スピタメウォッチング

スピリチュアル好きによるエンタメウォッチング

星野源の「アイデア」を聴いて。続き。



まずは、星野源本人が語るところについてまとめた、「アイデア」歌詞の意味&解釈(その1)をご覧いただければと思う。当記事(その2)では、筆者の考えや考察についてまとめてみたいと思う。

この曲については様々な媒体で語られており、説明的でとてもわかりやすいと感じた。過去のインタビューなど多数読んで&聞いてきて思うのが、人からどう思われるかというのを非常に気にしているのだな、ということだった。今回のアレンジにしても、”ただ奇抜なことをしていると思われるのは嫌で”とか、”こうすれば音楽性が変わる必然性が生まれる”と言った発言があり(ラジオでの発言)、曲全体の整合性をかなり気にしていることが伺える。また、過去の楽曲「ここにいないあなたへ」でも、”ドラえもんのタイムマシンに乗った設定にすれば、過去のアレンジをしても良いと思った”といった発言をしていた。人気上昇に伴い注目度が上がり、より説明を求められる機会も増えたためか、”なんとなくこうしたかった”といったことではなく、理由づけや意味づけをしっかり考えているのだなという印象を受けることが増えた。

※参考記事
「ここにいないあなたへ」歌詞の意味&解釈

また、筆者がこの曲を一番最初に聴いた時(発売日:2018年8月20日0時)に感じたことは、”相当抑圧されたストレスが溜まってるんだろうな…”ということだった。聴いていてストレスが発散されるような解放感があると感じたのと、驚きや刺激が強く、殻を破るような斬新な感覚があった。人間、ストレスが溜まるほど刺激が欲しくなるもので、激しいライブ、ジェットコースター、激辛の食べ物などは身近なストレス解消コンテンツとして消費されているように思う。
2017年は精神的にも体調も悪く辛い1年だったと語られていたが、何が辛いかということはパブリックに言えるものではないだろう。きっとファンからは伺い知れないような嫌なことがたくさんあるのだ。2018年8月24日に放送されたNHK情報番組『あさイチ』でのトークコーナーでも、子どもに”世の中で一番怖いものは何か”と聞かれて、”人間。”と答えていた(笑)。闇が深い…。これからも嫌なことはたくさんあるだろうが、抑圧やストレスを制作意欲に昇華して、素晴らしい作品を世に送り出していただければ本当に幸いだ。心身の健康を壊さぬようにだけはくれぐれも気をつけてほしい…。


※ 昔から”アイデア”マンだった星野源の様子が伺える本
参考 『衣・食・住・音 音楽仕事を続けて生きるには』 角張渉


星野源がアミューズに移籍する前に所属していた音楽関係の事務所、カクバリズムの代表角張渉氏のインタビュー本。カクバリズム時代の星野源のエピソードも多数なのだが、中でも印象的だったのが、”源くんからの提案が次から次へと出てきて…”といった言葉が何度も出てくることだった。角張氏もその提案をなんとか形にしようと奮闘してきたとのこと。その後大手の事務所に移籍し、お金も人手もかけられるようになり、アイデアマン星野源の無限のアイデアを形にしやすくなる環境がより整ったと言えると思う。今も昔も、星野源楽しそうなアイデアは周囲の人を巻き込み、自然と応援され、形になってきたのだなと感じる。既成概念を打ち破り、毎回人々を驚かせ楽しませてくれる星野源の活躍は、カクバリズムという手作りレーベルでの土台があってのものなのかもしれないなぁと思った。

●「アイデア」(2018年8月20日発売配信限定シングル)

 

MVについては(その1)の記事に本人による解説をまとめたため、今回の記事ではそれプラスアルファで感じた独自解釈を書いてみたいと思う。本人によると、MVに映り込んでいるものはすべて計算済みで、無駄なものはないとのこと。よーく見ると、映り込む掃除道具や脚立などに至るまで、今回のテーマカラー(赤・黄色・ピンク・青)のどれかの色を使っていたりと、小道具の色などにも工夫が見られる。
今回のMVでは”色”というのが大きなテーマになっているように思う。1番はこれまでの作品のカラフルな世界、2番は暗闇で孤独ながらも、孤独な個人の光(豆電球)がダンスフロアを彩るという演出、その後は白黒のお葬式、真っ白なキャンバスへ…と続く。筆者が気になったのは何度か映り込むセロハンのカラーフィルム。なくても良いもののはずなのに、かなり強調的に映り込んでいる。「フィルム」という作品があるから、それにかけているのか?とも思ったが、何か意図的なものなのだろうか。カラフルなパブリックの世界で、世間のたくさんの人からそれぞれのフィルタを通して見られている視線(枠組みとカラフルな色)という意味かなと思ったりもした。ある種の”色眼鏡”というか…。細かいところも想像しながら見ると面白いかもしれない。

※参考記事
「フィルム」歌詞の意味&解釈

「おはよう 世の中
 夢を連れて繰り返した
 湯気には生活のメロディ

 鶏の歌声も
 線路 風の話し声も
 すべてはモノラルのメロディ

 涙零れる音は
 咲いた花が弾く雨音
 哀しみに 青空を

 つづく日々の道の先を
 塞ぐ影にアイデアを
 雨の音で歌を歌おう
 すべて越えて響け

 つづく日々を奏でる人へ
 すべて越えて届け」(1番Aメロ、Bメロ、サビ)


朝ドラ主題歌の発明とも言われている「おはよう 世の中」という歌詞(笑)。「湯気には 生活のメロディ」という部分は、本人の意図した通り、星野源”名刺”のような歌詞だなと感じる。気になったのは「鶏の歌声も」という歌詞。普通トリと言ったら”鳥”という字を使うのではないか。「鶏」はニワトリのことなので、家畜や飼っている「鶏」を想定した歌詞だろう。つまり、より日常や「生活」に密着した「鶏」ということなのではないだろうか。「モノラルのメロディ」の部分は、朝ドラの主人公鈴愛の片耳が聞こえないという設定に基づくものらしい。

