初期サカナクションの名曲「フクロウ」を聴いて。

GO TO THE FUTURE
サカナクション
ビクターエンタテインメント
2007-05-09




今回はサカナクションの1stアルバム「GO TO THE FUTURE」に収録されている「フクロウ」を取り上げてみたい。この曲は、2018年に発売されたサカナクションのベストアルバム「魚図鑑」においては、”深海”の魚として紹介されていて、かなりディープな楽曲という位置づけになっている。その位置づけ通り、ノリノリの楽曲ではなく、暗くておとなしい地味めな曲である。しかしながらファン人気は高く、この曲は2017年5月に発表された『あなたが選ぶサカナクションの名曲』ランキングで15位にランクインしている。
通常の楽曲では、一字一句の歌詞にこだわり妥協を許さない山口一郎だが、この曲は歌詞をアドリブで作ったことが語られている。考えに考えて作られたのではない、無意識からの言葉だということを踏まえながら歌詞を見てみたいと思う。

※参考 ラジオ『スクールオブロック!』2012年12月10日放送分
↓文字起こし
https://www.tfm.co.jp/lock/sakana/smartphone/index.php?itemid=150&catid=17
アコースティックギターでの弾き語りの回で語られていたことを引用してみる。
「まずはファースト・アルバム。このアルバムは、北海道で作ったアルバムなんですけど、その中にある「フクロウ」という曲は、歌詞をアドリブで作ったんですね。生まれてきたコードに適当に歌ったのが、そのまま歌詞になっています。僕は、無意識で作った曲が、自分の好きな……良い曲になる事が多いので、この曲には思い入れがあります。」

●「フクロウ」(2007年5月9日発売アルバム「GO TO THE FUTURE」収録曲)



スペースシャワーTVで放送されている『サカナクションのNFパンチ』という番組に、山口一郎が変装してばれないように振る舞うという「絶対バレない男」というコーナーがある。過去にはフェスでのスタッフに変装したりしていたが、意外とバレないもので、目の前で山口一郎が誘導をしていても気付かないファンが多数いた。この動画は変装して下北沢で弾き語りライブをするという企画で、路上で「フクロウ」を歌っている。

この曲はサカナクションの曲の中でもテクノ・電子音感が少なく、アコースティックギターの音色が印象的なアナログ感の強い楽曲だと思う。聴いていて特徴的だなと感じたのが、”Uh-Uh-”という風の音のような声、”ホーホー”というような吐息の音である。歌詞を読んでいても季節はわからないがそれらの音から、木枯らしが吹きすさぶ夜の公園、”はーっ”と息を吐いて手を温めたくなるような寒い日の情景が思い浮かんだ。また、声はフクロウの鳴き声のようにも聴こえる。「ひとり」という歌詞が繰り返されることからもわかるように、寒い日の夜の公園で感じる孤独や切なさのようなものが歌われているように感じる。それは今も昔も変わらないサカナクションの楽曲の主要テーマの一つである。

「心の先々で何を見つけられるのだろう
 見える物や見えない物 何にも無いと解ってたんだろう

 そうひとり そうひとりなの

 汚れた顔を振り上げては ちゃんとした事を言うようになる
 生まれたてのその知識じゃ 何の役にもたたないのさ

 そうひとり そうひとりなの

 見上げたその先にフクロウ

 そして僕の目を見よ 歩き始めるこの決意よ
 旅立つ人の足跡で 映し出してくれ機械の音」(1番Aメロ、Bメロ、サビ)


サカナクションらしい詩的な歌詞で、論理的に意味が通じない部分が多い。頭でストーリーを考えるのではなく、心で繊細な機微を感じとるような、そんな作品だと思う。

歌詞を読んで思い浮かぶのは、夜の公園で散歩する一人の青年が、歩きながら自らの内面と向き合い、ある種の悟りのようなものを体験する瞬間だった。「見える物や見えない物 何にも無いと解ってたんだろう」とある。言語化できない非論理的な、ある種の真実を見出した瞬間だ。そういったひらめきは、心が騒がしいときには生まれないものであり、この青年が「ひとり」で孤独と向き合っていたからこその叡智なのだろう。

次のメロは、そういった内省的・瞑想的な自分と、普段の社会に適応して生きている自分とのギャップというか、二面性のようなものを読み取った。「ちゃんとした事を言う」(=社会的に生きる)自分にとって、「生まれたてのその知識」(=「見える物や見えない物 何にも無い」という気づき)は「何の役にも立たない」ということかなと思った。「知識」という単語は、フクロウが”知恵の神”と言われていることも関連がありそうだ。フクロウと言えば、物知り・博識というイメージがある。また、山口一郎の生まれ故郷の北海道は、野生のフクロウが生息していることでも知られている。サビについては後述。

フクロウは”死者の使い”とも言われているが…?

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「見上げたその先には うずくまるその陰にフクロウ

 そして僕の目を見よ 歩き始めるこの決意よ
 旅立つ人の足跡で 映し出してくれ機械の音

 思い出して最高の日を 戸惑うような坂道で
 かき消してしまう悲しい雨
 薄い傘に涙の音」(Bメロ、ラストサビ)


主人公の青年は一人寒い日の夜の公園を内省しながら歩いているように思えるのだが、1番からはその感情はやや読み取りづらい部分があった。ラストサビで、「悲しい雨」「涙の音」といった単語が現れることから、「僕」「悲し」みの感情を抱えていたことが伺える。「思い出して最高の日を 戸惑うような坂道で」という部分はとても意味深で、過去の栄光にすがりたいような気持ちや、過去は良かったけど今は…といったネガティブな印象を受ける。「坂道」という単語も、実際の道のことなのかもしれないし、”人生のアップダウン”という意味も込められているのかもしれない。

そんな悲しみを抱えていたことを踏まえて、前のサビを見てみる。内省しながら悩み歩いていると、「うずくまるその陰にフクロウ」がいたらしい。続く「そして僕の目を見よ」というのは、「フクロウ」への呼びかけのように思える。「歩き始める決意よ」とあることから、「僕」「悲し」みに暮れ、悩んでいたが、また一歩「歩き始める」と決めたことが伺える。

「旅立つ人の足跡で 映し出してくれ機械の音」の部分はこの曲の中で最も意味深である。「旅立つ人」というのは「僕」なのか、それ以外の人なのか。筆者は「フクロウ」”死者の使い”としても知られていることに着目し、「旅立つ人」=亡くなった「僕」の大切な人、という意味にとってみた。そうすると、「僕」の悲しみはその「旅立つ人」に起因するものであると推測できる。「映し出してくれ機械の音」というのは意味がわからないが、亡くなった方との思い出や記憶からインスピレーションを得て、作品作りの糧にしていきたい…といったことかなと思った。この辺りの意味の通らなさが、無意識で作られた作品の趣深さでもあると思う。

生きていればいいときもあるし悪いときもある。途方もない悲しみに暮れることもある。人生の「坂道」「うずくまる」「僕」。そんな時、”死者の使い”であり、”知恵の神”でもある「フクロウ」が叡智を授けてくれた。
”どんな時でも、内なる声に耳を傾けるんだ…。”
一人で深く内省したいときにぴったりの一曲だ。

「フクロウ」
歌手名:サカナクション 作詞・作曲:山口一郎

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