星野源「Week End」を聴いて。

YELLOW DANCER (初回限定盤B)
星野 源
ビクターエンタテインメント
2015-12-02


星野源の大ヒットアルバム「YELLOW DANCER」の2曲目に収録されている「Week End」「時よ」でキャッチーでポップな星野源ワールドに引きずり込まれたかと思うと、息つく暇もなく「Week End」というダンサブルなナンバーが続く。一番最初に「YELLOW DANCER」のアルバムを聴いた時のことを思い出す。”え、全曲クオリティが高すぎない!?全部シングルでもいいくらいじゃない!?”と思ったのをよく覚えている。「YELLOW DANCER」はタイアップ曲が多いことも特徴。今回紹介する「Week End」『めざましどようび』のテーマソングとのこと。さすがは「Week End」(=週末)というだけある。休みの日が終わり、週末はどこへ行こうか!?何をして楽しもうか!?というワクワク感に満ち溢れたハッピーソングだ。自然と身体が動いて、聴くとスキップして出かけたくなるような、ライブでも盛り上がること間違いなしの名曲である。

●「Week End」(2015年12月2日発売アルバム「YELLOW DANCER」収録曲)



これぞ星野源がやりたかった”イエローミュージック”なのだろうなぁと感じる曲。なんとなく曲調がひと昔前のダンスミュージックっぽいのだが、それでも古臭い感じはもちろんなく、現代風かつJ-POP感もあるという、不思議なまとまり感がある。星野源は編曲まで自分でやることにこだわりがあるようで、編曲を自分でしていないシングル「ギャグ」は当アルバムには未収録である。この”不思議なまとまり感”こそ星野源の編曲の才能であり、彼が現代日本のポップス界において唯一無二の存在になりえた所以の一つだろう。

「さよなら
 目が覚めたら 君を連れて
 未来を今 踊る
 週末の街角 ここから 始まる

 夢から目が覚めたら 君を連れて
 未来を今 踊る
 週末の街角 朝まで
 身体を交わそう」(冒頭サビ)


さすがは『めざましどようび』のテーマソングというだけあって、「目が覚めたら」「週末」というキーワードが使われている。冒頭の「さよなら」というのは文脈的には意味不明なフレーズ。「未来を今 踊る」という部分にも「未来」「今」という矛盾した表現が使われている。次に「夢から目が覚めたら」というフレーズがあるが、冒頭の「さよなら」と関連させると、「夢」の世界(=あの世、スピリチュアルな次元)に「さよなら」(=目が覚める)、というふうに読めなくもない。「未来を今 踊る」という矛盾した表現も、時空を超えた概念を感じさせ、「踊る」という”肉体感”を持ったフレーズにもかかわらず、どこか抽象的で宙に浮いている感覚さえある。「週末の街角」で粋な男女のカップルが陽気に踊り、その勢いで「朝まで 身体を交わそう」とする様子が目に浮かぶ。なんとなく、ミュージカル『雨に唄えば』で、主人公が街角で歌い踊るシーンを思い浮かべた。

「花が色づく頃は
 心も浮ついて
 誰かに声をかけて
 無茶な口説き方して
 
 今を踊る すべての人に捧ぐ
 俯いた貴方の 腕を掴み 音に乗って

 夢から目が覚めたら 君を連れて
 未来を今 踊る
 週末の街角 朝まで
 身体を交わそう」(1番Aメロ、Bメロ、サビ)


「花が色づく頃」だろう。不謹慎な話だが、小学校の頃など”春は不審者が増えるから気をつけるように”とよく言われていたものだ。春はたくさんのいのちが冬からの目覚めを迎え、生き物全体が浮足立っている。もちろん人間も例外ではなく、寒く閉じこもってしまう忍耐の冬を越え、春の陽気に誘われて「心も浮ついて」しまうのだ。時に、「無茶な口説き方して」しまうこともあるのだろう。
「今を踊る すべての人に捧ぐ」という表現がとても気に入った。「今を踊る」というフレーズは、「SUN」の歌詞の中にもある。Cメロのラストサビに向かう、「踊る いま いま」の部分だ。「今を踊る」というのは、”今を生きる”という表現よりもより”肉体感”をもって、”生を楽しんでいる”という感覚を受ける。「俯いた貴方の 腕を掴み 音に乗って」というフレーズは、”これはまさに世の中にとっての星野源のことじゃないの?”と思った。星野源の奏でる音楽に世の人々は大いに救われたし、いつも元気をもらっていると思う。どんなにつまらない毎日、うまくいかない日々でも、星野源の音楽や番組を視聴して笑って元気になり、また明日からも”生を楽しもう”と思える。「俯いた」我々の「腕を掴み」「恋」ダンスを踊ろうと誘ってくれたのは紛れもない星野源である。もちろん、「恋」の方が後発なので、これも予言的ではあるのだが。

君にしかできないことがきっとある。「君だけのダンス」を世間にアピールしよう!