「涙零れる音は 咲いた花が弾く雨音 悲しみに 青空を」の部分はとても詩的で、「涙」「雨音」「悲しみ」と言った一見ネガティブな単語を、「咲いた花が弾く」「青空」という単語でポジティブに変えるような、そんな繊細なニュアンスを感じる。空の青を基調とした朝ドラのオープニング映像にも非常にマッチする歌詞だ。

サビの「塞ぐ」という単語は、「道を」、ということもそうだし、朝ドラの主人公の”片耳が聞こえない”という設定にも関連している。鈴愛は片耳が聞こえないというハンデを負いながらも、持ち前の明るさと豊富な「アイデア」で人生を切り拓いていくという女性。一見ネガティブに見えることがあっても、「アイデア」「すべて越え」られるという、非常にポジティブな内容となっている。

笑顔で世の中に”F○CK!”…花はそんなこと思ってないと思うが(笑)

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「おはよう 真夜中
 虚しさとのダンスフロアだ
 笑顔の裏側の景色

 独りで泣く声も
 喉の下の叫び声も
 すべては笑われる景色

 生きてただ生きていて
 踏まれ潰れた花のように
 にこやかに 中指を

 つづく日々の道の先を
 塞ぐ影にアイデアを
 雨の音で歌を歌おう
 すべて越えて響け」(2番Aメロ、Bメロ、サビ)


2番で一気に曲調が変わり、暗闇の世界へ。いつもにこにこ「笑顔」の自分とはまた違う、「笑顔の裏側の景色」がある。「真夜中」「ダンス」のお相手は「虚しさ」。一晩中、顔を向き合って踊り明かす。「独りで泣く」時もある、言いたいことを言えずに「喉の下」「叫び声」をあげることもある。本当に本当に辛くても、弱音は吐けない。自虐的に「笑」いに変えなければならない時もある。

有名になると、「生きてただ生きてい」るだけで、あることないこと”色眼鏡”で見られてしまったり、記事を書かれたり批判されたり、嫌なこともたくさんあるのだろう。そんな時は、罪はないのに傷つけられてしまった道端に咲く「花」に親しみを感じる。
”こんな世の中にF○CK!!!!!”、と思う。しかし、戦わない。表立って怒りを表現したら負けだ。「踏まれ」ても「潰」されても、「花」のように「にこやかに」…それが星野源なりの美学なのだろう。素晴らしい作品を世に届けること。それこそが星野源”世の中を見返す!変えてやる!”という反骨精神の表現なのかもしれない。

一人一人が奏でる人生というメロディ。あなたはどんな音色を奏でますか?

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「闇の中から歌が聞こえた
 あなたの胸から
 刻む鼓動は一つの歌だ
 胸に手を置けば
 そこで鳴ってる

 つづく日々の道の先を
 塞ぐ影にアイデアを
 雨の中で君と歌おう
 音が止まる日まで

 つづく道の先を
 塞ぐ影にアイデアを
 雨の音で歌を歌おう
 すべて越えて響け

 つづく日々を奏でる人へ
 すべて越えて届け」(Cメロ、ラストサビ)


Cメロ(大サビ)は星野源の原点とも言える弾き語り。この部分の歌詞がこの曲の中で一番の謎というか、抽象的で意味がわかりづらい部分だと思う。「闇の中」とあるので、おそらくここでのシーンは暗闇に一人でいるという状況だと思う。静かな暗闇で、「胸」「手」を当てると聞こえてくる「鼓動」。その「鼓動」「一つの歌だ」と言っている。”トクトクトク・・・”という心臓の音は、生きているという証であり、それは「一つの歌」のように美しい旋律を奏でる「つづく日々を奏でる」心臓の「鼓動」。”音楽”は楽器やら理論やらという特別なものではなく、一人一人の人生そのものが「歌」であり「メロディ」であるということだ。

次のサビでは歌詞が微妙に変わっていて、「雨の中で君と歌おう 音が止まる日まで」となっている。「音が止まる」というのは心臓の「鼓動」が、という意味なので、”死ぬまで”ということだろう。「アイデア」次第では、「雨音」も心臓の「鼓動」もメロディであり「歌」になる。”人生=歌”というコンセプトは、この曲が星野源の名刺のような、人生を表したような曲であるということにもつながっているし、彼の人生がいつも「歌」「音」と共にあるということも表現しているのではないだろうか。

人生いろいろ。オーケストラのようににぎやかなときも、一人孤独なときも、2人でデュエットすることも、ポップスも、ジャズも、演歌も…本当にいろいろある。誰とどんな音楽を「奏でる」かは、その人次第だが、いつでも根底にはその人の心臓の「鼓動」が脈打って、リズムを刻んでいる。星野源が「つづく日々を奏でる」すべての人に贈る「アイデア」は、人々の人生にどのような”アイデア”をもたらしていくのだろうか。


「アイデア」
歌手名・作詞・作曲:星野源

歌詞サイトはこちら 

※「ドラえもん」収録曲もどうぞ
「ドラえもん」歌詞の意味&解釈
「ここにいないあなたへ」歌詞の意味&解釈
「The Shower」歌詞の意味&解釈

※すべての記事一覧はこちら
※星野源関連記事
「Family Song」歌詞の意味&解釈
「肌」歌詞の意味&解釈
「プリン」歌詞の意味&解釈
「恋」歌詞の意味&解釈
「Drinking Dance」歌詞の意味&解釈
「Continues」歌詞の意味&解釈
「雨音(House ver.)」歌詞の意味&解釈
「フィルム」歌詞の意味&解釈
「化物」歌詞の意味&解釈
「時よ」歌詞の意味&解釈
星野源のオールナイトニッポンおすすめ記事
「ステップ」歌詞の意味&解釈
「日常」歌詞の意味&解釈
「子供」歌詞の意味&解釈
「湯気」歌詞の意味&解釈
「キッチン」歌詞の意味&解釈

