学会・研究会

December 15, 2013

第28回東北静脈経腸栄養研究会に参加

 12月14日、トラストシティカンファレンス仙台で第28回東北静脈経腸栄養研究会が開かれました。東北静脈経腸栄養研究会にはじめて参加しました。

 10時より開始。モーニングセミナー「輸液の基礎」からはじまりました。JSPENのNST専門療法士試験の内容の講義です。続いてランチョンセミナー「消化器癌化学療法における栄養療法の有効性」です。

演題発表は27題。15時30分よりティータイムセミナー「周術期の栄養管理アップトゥデート」もあり、充実した内容でした。17時30分終了予定をやや超過しての熱いディスカッションが展開されました。

 僕は11月のJSPENのセミナーで、はじめてこの分野の学会に参加。今回は2回目ということになります。日頃、NSTのメンバーとして仕事をしているので、言語聴覚士のリハという範囲を越えて、広くNSTの内容に踏み込んだ勉強をしていきたいと考えています。

 研究会終了後、定禅寺通りに行きました。仙台の街はイルミネーションで彩られています。「光のページェント」を見てきました。本当に美しいイルミネーションです。しかし、あいにく、途中から吹雪になり、急いで、地下鉄構内に避難。地下鉄で仙台駅に行き、盛岡に帰ってきました。もう少し、ゆっくりと光のページェントを見たかったのですが、残念です。


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November 03, 2013

幼児期の言語発達と支援のあり方〜岩手県言語聴覚士会小児部研修会〜

 11月2日、岩手県言語聴覚士会小児部研修会が岩手県自治会館で開かれました。テーマは、「幼児期の言語発達と支援のあり方」です。

 私は、成人の臨床のみを行っているので、小児については、ST養成校のなかで学んだ程度です。それでも、研修会は興味深いものがありました。

 言語発達とは? STにとって、永遠のテーマでしょう。

 言語発達の理論については、2つの対立した立場があります。チョムスキーのいう生成文法に代表される生得モデル。もうひとつは、スキナーの行動分析に代表される学習モデルです。

 言語は、生まれつきなのか、学ぶものなのか・・・この両者は相いれないようですが、両方とも正しいのでしょう。この両者を結ぶ立場としてトマセロらが社会相互交渉モデルを主張しています。

 つまり、言語は生得的にプログラムされたものだけれども、子どもが人との関わりのなかで学んでいくもの・・ということです。

 ここで、とても大切なのは、人と関わるなかで言語を身につけていくということです。

 視線を追う能力と言語発達は関連していると言われています。共同注視と表出語彙は関連しているのです。相手の視線や指さしを手がかりにして、目標物に共同注視できる程、2歳の子どもの表出語彙は豊富といわれています。

 また、子どもの注視だけでなく、大人が子どもの興味を読み取り、関わっていくことで、さらに言葉を学んでいくと言われています。

 おもしろかったのは、アメリカで行われた実験です。子どもに、中国語の幼児番組を見てもらいます。ビデオを見せます。番組に登場するお姉さんは、中国語でパペットを使った楽しいゲームをします。毎日、同じ番組を見せます。

 何日かしてから、どれくらい中国語を理解しているか、テストします。しかし、身についていないのです。

 もうひとつ、実験をします。番組に登場するお姉さんが、実際に子どもの前にやってきます。番組で行うことと全く同じことを目の前で行います。中国語です。
 同じようにテストをしたところ、中国語を子どもは身につけていっています。

 つまり、テレビではなく、実際に人と接した場合に、言葉を身につけているのです。

 これは、直接、人と関わることが言語獲得に、きわめて重要であるということを意味しています。言語は、社会的な対人関係と分かちがたく結びついているということです。

 この実験結果は、とても興味深く、今回の研修会で、私が最も関心をもったものです。

 今日は、小児の言語発達がテーマでしたが・・・これは成人にとっても、重要なことと思われます。患者さんに、直接、話しかけること。言語刺激を入れていくということは、とても重要なことです。たんに失語症訓練ということだけでなく・・・認知症患者さんにとっても・・、また、DNRという段階になってもです。人間は、生まれてから、死ぬまで、社会的な関係のなかで生きていく存在であり、そのシンボルが言語なのでしょう。だから、言葉で人と関わるということが、生まれてから死ぬまで、その全過程を通じて、とても大切なことだ・・・そう思うのです。

