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米津玄師、2017年7月「RESCUE」@東京国際フォーラムに参戦して

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2017年7月14日に行われた米津玄師ホールワンマン2daysライブ「RESCUE」初日@東京国際フォーラムに足を運んだ。前回の「はうる」ツアーで初めて米津のライブに参戦し、今回が2回目。前回の「はうる」でも”米津の生ライブはすごく良い!”という感想を抱いたが、今回の「RESCUE」はそれをさらに上回る感覚で、”本当に素晴らしいものを見せてもらったな”と心から思った。東京国際フォーラムでのライブ鑑賞は初めてで、1階後方列だったが、席の段差がかなりついていたため後ろからでもよく見えた。お客さんもあまり激しい動き(ダイブとかモッシュとか)をする鑑賞スタイルではないので、ホールでの公演でも十二分に楽しめた。女性ファンが6~7割で、前回の「はうる」@ゼップ東京よりも年齢層が高い感じがした。2days公演終了後なので、ネタバレを含む内容になるのはご容赦いただきたい。
→参考記事 ライブ感想@ゼップ東京2016年12月「はうる」ツアー最終日

感想1 目玉曲は「ゆめくいしょうじょ」&「love」。オリジナル映像の美しさ。

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本公演で最も印象的に残った曲は「ゆめくいしょうじょ」「love」だった。これは友人とも見解が一致したため、おそらく同じような感想を抱いた人は多いのではないか。この2曲は演出でオリジナルのアニメ映像が流れたのだが、2つの映像は同じようなタッチで描かれており、いずれもハートの風船赤・ピンクっぽいバラの花(たぶん)のモチーフが使われていて、明らかに関連のあるものとして表現されていたように思う。”あの映像を是非公開してほしい!”、筆者のみならずご覧になったファンの方は皆そう思ったことだろう。
「ゆめくいしょうじょ」はボカロのリメイク曲であり、拙記事歌詞の意味&解釈では公開されているボカロ曲のMVを取り上げたのだが、今回ライブで公開された映像をもとに解釈をしてみると、また違った趣の曲になるなぁと感じた。顔の表情がわからない幼い少女と20~30代くらいの女性が登場し、ストーリーはわからないけれども二人の心温まる交流が伝わってくるような、非常に繊細でやさしく、柔らかいタッチで描かれた作品だった。ボカロのMVと趣は違ったが、やはりこの曲のメインテーマは”母子関係””母性”なのだろうと感じた。曲の後半の米津のアカペラ部分は、観客全員がその歌声に一点集中している感覚で、全員が聞き惚れていたように思う。
→参考記事 「ゆめくいしょうじょ」歌詞の意味&解釈

かいじゅうずかん ([バラエティ])
米津 玄師
ロッキング オン
2016-12-10


「love」『かいじゅうずかん』に付属のCDに収録されている作品。前回の「はうる」で生で聴いた時に本当に魂が震えるほどの感動を覚えた名曲なのだが、CDで聴いても生ほどの印象は残らないかもしれないなと思う。本公演では人間同士での愛や恋愛といった「love」ではなく、全生命や命といったものへの「love」を表現していたように感じられた。非常に深くて大きく包み込むような愛といった感覚。映像では深海から太く長く伸びる大樹がスクロールされる様子がいくつも切り替わって描かれるシーンと、サビでは鳥やいるかや亀(?)のような動物がらせん状になって規則的に上へと昇ってゆく様子が描かれており、時折、前述のハートの風船やバラの花のようなモチーフも現れていた。大樹の下の根の部分がギターになっていたり、ワニになっていたり、ニワトリになっていたりするものもあり(隠し絵みたいな)、”命のハーモニー”、”全生命のつながり”のようなものを感じた。動物がらせん状に昇っていく様子は遺伝子のDNAらせんを彷彿とさせ、非常に神聖な印象を受けた。
→参考記事 「love」歌詞の意味&解釈

感想2 照明の演出・映像の演出がグレードアップしていた印象

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前回の「はうる」公演では照明や映像の演出についてはあまり印象に残らなかったのだが、本公演では照明や映像が非常に印象に残っており、かなり凝って作り込まれているなぁと感じた。冒頭はポップな曲&シンプルな演出が続いたが、前半の最後、後半の最後の方は演出もこだわったものになっていった。個人的には2曲目の「フローライト」で、鉱物のフローライトと同じ色の照明が使われていたのが印象に残っていて、曲のイメージとぴったりマッチしていたのが最高だった。
前半のクライマックスは「orion」「ゆめくいしょうじょ」だった。「orion」では星空をイメージした背景のもと、サビの部分ではピンライトが米津に当たり、後半の盛り上がりではミラーボールが天井でキラキラ輝き出すなど、「orion」の世界観を巧みに表現する演出に感情も熱気も高まっていった。「ゆめくいしょうじょ」での映像については前述の通り。
→ 参考記事 「フローライト」歌詞の意味&解釈「orion」歌詞の意味&解釈
  

感想3 新曲が盛りだくさん。アルバムにかなり期待。





本公演ではアンコールを含めて20曲が披露されたが、うち新曲が3曲も含まれていた。前半の7曲目に「砂の惑星」(初音ミクイベントのために作られたボカロ曲)をMV付きで披露、後半のクライマックス&ラストに2曲の新曲。おそらくアルバムに収録されるものと予想している。「orion」「ピースサイン」からの流れで、子どもの頃や少年時代の自分と対話するような曲作りを進めているとのことで、今回披露された新曲もその流れを汲んだ楽曲であるとのことだった。「砂の惑星」はラップ調の部分があったりして新鮮だったが、カッコよさの中にも何とも言えない不気味な印象をも抱くような不思議な曲、新曲2曲はあまり今までの曲で似たようなものが見つからないこちらも新しいテイストの曲で、2曲目の方は”相変わらずものすごい早口だな…”と思って聴いた(雑な感想で恐縮)。”えっ、新曲2曲やって終わり?”という感じで、アンコールコールへ突入した。
(2017年7月16日追記 新曲1曲目:「fogbound」、2曲目「春雷」というタイトルとのこと
 参考サイト rockin'on.com  https://rockinon.com/blog/yamazaki/163886?rtw
 2017年7月21日追記 「砂の惑星」MVを追加)

