スピタメウォッチング

スピリチュアル好きによるエンタメウォッチング

米津玄師の両A面シングル「TEENAGE RIOT」を聴いて。



米津玄師の2018年10月31日に発売された両A面シングル「Flamingo/TEENAGE RIOT」「TEENAGE RIOT」を取り上げてみたい。この曲は自身のことを”中二病の権化と思われている”と言う米津玄師が、”中二病”を真正面から取り上げた一曲とのこと。筆者が学生だった頃はSNSもなく、中二病と言う言葉も広く知られていなかったため、中二病というものに対してリアルタイムでの実感がなく、あとから”あぁいう感じを中二病と言うのか”と思う程度の認識である。自分が中2くらいの時にこのような感覚をたどった記憶もあまりない。中二病が広く認識された時代においては米津玄師のような人を”中二病の権化”と言うのか、と思ったが、100%はピンと来ていないというのが正直なところ。

発言を見るに、米津自身は中二病的な言動を割と肯定的にとらえているように思う。むしろ、中二病的な言動に対してツッコミを入れたり、揶揄したりする今の時代の傾向を否定的に見ていて、”過度に俯瞰したり冷静に見てるぶるなよ”、”もっと本当の感情出せよ”と、”中二病、上等”くらいには思っているようだ。中2くらいの頃に作った曲が原曲とのことなので、まさに当時の感覚が色濃く残っていて、中二病的初期衝動が溢れんばかりの疾走感に昇華した曲と言えそうだ。


※参考  2冊とも購入したが、ほぼほぼ同じ内容なので、どちらかでいいと思う。
雑誌『CUT 2018年11月号』
Cut 2018年 11 月号 [雑誌]
ロッキングオン
2018-10-19



雑誌『ROCKIN'ON JAPAN 2018年12月号』


「これはまあ、いわゆる中二病ってあるじゃないですか。それを、今の時代、避けて通らなければならないものみたいなニュアンスでみんな扱っている感じがして。そういう時代だからこそ、ほんとに中2みたいな感覚で、中2だった頃の自分のことを思い返しながら作ったんです。今の時代ってそういうものに対してすぐツッコミが入るじゃないですか。(略)そういう便利ワードして中二病というのができあがってる時代だからこそ、なんか……真っ向から、いわゆる中2っぽい曲をやるのは面白いんじゃないかなあということを考えてたのは覚えてます」

※参考 2018年11月1日に公開された米津玄師によるYouTubeラジオ
『F/T ラジオ』 筆者抜粋要約文


前作『Lemon』からアップされるようになった米津玄師本人による解説音声。これも雑誌のインタビュー内容とほとんど変わらないことが話されている。一部抜粋&要約してみた。

<「TEENAGE RIOT」について 17:18頃~>
10代の時にぐずぐずしてた記憶みたいなものを思い返しながら…サビのメロディが中学生の時に作った曲のメロディそのままなんですよ。高校生の時、ボーカロイドをやる前にニコニコ動画にあげてた曲なんですけど。あの曲の原曲もあるんですよ。あの曲がそもそもリメイクというか、もともと全然違う曲だったのが、最初中2~3位の時に作ったのを高校の時にリメイクして、それを今もう一回リメイクするという。それはなんでなんだろうなと思うんですけど、すげー気に入ってた曲なんですよ。サビでいる昔の自分と、イントロから始まってAメロ、Bメロの今の自分。その二つのがっちゃんこ。それが美しい形でできてよかったなと思いますね。


※秘密基地のレポ記事もどうぞ
「秘密記事」@渋谷 レポ&感想記事

●「TEENAGE RIOT」(2018年10月31日発売シングル)



ラジオで本人も語っている通り、シンプルな作りのMV。モノクロで影多めの映像がバンドスタイルの楽曲のカッコよさを引き立たせている。聞くところによると前髪が長いのも”中二病らしさ”らしいが、今回のMVにおいてほとんど米津の目が見えることはない(笑)。曲の歌詞自体もあまり混迷したものではなく、どちらかと言えばシンプルでわかりやすいと思う。

「潮溜まりで野垂れ死ぬんだ 勇ましい背伸びの果てのメンソール
 ワゴンで二足半額のコンバース トワイライト匂い出すメロディー

 今サイコロ振るように日々を生きて ニタニタ笑う意味はあるか
 誰も興味がないそのGコードを 君はひどく愛していたんだ

 煩わしい心すら いつかは全て灰になるのなら
 その花びらを瓶に詰め込んで火を放て 今ここで
 誰より強く願えば そのまま遠く雷鳴に飛び込んで
 歌えるさ カスみたいな だけど確かな バースデイソング」(1番Aメロ、Bメロ、サビ)

「潮溜まり」というのは、海の海岸沿いなどに見られる海水が溜まったくぼみのようなところであり、これは”中二病らしさ”でもある「どこにも行けない」(後に出てくる)状況を表す単語だと思う。逃げることができない場所で「野垂れ死ぬ」のだとやや自虐的に言っている。「メンソール」はタバコなので、いわゆる思春期の非行のことだろう。お金もないので「二束半額のコンバース」を履いて出かける。薄明るい時間帯(日の出前?)のもやっとした光の感じと「メンソール」の煙のもやをかけたのか、「匂い出すメロディー」と表現している。良いメロディが浮かんだということだろうか。

「サイコロ振るように日々を生き」るとはどのようなことだろう。1マス進む日もあれば6マス進む日もあるというような、不確定で安定しない日々ということだろうか。「ニタニタ笑う」という歌詞が何と言うか不気味で、病んでいる感じがすごくする。自暴自棄さというか、諦観というか、斜に構えて生きている感じ。「君」は普通に読めば過去の学生時代の自分を指しているのかなと思う。

「煩わしい心」というのはまさに”中二病的な言動”(をしてしまう心)ということだろう。次にお決まりフレーズ「灰になる」が出てくる。米津玄師は”中二病的アイコン”として「灰になる」をわざと使っているのだろう。「灰になる」「どこにも行けない」など、揶揄される言葉をあえて使っているのだ。「その花びら」というのは「煩わしい心」のことだと思われるので、米津にとって「煩わしい心」というのは美しい「花びら」に例えられるものであることがわかる(中二病の肯定)。しかし、その美しい「花びら」すら「瓶に詰め込んで火を放て」と言っている。この状況を想像すると、繊細な「花びら」が瓶の破裂と共に飛び散り、爆発するような情景が思い浮かぶ。「花びら」のイメージとは対照的に、非常に衝動的で暴力的なシーンだと思う。次に出てくるのは「雷鳴」「雷鳴に飛び込んで」行くというのは相当衝動的で、勇敢ではあるが身の程知らず、命知らずな行動と言える。だがそれが”中二病”らしさでもある。たかだか中二の衝動なんて「カスみたいな」ものだ。しかし、それこそ「だけど確かな」偽らざる中二の衝動であり、ありのままの正直な姿とも言える。思春期の自我の芽生えという新たなの自分の誕生に対する祝福の歌、だからこそ「バースデイソング」と表現しているのではないだろうか。

