[Alexandros]の代表曲、「ワタリドリ」を聴いて。

ワタリドリ/Dracula La
[Alexandros]
ユニバーサル ミュージック
2015-03-18


映画の主題歌、CMソング、USJのアトラクションのテーマソングに起用されるなど、[Alexandros]が広く世に出るきっかけとなった「ワタリドリ」。今でも”[Alexandros]の代表曲と言えば?”と聴くと、この曲を挙げる人が多いと思われる(たまに”コウノドリだっけ?”と言うnotファンもいる…)。この楽曲はユニバーサルミュージックと契約後初のシングルで、メジャーとしては初のリリース作品。メジャーになってすぐこの曲がヒットしたので、メジャーになることを意識して曲を作ったかと言えばそういうことではないらしい。『rockin' on JAPAN 2016年12月号』のインタビューではこんなことが語られている。

「”ワタリドリ”は、実はメジャーデビューが決まる前からあった曲なんです。で、メジャーデビューする時に、もうこれしかないでしょと思いましたね」

●「ワタリドリ」(2015年3月18日発売シングル)



イントロの調子が良くていきなりノリノリ、テンションがあがる。PVでは恒例の美女が2人登場。二人で紙飛行機を持って別れを惜しみつつ、お互いに頑張ろう、と言っていそうな様子が描かれている。この曲のテーマは”慣れ親しんだ場所や人との別れと旅立ち”だろうと思う。これは[Alexandros]が慣れ親しんだインディーズからメジャーへと飛び立つこととも重なる。渡り鳥は越冬や繁殖のために長い距離を移動するものが多い。ある時期は遠く離れた場所で過ごしても、また時が経つと故郷に戻ってきたりする。また、渡り鳥は群れで行動することが多く、隊列を組んで効率的に飛行したりもする。海を越えることが多いためか、水鳥、海鳥も多い。長距離飛行する渡り鳥には強靭なスタミナと体力が必要だ。そんな渡り鳥の特徴も踏まえつつ、歌詞を読んでみよう。

 「I wanna fly so high
 Yeah, I know my wings are dried
 「翼仰げば」って人は云う
(僕は天高く飛びたい
 そうさ、僕の翼が乾いてるのはわかってる)
 
 その向こうにあるは無情
 飛べる者 落ちる者

 誰も見てない
 気にも留めない
 それでも飛び続けた

 傷ついた言葉乗せ
 運びたいから」(1番Aメロ、Bメロ 筆者意訳)


冒頭の「my wings are dried」はちょっと意味が分からない部分もあるのだが、おそらく渡り鳥に水鳥や海鳥が多いことやPVに海が登場することを踏まえると、”飛び立つ準備ができた”という意味かと思う。羽が濡れたままでは羽の重みで飛び立つことができない。翼が乾いていると言うことは、”いつでも飛べる”ということだろう。「「翼仰げば」って人々は云う」は、”そろそろメジャーデビューしたら?”と言われてきたいう意味かもしれない。しかし「その向こうにあるは無情」で、「飛べる者」もいれば「落ちる者」もいる、体力(実力)勝負、弱肉強食的な世界。「誰も見てない 気にも留めない」というのは、今までの日の目を見てこなかった活動のことだろうか。誰にも注目されていない時期も、もがきながら曲を作り続けてきたのだろう。「傷ついた言葉乗せ 運びたいから」、この部分は今まで悔しい思いをしてきた経験をバネに、それすらも大きな糧にしていきたいといった感覚を受けた。かなり感覚的な歌詞だと思う。

「追いかけて 届くよう
 僕等 一心に 羽ばたいて
 問いかけて 嘆いた夜
 故郷(まち)は 一層 輝いて

 ワタリドリの様に今 旅に発つよ
 ありもしないストーリーを
 描いてみせるよ」(1番サビ)


この曲で気になるのは「僕等」という歌詞。群れを成して「一心に羽ばたいて」いく「僕等」バンドメンバーのことのように思える。「羽ばたいて」ふと「故郷(まち)」を見下ろすと「一層 輝いて」いた。これは、これまでのサラリーマン時代や、プロになってもバイトしたりしてきた頃のことを振り返っているようにも見える。”そんな過去もあった。それはそれは良かったのだ。輝いている。”という気持ち。「ワタリドリの様に今 旅に立」ち、メジャーデビューして大活躍してやるよ!という決意表明だろう。

誰とのお別れソングだろうか。相手は最愛の人?地元の親友?それとも…?