感想4 盛り上がる曲多めで観客のテンション↑↑

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前回の「はうる」でも盛り上がる曲は歌われていたが、今回はよりそういった曲が多いように感じた。前半9曲、後半9曲、アンコール2曲といった構成だったが、いずれもスタートはノリノリで飛ばし、後半に向かい壮大なバラードでクライマックスといった内容だったように思う。前回と今回共通で歌われた、ややローテンポめな(アルバム)曲は「Black Sheep」のみで、”前回も今回も歌うということは(あまり目立たないけど)思い入れのある曲なのかもしれない…”と思った(笑)。2回参戦してみて、「ナンバーナイン」「メランコリーキッチン」「アンビリーバーズ」「アイネクライネ」「ゴーゴー幽霊船」「駄菓子屋商売」「ドーナツホール」「LOSER」、この辺りはライブの定番曲として今後も歌われていくのだろうと感じた。
→ 参考記事 「ナンバーナイン」歌詞の意味&解釈「メランコリーキッチン」歌詞の意味&解釈「ゴーゴー幽霊船」歌詞の意味&解釈(その1)「LOSER」歌詞の意味&解釈(その1)

感想5 米津自身の口から語られた「遠くへ行け」思想

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米津と言えば、作る曲の歌詞においても各種インタビューにおいても、”遠くへ行け”というフレーズが多用されているという印象がある。ライブMCはほとんどないが、今回アンコールのラストで歌われた「Neighbourhood」の説明で、自身の体験とそこから得た気づきとしての”遠くへ行け”思想が自らの口で語られていた。「Neighbourhood」米津の基本思想の原点となる体験を歌ったような曲で、徳島という田舎のあまり好ましくない(と本人は感じている)環境で生まれ育ったこと、そこから”遠くへ行きたい”と思って上京し、たくさんの人と出会い大勢のスタッフとともに一つの作品を創りあげている今のこの状況を思うと、当時勇気を出して生まれ育った環境から外へ出ようとして本当に良かったと感じているようだった。今の環境が嫌だなぁと嘆いている人がいたら、ちょっとの勇気を出して一歩を踏み出してみたら何か変わるかも、といったメッセージを最後に告げて、情感こめて「Neighbourhood」を歌い上げていた。米津が伝えたいことは、自身の実体験から強く感じていることだからこそそこに熱量がこもるし、その思いがのった作品に触れた我々にも何か伝わってくるものがあるのだろう。
→ 参考記事 「Neighbourhood」歌詞の意味&解釈

素晴らしいライブの感想を忘れずに記録するために一気に書き上げた。次回は12月のパシフィコ横浜「Fogbound」に参戦予定。今から待ち遠しい気持ちだ。

※新曲もどうぞ
「ピースサイン」歌詞の意味&解釈

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「ホープランド」歌詞の意味&解釈
「花に嵐」歌詞の意味&解釈

米津玄師シングル「ピースサイン」収録の「ゆめくいしょうじょ」を聴いて。

ピースサイン
米津玄師
SMR
2017-06-21


米津玄師
のシングル「ピースサイン」の3曲目に収録されている「ゆめくいしょうじょ」を取り上げてみようと思う。この楽曲はハチ名義ボカロ作品「沙上の夢喰い少女」のリメイクとして作られたもので、アレンジも大幅に作りかえられている。以下参考まで、ボカロ作品の方のMVを挿入してみたが、本作「ゆめくいしょうじょ」は別作品と言っても良いほど印象が異なっている。米津の肉声バージョンの本作はゆったりとしたバラード調で、ピアノの音色が特徴的な静かなやさしい雰囲気の曲に仕上がっており、タイトルもひらがなの「ゆめくいしょうじょ」という柔らかくあたたかい表現の方がマッチしている。こちらの作品についても、音楽サイト『リアルサウンド』のインタビューにリメイクについてのコメントが掲載されていたので少々引用してみる。
引用元サイトはこちら→http://realsound.jp/2017/06/post-84263_3.html
(インタビュアーにこの曲はリメイクと言っても良いかと聞かれて)
「はい。ボカロのころの曲のリメイクって、これまではやりたくなかったんですよ。ライブではやっても、音源として作る意味を見出せなくて。やっぱり、ボカロが歌うために作った曲だし、それを自分の声で歌う意味が見出せなかった。でも、それがだんだんと「やってもいいかな」と思えるようになってきたんですよね。自分のなかで、いい意味でボカロでやってきたことが過去の出来事になっていて。」
ハチ時代から数年が経過し、ボカロ曲のリメイクに関して心境の変化があったことが伺える。筆者は個人的にはボカロ曲は無機質な感じがして、どのアーティストのものもあまり耳が受け付けないため、ハチ時代の名曲は是非とも米津本人の肉声でリメイクして、新たな作品として世に送り出していただきたいものだなと思っている。

●「ゆめくいしょうじょ」(2017年6月21日発売シングル「ピースサイン」収録曲)



歌詞を読んでいく上で、ボカロ曲のMVの内容も参考になるかなと思い挿入してみた。ボカロ曲のタイトルは「沙上の夢喰い少女」となっており、MVの映像からも沙上=砂漠が舞台であることがわかる。本作は「沙上の」の部分がなくなっているため、単純に歌詞だけを読むと砂漠が舞台であることがわからない。ただ、歌詞の世界観を把握する上では必要な情報だと感じたので補足してみた。