俺は他のヤツとは違うんだ……思春期特有の自我の肥大。

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「しみったれたツラが似合うダークホース 不貞腐れて開けた壁の穴
 あの時言えなかった三文字 ブラスバンド鳴らし出すメロディー

 真面目でもないのに賢しい顔で ニヒリスト気取ってグルーミー
 誰も聴いちゃいないそのDコードを それでもただ信じていたんだ

 よーいどんで鳴る銃の音を いつの間にか聞き逃していた
 地獄の奥底にタッチして走り出せ 今すぐに
 誰より独りでいるなら 誰より誰かに届く歌を
 歌えるさ 間の抜けた だけど確かな バースデイソング」(2番Aメロ、Bメロ、サビ)

2番の描写は若き日の米津自身のことを表現しているのかなという気がする。「ダークホース」というのは”実力は未知だが有力と思われる競争相手”といった意味なので、その当時は学校などでも自身の実力を発揮できておらず、特に目立つ存在でもなかったことが伺える。このシーンではドラマなどでよく見る、放課後の学校の屋上でけだるそうに座っている男子学生を思い浮かべた。学校という狭い社会で自分を出せず「不貞腐れて」、どこかの部屋の「壁の穴」を開けてしまったようだ。それはおそらく音楽室の壁だったのだろう。自らが開けた穴のせいか「ブラスバンド」の音がよく聞こえてくる。思春期真っ只中の自分が「あの時言えなかった三文字」、それはおそらく”ごめん”だろう。

”自分は他のヤツとは違う”、”同学年のヤツらがガキっぽく見える”、などと思い「賢しい顔」をして、「ニヒリスト」(虚無主義者)ぶってみる。何かに熱心に興じることに対する冷ややかな感覚や、冷めた目で見てしまう感じ。かといって自分が楽しくなるわけでもなく、いつも気分は「グルーミー」(陰気)。誰もいない放課後の屋上で、”今に見てろ”とギターの一つでも奏でてみる。

サビは学校になじめなかったり、周囲と浮いてしまって”出遅れた”感覚になっている様子が伝わってくる。周りはいつの間にか仲良くなっていて、グループができていたり、休日も遊んでいたりするらしい。学生時代は学校が全てみたいなもので、そこで浮いてしまった自分はまさに「地獄」にいるかのよう。「誰より独りでいるなら」、自らの孤独と向き合うことで、誰しもが持っている普遍的な感覚を歌にして届けることができるのではないか。本当はたくさんの友達に囲まれて、わかりやすく楽しい学生生活が送りたかったが…。周囲と馴染めなかったからこそ、孤独に音楽と向き合い、素晴らしい曲を生み出せたのかもしれない。しかし、当時感じていた孤独感や寂しさをなかったことにすることはできなかったのだろう。

中二病ワードの掃き溜めと化すインターネット。揶揄するな、正直に生きろ!

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「持て余して放り出した叫び声は
 取るに足りない言葉ばかりが並ぶ蚤の市にまた並んで行く
 茶化されて汚されて恥辱の果て辿り着いた場所はどこだ
 何度だって歌ってしまうよ どこにも行けないんだと
 だからこそあなたに会いたいんだと 
 今

 煩わしい心すら
 いつかは全て灰になるのなら
 その花びらを瓶に詰め込んで火を放て 今ここで
 誰より強く願えば そのまま遠く雷鳴に飛び込んで
 歌えるさ カスみたいな だけど確かな バースデイソング」(Cメロ、ラストサビ)

Cメロは米津らしい早口の部分で、とても一度では聴き取れないし、覚えられない。この部分は主にインターネットが発達した近年のSNSなどで繰り広げられる状況を皮肉って表現しているものと思われる。SNSなどで中二病的な発言をしようものなら、周囲からのツッコミや揶揄が必ず入る。自らの中二病的な感覚を無視することはできない。しかし、つぶやこうものなら周囲に何か言われるという状況で、まさに八方塞、「どこにも行けない」「どこにも行けない」のは物理的な自分自身というよりは、”中二病的な感覚”なのだろうと思う。「あなた」というのは、思春期の頃の自分だろうか。Cメロは大人になった自分が、いまだに持っている中二病的な感覚を「持て余して」「どこにも行けない」となったときに、過去の自分に救いを求めるような、そんな気持ちを感じた。

この曲のみならず「どこにも行けない」という歌詞があらゆる曲で登場するということからも、米津玄師自身が昔からそういった感覚を強く抱いていたことが伺える。「どこにも行けない」閉塞感と、”遠くへ行け”という大人になってから得た大きな思想。インターネットという大海に飛び込んでみたり、徳島の田舎から東京へ出てきたりと、自らの行動でその閉塞感を打ち破って生きてきたのだろう。今回は周囲のツッコミや揶揄なんかは気にせず、むしろそういう”中二病的な感覚”を肯定し、堂々と表現することでその閉塞感を打ち破っていった感がある。”中二病の権化ですが、何か?”、そんなスタンスすら読み取れる開き直りの疾走感が清々しい一曲だ。

「TEENAGE RIOT」
歌手名・作詞・作曲:米津玄師

歌詞サイトはこちら

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「Black Sheep」歌詞の意味&解釈
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ライブ感想@ゼップ東京2016年12月「はうる」ツアー最終日
ライブ感想@東京国際フォーラム2017年7月「RESCUE」初日
ライブ感想@パシフィコ横浜2017年12月「Fogbound」

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米津玄師の両A面シングル「Flamingo」を聴いて。



米津玄師の2018年10月31日に発売された両A面シングル「Flamingo/TEENAGE RIOT」「Flamingo」を取り上げてみたい。この曲はかなり米津玄師の個人的な体験に基づく楽曲なのだと思うが、これはある意味問題作だと感じている。筆者が考察したところによると、この曲のモチーフになっている女性にまだ未練タラタラなのではないか、という感じがする。酔っぱらったみっともない自分を表現したとの発言もあったが、これは明らかに女性関係の話であり、作品とは言えよくここまでさらけ出したものを作ったなというのが素直な感想。

※参考記事 過去に同様に”みっともない自分のプライベートを表現した”と言っていた曲
「クランベリーとパンケーキ」歌詞の意味&解釈

※本人出演イヤホンのCMソングにもなっている。



※参考 2冊とも購入したが、ほぼほぼ同じ内容なので、どちらかでいいと思う。
雑誌『CUT 2018年11月号』
Cut 2018年 11 月号 [雑誌]
ロッキングオン
2018-10-19

 
雑誌『ROCKIN'ON JAPAN 2018年12月号』


(略)自分の中で、どうすれば面白くなるかを考えて。この『面白くなる』っていうのは、どうすれば笑えるかっていうところだったんですけど、すごくみっともない曲を作りたいなっていうのがあったんですよね。そのみっともなさを出すためにどうするのか――変な声入れてみたりとか、民謡っぽく歌ってみたりとか、自分の中だけであれこれ考えながらやってたんで。(略)

(略)バカだしみっともない、しょうもない奴でいたい。(略)自分の中にあるみっともなさみたいなものは、生まれた瞬間からずっとあるから、それを隠さないようにしようと。(略)自分のみっともなさのようなものを音楽で見せることはずっとしてきたんですけど、それをもっとダイレクトにやることが、今の自分に一番必要なことかなあ、みたいにずっと考えてはいて。(略)