 さて、今回の研修会では、LCスケールがとりあげられました。

 じつは、私は、LCスケールは、全くはじめてでした。LCスケールというのは、Language Communication Developmental Scaleの略です。「言語・コミュニケーション発達スケール」という検査です。

 言語発達の検査というと、私は「国リハ式言語発達遅滞検査」、SS法というのが思い浮かびます。ST養成校ではSS法の練習をずいぶんしました。

 LCスケールは、新しい言語発達検査です。そのサワリ程度ですが、今回、学ぶことができました。

 知能検査では捉えきれない、子どもの言語能力を分析することができます。有効なツールです。

 LCスケールには、学童期版もあります。こちらはLCSAスケールといいます。LC Scale for School Age children「学齢版 言語・コミュニケーション発達スケール」といいます。

 事例検討では、自閉症児のLCスケール、LCSAスケールの特徴などが、とても興味深いものがありました。

 私は、SS法をスクリーニング的に、成人の認知症患者さんの言語を知るために使っていますが、LCスケールも、そういう使い方をしても、おもしろいなと思いました。

 とても有意義な研修会でした。これからは、小児の研修会にも、積極的に参加していこうと思いました。



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October 27, 2013

「片麻痺者の視知覚・視覚系と運動制御」〜宮城県言語聴覚士有志勉強会に参加

 10月26日、栗原中央病院で今年度2回目の宮城県言語聴覚士有志勉強会が開かれました。

 今回は、片麻痺者の視知覚・視覚系と運動制御というテーマです。

 視知覚、視覚がどのようなメカニズムなのか、解剖学から整理していきます。さらに、視覚には運動視差やオプティカルフローといった特徴があることも確認されました。

 車に乗っていて窓から景色を見ると、遠くの物体ほどゆっくり動き、近くの物体ほど早く動いて見えます。このような遠近による刺激の動きの違いを運動視差といいます。運動視差は遠近感の手がかりになります。これは前進運動中のオプティカルフローです。

 人が環境のなかで移動することにより、網膜上に一定の動きのパターンが生じます。このような動きのパターンをオプティカルフローというのです。

 見え方の変化は、自己の姿勢や移動の方向、速度や加速度の情報になるのです。

 視覚系の姿勢・運動制御について言えば、健常者は、視知覚・視空間をとくに意識することなく感じています。何かをしたいと思う、その課題について意識しますが、見えたものに対して、きわめてオートマティックに処理していきます。
 しかし、片麻痺者は意識下の意志でコントロールしなければならないのです。

 そこで、リハビリテーションを進めていくなかで、どうやって感覚情報を整理して患者さんに受け止めやすくするか、それについて検討を加えるというのが、きわめて重要なことなのです。

 視覚、視知覚について、これまで掘り下げて勉強してこなかったので、今回、とても興味深く学ぶことができました。

 勉強会の後半は、軽度構音障害の患者さんの症例検討でした。構音障害のリハビリに、姿勢から取り組んでいきます。肩甲骨へのアプローチで姿勢が正しく保たれるようになり、発話明瞭度も改善しました。

 症例検討会では、参加したST、PT、OTからいろいろな意見が出されて、とても勉強になりました。




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October 20, 2013

発語失行の症候学とリハビリテーション:日本コミュニケーション障害学会復興支援セミナー

 10月20日、日本コミュニケーション障害学会復興支援セミナーが岩手県医師会館で開かれた。「発語失行の症候学とリハビリテーション」という題のセミナーである。

 発語失行の症候学、評価、治療・マネジメントまで、発語失行の全体像を学ぶことができた。

 発語失行は、Darleyの定義では、「脳損傷の結果、音素の随意的産生のために、構音筋群の位置づけと筋運動の系列化をプログラムする能力が損なわれたために生じる構音の障害」となっている。