「ブーゲンビリアの花が咲いた
 給水塔の上で
 迷い星を探している
 皺枯れの空まで

 居場所が無い
 絵本も無い
 コウノトリは
 赤ん坊を連れ去り消えた

 君の悪い夢も
 私が全部食べてあげる
 痛いの痛いの飛んでいけ
 安らかな歌声を」(1番Aメロ、Bメロ、サビ)


MVでは砂漠の一角にあるオアシスのような場所と「給水塔」が描かれており、その上に一人の少女(これが「ゆめくいしょうじょ」だろう)が座っている。歌詞の内容と合わせると、「ブーゲンビリアの花」と少女を重ねて表現されていることが想像できる(どちらも「給水塔の上」にいる)。「ブーゲンビリア」は主に乾燥地帯で見られる色鮮やかな植物で、日光がないとよく育たないらしい。「ゆめくい」ということからも、この曲の時間帯はだろう。夜の砂漠というのは、人間が生きるのに必要な水と光がどちらもない状況の例えだろうかと推測した。砂漠の「給水塔」というのはいわば”砂漠の命綱”と言えると思う。この曲のテーマとして、”水”、”光”、”命”といったキーワードが浮かんだ。
そして、Bメロの「コウノトリ」「赤ん坊」という直接的な表現もあるように、”赤ちゃん””母親、母性”といったキーワードも浮かぶ。MVの中でも、この少女は少女ながらも非常に母性溢れるあたたかくやさしい女性として描かれているように思う。というのは女性性や母性、感情や情緒を象徴するもので、砂漠はそれが一切ない状況と見ることもできる。MVに出てくる少年はどこか心がすさんでいて、”愛”に飢えているように見える。つまりは、人間が生きるのに必要な”愛”の渇望感、飢えや乾きに苦しむ存在や状況の象徴として少年や砂漠が描かれているように思った。登場するのは少年と少女ながらも、どこか親子の関係のようにも見える印象を受けた。

「コウノトリは 赤ん坊を連れ去り消えた」の歌詞が最も決定的で、おそらく出産前に中絶もしくは流産してしまったなど、悲しい出来事があったのではないかなと想像した。「迷い星」というのは、天に帰ってしまった赤ちゃんのことなのかもしれない。「居場所が無い 絵本も無い」というのは、生まれることを歓迎されていないことを悟った赤ちゃんの気持ちという風にも読める。この少女は、そんな生まれるはずだった赤ちゃんの悪夢を食べようとしているのかもしれない。

この世に望まれていないことを悟った赤ちゃんの悪夢!?

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「ブーゲンビリアの花が咲いた
 給水塔の上で
 夜明けは紫陽花の様
 眠る水脈は透明に

 震えては
 聞こえないふりを
 まどろみが
 君を傷付けて止まないんだ

 思い出の話を
 語っておくれよ 曖昧な格好で
 洒がれた闇さえ飲干して
 息を吐く 淡い声」(2番Aメロ、Bメロ、サビ)


2番で特徴的なのは「ブーゲンビリア」「紫陽花」という花の描写だ。「ブーゲンビリア」は乾燥地帯で咲く花、「紫陽花」は梅雨の時期に咲く花で、いずれも花のように見える部分は花ではないという特徴がある。「夜明け」というのは光が差し込む時間でもあり、「紫陽花」が咲くのは雨の多い時期ということを考えると、やはり”光””水”が満ちてきた描写であることが伺える。「眠る水脈は透明に」という表現からも、水量が増えて水が清らかになってきたことがわかる。

Bメロを深読みしまくると、お腹の中にいた赤ちゃんが外の様子を聞いていて、自分が望まれていない状況に生まれ落ちることに「震えては 聞こえないふりを」していた、とも読めるかもしれない。赤ちゃんの意識は我々のように起きている状況とは言い難く、どちらかと言えば”眠っている”状態に近いとすると、「まどろみ」(=うとうと、うたた寝)というのは、赤ちゃんの意識状態のことを表している可能性もある。
この少女が(死産した?)赤ちゃんの母親だとすると、おそらく赤ちゃんに対する罪悪感がものすごくあることだろうと思う。その罪滅ぼし的な意味も含めて、「君」(=赤ちゃん)の悪夢を食べてあげたい、楽にさせてあげたいと思うのではないだろうか。「曖昧な格好」というのもあまり聞き慣れない表現だが、首の座っていない赤ちゃんなどの体勢と考えると辻褄が合う。

天に帰ってしまった「君」に、母親からの子守歌を…

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「ああ 輪郭を失ってしまった
 君だけに子守歌を!

 君の悪い夢も
 私が全部食べてあげる
 その涙で胸が痛いの
 
 余りに残酷で
 溺れた夜も 側にいておくれ
 この朝に二人 夢を見た
 飲み込むのが 怖い程
 光を呑んだ 淡い夢」(Cメロ、ラストサビ)


Cメロの「輪郭を失ってしまった君」というのも、人間として肉体を持って生まれ落ちる前(=輪郭が形作られる前)に亡くなってしまった赤ちゃんと考えると意味が通る。「残酷」という強烈な表現からも、生死に関わる何かが起きたことが伺えるし、「溺れた夜」というのも、悲しみの涙で号泣したことの象徴かもしれない。MVのラスト、3分30秒頃をご覧いただくと、黒い人間の姿をしたものが上から伸びる給水管らしきものから何かを飲もうとする絵が現れる。これは給水管から伸びる水、すなわち人間の命綱である”愛”を飲んでいるということであり、子宮にいる赤ちゃんと母親を繋ぐへその緒のようなものにも感じられた。赤ちゃんが亡くなってしまってから、せめてあの世では楽に生きてほしい、本当は会いたかった、愛したかった、という母性を感じるようになったのかもしれない。
最終的には、「光を呑んだ 淡い夢」とあることから、死産した赤ちゃんも母の愛を受け取り気持ちが安らぎ、安心して眠れるようになったことが伺える。この曲は、中絶なのか流産なのかはわからないが、なんらかの理由で死産してしまった赤ちゃんへの、母親の弔いや罪償いといったものを表現している曲なのだと感じた。