※その他の星野源の作品のレビュー
「いのちの車窓から」感想&レビュー
「YELLOW MAGAZINE」感想&レビュー
「MUSIC VIDEO TOUR 2010-2017」感想&レビュー
「星野源 音楽の話をしよう」感想&レビュー

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星野源の配信限定シングル「アイデア」を聴いて。



今回は2018年前期連続テレビ小説『半分、青い』の主題歌にも起用されている、星野源「アイデア」を取り上げてみたい。この曲は星野源としては初めての配信限定リリース作品であるが、イヤーブック『YELLOW MAGAZINE』の購入特典である実質ファンクラブ『YELLOW PASS』内で、会員のみ購入できるCD-R(中身なし)&ブックレットも発売されており、既成概念にとらわれない星野源”アイデア”が詰まった作品となっている。

この曲については、雑誌、TV、ラジオなどで語られている内容が非常に多く、それらをまとめるだけで1記事になってしまう。まずは、本人が語るところの「アイデア」という曲について書いてみたいと思う。

●曲自体のコンセプト

(1)星野源の名刺となるような楽曲
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この曲は”これが星野源です”というような、星野源名刺代わりとなるような作品にしたいという思いがあって作られた曲とのこと。2018年9月4日放送のTV番組『うたコン』(NHK)において、恒例となっている挨拶、”こんばんは、星野源でーす!”を言わなかったことを、後日ラジオでリスナーから指摘されていた。この”名刺代わり”というコンセプトは次々と展開される様々な音楽性やMVの工夫にも織り込まれている。


(2)これまでのアイデアの供養と再生
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この曲は、”これまでの自分がやってきたアイデアの供養と再生”というテーマもあるとラジオで語られていた。そのことが強く表現されているのがMVだ。2番サビ終わりの間奏で、ダンサーが喪服で登場、また、照明によって背景が白黒に変わり、お葬式感を演出しているとのこと。そして背景が白に変わり、これからのまっさらな未来へと続いていく、ということらしい。


(3)制作過程について
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この曲は朝ドラのために制作された楽曲だが、細かい尺の規定があるなど、制限が多かったらしい。『半分、青い』の台本やおおまかなあらすじを踏まえた上で自分の歴史を織り込み、他の朝ドラ曲のようなゆったりとしたテンポではつまらないので、ややアップテンポの曲を作ろうと考えたとのこと。TVバージョンを作ったあと、「ドラえもん」の制作を経て、2番を含めた全体の制作に取り掛かったそうだ。2017年は体調的にも精神的にも辛かったようで、そんな時期に作られた楽曲ということにも注意しておきたい。


●歌詞や構成、MV

(1)これまでの自らの作品のタイトルや歌詞をちりばめる
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”名刺のような曲にしたい”というコンセプトということもあり、過去の自分の楽曲のタイトルや歌詞をちりばめた歌詞になっているとのこと。
主だったものは
「おはよう」「Crazy Crazy」
「湯気」「湯気」
「生活」「生活」SAKEROCK「そして生活はつづく」エッセイ)
「つづく」「Continues」
「越えて」「恋」
など。

※参考記事
「湯気」歌詞の意味&解釈
「Continues」歌詞の意味&解釈
「恋」歌詞の意味&解釈


(2)1番は陽・パブリック・これまでの自分、2番は陰・プライベート・これからの自分、
   大サビ(Cメロ)の弾き語りは原点



1番  陽・パブリック・これまでの自分(の音楽)
2番  陰・プライベート・これからの自分(がやりたい音楽)
大サビ 弾き語り=自分の原点


大きくこのような構成になっているとのこと。この構成についてはとてもわかりやすく、なるほど、と非常に納得のいくものだと感じた。多数の音楽性を入れることにより、この曲にかかる熱量も相当なものになったそうで、1曲で2.5~3曲作ったような感じがしているらしい。数多くのジャンルの音楽を熟知し、これまでにもたくさんの楽曲を制作してきた星野源だからこその盛り沢山な内容である。


(3)趣向を凝らしたMVに込めた思い
アイデア画像(2)

MVについては、後述するラジオでの発言がそのまま参考になる。移り変わる背景の色がこれまでに出したアルバムやシングルのテーマカラーになっているとのこと。間奏でダンサーが出てくる部分の振り付けは、最近親交が深い三浦大知氏によるものだそうで、随所にお葬式を連想させるような振付が入っているらしい。 細かいところまでこだわって作られているそうなので、何度観ても新たな発見がありそうだ。


※参考 雑誌『MUSICA 2018年9月号』


いつも通り細かーい字で書かれたインタビュー。ややハイテンションで饒舌に話している様子が伝わってくる。


※参考 ラジオ『星野源のオールナイトニッポン』 筆者要約文
↓ここから長いので読みたい人だけ…。
・2018年8月21日放送分
<制作過程やコンセプトについて>
誰しもが知る朝ドラ、『半分、青い』のオファーを頂いて、是非やらせてくださいということで『コウノドリ』の撮影をしている2017年の11月頃取りかかりました。「アイデア」(テレビサイズ)(11月)→「ドラえもん」(年末)→「アイデア」を1から作り直すという順番。フルを作る時に、2番を増やすということもできるけれど、生楽器だと音が変わってしまうので、1からまた作り始めることにしました。テレビサイズを最初に作ろうとした時のコンセプトとして、日本一有名なドラマ枠の主題歌なので、星野源ってイントロでわかる、名刺みたいな曲にしたいと思って。イントロ、楽曲全体、歌詞に関しても、僕が「YELLOW DANCER」以降作ってきた音楽を感じるようにと思って作りました。歌詞も、SAKEROCKを含めた僕がこれまで作ってきた曲のタイトル歌詞の一部だったりをちりばめて(「生活」「湯気」「つづく=Continues」など)。『半分、青い』というドラマのテーマや鈴愛ちゃんというキャラクターとリンクはさせつつも、自分の歴史を入れたような曲にしたいと思いました。あと、朝だから「おはよう」から始めたいなと。「おはよう」という言葉も「Crazy Crazy」の冒頭に使われているし、朝ドラの一発目の音楽という意味でもあって。