 発語失行はブローカ失語と合併することが多い。失語は言語学的レベルの障害であるが、発語失行は音声学的レベルの障害である。言葉は頭では思いついているが、うまく話せない。発声器官を動かす運動プログラムが障害されているのである。

 それじゃあ、運動障害性構音障害ディサースリアとは、どう違うのか。ディサースリアは、発声発語器官に運動麻痺があるため構音の障害が起きるのである。発語失行は、発声発語器官を動かす運動プログラムがうまくできていないのであって、麻痺はない。そこのところがディサースリアとは違う。

 だから、ディサースリアでは、一貫性のある構音の誤りをする。たとえば、サ行がうまく言えないとか・・・特定の構音に誤りがみられてくる。しかし、発語失行は、構音の誤りに一貫性がない。構音の誤りはバラバラである。言えたり言えなかったりする。うまく言おうと探索しながら話す・・それが発語失行である。

 発語失行の特徴として、発話開始の遅れ、というのがあるが、今回のセミナーでは、「発話開始の遅れ」を発語失行の鑑別のポイントとするのは、適当とは言えないのではないか、ということが指摘された。

 発語失行では、自動的・反応的発話において構音が正確なのに、随意的・目的的発話において不正確になる。自動的運動と意図的運動の乖離である。すなわち、自発話では、わりあいとスラスラ話せるのに、いざ、音読してください・・・というような課題を出すと、つっかえつっかえ、やっと話すという状態になる。ディサースリアでは、麻痺によって話せないので、話せないのは、いつも同じである。

 また、プロソディーの障害も発語失行独特なものがみられる。ストレスが平坦になったり、音節間に不適切なポーズを挿入する。ボツボツと途切れたような発話になる。これは、運動障害の影響と患者の補償的努力を反映しているという。また、発語失行は声質の変化はない。正常である。ディサースリアは声質が変わる。声の障害がおきる。

 このようにして、さまざまなポイントをひとつずつ見ていき、発語失行の鑑別を行っていくのである。

 発語失行について、今回、より深く学ぶことができました。日本コミュニケーション障害学会の学術大会や研修会に、これからも参加していきたいと思いました。今回は、復興支援セミナーということで、本当にありがとうございました。


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October 14, 2013

いわて摂食・嚥下リハビリテーション研究会 第19回研修会

 10月14日、いわて摂食・嚥下リハビリテーション研究会の研修会がアイーナで開かれた。

今回は、小児の摂食・嚥下障害がテーマである。午前は医師による講義。岩手医科大学の外科の医師から小児の胃瘻造設について、同大学小児科の医師から小児の摂食障害への治療についての講義がなされた。小児のVF画像が示された。軟口蓋挙上不全、胃食道逆流がみられる。増粘ミルクにすることで改善された例が紹介された。

午後は、小児の摂食障害への療育について3人の先生の発表を聴いた。言語聴覚士、作業療法士のハビリテーションについて。また、重症心身障害児の支援について、社会資源へのつなぎについて発表があった。

私は、成人の摂食・嚥下障害へのリハビリテーションを仕事としている。患者さんは皆、高齢者である。脳血管障害、認知症の患者さんたちである。だから、小児の摂食・嚥下障害については未知の領域である。

 成人の患者さんは、いったん獲得した摂食・嚥下の能力が奪われて、それをリハビリで取り戻すという流れである。しかし、小児の場合、摂食・嚥下の能力を獲得していないところから臨床がはじまるのである。食べることを学習しなくてはならない。そこが、いちばん大きな違いである。

 摂食・嚥下能力の発達過程のなかで、その子がどの段階にいて、何が障害されているのか、個々のケースの評価がまず行われなければならない。まず、適切な評価がなされなければならないのは、成人の場合も同様である。