「ゆめくいしょうじょ」
歌手名・作詞・作曲:米津玄師

歌詞サイトはこちら

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「ピースサイン」歌詞の意味&解釈
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ライブ感想@ゼップ東京2016年12月「はうる」ツアー最終日

米津玄師「ピースサイン」カップリングの「Neighbourhood」を聴いて。



今回は米津玄師のシングル「ピースサイン」のカップリング曲である「Neighbourhood」を取り上げてみたい。「Neighbourhood」というのは直訳すれば”近所、地域、地域の人々”といった意味であり、タイトルからも子ども時代に過ごした狭い地域社会やその頃の記憶をもとに書かれた曲だろうと推測できる。「ピースサイン」少年時代の自己との対話がテーマとなっており、シングル全体を通して、過去の自分との対話や過去回帰などが重要なキーワードとなっている。
当楽曲については音楽サイト『リアルサウンド』で語られていたインタビュー記事の内容が参考になるので、少々引用してみる。
サイトはこちら→http://realsound.jp/2017/06/post-84263_2.html

「イメージしたのは、Oasis「Don’t Look Back In Anger」と、The Beatlesの「Strawberry Fields Forever」ですね。これにはちゃんと意味があって、彼らはイギリスの労働者階級から出てきて、一躍、国民的なスターになった、というストーリーがあるじゃないですか。そこに共感するというか、「自分もまともな教育を受けてきてねえな」と思う瞬間があるんですよね。もちろん楽しかった記憶もあるし、こんなことを言ったら親に怒られるかもしれないけれど、マジでしょうもない場所だったな、と思うんです。地元には若者の音楽みたいなものはまったくなくて、ライブハウスに行ってもダサいバンドばかり。こんなところで、こんなヤツらと一緒に生きていかなきゃと思うと絶望したし、ずっと早く出ていきたいと思っていたんですよ。この曲は、そういうふうに考えて、くすぶっていたころの自分との対話ですよね。」

●「Neighbourhood」(2017年6月21日発売シングル「ピースサイン」収録曲)

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歌詞だけを読むと少々薄暗い雰囲気というか、あまり明るくポジティブな内容には思えないのだが、曲調は(前述のインタビューにもあるように)やや明るめの英国ロックテイスト(だからタイトルも英表記?)で、これまでの米津の楽曲にはあまり見られない趣の曲だなという印象を受けた。曲自体にアナログ感があり、”身体性”を感じるどこか懐かしい雰囲気で、歌詞と非常にマッチしている。子ども時代を思い出し、”嫌だな”と思う光景も、そんな子ども時代を懐かしく思う気持ちも、両方感じることができる歌詞である。前述サイトのインタビューでこんなことも語られていた。
「愛憎入り乱れて、というか。そこから出てきた人間なんだ、ということは認めざるを得ないし、そういうものとして生きていきたいなというふうには思います。」
「この頃ひどい夢を見る 子供の頃の風景
 煙草の煙で満ちた 白い食卓だ
 腐りかけの幸せ 一日一切れずつ
 続く絶え間ないヒステリー あとは怠惰だけ

 平和も平和で反吐が出た
 遠く聞こえるバーバラアレン

 どうしたんだいなあ兄弟 俺がわかるかい?
 お前が許せるくらいの 大人になれたかな
 もういいかいなあ兄弟 ここらでおしまいで
 なんて甘えてちゃお前にも 嫌われちゃうのかな」(1番Aメロ、Bメロ、サビ)


印象的なのが「煙草の煙で満ちた 白い食卓だ」という歌詞。両親は喫煙者だったのだろうか。ぱっと見の印象でも、愛のあるあたたかい家庭や食卓ではなさそうだということが伺える。「腐りかけの幸せ」「絶え間ないヒステリー」「怠惰」といった歌詞からも、当時の身の回りの環境が子どもにとって適切で健全であったとは思えない状況だった(と認識している)ことがわかる。
Bメロの「バーバラアレン」についても、前述のサイトのインタビューで語られていたので引用してみる。
(インタビュアーに「バーバラアレン」はスコットランドの民謡ですねと言われて)
「そうですね。徳島から出てきて初めて知った曲でもあるんですけど、僕はジュディ・コリンズのバーバラアレンがめちゃくちゃ好きで。「蛍の光」などもそうですが、スコットランド民謡って、すごく郷愁を感じるじゃないですか。故郷も「しょうもない場所だったなあ」と思う反面、思い出というのは年をとるほどまやかしに包まれていって、苦しかった出来事は削ぎ落とされていく。クソみたいな環境だったけど、それはそれでよかったんじゃないか、友だちと遊んだり、幸せを感じた出来事もあっただろうと。そういうものだけを抽出して夢に見たり、あのころの友だち、何しているかなと思ったり。そういう郷愁というのは、重要なテーマでした。」
↓こちらが米津が聞いていたというジュディ・コリンズ「バーバラアレン」



このインタビューを読んで初めてこの曲を聴いてみたが、確かに非常に”郷愁”を感じる曲だなと感じた。「平和も平和で反吐が出た」という部分は、Aメロの描写からするとどこか逆説的で、とても「平和」そうには見えないのに、と思う。おそらくここでいう「平和」というのは、”規模が小さい、しょぼい、狭い世界”といったような意味なのかなと思う。パートのおばさま方が狭い社会での愚痴をこぼしているようなイメージだろうか。”こんなことであれこれ言うなんて平和だな”という皮肉めいた言葉でもあると思った。そしてそんな狭い社会(=「Neighbourhood」)とそこから抜け出したかった当時の自分や状況への郷愁として「バーバラアレン」という表現を使ったのではないだろうか。
サビについてはラストで述べてみたいと思う。