<朝ドラの主題歌>
普通のテレビドラマのエンドとかって(尺が)決まってないんですよ。曲に合わせてエンディングを作ってくれているので、幅がないんです。朝ドラは規定があったので、そこにAメロ、Bメロ、サビと入れると、だいたい同じテンポになるんですよ。だから、他の方が作った曲もだいたい同じテンポになってしまうんですよね。それはやりたくなかったので、イントロ、アウトロ、Aメロ、Bメロ、サビとやろうと思うと、あのくらい速いテンポになってしまうと。助かったのは、作品そのものが朝ドラの概念を壊したり、再構築したりするアバンギャルドな内容だったので、自分も勇気を持ってやらせてもらおうということであの速さになりました。

<アニソンみたいな曲>
朝からアニソンくらいのキャッチーさをポンとやろうと。アニメってだいたいサビで登場人物が走るんだけど、その感じをやりたいと思って。実際スローで鈴愛ちゃん走ってたから、何か伝わったのかなと。

<今までの自分の音楽を彷彿とさせるもの>
僕が好きで聴いていたビートミュージック。通常はエレクトリックな機材を使って作るような楽曲、ハイハットが速く鳴っているビート、そういうのを生演奏でできないかというのも最初の発想でありました。速いビートの中でJポップやアニソン、これまでの自分の音楽の集合体をやろうと思って、それがテレビサイズの部分になりました。

<間をあけて作り直した話>
「ドラえもん」をリリースして、ものすごく遊んで、「ドラえもん」終わってから、「アイデア」の作業に戻ろうと思ったときに、すごく違うなぁと、ワクワクしないなと思いました。

2017年は実は落ち込んでいて、体調も悪く、辛い1年でした。”無理しない”というテーマを掲げていたけど、これはいかんと。もう能動的になる!と決めてから「ドラえもん」を作り、その作業がすごく楽しかったんですよね。それを経て、2017年末に作った「アイデア」(テレビサイズ)を作り直そうと思ったときに、ものすごく過去のものを見ている感じがして。実際にこれまでの自分を詰め込んでるから過去なんですよね。今やりたいことをやろうと思ったんだけど、テレビで流れてるものを変えるのは簡単だし、逃げだと思ったので、今ある部分はそのままにして、今もっと未来に作りたい音楽を作れないかと死ぬほど考えて、今やりたいと思っている音を2番からやるのはどうかと思って。
1番はこれまでの自分、2番はこれからの自分というコンセプトにしようと思い、2番をまったく違うアレンジにしました。ビートはSTUTSくんにお願いし、アナログシンセも本澤さんという人と一緒に作っていって2番ができて。その他ギターの亮ちゃん(長岡亮介)、ほぼ全く同じストリングスという仕様にしました。

<1番と2番の意味づけ>
ただ音楽性を急に変えて、奇抜なことをしたいだけと思われるのが嫌で、そういうアレンジに踏み切ることができなかったんですよね。1番の歌詞を見たときに、これはパブリックな僕、前向きなことをお届けしている自分の感じがするなと思って。それは僕の陽の部分というか、僕のやりたかったことであり充実した場所だと思うんですけど。そこでの笑顔は嘘じゃなくて本当の笑顔なんだけど、同時に陰の部分が膨れ上がっていったのが2017年だったんですよ。家の中でも暗黒なものが膨れ上がっていくことがあって。1番は陽、2番は陰ということにすれば、音が変わる必然性が生まれると思いました。2017年好きだったビートミュージックというのは、エレクトリックな音で、内省的なんだけどすごくポップで孤独感があって。孤独感がある音楽を世界中が聞いているみたいな。個人的なものをみんなが楽しんでいる。そういうサウンドに自分が励まされていたんです。孤独感に呼応して癒されていたというか。そういうサウンドを使って自分の音楽をやりたいのだということになりました。

<大サビ(弾き語り)以降>
そのままバンド演奏に戻るとなんか普通なので、じゃあ弾き語りしようということになりました。それは僕の原点であって、一人で家で作っていた時のあの感じをやったら、僕のいろんな音楽性を踏まえてるんだけど壊して、それを再構築して全部未来に持っていくという曲ができるんじゃないかと思って。そのあともっとテンションの高いバンドがきて、改めて新鮮な気持ちで1番を演奏するという、未来に一緒に向かっていこうという音楽ができるんじゃないかと思って作りました。最後の最後でドラでバーン!爆発落ちみたいなのがやってみたくて。それができるんじゃないかなと思って。そしたらできました。

<エキゾチカを一歩進めて>
僕の中では思い入れが深くて、いろんな気持ちがこもった曲。参加してくれたミュージシャン、スタッフ最高。もっと大元のコンセプトがもう1つあって、「恋」「Continues」でやったジャンルをもう一歩進めたいなと思って。エキゾチカ(細野晴臣、マーティン・デニーなど)というジャンルをポップスにできないかと。そういうふうに作ったのが「恋」「Continues」だったんですけど。エキゾを日本のど真ん中でやるという、高校生の時からやりたかったアイデア。

・2018年9月4日放送分
<MVについて>
関(和亮)さんに監督してもらって、吉田ユニちゃんがアートディレクションをやってくれました。今までスタジオの中で作っていくMVが多かったので、広い空間に行きたいなぁと思って、今回はメッセ的な所を3日間借り切って、2日半準備、数時間で撮影しました。僕MV大好きなので、アイデアを搾り出すのに悩むんですよね。そんな中でさんが、いろんな場所に移動しながら場面がどんどん変わっていくような、ワンカメ(長回し)の企画を出してくれたんですけど、いわゆるMVってワンカメ・ワンテイクのものが海外を含めてあまりに多いんですよ。だからこれはやりたくないんです、と言って、うーん…という時間を過ごしていました。締め切りが迫る中で、”あーっ”と1個思いついて。ワンカメって超いっぱいあるけど、ワンテイク多カメってなくない?と思って。カメラが全部据え置きで、僕が自分でカット割りをしていくという、そういうのは観たことないなぁと思って、提案したらそれいいねということで動き始めました。僕が歩きながらカット割りしていくんですけど、その位置関係をまず作ってくれたのが(吉田)ユニちゃんで。一番最初のカットが「YELLOW DANCER」の赤の背景から始まって、「恋」の黄色バックに行き、ピンクバックに行き、青に行き「ドラえもん」という、その流れも作ってくれて。