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「木の葉色づく頃は
 心に穴が開いて
 指の先少し冷えて
 貴方の温度探す

 今を生きる すべての人に捧ぐ
 俯いた貴方と 靴を鳴らし 昔を飛べ

 夢から目が覚めたら 君を連れて
 未来を今 踊る
 週末の街角 朝まで
 言葉を交わそう」(2番Aメロ、Bメロ、サビ)


「木の葉色づく頃」=今度はだ。季節がうつろい、春から秋になった。春は浮足立っていたが、秋は「心に穴が開いて」、人肌恋しいことを口実に女性に声をかけるらしい。2番では「俯いた貴方と 靴を鳴らし 昔を飛べ」というフレーズになっているが、ここで気になるのは「昔を飛べ」だ。夢と現実、肉体感と浮遊感、今と昔と未来。様々な次元を交錯するような歌詞が面白い。「昔を飛べ」というのは、なんとなく”過去はすべて忘れて”という印象を受けた。いつまでも過去に縛られず、「今を踊る」のだ。2番のサビのラストは「言葉を交わそう」となっており、単におしゃべりするという意味だとしても、なんとなく色っぽいような、夜の大人の雰囲気を感じるのが不思議だ。1番の「身体を交わそう」からの流れがあるからだろうか。

「今を踊る すべての人に捧ぐ
 君だけのダンスを 世間のフロアに出て叫べ
 
 夢から目が覚めたら 君を連れて
 未来を今 踊る
 週末の街角 朝まで 夜を抱いて

 さよなら
 目が覚めたら すべて連れて
 未来を今 変える
 週末の街角 朝まで
 電波を 世間を 未来を 踊ろう」(ラストBメロ、サビ)

 
ラストBメロの「君だけのダンスを 世間のフロアに出て叫べ」の部分は、いろんな次元の意味にとれて面白い。なんとなく思い出すのは、『星野源しか出ない夏フェスinいつものラジオブース』(2016年夏のラジオ『星野源のオールナイトニッポン』内での特別企画)。”全員が最前列”のコンセプトで、それぞれが思い思い自宅(なり他人宅)でラジオを聴き、思い思いに踊り楽しんだ名企画。人目を気にせず、思い思いに踊って良い時空間。ライブに行くと、どうしてもファン同士での決まった振り付けや手拍子などがあり、それに同調することが多い。しかし、日本人はそういう共通の振り付けのようなものがあったほうがライブで楽しみやすいし、”みんなで同じことをしている”ことにファンとして、イベントとしての一体感を感じたりする人が多数派なのではないか。「君だけのダンス」というのは、”周りを気にしなくていい状況だった時に、君が本当に踊りたい動きが出るよね?”ということを暗に言っている気がする。
もう一つ、昨今よく言われている”好きなことをして生きていこう”というメッセージも感じた。”君だけにしかできないことで、世間と勝負してみよう!”と背中を押されている感覚。君が本当にやっていきたいことを世の中に宣言していこう、そして実現していこう、という星野源なりの応援歌なのかなという気もする。

ラストは「未来を今 変える」となっており、今の行動次第で未来はどうにでもなるのだということを言っているのだと思う。未来には無限の可能性がある。「電波を 世間を 未来を 踊ろう」というフレーズでは「電波を」という表現だけなんとなく異質な感じがする。「電波」というのはテレビやラジオ、ケータイなどを連想させる言葉だ。ここでもまた、”肉体感”「電波」という”目に見えないもの”のちぐはぐ感がある。「電波」には現代の風を感じるし、インターネットやSNS、目に見えない仮想現実の世界で「踊る」というのは、肉体的イメージとはかけ離れた感じもする。そこがこの歌詞の面白さで、時空間を、次元をも超えた概念をイメージすることにつながっているように思う。

「時よ」のラストは「バイバイ」という歌詞で終わり、次の曲は「さよなら」で始まるというのも偶然ではないだろう。遊び心がいっぱいで、ノリノリでダンサブルな軽いナンバーかと思いきや、いつもの星野源らしい世界観は健在で、時空間や次元を超えた不思議な歌詞の世界に人々を誘ってくれる。この世は夢か現実か、過去と現在と未来の時間軸、仮想空間と肉体感の実在感…などなど、短い歌詞の中にも様々な要素が詰まっている。何気ない歌詞だけどよくよく読むと実は深い、そんな星野源の表現の世界に誰しも「腕を掴」まれて、「未来を今 踊」ってしまうのだろう。

「Week End」
歌手名・作詞・作曲:星野源

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