※テレビ番組 『zip!』2018年10月26日放送分 インタビューより
”女性に振り向いてもらえない男性の寂しさを表現した”とのこと。

●あらすじやモチーフなど

(1)歌舞伎のモチーフ
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筆者がこの曲を聴いてまず思ったのが、”歌舞伎役者と遊女の恋愛模様?”ということだった。歌詞の口調が女性のようだったので、歌舞伎役者を取り合う遊女の話…?とも思ったが、違った(男性が女性に片思いの歌なので)。
MVの冒頭に注目すると、機械式地下の駐車場にフラミンゴの形にも見える木が数秒映し出される。これを見て、写真のような歌舞伎の松の絵(「松羽目」。能や狂言を題材にした歌舞伎のことを「松羽目物」という)を連想した。また、2番で米津が地下に降りていくシーン、そこに横になる恐ろしい女性の描写も歌舞伎に関係があると思う。このシーンは舞台の”奈落”に見立てたものだろう。そして、”奈落”は仏教で言う「地獄」であり、Cメロの歌詞とも呼応する。
歌詞の口調が女性のようであるのも、男性が女性を演じるという歌舞伎の性質をモチーフにしているからではないかと思った。


(2)あらすじ~恋多き遊女との恋愛模様。去り行く彼女への恨み節~
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古語のような独特の言葉遣いや「唐紅の髪飾り」といった表現から、遊女・花魁のような女性を想像した。「あらましき恋敵」といった歌詞もあり、他にも彼女をひいきにしていた恋のライバルが多数いた模様だ。おそらく、彼女は恋多きというか、尻軽女というか…「ふわふわ浮かんで」いるような女性だったのだろう。2番で主人公が目にすると浮かれてしまうような、まさに花魁といった高貴な印象もあるので、よほど美しい女性だったのではないか。「張り子」のようなはりぼてで取り繕った主人公が「阿保晒し」をしてしまったせいで、彼女は他の「恋敵」のもとに行ってしまったのだろう。そんな彼女を「地獄」に落としたいほど恨みつつ、本当は帰ってきてほしい、寂しい…といった女々しい感情も表現されている曲だ。
ちなみに、2018年10月16日・17日に開催されていた「F/T秘密基地」というイベントでは、「Flamingo」ゾーンはザ・女子ピンクが住んでいそうな空間が表現されていた。現代版遊女のイメージなのだろうか…?

※「F/T 秘密基地」のレポ記事もどうぞ
「秘密記事」@渋谷 レポ&感想記事


(3)フラミンゴの特徴など


曲のタイトルになっているフラミンゴの特徴も少し調べてみると、興味深いことにダンスをしてパートナーを選ぶとのこと。”愛の象徴”と呼ばれることもあり、恋愛ソングにはぴったりのモチーフなのかもしれない。


●「Flamingo」(2018年10月31日発売シングル)



中華料理屋がある地下駐車場が舞台となっているMV。米津のフラミンゴを表現したと思われるダンスについ目がいってしまう。本人の発言通り、民謡のような、演歌のような、こぶしのきいた歌いまわしが特徴的で、こういう歌い方のポップソングって珍しいなぁと思った。歌詞含めた世界観はすごく日本的でもあるし、でもどこか西洋風…なんとも形容しがたいジャンルの音楽だ。

「宵闇に 爪弾き 悲しみに雨曝し 花曇り
 枯れた街 にべもなし 侘びしげに鼻垂らし へらへらり

 笑えないこのチンケな泥仕合 唐紅の髪飾り あらましき恋敵
 触りたいベルベットのまなじりに 薄ら寒い笑みに

 あなたフラミンゴ 鮮やかなフラミンゴ 踊るまま
 ふらふら笑ってもう帰らない
 寂しさと嫉妬ばっか残して
 毎度あり 次はもっと大事にして」(1番Aメロ、Bメロ、サビ)

暗い夜、一人雨に打たれて「鼻垂らし」へらへらするみっともない主人公。「花曇り」とあるので、季節はの咲く春ごろだろうか。酒に酔っているのだろう。自暴自棄で厭世的な気分も感じられる。

「笑えないこのチンケな泥仕合」、これは「唐紅の髪飾り」を身につけた遊女をめぐる「あらましき恋敵」との争いだろう。彼女は「薄ら寒い笑み」を浮かべている。たくさんの男性を虜にしてもなお、彼女の心の闇は深く、全く満たされていないのだろう。また、これは主人公に向けての冷ややかなまなざしにも思える。

「フラミンゴ」のような彼女は「ふらふら笑ってもう帰らない」らしい。他の「恋敵」との争いに負けたのだ。主人公と遊女が付き合っていたのか、身体だけの関係だったのかはわからないが、「毎度あり」とあることから、何回か関係を持っていたのではないかと予想できる。このサビの感情の吐露はとてもみっともなく、女々しい発言だ。「次はもっと大事にして」はまさに女性が言いそうなセリフ。主人公は彼女を失って、「寂しさと嫉妬」に打ち震えているのだろう。

彼女を失い、寂しい…嫉妬…。女々しい自分のみっともなさに自棄になる。

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「御目通り 有難し 闇雲に舞い上がり 上滑り
 虚仮威し 口遊み 狼狽に軽はずみ 阿保晒し

 愛おしいその声だけ聴いていたい 半端に稼いだ泡銭 タカリ出す昼鳶
 下らないこのステージで光るのは あなただけでもいい

 それはフラミンゴ 恐ろしやフラミンゴ はにかんだ
 ふわふわ浮かんでもうさいなら
 そりゃないね もっとちゃんと話そうぜ
 畜生め 吐いた唾も飲まないで」(2番Aメロ、Bメロ、サビ)

この間奏部分で米津が咳払いをして「はい」と言う音声が入っている。突然入るこの音声の謎。このことについては前述の『ROCKIN'ON JAPAN』に記載があった。

「結構、コンセプトがあって、あれは自分の中で絶対悪いと思ってない奴の『はい』なんですよ(笑)。めちゃくちゃ怒られてて、どう考えても自分が悪いのに、自分は絶対悪くないと思ってる奴の『はい』っていう」

2番はMVにも注目。先にも書いたが、機械式駐車場を舞台装置の奈落のせりに見立てており、奈落の底には彼女と思しき女性が這いつくばって恐ろしい顔つきでこちらを見ている。まさに地獄に落ちた女性かのような表現だ。
歌詞はあまり聴き慣れない単語が並んでいる。「御目通り 有難し」というのは高貴な方にお目にかかれてありがたいということであり、これは女性に会ったときのことを指すと思う。あまりにも嬉しくて「舞い上がり 上滑り」「虚仮威し」と自分を良く見せようとするあまり、「軽はずみ 阿保晒し」な結果になってしまったのだろう。

「愛おしいその声だけ」ということは、彼女は歌を歌っている人なのだろうか?「半端に稼いだ泡銭 タカリ出す昼鳶」というのは誰のことを指すのか不明だが、これが女性のことだとすると、水商売を「泡銭」と言い、その金(と身体)に群がる男たちを「昼鳶」と言っているのかもしれない。「下らないこのステージ」は比喩なのか本当の舞台なのかはわからないが、広く芸能界や芸能・芸者の世界といった意味なのかもしれない。