なぜそうなったかというと…。今回MVのテーマの一つに、"今までの僕のアイデアの供養そして新たな再生”というものがあり、だからみんな喪服なんです。「YELLOW DANCER」以降作ってきた曲の象徴の色を経て、2番はこれから僕がやりたいサウンドなんですけど、ここでまた新しい世界、陰の世界に入っていくと。その後のサビでは、斜めの赤白ストライプで、歌い終わったら喪服を着たダンサーのみんなが出てくるんですけど、そこで照明が色素を消してモノトーンにする照明に変わり、そうするとお葬式の鯨幕になるんですよ。ここではっきりお葬式であるということがわかる演出になってます。その後の弾き語りは売った楽曲と差別化をするために、弾き語りをするまでのストロークをちゃんと作りました。そこから、まっさらなこれからの未来という意味も含めて白い背景の所に行くという。今まで通ったところを走り抜けて、新しい自分になるんだけど、最後は全部連れてくぞというイメージでドラでドカーンと。そういうMVになりました。


●「アイデア」(2018年8月20日発売配信限定シングル)




長くなってしまったので、歌詞の考察などについては次回の(その2)の記事に書いていこうと思う。

「アイデア」歌詞の意味&解釈(その2)

「アイデア」
歌手名・作詞・作曲:星野源

歌詞サイトはこちら


※「ドラえもん」収録曲もどうぞ
「ドラえもん」歌詞の意味&解釈
「ここにいないあなたへ」歌詞の意味&解釈
「The Shower」歌詞の意味&解釈

※すべての記事一覧はこちら
※星野源関連記事
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「フィルム」歌詞の意味&解釈
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星野源、話題にならないらしい「キッチン」を聴いて。

ばかのうた
星野源
ビクターエンタテインメント
2010-06-23


今回は星野源の1stアルバム「ばかのうた」に収録されている「キッチン」を取り上げてみたい。ラジオ『星野源のオールナイトニッポン』にて、星野源自身が”話題にならない曲…”と言っていたのを受け、当ブログでしっかりと話題にしてみたいと思う(笑)。本人も言っていた通り、ライブでやっていたのを聴いた覚えはないし、割と地味な曲なのでファンの間でも人気のある曲というわけではないと思う。この曲に限らず、初期の「ばかのうた」収録曲は、SAKEROCK時代のテイストも強く残る素朴な味わいで、しみじみと、じわじわ心に響く曲が多いと感じる。MVやダンスがあるわけでもなく、地味で話題にならないかもしれないが(笑)、今では書けない、当時の星野源ならではのセンスと感性が光る、実直で素朴な名曲だと思う。

※参考 ラジオ『星野源のオールナイトニッポン』 筆者要約文
・2018年9月11日放送分
ライブでも全然やったことのない曲なんですが…。これを作った8年前…もう8年前か。夏から秋にかけて涼しくなってきて、こう、寂しいというか、胃の辺りに穴があいているようなあの感じを曲に込められたのではないかと思っておりましたが…誰も話題にしてくれないという記憶がとても強いこの曲を…。
(曲終わり)これ失恋の歌なんですよ。失恋というか、お別れをした後の歌なんです。それまでの人生の中で付き合っていた人と別れた時のことを思いながら…まだ家の中にその人の雰囲気が若干残っている、その人が作っていったご飯の感じがちょっと残っているという、そういう感じを思いながら、切ない思い出を持っているんだけど、きっとこれも忘れていくんだろうなと、そういう歌を作ろうと思って作ったのが「キッチン」という歌です。


●「キッチン」(2010年6月23日発売アルバム「ばかのうた」収録曲)

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ラジオで本人が語っていた通り、この曲は夏の終わりから秋の始まり頃の曲で、この季節独特の切なさと、大切な人との別れという切なさを重ねた、ダブルで切ない楽曲である。直接的に相手への思いを伝えるでもなく、”別れ”や”さよなら”といった直接的な表現を用いるでもなく、部屋の中のキッチンの描写だけで切なさを描き出す歌詞の秀逸さが光る作品だと思う。しかも、今感じている切なさが刹那的なもので、”いつかはこの切なさも忘れてしまうのだ”という客観的なクールさも持ち合わせているところが星野源らしい。感受性豊かだけれども、ひどく現実的というか、そういうところがあると思う。

「ふと気づくと キッチンで寝ていた
 昨日の料理 捨てずに眺めていた
 秋の風が 硝子を叩いた
 胸の穴が ポッカリと風を通した
 
 昨夜を境に 時が止まったかのように
 同じ言葉が 繰り返し部屋の中 巡る
 おかずの匂いだけを残して」(1番Aメロ、サビ)


この歌詞には、”僕”や”あなた”すらも出てこない。それでもはっきりと2人の存在が目に浮かぶような、何なら、ショートドラマの脚本ひとつでも書けそうな、そんな物語性がある。

「ふと気づくと キッチンで寝ていた」ということは、普通はない。酒でも飲み過ぎたか、魂が抜けるようなショックな出来事があって、時間を忘れてぼーっとしてしまった時くらいなものだろう。事件が起きたのはついさきほど、「昨夜」の出来事で、「昨日の料理 捨てずに眺めていた」ら、もう明け方になっていた。この間まで暑い暑いと寝苦しい夜を過ごしていたのに、「秋の風が」「胸の穴」を通り抜ける季節となっていたらしい。

