星野源の配信限定シングル「アイデア」を聴いて。



今回は2018年前期連続テレビ小説『半分、青い』の主題歌にも起用されている、星野源「アイデア」を取り上げてみたい。この曲は星野源としては初めての配信限定リリース作品であるが、イヤーブック『YELLOW MAGAZINE』の購入特典である実質ファンクラブ『YELLOW PASS』内で、会員のみ購入できるCD-R(中身なし)&ブックレットも発売されており、既成概念にとらわれない星野源”アイデア”が詰まった作品となっている。

この曲については、雑誌、TV、ラジオなどで語られている内容が非常に多く、それらをまとめるだけで1記事になってしまう。まずは、本人が語るところの「アイデア」という曲について書いてみたいと思う。

●曲自体のコンセプト

(1)星野源の名刺となるような楽曲
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この曲は”これが星野源です”というような、星野源名刺代わりとなるような作品にしたいという思いがあって作られた曲とのこと。2018年9月4日放送のTV番組『うたコン』(NHK)において、恒例となっている挨拶、”こんばんは、星野源でーす!”を言わなかったことを、後日ラジオでリスナーから指摘されていた。この”名刺代わり”というコンセプトは次々と展開される様々な音楽性やMVの工夫にも織り込まれている。


(2)これまでのアイデアの供養と再生
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この曲は、”これまでの自分がやってきたアイデアの供養と再生”というテーマもあるとラジオで語られていた。そのことが強く表現されているのがMVだ。2番サビ終わりの間奏で、ダンサーが喪服で登場、また、照明によって背景が白黒に変わり、お葬式感を演出しているとのこと。そして背景が白に変わり、これからのまっさらな未来へと続いていく、ということらしい。


(3)制作過程について
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この曲は朝ドラのために制作された楽曲だが、細かい尺の規定があるなど、制限が多かったらしい。『半分、青い』の台本やおおまかなあらすじを踏まえた上で自分の歴史を織り込み、他の朝ドラ曲のようなゆったりとしたテンポではつまらないので、ややアップテンポの曲を作ろうと考えたとのこと。TVバージョンを作ったあと、「ドラえもん」の制作を経て、2番を含めた全体の制作に取り掛かったそうだ。2017年は体調的にも精神的にも辛かったようで、そんな時期に作られた楽曲ということにも注意しておきたい。


●歌詞や構成、MV

(1)これまでの自らの作品のタイトルや歌詞をちりばめる
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”名刺のような曲にしたい”というコンセプトということもあり、過去の自分の楽曲のタイトルや歌詞をちりばめた歌詞になっているとのこと。
主だったものは
「おはよう」「Crazy Crazy」
「湯気」「湯気」
「生活」「生活」SAKEROCK「そして生活はつづく」エッセイ)
「つづく」「Continues」
「越えて」「恋」
など。

※参考記事
「湯気」歌詞の意味&解釈
「Continues」歌詞の意味&解釈
「恋」歌詞の意味&解釈


(2)1番は陽・パブリック・これまでの自分、2番は陰・プライベート・これからの自分、
   大サビ(Cメロ)の弾き語りは原点



1番  陽・パブリック・これまでの自分(の音楽)
2番  陰・プライベート・これからの自分(がやりたい音楽)
大サビ 弾き語り=自分の原点


大きくこのような構成になっているとのこと。この構成についてはとてもわかりやすく、なるほど、と非常に納得のいくものだと感じた。多数の音楽性を入れることにより、この曲にかかる熱量も相当なものになったそうで、1曲で2.5~3曲作ったような感じがしているらしい。数多くのジャンルの音楽を熟知し、これまでにもたくさんの楽曲を制作してきた星野源だからこその盛り沢山な内容である。


(3)趣向を凝らしたMVに込めた思い
アイデア画像(2)

MVについては、後述するラジオでの発言がそのまま参考になる。移り変わる背景の色がこれまでに出したアルバムやシングルのテーマカラーになっているとのこと。間奏でダンサーが出てくる部分の振り付けは、最近親交が深い三浦大知氏によるものだそうで、随所にお葬式を連想させるような振付が入っているらしい。 細かいところまでこだわって作られているそうなので、何度観ても新たな発見がありそうだ。