2番サビでは「そりゃないね もっとちゃんと話そうぜ 畜生め 吐いた唾も飲まないで」と、まさに未練タラタラな気持ちが歌われている。「吐いた唾も飲まないで」というのは、言ったことが違うじゃないか、ということであり、彼女に約束破りや裏切りのようなことをされたことが推測できる。「はい」の音声から言っても、この件に関して自分が悪いとは思っていないのかもしれない。彼女のことを好きでもあるが、恨んでもいる…そんな心模様が読み取れるサビだ。


ふらふらふわふわ飛び立ってしまったフラミンゴ…。


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「氷雨に打たれて鼻垂らし あたしは右手にねこじゃらし
 今日日この程度じゃ騙せない 間で彷徨う常しえに
 地獄の閻魔に申し入り あの子を見受けておくんなまし
 酔いどれ張り子の物語 やったれ死ぬまで猿芝居

 あなたフラミンゴ 鮮やかなフラミンゴ 踊るまま
 ふわふわ笑ってもう帰らない
 嫉妬ばっか残して
 毎度あり 次はもっと大事にして」(Cメロ、ラストサビ)

Cメロはまさに惨めな主人公の様子を自虐的に歌っている。「地獄の閻魔に申し入り」のくだりは、彼女を地獄送りにしたいような、憎む気持ちを表現していると思う。MVでも、たくさんの人の手や先の女性が苦しみながらその空間から出してほしそうにしている描写があったが、それを助けるそぶりはなかった。「酔いどれ張り子」とは首を振って歩く米津玄師、まさに主人公自身のことだろう。「虚仮威し」「ねこじゃらし(ねこだまし的な)」「張り子」など、自分自身を偽ってよく見せようとする自らのみっともなさを自虐的に表現する歌詞が目立つ。「やったれ死ぬまで猿芝居」というのも、冒頭のような自暴自棄さ、厭世的な気分を表現しているように思う。

MVではここで、2台の車が正面衝突するシーンがある。交通事故のようだ。米津が足をひきずって歩いているのは酔っ払いだからということだけではなく、この事故とも関係があるのだろうか?

米津は雑誌のインタビューで、「Lemon」のヒット等により人生の”第一章 完”といった感覚があると話しており、今回の曲はこれまでとは違った趣のある曲のように思う。隠してわかりづらくするのではなく、よりオープンで自分自身をさらけ出すような、言葉や話ではオープンにできないこと(恋愛とか特に)を”楽曲”という形で表現していくという、そんな姿勢を感じた。”売れた!””人気!”と騒がれている俺ってこんな奴です(それでもいいですか?)といった感覚もあるように思う。彼の人生の第二章ではどのような音楽が紡ぎ出されていくのか、今後とも注目していきたいと思う。

「Flamingo」
歌手名・作詞・作曲:米津玄師

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※「Flamingo/TEENAGE RIOT」収録曲も
「TEENAGE RIOT」歌詞の意味&解釈

※「Lemon」収録曲も
「Lemon」歌詞の意味&解釈(その1)
「Lemon」歌詞の意味&解釈(その2)
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※「BOOTLEG」収録曲も
「BOOTLEG」アルバム全体の感想&レビュー
「春雷」歌詞の意味&解釈
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「LOSER」歌詞の意味&解釈(その2)
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「フローライト」歌詞の意味&解釈
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※レポ&感想記事もどうぞ
ライブ感想@ゼップ東京2016年12月「はうる」ツアー最終日
ライブ感想@東京国際フォーラム2017年7月「RESCUE」初日
ライブ感想@パシフィコ横浜2017年12月「Fogbound」




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サカナクションの人気曲「エンドレス」を聴いて。

DocumentaLy(初回限定盤A)CD+DVD+豪華ブックレット
サカナクション
ビクターエンタテインメント
2011-09-28


今回はサカナクションの2011年9月28日発売のアルバム「DocumentaLy」に収録されているリード曲「エンドレス」を取り上げてみたいと思う。この曲は、2017年5月に発表された『あなたが選ぶサカナクションの名曲』ランキングでにランクインしている大人気曲だ(筆者も投票した)。この曲は山口一郎8か月もかけて制作したという超力作で、実は歌詞が74パターンもあるらしい(笑)。”普遍的な音楽を届けたい”という思いで制作した楽曲とのことで、本人の口から語られる場面も多いため内容の大筋はつかみやすいのだが、ジャケットやMVまで含めて考察すると、思った以上に深いことを表現している曲だということがわかる。ちなみに、2018年3月28日に発売されたベストアルバム『魚図鑑』では、”中層”の魚として位置づけられている。

※参考記事 「魚図鑑」感想&レビュー記事

※参考 音楽サイト『音楽ナタリー』
・山口一郎「DocumentaLy」のすべてを語る
https://natalie.mu/music/pp/sakanaction03

※参考 ラジオ『スクールオブロック!』内『サカナロックス!』
・2012年5月7日放送分 「アレンジ」
https://www.tfm.co.jp/lock/sakana/onair/120507/

・2018年3月29日放送分
「「ベストアルバム『魚図鑑』解体ショー(後編)」
https://www.tfm.co.jp/lock/sakana/index.php?blogid=4&archive=2018-03
 
「はい、これは「エンドレス」っていう曲ですね。この曲は本当に大変だったね……歌詞を書くのが本当に辛かった。なぜかっていうと、東日本大震災の影響をもろに受けていた頃だったんですね。「ルーキー」っていう曲をリリースするタイミングで、ちゃんと、今この時代に音楽をやっているっていうことは、この気分を、この時代をしっかり表したアルバムを作らないといけないと思って『DocumentaLy』というアルバムを作ったわけです。その中で「エンドレス」っていう曲は、振り返ったときに、「こんな事が起きたんだ」、「こんな事を思ったんだ」、「こんな連なりがあったんだ」って、未来にそんな風に感じてもらえる歌にしたいと思って取り組んだんですけど、なかなかこれは苦労して……完成しなかったですね。これが完成した時のDVDがあるの。この歌詞が出来るまでの映像のボイスメモみたいなものをつなぎ合わせたものがあるんだけど、恥ずかしいけど、書き上げた時に僕は泣いているのね。それも見てもらいたいなー。」

●ジャケット・MV研究&図解してみる

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「DocumentaLy」のジャケットは明らかに「エンドレス」の内容を意識したものになっている。本作の他にも、サカナクションはリード曲をイメージしたジャケットを制作することが多い。
(例:「kikUUiki」のリード曲 「目が明く藍色」歌詞の意味&解釈(その1)

PVに登場した目玉のような丸や間奏で落下する人間のモチーフが描かれている。人間の身体はその部位の英語が書かれており、下には”Real”と書いてある。上の5つの丸は、拡大してよく見ると何かの文字の上に置かれており、”y”の小文字だけが見える位置に書かれている。中央の人間は右側を手前にした体勢をしており、上から下に落ちていくようにも見える。