大切な人との別れのあとは、ついつい”あの時こう言えていたら…”、”あの時のあの態度に気づいていたら…”などと、後悔したり過去に戻ってやり直せたらいいのに、といった思いが湧き上がってくるもので、相手に言われた「同じ言葉が 繰り返し部屋の中 巡る」ような状況というのは容易に想像できる。それはつい数時間前の出来事で、いつも通り仲良く夕飯を食べていた(と自分では思っていた)時の、あの「おかずの匂い」は、今も生々しく鼻を突き刺してくる。嗅覚というのは大脳辺縁系に直接伝わるため、記憶と直結していると言われるが、「昨夜」「おかずの匂い」はこの日の出来事と密接に結びつき、同じ「おかずの匂い」を嗅ぐたびに、この日の記憶が呼び起こされるのだろう。


切ない胸の苦しみ…でも、この思いを忘れてしまうこともまた、切ない。

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「ごみの袋開けて 捨てよう
 はみ出している思い出 入りきらず
 
 いつかなにも 覚えていなくなるように
 今の気持ちも 忘れてしまうのかな きっと
 腐った体だけを残して

 いつかなにも なかったかのような顔で
 飯を食べて 幸せだなどとほざくだろう
 
 つないだ右手 深く沈めて
 笑った記憶 川に流して
 安い思い出 静かに消えて
 おかずの匂いだけを残して」(2番Aメロ、サビ、ラストサビ)


現実を直視し、とりあえず「昨日の料理」を捨てようと「ごみの袋開けて 捨てよう」と試みる。物理的に「昨日の料理」「捨て」ることはできるが、「はみ出している思い出」まで「捨て」きることはできなかった…。

次のサビでは、自分が死んでしまう時のことを想像しているようだ。肉体が「腐った体」になるように、切ない「今の気持ち」「忘れてしまうのかな」ということだろう。この部分はとても複雑で、大切な人との別れという寂しさや切なさを感じつつ、そういったいわゆる”負の感情”みたいなものを、いつかは「忘れてしまう」ことにさえも寂しさや切なさを感じているという、そういった構造があるように思う。今感じている寂しさや切なさは苦しいけれど、でも「忘れ」たくはない。生きていればあらゆる気持ちや感情を抱くのは当たり前で、悲しいから嫌だとか切ないから忘れたいとか、そういう単純なものでもなく、どんな気持ちや感情や思い出も尊いものとして大切にしようという、そんな思いを読み取った。

次の部分では、「いつか」「飯を食べ」た時に、今日のことを「忘れ」「幸せだなどとほざく」時が来ることを想像している。「ほざく」と言っていることから、そのことに対してあまりポジティブにとらえていないような印象を受ける。多くの場合、”別れて悲しい…切ない…”と感情に飲まれて、悲劇のヒロインぶって落ち込んでいても、時間が経てばケロッとしているものだ。所詮、今感じている感情はその程度のもの。”でも、人間そんなものだ”という思い、とはいえ今の切なさも苦しいので、”時が経てば忘れられるさ”と自らを励ますような、そんな思いもあるのではないかと感じた。

ラストサビはとても印象的で、リスナーの心にも「おかずの匂いだけを残して」去るような、そんな名歌詞だと思う。楽しかった「記憶」「思い出」は時が経てば色褪せていくものだが、この日の寂しさ・切なさと密接に結びついた「おかずの匂い」はずっと心に留まり続けるのだろう。

時が流れ、この日の出来事をすっかり忘れて「幸せだなどとほざく」日々がやってきた9月のある日、帰りに近くの家から「おかずの匂い」が漂ってくる。それは紛れもなく、彼女の作ったあの「おかずの匂い」だった。”あの子もお母さんになって、大切な家族に得意の料理を振る舞っているのだな…”。ショートストーリーはそんなシーンで幕を閉じる。

「キッチン」
歌手名・作詞・作曲:星野源

歌詞サイトはこちら

※配信シングル「アイデア」
「アイデア」歌詞の意味&解釈(その1)
「アイデア」歌詞の意味&解釈(その2)

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星野源の「湯気」を聴いて。

エピソード
星野源
ビクターエンタテインメント
2011-09-28


今回は星野源の2ndアルバム「エピソード」に収録されている「湯気」という曲を取り上げてみたい。「エピソード」時代の地味目な楽曲なので、知名度・人気はそれほど高くないかもしれないが、筆者はこの時代の素朴な楽曲もとても好きで(※)、今でもよく聴いている曲の一つである。2018年8月20日に発売された配信限定シングル「アイデア」の歌詞に、この「湯気」という単語が登場することもあり、改めて聴き直したところ、やはり良いなぁということで今回取り上げることにした。「SUN」「恋」以降に星野源のファンになったという方にも是非聴いてみて欲しい一曲。

(※)「エピソード」の中では、「ステップ」「湯気」かというくらい好き。
参考 「ステップ」歌詞の意味&解釈

ちなみに、シングル「くだらないの中に」のカップリングとしても収録されている。
くだらないの中に
星野源
ビクターエンタテインメント
2011-03-02



●「湯気」(2011年9月28日発売アルバム「エピソード」収録曲)

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「ばかのうた」「エピソード」の頃の楽曲は、一曲一曲が4分を超えることは少なく、非常に短い曲が多い。この曲も3分以内で終わってしまう短い楽曲だ。今も昔も、星野源の楽曲の歌詞には日常や生活を大切にしていることが伺えるものが多く、この「湯気」もその代表的な曲である。比較的スローテンポで、”ジャッ、ジャッ”という和音の音色が印象的なのんびりとした曲で、軽快で楽しげと言うよりは、ややアンニュイな雰囲気が漂っている。星野源本人も、震災後の2011年にどん底の精神状態の中作ったアルバムだ(※)と語っていて、そんなこともあってか、「雨雲」「雨」「目から水」「鼓動止まる」など、歌詞もやや悲しげで陰気な印象を与える単語が多い。