良かったことも、イマイチだったことも…全部ひっくるめて今の自分がある

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「肩を寄せ合って生きていく 小さな日陰の虫
 新聞の文字は小さく テレビは煩い
 右曲りのトラックに 巻き込まれたらしいよ
 あの子がくれたガンダム まだ残ってるかな

 有り余ってる時間を 悪戯に溶かしていく
 どうすればいいのかわからない それもわからない
 この頃ひどい夢を見る 子供の頃の風景
 煙草の煙で満ちた 白い食卓だ

 平和も平和で泣けてきた
 耳に残るバーバラアレン

 どうしたんだいなあ兄弟 どこで泣いてんだい?
 それはお前には似合わない すぐに脱ぎ捨てとけ
 もういいかいなあ兄弟 それでもやめらんない
 にやけ笑いかまして午前四時 それはそれで楽しい」(2番Aメロ、Bメロ、サビ)


2番のAメロは主に同じ時を過ごした幼馴染や友人との関係性を描写しているのではないかと感じた。「右回りのトラックに 巻き込まれたらしいよ あの子がくれたガンダム まだ残ってるかな」、この歌詞は流れから言っても、どこか突然放り込まれた感覚がある不思議な歌詞だと思う。(おそらく)友人が交通事故に遭って亡くなってしまったことを暗に示唆していて、どこか悲しい雰囲気が漂っている。
次のAメロ変形の段落は非常に感情的で、繰り返しの歌詞があることからも強調されている印象を受ける。「有り余ってる時間を 悪戯に溶かしていく」という歌詞からは、田舎の狭い社会での暮らしが退屈で暇で暇で仕方ない様子が伝わってくる。やり場のない爆発したいほどのエネルギーを持てあました少年期、思春期の子どもの頃を想像させる印象的な描写だと思った。
サビの「午前四時」という単語に妙に引っかかった。シングル表題曲「ピースサイン」においても「夜明け前を手に入れて笑おう」という歌詞があったからだ。米津にとって「午前四時」「夜明け前」というのは特別な時間帯なのだろう。『MUSICA 2017年7月号』のインタビューにはこう書かれている。
「自分は夜明け前が凄く好きなんですよね。(略)何かと何かの狭間にあるあの時間が、求めようとしても決して得られないものとリンクしているというか……子供って大人になりたいと思って背伸びしたりするじゃないですか。(略)子供達のそういう気持ちと夜明け前の状態がリンクして見える部分があったんですね。(略)」








子ども時代の自分へ語りかける。「お前が許せるくらいの大人になれたかな」

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「生きられないなって トイレの鏡の前で泣いてた
 逃げ出せその街を 飛ばせ飛ばせ飛ばせ 笑え笑え笑え
 
 定期を買うくらいの まとまった金すらなくて
 毎日切符で済まして むしろ金かかる 
 きっと夢は叶うなんて嘘を 初めから信じちゃいなかった
 それでもなおここまでこれた お前はどうしたい?

 どうしたんだいなあ兄弟 俺がわかるかい?
 お前が許せるくらいの 大人になれたかな
 もういいかいなあ兄弟 ここらでおしまいで
 なんて甘えてちゃお前にも 嫌われちゃうのかな」(Cメロ、Aメロ(再)、ラストサビ)


2番のサビでも、Cメロにおいても”泣く”という描写が出てくる。子どもの頃の狭い社会が退屈で窮屈でつまらなくて、一刻も早くここから出たい!という気持ちの表れだろうか。「逃げ出せその街を 飛ばせ飛ばせ飛ばせ 笑え笑え笑え」という歌詞からは切迫感や感情の高ぶりを感じる。
Aメロ(再)からは、当時は決して裕福ではなかったこと、夢は叶うわけがないと思っていたことが伺える。「それでもなおここまでこれた お前はどうしたい?」、この問いかけは大人になった自分から当時の自分への問いかけだろう。米津の思想をより濃く読み取るとすれば、「それでもなおこんな遠くまでこれた」ということであろうし、あの時思い切って「逃げ出」し、上京してきたからこそ今があるし、生まれ育った場所が上京したいと思うほどの(自分にとって良くない)環境だったからこそ今がある、と見ることもできる。
サビの「どうしたんだいなあ兄弟」「もういいかいなあ兄弟」という問いかけも、もちろん子ども時代の自分に対するものだろう。「お前が許せるくらいの大人になれたかな」、この1フレーズがこの曲のメインテーマであり、この問いかけを続けながらこれからも生きていくのだろうと思う。子どもの頃の自分はどんな自分を許し、どんな自分を許せないと言うだろうか?それは人それぞれかもしれない。ただ、その瞬間、その瞬間を全力で、懸命に生きていたとすれば、それをとがめる人はいないように思う。生まれ育った環境はどうあれ、誰しもが子どもの頃の自分に胸を張って生きられる人生を歩んでいけるといいなと感じる一曲だった。

「Neighbourhood」
歌手名・作詞・作曲:米津玄師

歌詞サイトはこちら

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米津玄師のシングル「ピースサイン」を聴いて。






今回は、アニメ『僕のヒーローアカデミア』の第2期オープニングテーマとして起用されている米津玄師「ピースサイン」を取り上げてみようと思う。前作「orion」もアニメ『三月のライオン』のエンディングテーマ曲として起用されており、アニメとのタイアップが続いているようだ。上記のアルバムジャケットのイラストは米津玄師が描いた当アニメの主人公デクとのこと。筆者は漫画・アニメに疎いので初めて知ったのだが、週刊少年ジャンプに連載中の人気漫画で、ヒーローを目指す少年の成長・友情・勇気といった王道系ストーリーなのだそうだ。よく知らないという方はこちらの動画もどうぞ。