エンドレスの図

↑ジャケットをもとにした筆者作成の図。クリックで拡大できるはず…。

(1)メインテーマ・概要
「DocumentaLy」には様々なテーマが内包されているが、主だったものは、
・ドキュメンタリー=記録(作品)
・RとL(右と左)、山口一郎の突発性難聴(2010年発症、右耳)
・Real(リアルを結ぶRとL)
・mentaL(心・精神)
であると、前述の『音楽ナタリー』リンク)にて語られている。
「Documentary」のRをLに変えることで、「Mental」という言葉が出てくるんですよね。心というものは、常につきまとっているんだけど、それは意識しないとつかめないもので。それ故にリアルを見落としてしまう瞬間があるなって。でも、その中にこそ本質があると思う。RとLで「Real」という言葉を結ぶという意味もあるし、右耳と左耳という意味もあるし、「Mental」という意味もある。いろんな意味を込めましたね。
おそらくは、
「右・R=Real」(現実・物質・見える世界・昼)
「左・L=mentaL」(心・精神・見えない世界・夜)

であり、上記発言の「リアルを見落としてしまう」というところが、右耳が聞こえにくくなってしまった山口一郎自身のことを言っているようにも思えた。左右と物心二元論的な世界観を結びつけたものなのかと思いきや、よくよく考えると腑に落ちない点も出てくる(後述)。

「エンドレス」非常に深い哲学的な、認識論のような世界観を歌っているようにも思える。MVには明らかに脳や神経を表すような表現が見られる。目で見た・耳で聴いたことが脳に認識され”記憶”となり、本来目に見えない”記憶”を目に見える形で残したものが”ドキュメンタリー”であるということ、そしてその”記憶”の曖昧さ、繰り返される(=「エンドレス」)という意味で「デジャブ」という歌詞も出てきているように思う。

(2)正十二面体と目と脳について
MVを見ると、が重要なアイコンになっていることがわかる。球に近い正十二面体を斜めにしたような空間の中に丸い目玉をかぶったサカナクションの5人が演奏しているが、この正十二面体はスクリーンのようになっていることからも、”写す=目”のような役割を果たしていることが読み取れる。また、後半になると、明らかに脳のような映像が映し出され、過去のシーンが走馬灯のように蘇る場面があることからも、”脳””記憶媒体”の側面があることも読み取れる。ラストに人が目玉を取ると、中にまた同じ正十二面体が出てくることから、相似形の「エンドレス」、これはやはり”脳”であったということがわかるようになっている。

(3)左側から右側へ”落ちていく”人間について
”左側から右側へ落ちていく人間”というのは、ある意味、目に見えない霊的世界から目に見える物質世界に生まれ落ちた人間存在そのものを表していると言えるのかもしれない。「デジャブ」という単語も、過去生の記憶が云々…といった霊的世界のことが関係している可能性もある。

(4)仏教思想や認識論との関連性(飛ばし読み推奨)
「見えない世界に色をつける」という歌詞に関連して。「色」という言葉は仏教用語では以下のような意味を指す。
「仏教における色(しき)はパーリ語のルーパ( 梵: रूप rūpa)に由来し、(1)一般に言う物質的存在のこと(五蘊の一要素)で、色法と同じ意味、(2)視覚の対象(十二処、十八界の一要素)、を表す言葉。」ウィキペディア参照)
・・・難しいが、「物質的存在」「視覚の対象」といったところから、この曲の主題とも関係があるように思う。こういった「色」の意味を含めて、「見えない世界に色をつける」という表現を使ったのではないか。

物質世界を認識するのは肉体であり五感(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)であるというのはわかるが、心・精神は目に見えないながらも認識主体ではなく認識対象である…というのが本当のところかと思う。では認識主体とは何?となり、自我と観照の話になり…筆者も難しすぎて手に負えなくなってくる(汗)。

しかし、この部分がおそらくこの曲の一番大事な所なのだとも思う。筆者は、左側にあるのは”心”ではなく、”認識主体”であり、”心”は感情とも言え、認識主体(左)と物質界(右)の間にあるものだと考えている。歌詞で言うと「笑う」「悲しむ」といったものや、”涙”のようなものに当たると思う。目に見えない世界に”認識主体”と”認識対象”(心・感情・思考)があり、目に見える世界にも”認識主体”(感覚器官)と”認識対象”(外の世界)があるということになるだろうか。思った以上に哲学的になりすぎたのだが…考えの練り途中なので違うかもしれない…。


●「エンドレス」(2011年9月28日発売アルバム「DocumentaLy」収録曲)



切ないピアノソロから始まるイントロ。歌詞は推敲を重ねられただけあって、無駄な部分が一切なく、削ぎ落とされてシンプルなものになっていると思う。1番はおとなしめな印象だが、2番からは軽快でポップな展開に変化し、MVのストーリー性・メッセージ性がより明確になってくる。間奏部分で目玉の人間が落ちていくシーンが印象的で、そこから過去の記憶がフラッシュバックするような映像が続き、発狂しそうなほどの混沌と苦しみが限界に達した時、ラストサビが展開していく。山口一郎「AH」の部分が非常に苦しそうで、心の叫びのような、怒り…悲しみ…言葉にできない数々の感情の高ぶりを感じさせる。一方で、それを無表情でただじっと見ている目玉人間の存在もあり、感情と理性・右脳と左脳といった対比も描かれているのかなと思った。
歌詞の内容については、以下のインタビューが参考になる。

※参考 前述の『音楽ナタリー』のインタビューより引用。
https://natalie.mu/music/pp/sakanaction03/page/2

YouTubeがあるじゃないですか。あのコメント欄って、映像があって、その映像を観て最初に受けた感情をコメント欄に書くんじゃなくて、誰かがコメントしたものに対してのコメントで埋まっていくんですよね。つまりそれは批評じゃないんです。
誰かが何かを言ったことに対して、また誰かが何かを言って、それを受けてその作品を笑う人がいて、それを悲しむ人がいる。その流れを終わらせようとするコメントをする人もいて、それをまた傍観してる人がたくさんいる。何か不思議なコミュニケーションの連鎖がそこで行われている。でも、その連鎖は、僕らの日常の中にもあるんですよね。僕らは誰かと常に接していて。そこには苦手な人も得意な人もいるし、誰かの陰口を叩く仲間もいるし、陰口を叩かれることもあるし、自分が誰かの陰口を叩くこともあるかもしれない。そうやってひっつきあいながら生きていくのって、社会の成り立ちとして当たり前なんだけど、みんなどこかで疑問を持っていると思ったんですよね。
(略)その成り立ちに終わりがあるのかと思ったら、僕はないと思った。でも、自分の中で終わらせることはできるなと思った。自分で自分を指差すことで。「自分はどうなの? 自分はどうするの?」って、自分で自分を指差す。僕はミュージシャンで、人に何かを啓蒙したりする存在ではないと思うけど、自分の考えを言うことはできるなと思ったんですよね。それを「エンドレス」の歌詞で言えたことがすごく大きかった。