(※)参考 音楽サイト『音楽ナタリー』
「エピソード」インタビュー 参照
https://natalie.mu/music/pp/hoshinogen

「湯気の中は 日々の中
 雨雲になって
 いつの間にか 部屋の中
 しとしとと雨が降る

 なにか茹でろ 飯を食え
 雨雲使って
 するとなぜか 僕の中
 とくとくと目から水が出る

 枯れてゆくまで 息切れるまで
 鼓動止まるまで 続けこの汗
 我は行くまで 幕降りるまで
 繰り返すまで ゆらゆらゆら」(1番Aメロ、サビ)


「湯気」と聞いて、まず思い出すのは何だろうか?やはりやかんの「湯気」だろうか。炊飯器やお風呂という人もいるかもしれない。「湯気」というのは水蒸気(気体・目に見えない)が冷やされて小さな水滴(液体)となり、目に見える煙のような形で現れたものである、というのは理科で習った。では「雨雲」はどのようにできるのだろうか。水蒸気が空気中のちりやほこりにくっつき、それが上空で冷やされると水滴や氷の粒になる。それが雲である。キッチンで発生した「湯気」も上空に昇ると、ゆくゆくは「雨雲」になる可能性があるわけだ。

水蒸気は上空で冷やされると「雨雲」になる。この曲の「部屋の中」は、「湯気」「雨雲」になるほど、じめじめとした湿気に満ちていて、ひんやりとしている印象を受ける。「なにか茹でろ 飯を食え」というのは、自らに語りかける言葉だろうか?食べ物を食べる気力もなく落ち込んでいるのかもしれない。「部屋の中」に降る「雨」というのは、「僕の中」から出る「目から水」のことなのだろう。

サビも興味深い単語が続く。「枯れてゆくまで 息切れるまで 鼓動止まるまで」というのはいずれも、”死ぬまで”と言い換えることができると思う。次の「続けこの汗」では、「目から水」(=涙)ではなく、「汗」という関連ワードが出てくる。「僕」は涙だけでなく「汗」もかいているらしい。これは、”この人生を懸命に生きる”といったことの例えだと思う。突然の災害や病気、事故など、いつなんどき命を落とすかわからない。震災のショックで気を落としてしまったけれど、亡くなられた人の分まで、懸命に生きようということ。続く「繰り返すまで」という部分は、「湯気」「雨雲」に形を変えるような水の循環、繰り返しにかけた言葉なのではないかと思った。


辛いことがあって落ち込むけれど…いつでも星は照らしてくれているのだ

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「湯気の川は 天の川
 雨雲の上で
 光る星は 見えぬまま
 人知れず照らす日々がある

 晴れてゆくまで 雲切れるまで
 消えてゆくまで 続けこの声
 湯気は死ぬまで 飯炊けるまで
 繰り返すまで ゆらゆらゆら

 枯れてゆくまで 息切れるまで
 鼓動止まるまで 続けこの汗
 我は行くまで 幕降りるまで
 繰り返すまで ゆらゆらゆら」(2番Aメロ、サビ)


「湯気」を見ていたら、何かに似てるなと思いつく。そうだ、「天の川」だ。「雨雲」に隠れて目には見えないことが多いけれど、確かにいつでも「天の川」はそこに存在していて、人間が気づいていようがいまいが、「人知れず」僕たちを「照らす日々がある」のだ。辛いことばかりで落ち込みがちだけれど、そうやって天を思うことで少しの希望を感じることができる。

「晴れてゆくまで 雲切れるまで 消えてゆくまで」に省略されているのは、この悲しみや辛い気持ち(=「雨雲」)が…、ということであろう。「続けこの声」というのは、励ましの「声」というような印象を受けた。1番の「なにか茹でろ 飯を食え」のような…”へこたれるな!生きるんだ!”といった「声」であろう。もしかすると、それは「天の川」からのエールなのかもしれない。

「日々の中」
にある「湯気」「飯」「炊」き続ける限り「死ぬまで」続く、つまり「湯気」日常そのものである。しかし、いつも日常にあるなんてことない「湯気」が、突然「雨雲」に変わることがある。どちらも同じ水・水蒸気が形を変えたものなのだ。いつもの日常と突然の悲しみは、無関係の遠いところにあるのではなく、むしろ隣り合わせであり、「繰り返す」ようなものであるということだろうか。悲しみに暮れて流す涙が、懸命に生きて流す「汗」でもあるように、いつまでも落ち込んでいないで、これからの人生を懸命に生きようという、そんな歌なのではないかなと思った。

「湯気」
歌手名・作詞・作曲:星野源

歌詞サイトはこちら

※配信シングル「アイデア」
「アイデア」歌詞の意味&解釈(その1)
「アイデア」歌詞の意味&解釈(その2)

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サカナクションの「夜の東側」を聴いて。

GO TO THE FUTURE
サカナクション
ビクターエンタテインメント
2007-05-09


今回はサカナクションの1stアルバム「GO TO THE FUTURE」に収録されている「夜の東側」を取り上げてみたいと思う。この曲は、2017年5月に発表された『あなたが選ぶサカナクションの名曲』ランキングでにランクインしている人気曲だ。ランキングが発表された当時はこの曲の魅力にあまり気付いておらず(汗)、意外と人気があるんだなぁ~くらいに思っていたのだが、しみじみ聴くと良い曲だなと思うようになり、今回取り上げることにした。2018年3月28日に発売されたベストアルバム「魚図鑑」においては、”中層”の魚として位置づけられている。大衆的でもなく、ディープすぎることもなく、ミドルテンポで割と明るいテイストの楽曲。
歌詞は詩的で、あまり説明的ではないためはっきりとした意味はわからなかったのだが、前述のアルバム「魚図鑑」に記載されている山口一郎本人による考察文を読んで、イメージが湧き上がってきた。


※参考「魚図鑑」(2018年3月28日発売アルバム)より一部引用
魚図鑑 (初回生産限定盤[2CD+魚図鑑+DVD])
サカナクション
ビクターエンタテインメント
2018-03-28