 成人と小児では、口腔、咽頭の形状からして違いがあり、その動きについても微妙に異なってくるので、その違いを心得ることが大切だと思う。

 ただ、成人の摂食・嚥下リハビリテーションのノウハウを生かすことは可能ではないかと私は思う。今日の講義のなかで、増粘ミルクの紹介があった。これは、トロミをつけるという発想であり、成人の摂食・嚥下リハで行われる方法でもある。

 今回、いわて摂食・嚥下リハビリテーション研究会で小児を取り上げられたのは、とても意義深いと思った。

 小児の患者は、やがて大人となっていく。成人の脳性麻痺患者が誤嚥性肺炎となって嚥下リハを受けるということもある。私もそういう患者にリハを何件か行っている。

 摂食・嚥下リハビリテーションを地域に広げていくという課題を考えるとき、小児の摂食・嚥下は避けて通れないのである。小児の摂食・嚥下障害について、もっと勉強していき、取り組んでいきたいと思う。



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September 24, 2013

第19回 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 in 岡山

 9月22日・23日、岡山県倉敷市で第19回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会学術大会が開かれました。会場は川崎医療福祉大学です。

 僕は、昨年暮れの摂食・嚥下リハ学会認定士試験に受かっていたので、その単位をとる目的もあって、今回参加しました。

 僕にとって、この学会はとても愛着があります。日本言語聴覚学会は、STだけの学会ですが、摂食・嚥下リハ学会は多職種です。ひじょうに多彩な面があり、いつもいろいろな発見をすることができます。

 いろいろなセッションを聴いてきました。今回も、ひじょうに刺激的で、かつ面白く、そして勉強になり・・・本当に盛りだくさんでした。

 今回のテーマは、「摂食・嚥下リハビリテーション 今求められること」です。オープニングの会長講演は、今回のテーマの趣旨を説明されました。そのなかで、いま、胃瘻の是非について議論がおきていることに触れられました。終末期の患者さんにとって胃瘻で、いつまでも生かせているというのは、辛いことではないか・・・胃瘻はやめた方がいい・・・という意見が強くなってきています。この点について、摂食・嚥下リハの観点から考えると、また別の見方をすることができます。胃瘻にすることによって、栄養がじゅうぶんとなり、摂食・嚥下リハが効果を上げ、口から食べられるようになった・・という例があるからです。胃瘻がすべてよくないというのではなく、その患者さんにとってどうか・・・ということを、医療者はじゅうぶん説明し、患者、家族とともに考えていくことが必要なのでしょう。摂食・嚥下リハの観点からの胃瘻についても、視野に入れながら、議論を深めていくこと・・・今学会でも考えていきたい・・・と、話されました。そして、もうひとつ・・・認知症患者さんへの摂食・嚥下リハが近年大きなテーマになっていること・・・この点についても、今学会で議論していきたい・・と話されました。

 ということで・・・僕はシンポジウム「認知症患者への治療戦略」を聴きました。摂食・嚥下リハの手技のほとんどは指示が入ることを前提にして組み立てられています。その場合、指示が入りにくい認知症患者さんへの対応に苦慮します。

 認知症患者さんの場合、認知症の周辺症状によって、食べることが難しくなります。詰め込んで食べてしまう、早く食べてしまう、あるいは、食べたものを口に溜め込んでしまい嚥下しない、食べることを拒否する・・等々、さまざまです。
 このシンポジウムでは、演者が認知症患者さんにどう対応したか、具体的な例をあげられ、その方法について検討が加えられました。吸綴反射を利用する、スプーンを手に持たせる、赤ちゃんせんべいを利用する・・・など、ひじょうに具体的で、明日からでもすぐに現場で取り入れられる内容です。とても参考になりました。しかし、具体的な手技、そのものよりも、認知症患者さんにどう接するか、そのケアの質を高めること、認知症患者さんに、その存在をしっかりと受け止め、尊厳ある方として、しっかりと対応すること、そのことについて、すべての演者の先生が強調されました。とても重要なことです。ケアの態度がベースになっているのだと思いました。

