2009年05月27日

『電撃文庫magazine VOl.6』掲載/支倉凍砂『狼と香辛料』/短編「狼と夕暮色の贈り物」感想

「今日一番で臭かった」
「ほかの狼が近寄らないくらいに?」


 珍しくロレンスが上手な今回のエピソード。やべー、なんかロレンスがめちゃくちゃ格好イイよ(笑)。だいぶかゆい台詞言ってますけど。



 狼除の貨幣を見て、凹んでいるホロに、ロレンスが贈り物をするっていうのが、この短編の簡単なあらすじです。この贈り物っていうのが、くだんの貨幣に穴を空けヒモを通した、所謂ペンダントのようなものですが、これがイイ。

 狼除の貨幣が人と狼のあいだにつくられた「壁」として機能しているですが、ロレンスがその壁に風穴をあけるわけですよ。で、その「壁」の効力を失った貨幣もといペンダントが、俺の嫁に手を出すな、的な(笑)、他ならぬ二人の「絆」になっているという。

 そんな技ありの一編ではありますが、いつものようにホロとロレンスのイチャイチャっぷりも堪能できるので、これはいい短編です。今度の短編集は、人と狼の「違い」なんかにフォーカスしてそうだなぁ。

電撃文庫MAGAZINE (マガジン) 2009年 03月号 [雑誌]電撃文庫MAGAZINE (マガジン) 2009年 03月号 [雑誌]
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spicy_wolf at 21:04コメント(0)トラックバック(0)狼と香辛料/感想支倉凍砂/狼と香辛料/原作小説感想/書評 

2009年05月17日

約束と笑顔と/支倉凍砂『狼と香辛料11 Side Color2』/感想/書評/電撃文庫

「これでおまえの笑顔はずっと忘れないだろうな」(ロレンス)

 二本目の「狼と若草色の寄り道」はちょっと違いますが、総じて「約束」がテーマになっていた一冊でしたね。



狼と黄金色の約束

 人間の記憶は曖昧。
 だからこそ、商人は書面にて契約を取り交わすとロレンスはいうけれど、その契約よりも忘れがたい記憶(約束)はあるというお話ですね。ホロを故郷であるヨイツに届けると改めてロレンスは約束するわけですが……。

 この名もなき、できあがってすぐの村が、『狼と金の麦穂』でホロがいる所だと考えると、ちょっとロマンチックかもしれないなぁ。

 ビールが旨いということは当然麦も栽培しているだろうし、地理的な条件はクリアしてますよね。そして、何よりもこの村にはロレンスとホロの名が残っている。「黒狼の揺り籠」で文字で契約したとしてもあっさりと裏切られる(=記録は当てにならない)様を描いてはいますが、二人でこの村を訪れたという記録はやはり尊い感じがします。

 ホロとロレンスの名が残った村。
 だけど、その時のホロの笑顔は文字では残ってない。

 それでも、この村にはその笑顔が――ロレンスがずっと忘れないだろうな、といった笑顔が――何十年何百年経ったあとにも残っている。

 そう考えると、ちょっとステキかもしれないですね。

狼と若草色の寄り道

 ホロとロレンスのやり取りが好きすぎる自分には、もうこれだけで大満足なエピソード。本当にお似合いな二人です。

黒狼の揺り籠

 エーブがまだフルール・ボランと名乗っていた頃のお話。今の彼女からは考えられないほど、普通に可愛かった(笑)。没落したすぐあとのエピソードということもあり、貴族として垢抜けておらず、商談相手の元貴族にときめいちゃうところとか、もうっ!

 今の彼女からすると、本当に想像すらできない感じなんですが、だからこそ最後の決意が悲しい。商人としての覚悟が完了するエピソードだろうと思ったので、どこで騙されるのかと(ミルトンが騙すのかと気が気じゃなかった)ドキドキして読んでいたんですが、予想以上に切なかった。

 お金を前にすると人は変わる

 貴族として「約束」や「信頼」に価値を置いていたのが、この事件を経て、「契約」や「お金」に変わっていった。「お金」を至上に置いたあとのエーブは想像するほかありませんが、だからこそ対立の町(8巻9巻)での彼女の姿に胸を打つ。

「お金」にいちばんの価値を置くようになったエーブがいかにしてあの選択に至ったのか。その心情の変化を想像しつつ、また再読してみたくなりました。近いうちに読んでみよう。