「誰かを笑う人の後ろにもそれを笑う人
 それをまた笑う人
 と悲しむ人

 悲しくて泣く人の後ろにもそれを笑う人
 それをまた笑う人
 と悲しむ人

 AH 耳を塞いでる僕がいる それなのになぜか声がする
 見えない夜に色をつける デジャブしてるな

 AH 耳を塞いでる僕は歩く それなのになぜか声がする
 見えない夜に色をつける声は誰だ」(1番Aメロ、サビ)


インタビューを読むと、この部分の歌詞は割とそのままだなとわかるので、さほど難しくないと思う。筆者も山口一郎(と世間)が抱える違和感を感じている。その一つには”コメントに対してコメントする”ような状況に、”他人の目・反応を気にして自分(の意見)がない”と感じる違和感があると思う。「エンドレス」にコメントが重なっていく状況。さらに、「笑う」という単語は面白くて「笑う」という意味ではなく、”見下したように”、”批判する”といった意味で使われているように思う。コメントにはいろんな種類のものがあるが、この曲ではネガティブで批判的なコメントを題材にしているように感じられる。

「色をつける」ということの意味は(前述も含め)いくつかあると思うが、一つは対象に対して反応する(感情・意見・批評・判断など)といった意味があると思う。”色眼鏡”といった言葉もあるように、誰しもが自分のフィルタを通して外の世界を認識しており、あるものに対する反応も人それぞれ全く異なっている。「耳を塞いで」外の「声」をシャットアウトしたはずなのに、聞こえる「声」「声」外側から聞こえてくるものだけではないのだろうか?

「終わらせる人」と傍観者の違いって何?

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「誰かを笑う人の後ろから僕は何を想う?
 それをまた笑う人
 と終わらせる人

 悲しくて泣く人の後ろから僕は何を想う?
 それをまた笑う人
 と終わらせる人

 AH 耳を塞いでる僕がいる それなのになぜか声がする
 見えない夜に色をつける デジャヴしてるな

 AH 耳を塞いでる僕は歩く それなのになぜか声がする
 見えない夜に色をつける声は誰だ」(2番Aメロ、サビ)


”コメントにコメントする”ような状況を外から観察していた「僕」だったが、今度は内側に問いかけてみることにした。「僕は何を想う?」
ここからは筆者の考え。山口一郎の言うところの「終わらせる人」というのは、いったいどういった態度のことを指すのかがいまいちわかりかねる。大多数の傍観者と「終わらせる人」は明確に違うものととらえているように思うが、その違いは何なのだろう。コメント合戦に参加しない人は「終わらせる人」ではないということだ。

自分のことは棚に上げていたが…。内側に問いかけてみると?

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「後ろから僕は何て言おう? 後ろから僕は何て言われよう?
 見えない世界に色をつける声は誰だ

 AH この指で僕は僕を差す その度にきっと足がすくむ
 見えない世界に色をつける声は僕だ」(ラストサビ)

音楽の盛り上がりと共に内容も、このラストの部分が最大のキモで、自らがコメントを言われる側でもあり、言う側でもあるという自分自身の状況、そして、有名人でなくてもコメントをした時点で言われる側にもなるということを表現しているように感じた。

ラストでついに「声」の主が明らかになる。「見えない世界に色をつける声は僕だ」

疑問だった「終わらせる人」だが、インタビューも踏まえた上で思うのは、「でも、自分の中で終わらせることはできるなと思った。自分で自分を指差すことで。「自分はどうなの? 自分はどうするの?」って、自分で自分を指差す。」、つまりは、意識を内側に向け、自分自身に問いかける人「終わらせる人」なのではないかということだ。”コメントにコメントをする”状況に”違和感”という「色をつける」のもまた、”コメント”と同じようなことをしているにすぎない。外の世界ではなく、自分自身の内側に指を差すということが、「エンドレス」のコメント合戦を「終わらせる」ということになるという、そういう歌なのだと思う。内側に目を向けると、当然自分の醜い部分や見たくないことに向き合うことになるため、誰もが「足がすくむ」ような恐怖を覚えるものだ。ラストは哲学的な壮大な気づきで終わる。

何かを批判して、それをまた批判して…と外の世界を眺めていた自分だったが、そんな自分も外の世界を批判的に見ていたのは同じではないか?「耳を塞いで」も聞こえてくるのは、自らが外の世界を”コメント”する「声」だったのだろう。批判的に見ていた外の世界の側面が自分にもあったと認めることは恐ろしく、人はなかなか自らの内側を見つめることができない。「エンドレス」は非常に内省的で、誰しもにとって自戒的な歌でもあると思った。

「エンドレス」
歌手名:サカナクション、作詞・作曲:山口一郎

歌詞サイトはこちら

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米津玄師「秘密基地」@渋谷を鑑賞


2018年10月16日、17日に渋谷で開催された米津玄師「秘密基地」という展示イベントに参加してきた。告知があったのが10月12日、開催が16、17日ということで(心の準備)期間が短く、予定の調整ができない人がたくさんいたことと思う。おそらくこれはわざとなのだろう。筆者が足を運んだのは16日。13時から整理券配布とのことだったので、12時すぎに到着。整理券を入手した。各回何枚の整理券が配られたのかはわからないが、1回の時間に来ていた人を思うと1回60枚として360人程度だろうか…。配布から10分程度で配り終わったそうだが、13時から手際よく開始されたため配布は本当に一瞬であった。行けなかった人のためにも、詳細をレポしてまとめてみたいと思う。

ホームページ
http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/kenshiyonezu/flamingo_teenageriot/

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一応証拠写真…。

↓↓ここからネタバレエリアに入るので、見たくない方はご注意を↓↓



その1 (1階)「TEENAGE RIOT」ゾーン(モノクロ・男子っぽい・殺風景)

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中に入るとまず、薄暗い空間に床置きされたギターとアンプが目に入った。そして無数のコードとヘッドフォン、MDやCDのプレイヤーが柱に巻かれ、吊り下がっており、入った人はそこでヘッドフォンを耳に当て、プレイヤーを再生すると「TEENAGE RIOT」の1番(約1分15秒くらい)を視聴できるようになっていた。暗く、どんよりと、モノクロで味気ない殺風景な部屋。無数のコードが混沌や悩み、心の闇を表現しているのだろうか。

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柱には白や黒のコンバースも吊り下がっており、歌詞中にも「かごの二足半額のコンバースを…」的な言葉が出てきた。少し進むとCDラジカセや懐かしいブラウン管テレビが置いてあるスペースがあり、米津玄師の画像が映し出されていた。床にはいくつかのサイコロも置かれている。これも歌詞中に出てくる「サイコロを振ったような人生…」的な部分に関連してのものだろう。肝心の楽曲は、おそらくバンドサウンドで、似たようなもので言うと…「BOOTLEG」「Nighthawks」っぽいけど、もうちょっと暗くて闇がある感じ。疾走感がある感じが似ている。歌詞はうろ覚えだが、「背伸びして買ったメンソール」的な内容もあり、ちょっとワルな十代の思春期をイメージさせた。あとは「灰になる」というフレーズがあり、”この表現好きだな…”と思った(笑)。サビのラストは「バースデーバースデー」と言っているように聞こえたので、誕生日?一回り大人になった自分…?とかそういう内容なのかと想像してみた。「TEENAGE RIOT」は直訳すると”十代の暴動”といったことになるので、ちょっと荒れた十代のあの頃…的な曲なのだろうか。