 さて、シンポジウム「サルコペニアと摂食・嚥下リハ」も聴きました。まず、若林秀隆先生よりサルコペニアによる嚥下障害について、その総論的なことがレクチャーされました。サルコペニアと嚥下障害との関連が考えられます。ここで、注意しなければならないのは、サルコペニアによる嚥下障害についての議論するとき、定義がしっかりとされなければ混乱するということです。今回のシンポジウムでは、「ゞ敍量低下、筋力低下、5’縦祺次△海裡海弔揃っていること、かつ、嚥下障害の原因となるべく脳血管障害や神経疾患がないということをもって、サルコペニアによる嚥下障害とする」と、座長が議論を整理されました。ちなみに、今回のシンポジウムでは、若林秀隆先生とともに、藤島一郎先生が座長を務められました。そのため、嚥下の仕組みについても議論が及び、とても勉強になりました。

 興味深かったのは、歯科医の糸田先生のプレゼンでした。糸田先生は嚥下反射について考察します。嚥下は、舌骨が挙上するということがキーポイントとなります。嚥下は舌圧、嚥下圧がじゅうぶんに発生して、それが始点となります。その始点を起こすには、舌骨が固定されなければなりません。舌骨が固定されるには、舌骨上筋群、舌骨下筋群が必要となります。食物を食べるという動作をするとき、人はモグモグと咀嚼します。咀嚼筋を使います。咀嚼筋、舌骨上筋群、舌骨下筋群が働いて、その3つの筋肉群が緊張して、はじめて舌骨が挙上するのです。

 この3つの筋は、順番に緊張していきます。まず、咀嚼筋が活動して、次に舌骨上筋群が活動して、そして、舌骨下筋群が活動します。すると舌骨が固定されて、舌骨が挙上する・・・そういう流れで、嚥下は起きてくる、ということです。

 この説明が、じつに明快で、おもしろかったです。藤島先生のコメントも参考になりました。嚥下反射というのは、とてもプリミティブな反射であるということです。それは、呼吸よりも強いものだということです。ですから、嚥下をみるときは、たんに動きをみるだけではなく、感覚もどうなっているかも確かめると、より正確に、嚥下をみていくことができます。

 さて、シンポジウム「サルコペニアと摂食・嚥下リハ」については、結論にまで至りませんでしたが、この領域は、まだ研究途上であり、サルコペニアと嚥下の関係は、今後、解明されていくと思われます。 

 今学会で、海外の摂食・嚥下研究者の講演をいくつか聴くことができました。そのなかで、興味深かったのは、Steven B.Leder先生の講演です。イエールスワロープロトコルについての講演でした。嚥下評価の方法です。イエールスワロープロトコルでは、水飲みテストを行います。それによって、経口摂取ができるかどうか判定するのです。その水飲みテストは90ミリリットルなのです。90ミリリットル水飲みテストの様子のビデオ映像も流されました。僕の感覚から言えば、90ミリリットルというのは、少し量が多いのではないかと思うのですが・・・、そこは、日本とアメリカの違いなのかもしれません。日本とアメリカの文化的な違いなのかなぁ、と思いました。
その量の違いは、ともかくとして、Leder先生が挙げていた嚥下評価の方法が、水飲みテストとともに、cognitive assessmentとoral mechanism examinationです。つまり、見当識を確かめる認知のスクリーニングと発声発語器官のスクリーニングです。僕が日頃、行っている臨床そのものでした。世界的に著明な摂食・嚥下の先生の話と大きく変わらない考え方で、僕も日頃、臨床を行っているということを知り、自分の方法は間違っていなかった・・・という自信につながりました。

 さて、今学会では、日本人研究者の英語のセッションもありました。英語のセッションは、僕は、ついていけないけれども、それでも、ところどころは、こんなものかなぁ・・と検討をつけながら聴きました。医師だけでなく、STも英語で発表していて、ずいぶん、頑張っているなぁ・・・と刺激を受けました。

 日本語の一般演題も聴きました。診断・評価では、超音波検査による嚥下評価、舌圧測定器と舌筋力計による舌運動機能評価、バルーン型嚥下圧測定器の発表が印象に残っています。また、その他の脳疾患という一般演題のセッションも聴きました。さまざまな疾患による嚥下障害のリハの報告でした。