狼と香辛料〈11〉Side Colors2 (電撃文庫)狼と香辛料〈11〉Side Colors2 (電撃文庫)
著者:支倉 凍砂
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2009年05月08日

そりゃあ賢狼も恋する乙女になりますよ/『狼と香辛料2』/第二期第00幕「狼と琥珀色の憂鬱」感想

「何でじゃ、わっち?」(ホロ)

 第二期第零話「狼と琥珀色の憂鬱」のネタバレ感想です。第2期未放送番外編は、小説第七巻収録の「狼と琥珀色の憂鬱」をアレンジしたものでした。絵本『狼と金の麦穂』に収録されているだけあって、ホロがロレンスと別れたあとを夢で疑似体験させるオリジナル展開が憎い。



 風邪を引き、普段の老獪さも影を潜めたホロが、予想以上に乙女乙女していて、可愛かった。ノーラには嫉妬するわ、ロレンスには八つ当たりするわで、実に可愛らしい。身もだえします。自分の恋心というか、あまりにロレンスが好きすぎる自分に気づいて(笑)、しっぽをふんだんに振り回し、自身の困惑を表しているのも、イイ。ホロ可愛いよホロ。

 しかし、にぶちんなロレンスは気づかず、それに対するホロの反応もいいな。にやにやしっぱなしです。賢狼ともあろうお方がこんなに可愛くていいのか。

 回想というか、夢のシーンとか、普通にロレンスとイチャイチャしているんですが。本当にこれでいいのか賢狼(笑)。ノーラに羊を飼うコツを聞いて(実質妻の心得ですが)、鈍いロレンスに広い心で接することを覚えるホロですが、基本的に惚れた方が負けなので、なかなか上手くいかないわなぁ。



 そんなホロの可愛さと、ロレンスのどこまでも鈍感なさまを堪能しつつも、『狼と金の麦穂』を連想させる展開を描く辺りにドキッとしました。出会った当初のホロとロレンスは、二人とも独り身の寂しさを抱えていて、旅を続ける内にそれが癒されていく。一緒にいることが本当に楽しい。だけれど、かたや賢狼、かたや人間である以上(というか、まあすべての生命がそうですが)、いつかは別たれていく。

 そういうわかりきっているけれど、納得したくない現実を夢見て、ホロが涙を流すシーンは何かわかる。ここでロレンスの不在を確認して、落ち込むホロが多分いちばん好き。



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spicy_wolf at 01:37コメント(0)トラックバック(0)狼と香辛料/感想狼と香辛料2/第二期アニメ感想 

支倉凍砂『狼と香辛料7 Side Colors』/感想

「沈まない。たくさんの、それこそ、何人かでようやく持ち上げられるような思い麦の詰まった袋をいくつか積み上げても、船は沈まない」
 クラスが言うと、アリエスは疑うような目をして、形の良い小さな唇を少しだけ尖らせながら「嘘はいけません」と言った。
 からかわれていると思ったらしい。(『狼と香辛料 Side Colors』143ページより引用)


『狼と香辛料 Side Colors』に収録されている短編は、全部で三つ。その内の「少年と少女と白い花」を読んで、支倉凍砂さんに一生付いていく、と決心しました(笑)。もうベタ惚れも良いトコロです。クラスとアリエス、そして、ホロの三人旅はまだまだ描いてほしいですよ。



■少年と少女と白い花

 ロレンスに出会う前のホロの物語……とは名ばかりで、屋敷を追い出されたクラスとアリエスの物語(に、今回はお姉さん成分多めのホロがちょっかいをかけるお話)。

 旅の知識なんてまったく持たないクラスとアリエスが、二人で旅をしている所からお話が始まるんですが、そこにホロが加わることでようやく旅らしくなっていく。初めて屋敷の外に出て、見るもの聞くものすべてに新鮮な反応を見せるアリエスとか、女の子としてアリエスに扱われて慌てふためくクラスとか、本編でロレンスにするようにクラスをからかうホロとか、見所はいくらでもありますが、やはり追っ手から逃げる逃亡劇が冒険譚好きとしては堪りませんでした。本編の経済やら宗教を扱うアカデミックな薫りがする部分も好きですが、単純にこういう冒険ものっぽいトコロが良かったです。自分の背丈の何倍もある巨鹿に挑むクラスには、本当に胸が躍ったよ。ロレンスより、男らしいよね(笑)。

 ところで、白い花って何でしたっけ?