ジャケットを見てみると、歌詞の世界観まんまだなという感じ。青年はメンソール(タバコ)を手に持っているし、コンバースを履いている。自殺願望でもあるのか…闇が深い。

その2 「Flamingo」ゾーン(ピンク・ザ女子・甘美で華やか)

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1階のスペースで少し待ち、2階に案内される。ふわっと良い香り。2階は1階とは真逆で、真っピンクの世界。やりすぎだろというくらいの、”ザ・女子”という感じで、ドレッサーや鏡、洋服、ソファ、トルソーなど、中世の姫のようなブリブリの世界が広がっていた。少し奥に「Flamingo」のMVの上映スペースがあり、前のお客さんがそれを観ている。待ち時間の間、このラブリーな”姫の間”を見て回る。

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印象的だったのが、花でできたフラミンゴ2体。ふわっとしたいい香りはこの花の香りだったのだろうか。フラミンゴの丸い胴体が美しいピンクの花のアレンジメント。百合の花が多い花束だった。ドレッサーには香水やアクセサリなどが置いてあったのだが、なぜか辞書のような本まで置かれていた。そのページは”OIL”あたりで開かれており、おそらくスペイン語?のようだった。フラミンゴの語源はラテン語らしい(「フラミンゴ(Flamingo)という名前はラテン語で「炎」を意味するflammaに由来している。」Wikipedia参照)とのこと)ので、スペイン語? フラミンゴは”愛と情熱の象徴”らしいので情熱的なスペイン語?…想像の域を得ない。確かに入ったときに”中世のヨーロッパの宮殿の部屋”という印象を受けたので、スペインというのは納得かも…。

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赤いカーテンで覆われたMV視聴スペースには大小9つの液晶があり、1番までのMVが2回ほど流れた。”ドッ・ドドッ”という低音のリズムが印象的でアダルト&ムーディな楽曲。MVは米津玄師が駐車場で歩き、ダンスをするような内容で、赤いジャケットとパンツを履いていたような気がする。粘り気の強いねっとりとしたダンス。歌詞はまさにこの部屋のような甘美な印象の単語の羅列、「あなたはフラフラフラフラミンゴ…」というのがサビだったような(うろ覚え)。「ベルベット」という単語は聞き取れた。確かに部屋にベルベットの生地があったような気がする。歌詞は詳しくわからないが、おそらくは恋愛の歌だろう。いつもながら重い感じの、どろーっとした大人の恋愛ソングなのだろうか。



こちらもジャケットを見るとこのまんまという感じ。花でできたフラミンゴはまさにこのジャケットを立体化したようなものだった。足は大きな試験管のようなものに入っていたような…(花なので)気がする。

こうした楽曲の世界観の展示というのは初めてだったので、どんなものなのだろうと思っていたのだが、なるほど、楽曲に立体感が出るというか、”こういうイメージなのか”、ということがなんとなくつかめた。まだ歌詞がわからないのでざっくりだが、いざCDが発売されたらこの日のことを思い出してまた改めて考察してみたいと思う。すべての歌詞を見て、”あれはこういうことだったか…”ということがわかるかもしれない。幕張は残念ながら外れてしまったので、今回のイベントに参加できてよかった。何はともあれ、楽曲の発売が楽しみだ。

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星野源の「アイデア」を聴いて。続き。



まずは、星野源本人が語るところについてまとめた、「アイデア」歌詞の意味&解釈(その1)をご覧いただければと思う。当記事(その2)では、筆者の考えや考察についてまとめてみたいと思う。

この曲については様々な媒体で語られており、説明的でとてもわかりやすいと感じた。過去のインタビューなど多数読んで&聞いてきて思うのが、人からどう思われるかというのを非常に気にしているのだな、ということだった。今回のアレンジにしても、”ただ奇抜なことをしていると思われるのは嫌で”とか、”こうすれば音楽性が変わる必然性が生まれる”と言った発言があり(ラジオでの発言)、曲全体の整合性をかなり気にしていることが伺える。また、過去の楽曲「ここにいないあなたへ」でも、”ドラえもんのタイムマシンに乗った設定にすれば、過去のアレンジをしても良いと思った”といった発言をしていた。人気上昇に伴い注目度が上がり、より説明を求められる機会も増えたためか、”なんとなくこうしたかった”といったことではなく、理由づけや意味づけをしっかり考えているのだなという印象を受けることが増えた。

※参考記事
「ここにいないあなたへ」歌詞の意味&解釈

また、筆者がこの曲を一番最初に聴いた時(発売日:2018年8月20日0時)に感じたことは、”相当抑圧されたストレスが溜まってるんだろうな…”ということだった。聴いていてストレスが発散されるような解放感があると感じたのと、驚きや刺激が強く、殻を破るような斬新な感覚があった。人間、ストレスが溜まるほど刺激が欲しくなるもので、激しいライブ、ジェットコースター、激辛の食べ物などは身近なストレス解消コンテンツとして消費されているように思う。
2017年は精神的にも体調も悪く辛い1年だったと語られていたが、何が辛いかということはパブリックに言えるものではないだろう。きっとファンからは伺い知れないような嫌なことがたくさんあるのだ。2018年8月24日に放送されたNHK情報番組『あさイチ』でのトークコーナーでも、子どもに”世の中で一番怖いものは何か”と聞かれて、”人間。”と答えていた(笑)。闇が深い…。これからも嫌なことはたくさんあるだろうが、抑圧やストレスを制作意欲に昇華して、素晴らしい作品を世に送り出していただければ本当に幸いだ。心身の健康を壊さぬようにだけはくれぐれも気をつけてほしい…。


※ 昔から”アイデア”マンだった星野源の様子が伺える本
参考 『衣・食・住・音 音楽仕事を続けて生きるには』 角張渉


星野源がアミューズに移籍する前に所属していた音楽関係の事務所、カクバリズムの代表角張渉氏のインタビュー本。カクバリズム時代の星野源のエピソードも多数なのだが、中でも印象的だったのが、”源くんからの提案が次から次へと出てきて…”といった言葉が何度も出てくることだった。角張氏もその提案をなんとか形にしようと奮闘してきたとのこと。その後大手の事務所に移籍し、お金も人手もかけられるようになり、アイデアマン星野源の無限のアイデアを形にしやすくなる環境がより整ったと言えると思う。今も昔も、星野源楽しそうなアイデアは周囲の人を巻き込み、自然と応援され、形になってきたのだなと感じる。既成概念を打ち破り、毎回人々を驚かせ楽しませてくれる星野源の活躍は、カクバリズムという手作りレーベルでの土台があってのものなのかもしれないなぁと思った。

●「アイデア」(2018年8月20日発売配信限定シングル)

 