  さて、教育講演では、田角勝先生の「小児の摂食・嚥下障害への対応の問題点」を聴きました。昨年、僕は支援学校に指導に行き、そこで小児の摂食・嚥下障害にじかに触れ、また、指導のために小児の摂食・嚥下について僕自身、あれこれ勉強したということもあり、とても興味深く聴きました。

  田角先生は、子どもにとって、食べる、すなわち、食卓というのは、学びの場でもあること。つまり、社会性やコミュニケーションを身につけていく・・・食べることを通して生活を身につけていく・・・ということです。食事は子育ての基本にあるのです。摂食・嚥下というと、嚥下がどうかとか、誤嚥せずに飲み込めているか・・・そういう視点でものを見てしまいます。しかし、それは、あまりも「食べる」ということの一面にすぎず、本質を見ていないともいえるのではないかと思います。食べるということ、その全体をみていくことが大切です。ここで、大切なことは、子どもが自分で食べるということを身につけるということです。

 このような、先生のお話を聴いていて・・・これは、子どもということだけではなく、成人についても同じことだろうな、と思いました。社会性なり、コミュニケーションというのは、子どもの摂食・嚥下に限らないはずです。大人にとっても、食事は、生活です。社会性なり、コミュニケーションなのです。先生の話を聴いて、あらためて「食べる」という原点を確認できたと思いました。

というわけで、今学会で、多くを学ぶことができたのです。ありがとうございます。

少ない時間をやりくりして、岡山観光もしてきました。

後楽園と岡山城を見てきました。三大名園と言われるだけあって、後楽園は美しかったです。岡山城は勇壮でした。

来年の日本摂食・嚥下リハビリテーション学会学術大会は20回目となります。東京で開かれるそうです。来年も、ぜひ参加したいと思いました。

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後楽園




岡山城





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June 30, 2013

第14回 日本言語聴覚学会 in 札幌

 6月28日・29日、札幌で開かれた第14回日本言語聴覚学会に参加した。学会を聴きに行った。

 今回、僕はアドバンスセミナー、教育講演、特別講演、ワークショップを聴いた。日頃の臨床の範囲を越えたジャンルでいろいろ聴いてきた。

 発達障害、吃音のセミナー、教育講演を聴いた。吃音は学校の授業を受けて以来の内容。アメリカの吃音の臨床DVDも見ることができて、本当に新鮮だった。もともと言語療法は、吃音の治療からはじまっている。そういう歴史があるけれども、いま日本のSTで、吃音の臨床を行っているのは、きわめて少数だという。吃音に対して、多くのSTが関わってほしいと演者の先生はお話していた。
 発達障害のセミナーも小児の臨床を行っていない僕にとっては、新鮮なもの。学校の授業以来のものだ。STは、保健・医療・福祉・・・さらに教育にも関わる存在であることを、あらためて確認するとともに・・・STへの期待の大きさということも感じ、とても刺激になった。

 音声障害のアドバンスセミナーも聴いた。STの多くはリハビリテーション科に属し、耳鼻咽喉科の医師とは、やや距離がある。音声障害は、耳鼻咽喉科の医師との関わりが大きいということもあり、STの現状では、音声障害の臨床が活発というわけではない、そういう現状に対して、演者の先生は、音声障害へのリハの基本的なことをあらためて教授する。プッシング法、咀嚼法の正しいやり方を実技で経験した。僕はテキストを見ながら、独流で行っていたが、正しい方法を学ぶことができて、本当によかった。

 聴覚障害のアドバンスセミナーも聴いた。いろいろなモダリティーを用いて言語獲得をさせていく、その方法は、とても魅力的であり、感心させられる。とくに、聞こえが悪い場合、文字を使って日本語の獲得をはかるという方法が印象に残る。当たり前といえば当たり前・・・ということでもあるけれども、かつては、そこまで踏み込んでいなかったと思う。あらためて納得させられた。金沢方式という方法にとても興味をもった。