アニメの公式サイトに掲載されていた原作者堀越耕平×米津玄師のインタビュー記事も興味深かったので興味のある方は是非。
『僕のヒーローアカデミア』公式サイト 「堀越耕平×米津玄師 スペシャル対談」
http://heroaca.com/special/talk.html

雑誌『MUSICA 2017年7月号』にも当シングルに関する米津玄師のインタビュー記事が掲載されていた。アニメの主題歌になるという話をもらってから曲を作り始めた(曲の原型は昨年くらいからあったとのこと)そうで、少年向けの漫画・アニメを楽しんでいた小・中学生時代の原体験を思い出しながら制作にあたっていたらしい。米津本人としては、以前から子どもや少年がワクワクするようなものを作っているつもりだったそうだが、”漫画に例えると『アフタヌーン』っぽい”と言われることもあったようで、世間との感覚のずれを感じることもあったらしい。そのことを受けての次の発言を引用してみる。
「でも、そう言われるのも、今となってはわかる感じもするんですね。そことの闘いって言うとおかしいですけど、自分はずっとこの”ピースサイン”みたいな曲を作りたくてやってきた部分があって。それがようやく『僕のヒーローアカデミア』という漫画が今の時代に誕生して、それが週刊少年ジャンプの看板を背負うような作品で。(中略)そういうものが現れて、そういう作品と自分が関わることができる機会が与えられて、結果この”ピースサイン”っていう曲ができて……だから、この瞬間を待ち望んでたんじゃないかなって自分では思ったりもしますね」



いずれの媒体でも語られているが、米津は幼少期の金字塔アニメとして『デジモンアドベンチャー』を挙げており、その主題歌であった「Butter-fly」(和田光司)の影響を受けているとのこと。そういった話を踏まえて2曲を聴いてみると、確かに似たようなテイストなのかなという気がする。少年向けアニメの王道の主題歌という感じだ。

↓こちらが米津が影響を受けたという「Butter-fly」(和田光司)



その他、音楽サイト『リアルサウンド』『音楽ナタリー』、ラジオ『スクールオブロック』で語られていた内容も参考になるのでリンクを張っておく。

・『リアルサウンド』→http://realsound.jp/2017/06/post-84263.html
・『音楽ナタリー』→http://natalie.mu/music/pp/yonezukenshi10
・ラジオ『スクールオブロック 6/21放送分』→http://www.tfm.co.jp/lock/staff/smartphone/index.php?itemid=9915&catid=36

●「ピースサイン」(2017年6月21日発売シングル)



初めてこの曲のアニメショートバージョンを聴いた時、”少年アニメの主題歌っぽい曲だな”とまず感じた。MVが公開され、全曲聴いてみるとまた少し印象が変わり、”王道っぽい曲だけど、やっぱり米津玄師色がかなり出ているなぁ”と思った。印象的なのがサビのラストのフレーズ「さらば掲げろピースサイン 転がっていくストーリーを」のメロディで、米津自慢のメロディセンスが光っていると感じた。歌詞の内容的には「遠くへ行け遠くへ行けと」という、米津の基本思想である”遠くへ行け”がそのまま多用されており、「LOSER」「NANIMONO(feat.米津玄師)」といった2016年のリリース曲の流れを汲んでいるような作品なのかなと感じた。

「いつか僕らの上をスレスレに
 通り過ぎていったあの飛行機を
 不思議なくらいに憶えてる 
 意味もないのに なぜか

 不甲斐なくて泣いた日の夜に
 ただ強くなりたいと願ってた
 そのために必要な勇気を
 探し求めていた

 残酷な運命が定まってるとして
 それがいつの日か僕の前に現れるとして
 ただ一瞬 この一瞬 息ができるなら
 どうでもいいと思えた その心を

 もう一度
 遠くへ行け遠くへ行けと
 僕の中で誰かが歌う
 どうしようもないほど熱烈に
 いつだって目を腫らした君が二度と
 悲しまないように笑える
 そんなヒーローになるための歌
 さらば掲げろピースサイン
 転がっていくストーリーを」(1番Aメロ×2、Bメロ、サビ)

先に紹介した堀越耕平×米津玄師のインタビュー記事によると、冒頭の4行が一番最初にできた歌詞らしい。この曲は”過去の自分との対話”といった意味合いが強いような印象があり、今の自分と過去の自分が重なっていたり、ずれていたりといった、繊細な部分を描写しているような感覚がある。2段目は「泣いた」「強くなりたい」「勇気」といった言葉がキーワードで、アニメの内容や自身の少年時代と関係が深いフレーズだと思う。Bメロ「残酷な運命が定まってるとして それがいつの日か目の前に現れるとして ただ一瞬 この一瞬 息ができるなら どうでもいいと思えた その心を」はまさに”今を生きる”感覚で、子ども時代・少年時代の純粋さやまっすぐな気持ち、将来の不安に怯えることも現実から目を背けることもない、青々と、生き生きとした情熱のようなものを感じた。このフレーズには大人になってから、子ども・少年時代を思い出しているような感覚がある。

