグリッツのVは、ローマーでは次のように表わされています。
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 つまり、シャピロ=スティグリッツでは (w-e)t となっているところが、ローマーでは、{1-e-(b+ρ)Δt }(w-e)/(b+ρ) となっているのです( r はρ、t はΔt に対応しています)。
 実はこれは同じです。
 t が小さければ、1-e-at ≒ at という近似が成り立ちます。つまり、
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13082633

 となるわけです。
 フローの利益が w-e ならば、直感的に考えると、時間 t の間にその利益は(w-e)t となると考えられます。実際には割引率、利子率によるその値の増減を考えなければいけないのですが、時間 t が短く、利子率、割引率(上の例で言えば r,ρ,b)も小さければ、利子率、割引率による変化は無視できる、ということです。



 

プロフィール

沢ひかる

貧乏人。

経済学「部」とは無縁です。

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