■林檎の赤、空の青

 こちらは打って変わって、いつものロレンスとホロのお話。港町パッツィオでの騒動が終わって、束の間の休日、ホロの服を買いに行こう、みたいな感じです。本巻では、唯一商売を扱っているエピソードで、一方で損をしても、一方で得をすれば、全体としては得をする、みたいなお話ですが、ロレンス的には、多少損をしても、ホロの笑顔で相殺してしまうような気がするよ(笑)。

■狼と琥珀色の憂鬱

 ホロ視点で描かれる、リュビンハイゲンでの一騒動を終えたあとの小話。この話では、風邪を引いちゃったホロをロレンスが看病します。なんだかんだ言って、羊飼いのノーラに嫉妬して、不調を言い出せないホロが、なんともいえません。ロレンスもロレンスで鈍感にもほどがあるよな、と。まあ、ロレンスがノーラ並みに聡ければ、物語はすぐに終わってしまうような気がするけれど。

 思った以上に、ホロの頭の中がお花畑で(笑)、何度ロレンスを「たわけ」と罵り、僕も悶えさせたことか! 二巻から三巻の間で、既にこれなら今はどうなっているのか。今度ホロ視点が描かれるようなことがあったら、僕は卒倒するんじゃないか、不安になります。

 最後に、羊飼いのノーラに尋ねた、羊を導く最大のコツは、実践されていないな、と思ったのはナイショですよ。



 ロレンスやホロの魅力もさることながら、ノーラやアマーティといったサブキャラクターにも魅力を感じているので、是非是非今回みたいな短編を、これからも描いてほしいな、と思います。ディアスさんとか、もう一回会いたいよ(笑)。

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spicy_wolf at 00:46コメント(0)トラックバック(0)狼と香辛料/感想支倉凍砂/狼と香辛料/原作小説感想/書評 

2009年05月04日

支倉凍砂・文倉十『狼と香辛料 狼と金の麦穂』/絵本感想/書評

 旅をしたい、とはもう思わない。
 でも、もう一度できるなら、と思ってしまう。


『狼と香辛料 狼と金の麦穂』のネタバレ感想です。帯の文字を読んで、もしや……とは思いましたが。



 素敵すぎる

 その一言に尽きる。ここでこのエピソードをやるのかと、だいぶ鳥肌が立ちました。イイ。読めて嬉しい。支倉凍砂さん、文倉十さん、本当にありがとうございます。



『狼と香辛料』という作品は、科学化というか商業化というか、その過程の中で従来の信仰が失われ、人々から忘れ去られてきた賢狼ホロが、行商人として独り立ちし始めたロレンスと出会うところから始まります。

 このときの二人の共通点が、独りでいることの寂しさに耐えかねていたという点で、恋愛というわけではないにしろ、お互い心を通わせていく、香辛料というか砂糖的なあまあまな展開が後に待っているわけですが(笑)、どんなにお互いを大切に思っていても、種族の差は超えられない。

 いつまでも続いてほしい、決して終わってほしくない二人の旅だけれど、いつか必ず別れが訪れる。

 それでも

 二人の旅はホロにとって(おそらくはロレンスにとっても)どうしようもなく尊くて、何物にも代え難い。悠久の時を生きている賢狼にとっては、瞬きするような一瞬のことだったかもしれないけれど、それが何よりも輝いている。

 ロレンスとの別れを経験し、それが遙か昔のこととなった今でも。



 というわけで、『狼と香辛料』がホロとロレンスの出会いと別れの物語であるなら、これはそのもっと後のお話。ロレンスとの出会い、交流、別れで何かが変わったホロが、再び麦穂の神として穏やかに生きている。

 語られるのは、多分ここまで。

 これを読んで、物語の締めが二人の別れなのだろうかという予感はほぼ確信に変わりましたが、これを読めばきっと、『狼と香辛料』という物語がもっと大切になる。そんな絵本でした。すごくイイ。

 当ブログでは、悠久を越えたその刹那、二人の旅をじっくりと追っていこうかと思ってます。

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プロフィール
名前:かもめ
自己紹介:絵本『狼と金の麦穂』を読んだその夜に、このブログを立ち上げました。ホロとロレンスの、「一瞬」だけど色あせない日々をいつまでも追っていきたいです。ネタバレありで綴っているので、その点だけはご注意くださいm(_ _)m
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