※参考 雑誌『MUSICA 2018年9月号』


いつも通り細かーい字で書かれたインタビュー。ややハイテンションで饒舌に話している様子が伝わってくる。


※参考 ラジオ『星野源のオールナイトニッポン』 筆者要約文
↓ここから長いので読みたい人だけ…。
・2018年8月21日放送分
<制作過程やコンセプトについて>
誰しもが知る朝ドラ、『半分、青い』のオファーを頂いて、是非やらせてくださいということで『コウノドリ』の撮影をしている2017年の11月頃取りかかりました。「アイデア」(テレビサイズ)(11月)→「ドラえもん」(年末)→「アイデア」を1から作り直すという順番。フルを作る時に、2番を増やすということもできるけれど、生楽器だと音が変わってしまうので、1からまた作り始めることにしました。テレビサイズを最初に作ろうとした時のコンセプトとして、日本一有名なドラマ枠の主題歌なので、星野源ってイントロでわかる、名刺みたいな曲にしたいと思って。イントロ、楽曲全体、歌詞に関しても、僕が「YELLOW DANCER」以降作ってきた音楽を感じるようにと思って作りました。歌詞も、SAKEROCKを含めた僕がこれまで作ってきた曲のタイトル歌詞の一部だったりをちりばめて(「生活」「湯気」「つづく=Continues」など)。『半分、青い』というドラマのテーマや鈴愛ちゃんというキャラクターとリンクはさせつつも、自分の歴史を入れたような曲にしたいと思いました。あと、朝だから「おはよう」から始めたいなと。「おはよう」という言葉も「Crazy Crazy」の冒頭に使われているし、朝ドラの一発目の音楽という意味でもあって。

<朝ドラの主題歌>
普通のテレビドラマのエンドとかって(尺が)決まってないんですよ。曲に合わせてエンディングを作ってくれているので、幅がないんです。朝ドラは規定があったので、そこにAメロ、Bメロ、サビと入れると、だいたい同じテンポになるんですよ。だから、他の方が作った曲もだいたい同じテンポになってしまうんですよね。それはやりたくなかったので、イントロ、アウトロ、Aメロ、Bメロ、サビとやろうと思うと、あのくらい速いテンポになってしまうと。助かったのは、作品そのものが朝ドラの概念を壊したり、再構築したりするアバンギャルドな内容だったので、自分も勇気を持ってやらせてもらおうということであの速さになりました。

<アニソンみたいな曲>
朝からアニソンくらいのキャッチーさをポンとやろうと。アニメってだいたいサビで登場人物が走るんだけど、その感じをやりたいと思って。実際スローで鈴愛ちゃん走ってたから、何か伝わったのかなと。

<今までの自分の音楽を彷彿とさせるもの>
僕が好きで聴いていたビートミュージック。通常はエレクトリックな機材を使って作るような楽曲、ハイハットが速く鳴っているビート、そういうのを生演奏でできないかというのも最初の発想でありました。速いビートの中でJポップやアニソン、これまでの自分の音楽の集合体をやろうと思って、それがテレビサイズの部分になりました。

<間をあけて作り直した話>
「ドラえもん」をリリースして、ものすごく遊んで、「ドラえもん」終わってから、「アイデア」の作業に戻ろうと思ったときに、すごく違うなぁと、ワクワクしないなと思いました。

2017年は実は落ち込んでいて、体調も悪く、辛い1年でした。”無理しない”というテーマを掲げていたけど、これはいかんと。もう能動的になる!と決めてから「ドラえもん」を作り、その作業がすごく楽しかったんですよね。それを経て、2017年末に作った「アイデア」(テレビサイズ)を作り直そうと思ったときに、ものすごく過去のものを見ている感じがして。実際にこれまでの自分を詰め込んでるから過去なんですよね。今やりたいことをやろうと思ったんだけど、テレビで流れてるものを変えるのは簡単だし、逃げだと思ったので、今ある部分はそのままにして、今もっと未来に作りたい音楽を作れないかと死ぬほど考えて、今やりたいと思っている音を2番からやるのはどうかと思って。
1番はこれまでの自分、2番はこれからの自分というコンセプトにしようと思い、2番をまったく違うアレンジにしました。ビートはSTUTSくんにお願いし、アナログシンセも本澤さんという人と一緒に作っていって2番ができて。その他ギターの亮ちゃん(長岡亮介)、ほぼ全く同じストリングスという仕様にしました。

