BIGMAMAの死生観がにじみ出る"夢”をテーマにした一曲
BIGMAMAの作詞作曲を担当している金井の歌詞の世界観が好きで、当ブログでも何度か紹介してきたが、2014年発売のシングル「Sweet Dreams」も、彼の死生観が色濃く反映された非常に味わい深い曲である。夜寝ているときに見る"夢"と目標を語るときの"夢"、意味は違うのに同じ単語で表現されるのは彼らに言わせれば”偶然ではない”のだろう。どちらも意味にも取れる二つの"夢”が交錯した歌詞に注目しながら、分析してみたいと思う。ちなみにこのテーマは昨日取り上げたflumpool「夜は眠れるかい?」からの睡眠つながりである(笑)。
●「Sweet Dreams」(2014年発売シングル、9th album「THE VANISHING BRIDE」収録曲)
メンバー5人の笑顔があふれるハッピーな印象が強いMVだ。彼らのサウンドの最大の特徴であるバイオリンの刻み部分やソロ部分の美しいメロディラインが効果的に全体を盛り上げ、「Sweet Dreams」のタイトル通り甘く優美な雰囲気を醸し出している。
歌詞について、作詞者金井のブログから印象的な部分を引用する(サイトはこちら)。
僕はミュージシャンになって、何千何万人の前で歌うなんて夢にも思ってなかったよ。だって僕は世界で一番普通な人間なんですもの。夢が叶うとか、叶えるとか言うけど、知らないよ。だっていつのまにか自分の方が勝手に夢みたいな世界に入り込んでしまったんだから。んでさ、エラく居心地が良いもんで。
目標としていた"夢”というのは、夜寝ているときに見る"夢”のように、現実なのか幻想なのかわからないくらい現実味を帯びていないものだったのにもかかわらず、今こうして何千何万人の前で歌えているという現実があり、それはまるで「勝手に夢みたいな世界に入り込んでしまった」かのようであり、夢見心地のような幸せを感じている、と。
「死ぬまで覚めない夢を見よう」に込められた思い
いつだって醒めてもおかしく無いと思ってる。ドッキリでした!と言われてもおかしく無いと思ってる。でも絶対に振り落とされないように死んでもしがみつきたいとも思ってる。全部悪あがきなんですきっと。消えてなくなるのが怖いんでしょうね。おかしいなあ、いつ死んでも良い覚悟で生きてんのに。だったらもう死ぬまで醒めない夢を見ていたいなあと思ったわけで。
「いつ死んでも良い覚悟で生きてん」のにもかかわらず、夢か現実かもいまだにわからないような三次元の肉体次元での夢見心地の体験に執着し、「消えてなくなるのが怖い」という素直な感情を吐露している。
スピリチュアルな宇宙スケールでの学びを深めていくと、”この世は全て幻想、夢であり、死んで肉体を離れた時に、この世の方が夢の世界であったことに気づく”という真実に出会うことがある。考えてみれば、私たちの意識・肉体感覚というのは非常にあいまいであり、仮に寝ている間の"夢"の世界という別次元の世界があった場合、私たちが生きていると思っている肉体次元での体験が、あちらから見たら"夢”の世界であるかもしれないのだ。私たちの経験は常に主観的で、基本的には肉体を持って生きている(と錯覚している)三次元レベルの意識でしか外の世界を認識することはできない。金井の言うところの「死ぬまで醒めない夢」(歌詞は「覚めない」表記)というのは、宇宙的スケールで言えば真実であり、肉体を持って生きているこの世界こそが”夢”みたいなものなのである。
「信じる者は皆救われるとは限らない」迷える子羊(僕ら)の運命は?
この曲の一番の主題はこの部分だ。
「哀しみを乗り越えて
苦しみをすり抜けて
気づけば群れをなし
蔑んだ眼差しで
こちらを睨みつけている
信じる者は皆救われるとは限らない
偽って出し抜いて
迷える子羊(僕ら)は
最後に心から笑えるのかな」(2番Aメロ、Bメロ)
金井のブログのタイトルも「信じ"ぬ"者は救われ”ぬ”」となっており、この曲のキーとなる部分であることがわかる。彼のブログは、最後にこんな文章で締められている。
「信じる者は皆救われる」ってのはちょっと言い過ぎだ。でも「信じ”ぬ”者は救われ”ぬ”」ってのは確かだと思う。
”信じる者は救われる”とはよく言ったものだが、様々な解釈ができる言葉だと思う。筆者が思うに、信じるにも2パターンあると感じる。一つはある種の宗教的なものや教え、誰かの言ったことなど、積極的に何かを信じようとする姿勢。もう一つは、自分自身や宇宙の大いなる流れを信頼し、悪あがきはせずにすべてを大きなものに委ねようとする姿勢。”信じる者は救われる”という言葉に対して違和感を感じるのは前者の方の”信じる”だと思う。他人の言葉、自分以外のなにものかを信じるという姿勢。一方、後者の”信じる”、つまりは自分に対する自信や宇宙の多い流れへの信頼というものは、絶対に裏切らないと思っている。そして両者にも言える真実が、金井の言うところの「信じ”ぬ”者は”救われぬ”」なのだ。
「Sweet Dreams」
歌手:BIGMAMA 作詞:金井政人 作曲:BIGMAMA
歌詞サイトはこちら
自分を信じる者は救われるというのは、彼らと親交の深い[Alexandros]の川上の言動と活躍を見ても明らかだ。
よくよく聞くと深すぎるBIGMAMAの歌詞
もともとは”どうやってライブを終わりたいか”を考えた末に、「そこはやっぱり"おやすみ"かなと」思ってできた曲らしい(同ブログより)。結果、ライブの終盤で歌われるファンにおなじみの定番曲となった。欧米の言葉にある、母が子を寝かしつけるときの”Have a good night, sweet dreams"という表現からヒントを得たようで、さすがはBIGMAMAだ、と感じる。しかし、よくよく聞いてみると単なる”良い夢を”以上の意味が込められており、自分の人生と深く向き合ってきたと思われる金井の死生観が色濃く反映された、聴けば聴くほど深く"人生という夢”について考えさせられる名曲なのである。
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