MVについては(その1)の記事に本人による解説をまとめたため、今回の記事ではそれプラスアルファで感じた独自解釈を書いてみたいと思う。本人によると、MVに映り込んでいるものはすべて計算済みで、無駄なものはないとのこと。よーく見ると、映り込む掃除道具や脚立などに至るまで、今回のテーマカラー(赤・黄色・ピンク・青)のどれかの色を使っていたりと、小道具の色などにも工夫が見られる。
今回のMVでは”色”というのが大きなテーマになっているように思う。1番はこれまでの作品のカラフルな世界、2番は暗闇で孤独ながらも、孤独な個人の光(豆電球)がダンスフロアを彩るという演出、その後は白黒のお葬式、真っ白なキャンバスへ…と続く。筆者が気になったのは何度か映り込むセロハンのカラーフィルム。なくても良いもののはずなのに、かなり強調的に映り込んでいる。「フィルム」という作品があるから、それにかけているのか?とも思ったが、何か意図的なものなのだろうか。カラフルなパブリックの世界で、世間のたくさんの人からそれぞれのフィルタを通して見られている視線(枠組みとカラフルな色)という意味かなと思ったりもした。ある種の”色眼鏡”というか…。細かいところも想像しながら見ると面白いかもしれない。

※参考記事
「フィルム」歌詞の意味&解釈

「おはよう 世の中
 夢を連れて繰り返した
 湯気には生活のメロディ

 鶏の歌声も
 線路 風の話し声も
 すべてはモノラルのメロディ

 涙零れる音は
 咲いた花が弾く雨音
 哀しみに 青空を

 つづく日々の道の先を
 塞ぐ影にアイデアを
 雨の音で歌を歌おう
 すべて越えて響け

 つづく日々を奏でる人へ
 すべて越えて届け」(1番Aメロ、Bメロ、サビ)


朝ドラ主題歌の発明とも言われている「おはよう 世の中」という歌詞(笑)。「湯気には 生活のメロディ」という部分は、本人の意図した通り、星野源”名刺”のような歌詞だなと感じる。気になったのは「鶏の歌声も」という歌詞。普通トリと言ったら”鳥”という字を使うのではないか。「鶏」はニワトリのことなので、家畜や飼っている「鶏」を想定した歌詞だろう。つまり、より日常や「生活」に密着した「鶏」ということなのではないだろうか。「モノラルのメロディ」の部分は、朝ドラの主人公鈴愛の片耳が聞こえないという設定に基づくものらしい。

「涙零れる音は 咲いた花が弾く雨音 悲しみに 青空を」の部分はとても詩的で、「涙」「雨音」「悲しみ」と言った一見ネガティブな単語を、「咲いた花が弾く」「青空」という単語でポジティブに変えるような、そんな繊細なニュアンスを感じる。空の青を基調とした朝ドラのオープニング映像にも非常にマッチする歌詞だ。

サビの「塞ぐ」という単語は、「道を」、ということもそうだし、朝ドラの主人公の”片耳が聞こえない”という設定にも関連している。鈴愛は片耳が聞こえないというハンデを負いながらも、持ち前の明るさと豊富な「アイデア」で人生を切り拓いていくという女性。一見ネガティブに見えることがあっても、「アイデア」「すべて越え」られるという、非常にポジティブな内容となっている。

笑顔で世の中に”F○CK!”…花はそんなこと思ってないと思うが(笑)

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「おはよう 真夜中
 虚しさとのダンスフロアだ
 笑顔の裏側の景色

 独りで泣く声も
 喉の下の叫び声も
 すべては笑われる景色

 生きてただ生きていて
 踏まれ潰れた花のように
 にこやかに 中指を

 つづく日々の道の先を
 塞ぐ影にアイデアを
 雨の音で歌を歌おう
 すべて越えて響け」(2番Aメロ、Bメロ、サビ)


2番で一気に曲調が変わり、暗闇の世界へ。いつもにこにこ「笑顔」の自分とはまた違う、「笑顔の裏側の景色」がある。「真夜中」「ダンス」のお相手は「虚しさ」。一晩中、顔を向き合って踊り明かす。「独りで泣く」時もある、言いたいことを言えずに「喉の下」「叫び声」をあげることもある。本当に本当に辛くても、弱音は吐けない。自虐的に「笑」いに変えなければならない時もある。

有名になると、「生きてただ生きてい」るだけで、あることないこと”色眼鏡”で見られてしまったり、記事を書かれたり批判されたり、嫌なこともたくさんあるのだろう。そんな時は、罪はないのに傷つけられてしまった道端に咲く「花」に親しみを感じる。
”こんな世の中にF○CK!!!!!”、と思う。しかし、戦わない。表立って怒りを表現したら負けだ。「踏まれ」ても「潰」されても、「花」のように「にこやかに」…それが星野源なりの美学なのだろう。素晴らしい作品を世に届けること。それこそが星野源”世の中を見返す!変えてやる!”という反骨精神の表現なのかもしれない。

一人一人が奏でる人生というメロディ。あなたはどんな音色を奏でますか?

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「闇の中から歌が聞こえた
 あなたの胸から
 刻む鼓動は一つの歌だ
 胸に手を置けば
 そこで鳴ってる

 つづく日々の道の先を
 塞ぐ影にアイデアを
 雨の中で君と歌おう
 音が止まる日まで

 つづく道の先を
 塞ぐ影にアイデアを
 雨の音で歌を歌おう
 すべて越えて響け

 つづく日々を奏でる人へ
 すべて越えて届け」(Cメロ、ラストサビ)


Cメロ(大サビ)は星野源の原点とも言える弾き語り。この部分の歌詞がこの曲の中で一番の謎というか、抽象的で意味がわかりづらい部分だと思う。「闇の中」とあるので、おそらくここでのシーンは暗闇に一人でいるという状況だと思う。静かな暗闇で、「胸」「手」を当てると聞こえてくる「鼓動」。その「鼓動」「一つの歌だ」と言っている。”トクトクトク・・・”という心臓の音は、生きているという証であり、それは「一つの歌」のように美しい旋律を奏でる「つづく日々を奏でる」心臓の「鼓動」。”音楽”は楽器やら理論やらという特別なものではなく、一人一人の人生そのものが「歌」であり「メロディ」であるということだ。

次のサビでは歌詞が微妙に変わっていて、「雨の中で君と歌おう 音が止まる日まで」となっている。「音が止まる」というのは心臓の「鼓動」が、という意味なので、”死ぬまで”ということだろう。「アイデア」次第では、「雨音」も心臓の「鼓動」もメロディであり「歌」になる。”人生=歌”というコンセプトは、この曲が星野源の名刺のような、人生を表したような曲であるということにもつながっているし、彼の人生がいつも「歌」「音」と共にあるということも表現しているのではないだろうか。

人生いろいろ。オーケストラのようににぎやかなときも、一人孤独なときも、2人でデュエットすることも、ポップスも、ジャズも、演歌も…本当にいろいろある。誰とどんな音楽を「奏でる」かは、その人次第だが、いつでも根底にはその人の心臓の「鼓動」が脈打って、リズムを刻んでいる。星野源が「つづく日々を奏でる」すべての人に贈る「アイデア」は、人々の人生にどのような”アイデア”をもたらしていくのだろうか。


「アイデア」
歌手名・作詞・作曲:星野源

歌詞サイトはこちら 

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