サビに登場する「君」は誰なのだろうか?「目を腫らした君」とあることから、Aメロで「泣いた」子ども時代の「僕」と見るのが自然だろうか。筆者は「僕」大人の自分「君」子どもの自分という風に見ていて、そう見ると米津自身が子ども・少年がワクワクするようなものを作りたいと思って制作に励んでいるというエピソードとも重なるように思う。筆者の勝手なイメージだが、「ヒーロー」というのは高く叶いそうもないような目標に向かってすら勇敢に突き進んでいくもの、という印象があり、それは米津の基本思想”遠くへ行け”にも近いものがあると思う。「残酷な運命が定まってる」かも…と言って、現状に満足したふりをしてうじうじ踏み出せなかったり、めそめそ泣いたりしてないで、”自分の人生を遠くへ遠くへ「転がっていく」ように思いっきり生きろ!”ということだろうか。

大人になった「僕」が子どもの「君」に勇気をもらう時

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「守りたいだなんて言えるほど
 君が弱くはないのわかってた
 それ以上に僕は弱くてさ
 君が大事だったんだ

 「独りで生きていくんだ」なんてさ
 口をついて叫んだあの日から
 変わっていく僕を笑えばいい
 独りが怖い僕を

 蹴飛ばして噛み付いて息もできなくて
 騒ぐ頭と腹の奥がぐしゃぐしゃになったって
 衒いも外連も消えてしまうくらいに
 今は触っていたいんだ 君の心に

 僕たちは
 きっといつか遠く離れた
 太陽にすら手が届いて
 夜明け前を手に入れて笑おう
 そうやって青く燃える色に染まり
 おぼろげな街の向こうへ
 手をつないで走っていけるはずだ
 君と未来を盗み描く
 捻りのないストーリーを」(2番Aメロ×2、Bメロ、サビ)

2番の歌詞からは大人になった「僕」が弱音を吐いていて、子どもの頃の純粋な「君」に勇気をもらうようなシーンを想像した。1番は大人の「僕」が子どもの「君」にエールを送るような印象があったが、Aメロの「守りたいだなんて言えるほど 君が弱くはないのわかってた それ以上に僕は弱くてさ 君が大事だったんだ」という歌詞からは、むしろ今の「僕」にとって過去の「君」が、励みや心の支えになっている様子が伺える。大人になるにつれて「独りで生きていくんだ」という気持ちと、「独りが怖い」という気持ちの葛藤を感じるようになった「僕」。Bメロでは1番も2番も「息」という言葉が印象的に使われている。大人になって”今を生きる”ことができなくなり、頭でごちゃごちゃ考えて混乱の最中にいることも多くなった。そんな時、「ずっと触っていたいんだ 君の心に」と感じるのだという。「衒いも外連も(てらいもけれんも)消えてしまうくらいに」というのは、自分を必要以上に大きく見せたりひけらかしたりごまかしたりすることなく、という意味だろう。純粋な子ども時代の「君の心に」触れていたい、その頃の気持ちを忘れずにいたいということを表しているのではないだろうか。

2番サビの「夜明け前を手に入れて笑おう」の歌詞については、前述のMUSICAに本人のコメントがあったので興味のある方は手に取ってみてほしい。「青く燃える色」という表現も独特で、赤ではなく「青」であるところが面白い。”青春”の「青」、”若さ”を表現する「青」、空の「青」など、いろんな意味合いが連想できる言葉だ。「手をつないで走っていけるはずだ」という表現からは、「僕」大人の自分「君」子どもの自分が一体となっている感覚を感じ、お互いを励まし合いながら、疾走感を持って前に進んでいく様子が目に浮かんだ。「君と未来を盗み描く 捻りのないストーリーを」という歌詞は、Bメロの「衒いも外連も消えてしまうくらいに」という表現と重なるように思えた。奇を衒うのではなく、「捻りのないストーリーを」と言っている。それは捻りがないからつまらない、取るに足らないと言った意味ではなく、うそやはったりやごまかしを一切なくした、普遍的で純粋な美しい部分を切り取りたい、表現したいといった米津が常々語っている思想部分の現れなのかなと感じた。

僕の中で歌っている「誰か」とは?内から湧き上がる思い・情熱…

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「カサブタだらけ荒くれた日々が
 削り削られ擦り切れた今が
 君の言葉で蘇る
 鮮やかにも 現れていく
 蛹のままで眠る魂を
 食べかけのまま捨てたあの夢を
 もう一度取り戻せ

 もう一度
 遠くへ行け遠くへ行けと
 僕の中で誰かが歌う
 どうしようもないほど熱烈に
 いつだって目を腫らした君が二度と
 悲しまないように笑える
 そんなヒーローになるための歌
 さらば掲げろピースサイン
 転がっていくストーリーを

 君と未来を盗み描く 捻りのないストーリーを」(Cメロ、ラストサビ)


Cメロのメロディも歌詞も、非常に米津玄師っぽい感じが出ていると感じた。大人になって荒んだ毎日を過ごしていた「僕」だったが、「君」の純粋な「言葉」「鮮やかに」「蘇」ったようだ。「蛹のままで眠る魂」「食べかけのまま捨てたあの夢」も、いずれも純粋さや汚れのない気持ちの象徴のように感じる。大人になるにつれて、誰しもが忘れかけてしまった青くさい気持ち、勇気、正義…といったものを、「もう一度取り戻せ」自分にエールを送っているようにも見える。

ラストサビは1番サビ繰り返し。ここで気になるのが「遠くへ行け遠くへ行けと 僕の中で誰かが歌う」という歌詞。ここでいう「誰か」とは誰なのか?もしそれが国語の読解書き抜き問題だとしたら、「蛹のままで眠る魂」かなと思う(笑)。「遠くへ行け遠くへ行けと」「どうしようもないほど熱烈に」「歌う」のは、「僕」にも「君」にも共通する核の部分である「魂」なのだろうなと感じたのだ。どんなに荒んだ毎日を過ごしていても、「魂」から湧き上がる「熱烈」な思いは無視することができない。自分が救われていない状態で誰かの助けになることなどできないもので、まずは自分が自分のヒーローであるような生き方をしなければならないのだ。この曲は、過去の自分を励ますことができるような今を生きるということ、そして過去の自分の純粋さを取り戻し、嘘偽りない自分自身の正義に向かって生きようという、全世代に向けたまっすぐな応援ソングなのだと感じた。


