星野源の「湯気」を聴いて。

エピソード
星野源
ビクターエンタテインメント
2011-09-28


今回は星野源の2ndアルバム「エピソード」に収録されている「湯気」という曲を取り上げてみたい。「エピソード」時代の地味目な楽曲なので、知名度・人気はそれほど高くないかもしれないが、筆者はこの時代の素朴な楽曲もとても好きで(※)、今でもよく聴いている曲の一つである。2018年8月20日に発売された配信限定シングル「アイデア」の歌詞に、この「湯気」という単語が登場することもあり、改めて聴き直したところ、やはり良いなぁということで今回取り上げることにした。「SUN」「恋」以降に星野源のファンになったという方にも是非聴いてみて欲しい一曲。

(※)「エピソード」の中では、「ステップ」「湯気」かというくらい好き。
参考 「ステップ」歌詞の意味&解釈

ちなみに、シングル「くだらないの中に」のカップリングとしても収録されている。
くだらないの中に
星野源
ビクターエンタテインメント
2011-03-02



●「湯気」(2011年9月28日発売アルバム「エピソード」収録曲)

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「ばかのうた」「エピソード」の頃の楽曲は、一曲一曲が4分を超えることは少なく、非常に短い曲が多い。この曲も3分以内で終わってしまう短い楽曲だ。今も昔も、星野源の楽曲の歌詞には日常や生活を大切にしていることが伺えるものが多く、この「湯気」もその代表的な曲である。比較的スローテンポで、”ジャッ、ジャッ”という和音の音色が印象的なのんびりとした曲で、軽快で楽しげと言うよりは、ややアンニュイな雰囲気が漂っている。星野源本人も、震災後の2011年にどん底の精神状態の中作ったアルバムだ(※)と語っていて、そんなこともあってか、「雨雲」「雨」「目から水」「鼓動止まる」など、歌詞もやや悲しげで陰気な印象を与える単語が多い。

(※)参考 音楽サイト『音楽ナタリー』
「エピソード」インタビュー 参照
https://natalie.mu/music/pp/hoshinogen

「湯気の中は 日々の中
 雨雲になって
 いつの間にか 部屋の中
 しとしとと雨が降る

 なにか茹でろ 飯を食え
 雨雲使って
 するとなぜか 僕の中
 とくとくと目から水が出る

 枯れてゆくまで 息切れるまで
 鼓動止まるまで 続けこの汗
 我は行くまで 幕降りるまで
 繰り返すまで ゆらゆらゆら」(1番Aメロ、サビ)


「湯気」と聞いて、まず思い出すのは何だろうか?やはりやかんの「湯気」だろうか。炊飯器やお風呂という人もいるかもしれない。「湯気」というのは水蒸気(気体・目に見えない)が冷やされて小さな水滴(液体)となり、目に見える煙のような形で現れたものである、というのは理科で習った。では「雨雲」はどのようにできるのだろうか。水蒸気が空気中のちりやほこりにくっつき、それが上空で冷やされると水滴や氷の粒になる。それが雲である。キッチンで発生した「湯気」も上空に昇ると、ゆくゆくは「雨雲」になる可能性があるわけだ。

水蒸気は上空で冷やされると「雨雲」になる。この曲の「部屋の中」は、「湯気」「雨雲」になるほど、じめじめとした湿気に満ちていて、ひんやりとしている印象を受ける。「なにか茹でろ 飯を食え」というのは、自らに語りかける言葉だろうか?食べ物を食べる気力もなく落ち込んでいるのかもしれない。「部屋の中」に降る「雨」というのは、「僕の中」から出る「目から水」のことなのだろう。

サビも興味深い単語が続く。「枯れてゆくまで 息切れるまで 鼓動止まるまで」というのはいずれも、”死ぬまで”と言い換えることができると思う。次の「続けこの汗」では、「目から水」(=涙)ではなく、「汗」という関連ワードが出てくる。「僕」は涙だけでなく「汗」もかいているらしい。これは、”この人生を懸命に生きる”といったことの例えだと思う。突然の災害や病気、事故など、いつなんどき命を落とすかわからない。震災のショックで気を落としてしまったけれど、亡くなられた人の分まで、懸命に生きようということ。続く「繰り返すまで」という部分は、「湯気」「雨雲」に形を変えるような水の循環、繰り返しにかけた言葉なのではないかと思った。


辛いことがあって落ち込むけれど…いつでも星は照らしてくれているのだ

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「湯気の川は 天の川
 雨雲の上で
 光る星は 見えぬまま
 人知れず照らす日々がある

 晴れてゆくまで 雲切れるまで
 消えてゆくまで 続けこの声
 湯気は死ぬまで 飯炊けるまで
 繰り返すまで ゆらゆらゆら

 枯れてゆくまで 息切れるまで
 鼓動止まるまで 続けこの汗
 我は行くまで 幕降りるまで
 繰り返すまで ゆらゆらゆら」(2番Aメロ、サビ)


「湯気」を見ていたら、何かに似てるなと思いつく。そうだ、「天の川」だ。「雨雲」に隠れて目には見えないことが多いけれど、確かにいつでも「天の川」はそこに存在していて、人間が気づいていようがいまいが、「人知れず」僕たちを「照らす日々がある」のだ。辛いことばかりで落ち込みがちだけれど、そうやって天を思うことで少しの希望を感じることができる。

「晴れてゆくまで 雲切れるまで 消えてゆくまで」に省略されているのは、この悲しみや辛い気持ち(=「雨雲」)が…、ということであろう。「続けこの声」というのは、励ましの「声」というような印象を受けた。1番の「なにか茹でろ 飯を食え」のような…”へこたれるな!生きるんだ!”といった「声」であろう。もしかすると、それは「天の川」からのエールなのかもしれない。

「日々の中」
にある「湯気」「飯」「炊」き続ける限り「死ぬまで」続く、つまり「湯気」日常そのものである。しかし、いつも日常にあるなんてことない「湯気」が、突然「雨雲」に変わることがある。どちらも同じ水・水蒸気が形を変えたものなのだ。いつもの日常と突然の悲しみは、無関係の遠いところにあるのではなく、むしろ隣り合わせであり、「繰り返す」ようなものであるということだろうか。悲しみに暮れて流す涙が、懸命に生きて流す「汗」でもあるように、いつまでも落ち込んでいないで、これからの人生を懸命に生きようという、そんな歌なのではないかなと思った。

「湯気」
歌手名・作詞・作曲:星野源

歌詞サイトはこちら

※配信シングル「アイデア」
「アイデア」歌詞の意味&解釈(その1)
「アイデア」歌詞の意味&解釈(その2)

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