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写真スポーツ報知より転載
映画の抱負を語る大鶴義丹



映画の抱負を語る大鶴義丹


「めぐみへの誓い」の上映が始まった。
この映画の重要な役を大鶴義丹氏が熱演された。
私はその勇気と覚悟を称賛したい。

理由は二つ。

一つは、その、役者魂。

彼の役どころは、日本と北朝鮮を行ったり来たりしながら日本人拉致を繰り返す冷徹な工作員の役。拉致された年端もいかない中学生のめぐみさんが、親に会いたい、家に帰りたい、と泣き叫ぶと、朝鮮語を覚えれば帰す、と約束し、めぐみさんに朝鮮語と思想教育を徹底させる役。その言葉を唯一の望みとして、来る日も来る日も、必死に朝鮮語をマスターしためぐみさんは、数年後、彼の前で堂々と朝鮮語でチュチェ思想を披露した。そのいたいけな少女の純粋で必死な姿が胸を打つ。めぐみさんは、怯えながらも、もう日本に帰れますよね、と懇願するように訴えると、本当にチュチェ思想を信じたならば、そんなことは思わないはずだ!といって彼は激怒する。その時の、約束を守らなくても平気な表情といい、めぐみさんを精神錯乱のような状態に追い込む悪辣非道ぶりといい、圧巻の演技。これをみて、彼を憎まない日本人は一人もいないであろう。大鶴氏は、朝鮮語を脱北者から徹底的に指導を受け、極寒の海の撮影にも耐えたという。

その二つ目

この役を引き受けた彼の勇気。

彼が、もしこの役を引き受ければ、日本人のみならず、北朝鮮関係や、左翼から抗議が殺到する事は充分に考えられただろう。日本では、正しいと信じていても、一旦、政治的攻撃目標に選ばれると、攻撃はその息の根を止めるまで続けられる。彼は、両親とも演劇関係者で、その世界ではある意味エリートとして育ち、明るい性格や優しそうなルックスもあって、人気があるという。その彼が、わざわざ、この役を引き受けるにはリスクが多すぎる。

夕刊フジによると彼はインタビューで「この役は悪役として演じてはいけないと思った、拉致は北朝鮮の国家プロジェクトとしてやっているわけでー中略ー工作員は正しいと思ってやっているので、心を押し殺してやっている、と考えて演じた」と答えている。この映画で私が、肝のキメ台詞の二つのうちの一つに挙げたいのは、この工作員が、部下に対して如何に日本は拉致がたやすい国かと説明する中で「日本はスパイ防止法がない国なんだ」と、見下げきった顔でいう台詞。全編、涙なくして観られない映画なのだが、ここでは、もう笑うしかなかった。彼の台詞は、台詞を越えた。日本という国の情けなさ、北朝鮮という国の必死さ。どこの国も存亡をかけて必死で策略を練っているのに、アホのように惚けきった国日本。ざるの如き入管法、雄々しく戦ってはいけない国。

彼は育った環境で、良くも悪くも、国という概念を深く考える事が出来たのかも知れない。
日本を愛する者は日本を存続させようとする。私は、大鶴義丹氏の捨て身の演技を無駄にしてはいけないと思った。

因みに、もう一つのキメ台詞は、拉致被害者の家族達が署名運動を行っていると、通りかかかったサラリーマン風の男達が「北朝鮮への差別だ!署名運動は差別だ!差別は止めろ!」と立ち止まって吐く言葉。日本人は、かくも、同胞意識を持たない国民になったか、と思う。

国連で上映を、との運動もあるらしいが、何より、この映画を日本中の学校で見せるべきだと思う。

(文責・鈴木)

スポーツ報知  野伏(のぶし)翔監督(69)は今回、全国の有志によるクラウドファンディングなどで製作資金を募った。「やっと初日を迎えることができた。民間の皆さまの力で出来上がった映画。こんな理不尽なことがまかり通ってはいけないんだと、改めて世界に訴えたい」と思いを込めて口にした。出演は他に大鶴義丹、故小松政夫、仁支川峰子ら。19日より、池袋シネマ・ロサ、AL☆VEシアター(アルヴェシアター/秋田市)他で全国順次公開。