「ピースサイン」
歌手名・作詞・作曲:米津玄師

歌詞サイトはこちら

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ライブ感想@ゼップ東京2016年12月「はうる」ツアー最終日


シンリズムの2ndアルバム「Have Fun」収録の「彼女のカメラ」を聴いて。

Have Fun
シンリズム
FIATH MUSIC ENTERTAINMENT INC.
2017-05-10


以前にも取り上げたことのある大注目の若手ミュージシャンの一人であるシンリズムの2ndアルバム「Have Fun」をじっくりと聴いている。今回はその中から、アナログ盤も発売された「彼女のカメラ」を取り上げてみようと思う。シンリズムの何とも言えないかわいらしい歌詞と、擦れていない純粋な雰囲気を楽しめる一曲。MVは星野源の特典DVD映像などでもおなじみの映像ディレクター山岸聖太氏によるもので、独特のゆるさと明るさが曲調とマッチしていて面白い作品だ。なんだかほのぼの・のんびりとした気持ちになる。

※シンリズムって誰?という方はこちらの記事をどうぞ。
【Galileo Galilei】【シンリズム】高校生デビューを飾った早熟の天才2組


彼女のカメラ / ラジオネームが読まれたら [Analog]
シンリズム
FAITH MUSIC ENTERTAINMENT INC.
2016-11-03


↑こちらはアナログ盤。

●「彼女のカメラ」(2017年5月10日発売アルバム「Have Fun」収録曲)



MVは歌詞の意味合いに沿ったストーリー調となっており、二組の男女と、我関せずとばかりに楽しそうに歌うシンリズム本人が登場する。特に最初の男性がとてもいい味を出していて、彼女をずっと見つめるシーンの表情など「最高!」と思った。ラストの辺りで謎のゆる~いダンスシーンがあり、これで完成で良いんだ(笑)と思うような完成度の低さが面白いので最後までご覧いただきたい。観ているとなんとなくほろりとするような、心温まる面白系MVである。

「君が「いいね」って言う物
 僕にはただのガラクタに見えるよ
 変な状況に笑っちゃうね

 それは君だけのスクリーン
 誰にも見られない
 瞳の中じゃあ

 Ah…二人の目に写るそれぞれの絵は
 決して同じじゃないけど
 ちょっとでも気づけるなら
 覗いてみたいんだ
 レンズを通したら見えるのかな?」(1番Aメロ、Bメロ、サビ)

1番の歌詞はそのまんまMVのストーリーに反映されており、MVで出てくる謎のお面が例の「ガラクタ」だ。彼女は男性にお面をつけさせて写真を撮っているのだが、彼には何が面白いのか全く理解できないといった様子。彼がお面を捨ててしまったのを彼女に見つかってしまい、そこからストーリーが展開していく(と解釈した)。セリフはないのに、役者さんの表情から思いが読み取れるようで面白いのだ。

歌詞はとりわけ難しくもないので説明不要だ。MVがこの状況をすべて説明してくれている。
カップルで普段は仲良く付き合っていても、時に価値観や笑いのツボなどが違うなぁと感じることもある。同じものを見ても面白いと思ったり、つまらないと思ったりして、それが喧嘩やすれ違いの原因となることもある。このMVにおいても、例の一件から彼女はへそをまげてしまい、見せしめのように別の男を彼の働く喫茶店に連れてきてはしゃいでいる。
そういった価値観やものの見方の違いを、この曲では「カメラ」という比喩を用いて表現しており、MVでは実際にカメラと現像した写真の映像が使われている。その写真の映像が非常に生々しく、写真の距離感やブレ感なども面白い。そしてどこかホロっとする要素もある。アナログ感が良い味を出している。

君が見ている世界を覗いてみたい…好きゆえに。

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「僕が「いいね」って言う物
 君はいつでもいい加減に見るよ
 髪をいじる、「無関心」のメッセージかい?

 それは僕だけのスクリーン
 たとえ君だろうと見られない
 そんな態度じゃあ

 Ah…二人の目に写るそれぞれの絵は
 決して同じじゃないけど
 ちょっとでも気づけるなら
 覗いて欲しいんだ
 君の知らない何か見えるだろ?

 Ah…二人の目に写るそれぞれの絵は
 時に乗って進んでゆく
 (それまでに)
 ほんのちょっとでも気づけるなら
 覗いてみたいんだ
 レンズを通したら見えるのかな?」(2番Aメロ、Bメロ、サビ)


2番では反対に男性の興味のあるものに対して「無関心」な彼女を描写している。「僕」の方は「君」のものの見方について、「ちょっとでも気づけるなら 覗いてみたいんだ」(1番サビ)と言っており、関心を持っていることが伺える。一方「君」の方は、「僕」の見ている世界にはあまり興味がないようで、もう少し「僕」にも関心を持ってよ、と少々不満げだ。サビでは「ちょっとでも気づけるなら 覗いて欲しいんだ 君の知らない何か見えるだろ?」と語りかけている。どちらかというと女が強くて、男は尻に敷かれている感じのイメージだ(笑)。そのイメージは見事にMVにも反映されている。
シンリズムの曲の歌詞は本当にほのぼのしていてかわいらしく、昨今の若者にはない純朴な雰囲気がとても魅力的。MVに登場する彼もナチュラルでゆる~い感じがとても好感が持てる。冒頭で紹介したアルバム「Have Fun」にはその他にも良曲が多数収録されているので、折を見て取り上げていけたらと思う。

「彼女のカメラ」
歌手名・作詞・作曲:シンリズム

歌詞サイトはこちら

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