「夜の東側」の考察文を読むと、デビュー前に北海道で幼なじみとよく釣りに出かけていたエピソードが書かれている。全部というわけにはいかないので、重要なところを一部引用してみる。

(略)夜中に釣りをしている二人にとって、日が昇り始める時間は待ち遠しく、ワクワクする時間であった。なぜなら、その時間を境に釣れる魚がいきなり変わるからだ。その時の気分を曲にしたのがこの曲である。この頃、「月」という言葉が山口にとってキーワードになっており、「月」を愛おしいと思う彼女のような存在や幸運のように感じていた。(略)
こちらもどうぞ→ 「魚図鑑」感想&レビュー記事

●「夜の東側」(2007年5月9日発売アルバム「GO TO THE FUTURE」収録曲)

 

この曲は紛らわしい表現があることもあって、日が暮れる夕方なのか、明け方なのかが少々わかりづらい。しかし、前述の考察文により、明らかに明け方の描写であることがわかった。もちろん、タイトルの「夜の東側」からも、明け方であることは十分に推測されるのだが(太陽は東から昇るため)。
また、「月」がどのような存在であるかというのもこの曲を感じる上で非常に重要な部分であり、考察文が大いに参考になった。一見して恋愛の歌のようにも思えるのだが、「月」の存在を意識すると、とてもユーモアにとんだ面白い歌詞であることがわかる。

「ああ 伸びた髪を僕は耳にかけたら
 テレビの灯りだけで夜を読んでた
 僕らはこれからどこへ行くのかな
 さりげなく君に話してみようかな

 ああ 輪ゴムのように僕の心が伸びた
 言えなかった言葉をするりと言えそうで
 僕らはそろそろ気づいてきたかな
 立ち止まった夜に話しておこうか

 さよならする夜の東側
 ゆっくり そう ゆっくり暮れる
 隣り合わせの明日を待つだけ」(1番Aメロ、サビ)


この曲の主人公はろくに外見にも気を遣わず、床屋や美容院に行くのもケチり、面倒くさがっているようだ。電気も消して「テレビの灯りだけで」過ごすという、孤独を好む内向的な様子もうかがえる。「僕ら」というのは、「僕」「君」のことだろうか。「僕」「君」に話したいことがあるらしい。

「髪」だけでなく「僕の心」「伸びた」らしい。「僕」「君」「言えなかった言葉」があり、いつ話そうか様子をうかがっている。何が原因かはわからないが、「僕の心」「伸び」て、ようやく言える準備が整ったと感じているらしい。「君」というのは付き合っている恋人だろうか。「僕らはこれからどこへ行くのかな」とあることから、「言えなかった言葉」二人の関係性に関する何かであることは間違いないだろう。

「さよならする夜の東側」というのはどういうことだろうか。太陽が東から昇ることを考えると、夜が一番短いのは「東側」ということになるだろう。つまりは、夜明けが来ることを表しているのだと思う。まぎらわしい単語その1が次の「ゆっくり そう ゆっくり暮れる」の部分である。普通、「暮れる」と言ったら日暮れのことかと思う。しかし、「暮れる」には”終わる”という意味もあるので、夜が”終わる”という意味なのかもしれない。「隣り合わせの明日」「明日」というのは、深夜0時ということではなく、朝から始まるという意味での「明日」(=夜明け)のことだろう。


”君”には言えなかった、○との秘密の逢瀬…!?

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「赤い空 終わる月
 夜間飛行の続きは夢の中

 さよならする夜の東側
 ゆっくり そう ゆっくり暮れる
 隣り合わせの明日を待つだけ

 頼りない僕は左に右に揺れる そうゆっくり揺れて
 月と僕との秘密を話しておきたいんだ」(Bメロ、サビ×2)


魚がぴょんぴょんと跳ねるような楽しい間奏が終わると、静けさ溢れるBメロに。Bメロで「赤い空 終わる月」とある。「赤い空」はまぎらわしい単語その2で、夕方の夕焼け空のことのようにも思える。しかし、次に「終わる月」とあることから、だんだん「月」が見えにくくなる=明け方であることがわかる。「夜間飛行」山口一郎が好きな単語の一つだと思うが、筆者のイメージでは、夜中じゅう広い海や湖などで自由に釣りをしている様子を表現したのかなと想像している。心も身体も自由に動き回れる夜中の時間帯。明け方が来てしまったので、これから寝て、「続きは夢の中」ということだろう。昼間は現実に直面して、居心地の悪い時間を過ごすことも多いが、釣りをする夜中だけは解放感にあふれている…そんな楽しさが伝わってくる。

そして面白いのが最後の部分。「月と僕との秘密を話しておきたいんだ」とある。この「月と僕との秘密」というのが1番の「言えなかった言葉」とイコールだろう。「君」「言えなかった」こと、それは「月と僕との秘密」ということらしい。ここで、考察文を見てみると、「月」”愛おしい彼女のような存在”とある。「君」は本命の彼女、しかし、楽しい夜釣りの最中は、「月」が最愛の彼女であるように感じている…。「頼りない僕は左に右に揺れる」とあることから、「君」(=彼女)と「月」(=夜の彼女)の間で「揺れる」…もちろん船に乗って「揺れる」ということもあるだろうが…そんなような意味なのかなと思った。
”ごめん、俺…君のほかにも好きな子がいて…夜に会っていたんだ。
え、名前?お月ちゃんだよ…”(笑)。

真面目なことを書いているようで、意外とユーモアにあふれる歌詞なのではないだろうか…。ラストのコード進行も、徐々に日が昇って辺りが明るくなる様子を表現しているようで面白い。日常から離れて自由にのびのびと夜釣りを楽しむ様子、息を呑むような美しい月との別れを惜しみながらも(釣れる魚が変わる)夜明けを待ち焦がれる様子が伝わってくる、派手さはないが軽快で楽しい楽曲だなと感じた。

「夜の東側」
歌手名:サカナクション 作詞・作曲:山口一郎

歌詞サイトはこちら

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