 認知症のアドバンスセミナー。認知症は、いまの僕の臨床に最も近い内容である。認知症は、多職種が関わっている。コミュニケーションの専門家であるSTは、その分野で認知症患者さんに接していくべきだと演者の先生はいう。まだまだSTは認知症への関与が少ないなか、とても考えさせられたセミナーだった。

 「感情とコミュニケーション」というワークショップも聴いた。真っ向から「感情」というテーマでST分野の話で切り込んだのは、これまであまりなかったのではないかと思う。日頃の臨床をしていて、「感情」というのは、とても大きな内容であり、興味深く聴いた。STはコミュニケーションの専門家である。患者さんのコミュニケーション能力を引き出すために、語りかける。トークがひとつのSTの腕のみせどころだと思う。「感情」に着目することで豊かなSTリハが展開されるということだと思う。

 今回の学会で、僕がいちばん心に残ったもの、面白かったものは、大槻美佳先生の特別講演「脳損傷からみる言葉のしくみ」である。難しい内容を、わかりやすく解説して頂いた。パワーポイントも、わかりやすくて、言語に関する脳のしくみについて、先生の話でイメージできた。とても勉強になった。

 脳科学は、ここまで進んできたのか・・と驚くばかりである。僕のあまりにも浅い考えなのだけれども・・・・画像解析の進歩で、局在論が相当、力を盛り返してきたのだな・・と思った。確かに、全体論・・・すなわち、ネットワークだとか、全体というなかでの脳の働き、しくみというのがあり、それはまだわかっていない・・とはいうけれども、脳のどこの部分が、ここにかかわっている・・というのが相当、わかってきている。

 脳の前方側は出力。脳の後方側は入力およびそれに対する処理。脳の内側は古い脳であり、反応のスイッチのオンオフ。脳の外側は刺激に応じた反応。大きくはこう捉えることができる。

 脳の外側は、視覚性呼称、物品呼称であり、見たものをいう。脳の内側は、語列挙であり、記憶から取り出す。

 とにかく、脳のある部分が損傷されると、その部分の働きが失われて、症状がでる・・・局在論である。

 何をいいたいかというと・・・ひところ、ブローカ失語だとかウェルニッケ失語だとか・・そういう古典分類というのは、厳密じゃないんでない・・ということで、STは認知神経心理学的アプローチでモデル分析によって、失語症を記述してきた。もちろん、いまもその流れは変わってはいない。でも、今回の学会で僕が感じたのは、脳の画像解析の進歩で局在論が力を得て、かつての古典分類の用語は息を吹き返してきているのかな・・と思った。

 失語症の話で、ブローカ失語なんていう記述ではなく、モデル分析、モデル分析・・・と言っていたのは、ついこの間だったと思う。ところが、いまでは古典分類の用語がふつうに使われているな・・と思った。

 失語症研究に疎い僕の単なる感覚にすぎないのだけれども・・・そういうふうに感じたのです。

 とにかく、実りの多い札幌の学会だった。来年は大宮で開かれるとのこと。日本言語聴覚学会、来年も参加したい。

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June 16, 2013

大江健三郎氏の講演を聴く〜第15回日本医療マネジメント学会〜

 第15回日本医療マネジメント学会学術総会が6月14日、15日、盛岡市で開かれました。僕は学会の締めくくりに開かれた市民公開講座(6月15日)を聴きました。

 市民公開講座では、作家の大江健三郎さんが講演されました。僕は、この講演をひじょうに楽しみにしていました。

 大江健三郎さんの講演を簡単に紹介してみたいと思います。

 大江健三郎さんは、東日本大震災の被災地を訪れるという意味でも、今回の講演を引き受けることにしたということから話をはじめられました。そして、東北出身の作家であり、同年代である井上ひさしさんについて触れられました。広島長崎、沖縄、日本国憲法について、井上ひさしさんは大江さんと同じような関心、問題意識を持ちながら作家活動を展開されたということです。その井上ひさしさんが東日本大震災の被災地についてどう語るだろうかと話を展開されます。