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「I wanna fly so far
 away with my guitar
 「一人じゃない」って人々は歌う
(僕はずっと遠くへ飛んでいきたい
 ギターとともに)

 間違いじゃない 理想論でもない
 ただ頼って生きたくはない

 誰も聴いていない
 気にも留めない
 それでも歌い続けた

 傷ついた あなたを
 笑わせたいから」(2番Aメロ、Bメロ 筆者意訳)


2番は「「一人じゃない」って人々は歌う」という歌詞からの流れが印象的。「間違いじゃない 理想論でもない ただ頼って生きたくはない」というフレーズは「一人じゃない」にかかっているのだろうか。”あなたは一人じゃないんだから、頼ったっていいんだよ”、そんな優しい言葉をかけてくれる人もいるのかもしれない。それはわかってるけど、自分は「ただ頼って生きたくはない」のだと。「ワタリドリ」体力(実力)勝負で、自分がへばったらそこで死んでしまうこともあるだろう。代わりに誰かが運んでくれるわけではないのだ。
「傷ついた あなたを 笑わせたいから」、ここで初めて「あなた」が登場。サビの「僕等」の中に「あなた」は含まれているのだろうか?「あなた」は自分ではない誰かなのか、それとも自分自身なのか。いろんな読み方ができる。PVの映像を参考にすると、故郷や地元やこれまでの人間関係との別れが描かれているので、そういった故郷にまつわる全般やこれまでの傷ついてきた自分といったものすべてを指すのかもしれない。

「追い風 届けるよ
 僕等 一心に 羽ばたいて
 遠い過去を 背負ってた
 あなたを未来へ運ぶよ

 ワタリドリの様に 今 群れをなして
 大それた四重奏を 奏で終える日まで

 All this time we come and we grow
 Now it's time that we should go
 But we both know that this is for sure
 It's not the end of the world

 Well, see you one day
(僕等はこれまでずっとともに歩み成長してきた
 いま いよいよ飛び立つ時が来た
 それでも 僕等二人ともわかってるんだ
 これが世界の終わりではないのは確かだってことを

 そうさ、またいつか会う日まで)

 追いかけて 届くよう
 僕等 一心に 羽ばたいて
 問いかけて 嘆いた夜
 朝焼け色に 染まっていく
 
 ワタリドリの様に いつか舞い戻るよ
 ありもしないストーリーを
 いつかまた会う日まで」(2番サビ、Cメロ、ラストサビ 筆者意訳)

2番サビでも「あなた」が登場する。「傷ついた」「遠い過去を背負ってた」誰か別の人に対して歌っている可能性もあるが、やはり過去の自分自身という読み方がしっくりくるかもしれない。「ワタリドリの様に 今 群れを成して 大それた四重奏を 奏で終える日まで」、この部分はまんま本人たちのことだ。
Cメロの英語の部分は、「we both」に注目。「both」というのは”両方とも”という意味なので、ここでの「we」はサビの「僕等」(=バンドメンバー)のことを指しているわけではなく、「僕」と「あなた」「both」であることが伺える。「僕」(=飛び立つ自分)と「あなた」(=「傷ついた」「遠い過去を背負ってた」自分)は共に歩み成長してきたけれど、ここで「僕」は旅に立つと。
「朝焼け」というのは”夜が明ける”ということ。つまり、長い下積み時代(=「嘆いた夜」)との対比表現だろう。いよいよ日の出を迎えるのだ。「ワタリドリの様に いつか舞い戻るよ」というのは、過去の下積み時代を見捨てたり否定しているわけではないということだろうか。過去の自分が聞いたら泣いて喜ぶような「ありもしないストーリーを」語るのを楽しみにしてくれよ!というメッセージだろう。
この曲のテーマは”慣れ親しんだ場所や人との別れと旅立ち”であることに間違いはないが、それと同時に、”自分自身の過去との決別”でもあると思う。ちょうどメジャーデビューのタイミングと「ワタリドリ」の歌詞が重なり、熱い思いが込められた彼ら自身の決意表明にふさわしい名曲に仕上がったのだろう。

「ワタリドリ」
歌手名:[Alexandros] 作詞・作曲:川上洋平

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