<1番と2番の意味づけ>
ただ音楽性を急に変えて、奇抜なことをしたいだけと思われるのが嫌で、そういうアレンジに踏み切ることができなかったんですよね。1番の歌詞を見たときに、これはパブリックな僕、前向きなことをお届けしている自分の感じがするなと思って。それは僕の陽の部分というか、僕のやりたかったことであり充実した場所だと思うんですけど。そこでの笑顔は嘘じゃなくて本当の笑顔なんだけど、同時に陰の部分が膨れ上がっていったのが2017年だったんですよ。家の中でも暗黒なものが膨れ上がっていくことがあって。1番は陽、2番は陰ということにすれば、音が変わる必然性が生まれると思いました。2017年好きだったビートミュージックというのは、エレクトリックな音で、内省的なんだけどすごくポップで孤独感があって。孤独感がある音楽を世界中が聞いているみたいな。個人的なものをみんなが楽しんでいる。そういうサウンドに自分が励まされていたんです。孤独感に呼応して癒されていたというか。そういうサウンドを使って自分の音楽をやりたいのだということになりました。

<大サビ(弾き語り)以降>
そのままバンド演奏に戻るとなんか普通なので、じゃあ弾き語りしようということになりました。それは僕の原点であって、一人で家で作っていた時のあの感じをやったら、僕のいろんな音楽性を踏まえてるんだけど壊して、それを再構築して全部未来に持っていくという曲ができるんじゃないかと思って。そのあともっとテンションの高いバンドがきて、改めて新鮮な気持ちで1番を演奏するという、未来に一緒に向かっていこうという音楽ができるんじゃないかと思って作りました。最後の最後でドラでバーン!爆発落ちみたいなのがやってみたくて。それができるんじゃないかなと思って。そしたらできました。

<エキゾチカを一歩進めて>
僕の中では思い入れが深くて、いろんな気持ちがこもった曲。参加してくれたミュージシャン、スタッフ最高。もっと大元のコンセプトがもう1つあって、「恋」「Continues」でやったジャンルをもう一歩進めたいなと思って。エキゾチカ(細野晴臣、マーティン・デニーなど)というジャンルをポップスにできないかと。そういうふうに作ったのが「恋」「Continues」だったんですけど。エキゾを日本のど真ん中でやるという、高校生の時からやりたかったアイデア。

・2018年9月4日放送分
<MVについて>
関(和亮)さんに監督してもらって、吉田ユニちゃんがアートディレクションをやってくれました。今までスタジオの中で作っていくMVが多かったので、広い空間に行きたいなぁと思って、今回はメッセ的な所を3日間借り切って、2日半準備、数時間で撮影しました。僕MV大好きなので、アイデアを搾り出すのに悩むんですよね。そんな中でさんが、いろんな場所に移動しながら場面がどんどん変わっていくような、ワンカメ(長回し)の企画を出してくれたんですけど、いわゆるMVってワンカメ・ワンテイクのものが海外を含めてあまりに多いんですよ。だからこれはやりたくないんです、と言って、うーん…という時間を過ごしていました。締め切りが迫る中で、”あーっ”と1個思いついて。ワンカメって超いっぱいあるけど、ワンテイク多カメってなくない?と思って。カメラが全部据え置きで、僕が自分でカット割りをしていくという、そういうのは観たことないなぁと思って、提案したらそれいいねということで動き始めました。僕が歩きながらカット割りしていくんですけど、その位置関係をまず作ってくれたのが(吉田)ユニちゃんで。一番最初のカットが「YELLOW DANCER」の赤の背景から始まって、「恋」の黄色バックに行き、ピンクバックに行き、青に行き「ドラえもん」という、その流れも作ってくれて。

なぜそうなったかというと…。今回MVのテーマの一つに、"今までの僕のアイデアの供養そして新たな再生”というものがあり、だからみんな喪服なんです。「YELLOW DANCER」以降作ってきた曲の象徴の色を経て、2番はこれから僕がやりたいサウンドなんですけど、ここでまた新しい世界、陰の世界に入っていくと。その後のサビでは、斜めの赤白ストライプで、歌い終わったら喪服を着たダンサーのみんなが出てくるんですけど、そこで照明が色素を消してモノトーンにする照明に変わり、そうするとお葬式の鯨幕になるんですよ。ここではっきりお葬式であるということがわかる演出になってます。その後の弾き語りは売った楽曲と差別化をするために、弾き語りをするまでのストロークをちゃんと作りました。そこから、まっさらなこれからの未来という意味も含めて白い背景の所に行くという。今まで通ったところを走り抜けて、新しい自分になるんだけど、最後は全部連れてくぞというイメージでドラでドカーンと。そういうMVになりました。


●「アイデア」(2018年8月20日発売配信限定シングル)




長くなってしまったので、歌詞の考察などについては次回の(その2)の記事に書いていこうと思う。

「アイデア」歌詞の意味&解釈(その2)

「アイデア」
歌手名・作詞・作曲:星野源

歌詞サイトはこちら


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