 そこから、大江さんの眼からみた被災地への医療支援について語られました。医師の倫理観ということを越えて、人間としての倫理観がそこにはあるといいます。

 そして、大江さんは、チェコ生まれのフランス作家、ミラン・クンデラの「根本的なモラル」について紹介されました。

 ミラン・クンデラのいう「根本的なモラル」とは、すべての中で根本にある倫理的なもので、モラルエッセンシャルであるといいます。エッセンシャル、つまり本質的なものであるということです。
 モラルエッセンシャルとは、次の世代の人間が人間らしく生きていける条件を妨げないこと。次の世代が生きていく環境を守ることであるといいます。

 これはすべての人間が生きていくうえで本質的なものといいます。

大江健三郎さんの話を生で聴くというのは、僕にとっては貴重な経験でした。とくに、講演の最後に触れられた、モラルエッセンシャルの話は、共感を覚えました。大江さんの言葉を噛みしめつつ、僕の行えること、それは何かを考えつつSTの仕事に取り組んでいきたいと思いました。

素晴らしい講演、ありがとうございました。大江健三郎さん、そして、この講演会を企画された日本医療マネジメント学会の皆様に感謝したいと思います。

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June 08, 2013

STのための姿勢の診方、考え方〜宮城県言語聴覚士有志勉強会に参加〜

 6月8日、栗原市立栗原中央病院で平成25年度第1回宮城県言語聴覚士有志勉強会が開かれた。今回は「STのための姿勢の診方、考え方」というテーマ。

 「Postural controlの考え方」である。STは姿勢のコントロールについて苦手としていることが多い。しかし、構音にしても嚥下にしても姿勢がコントロールされて、はじめて訓練が可能となる。姿勢が崩れた状態でSTリハを行っても効果はほとんどない。

 よい姿勢では、重心の位置・動揺、アライメント、安定性が良好で、外力に抗する力が最小限である。エネルギー消費が少なく、エネルギー効率が良い。

 Postural controlをひとことでいうと、「安定とオリエンテーションという2つの目的のために空間の中で身体の位置を調整すること」。

 ここでいう「安定」とは、姿勢の安定のこと、いわゆるバランスのこと。「オリエンテーション」とは、何かを行おうとして体を動かすとき環境との関係を適切に維持できる能力のこと、アライメントを維持できる能力のこと、である。

 研修では、講義だけでなく実技も交え、姿勢コントロールを体験した。

非麻痺側へのアプローチが、麻痺側へもよい影響を与え、姿勢が安定する。座位姿勢を良い状態にもっていく方法等、実技も交え、姿勢コントロールの仕方を実際に学んだ。

とても有意義な勉強会でした。



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May 26, 2013

完全側臥位による経口摂取 〜第18回いわて摂食・嚥下リハビリテーション研究会〜

5月19日、いわて摂食・嚥下リハビリテーション研究会研修会がアイーナで開かれた。今回は第18回。この研究会も今年は10年目を迎えた。

さて、今回の研修会で、とくに耳に残ったことを紹介したい。

完全側臥位による経口摂取である。

完全側臥位。つまり、横を向いて寝る姿勢である。この姿勢が嚥下によいという。

従来、30度仰臥位が嚥下によいと勧められてきた。完全側臥位というのは、思いもよらない姿勢であり、目からウロコという感じがした。

VEを繰り返すなかで発見された姿勢である。咽頭内腔構造と重力方向を検討して見つけた摂取方法という。咽頭側壁が真下になるようコントロールされた姿勢である。食塊の咽頭通過を咽頭側壁に誘導する。そして嚥下させる。

重度嚥下障害があっても経口摂取が可能になるという。ただし、喉の麻痺がないこと、左右差がないことが条件となる。

喉の麻痺があるかどうかは、VFやVEで確認する必要があるので、嚥下の精査ができない環境では、慎重に行う必要があると思われる。

従来、完全側臥位で食事を摂るというのは、嚥下という観点からは考えられなかったこと。

摂食・嚥下リハの新たな息吹を感じました。



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