October 29, 2007

音楽と私(少年編)

 先日、バイト帰りにラーメン屋に寄ったら、『のだめカンタービレ』が置いてあった。
(…そういや読んだことねーな)
 ねぎラーメンを待つあいだ手にとってみたら、これがえらくおもしろい。すっかり気に入ってしまった。
 そんなわけで、周囲から「何をいまさら」という反応を受けつつ、もっぱら古本屋で買い集めている。そしてこの漫画は、私に音楽の楽しさを思い出させてくれた。

 もともと、子供の頃の私はクラシックの神童として名を馳せていた。
 得意だった楽器はピッコロ、タンバリン、シンバル。とくにピッコロ奏者としては国際マジュニアコンクールで優勝し、賞金の20万ゼニーと電子ジャーを獲得したこともある。

 中学の頃といえば何といっても合唱コンクール。
 歌に目覚めた私は日々練習に励んでいた。私の熱唱を聞いた音楽教師が、
「あなたは指揮者をやった方がいいかもね」
と言ったほどである。
 結局、その頃は歌にしか興味がなかったので指揮者への勧めは断ってしまったが、先生は私に全休符の大切さを教えてくれた。そんな指導を受けたのは私だけだったことからも、先生が私の才能に目をかけていたことがわかる。
 
 …つづく

  

Posted by springinsfeld at 22:46

October 27, 2007

ハーメルンの黒髭男

 2006年の夏から冬にかけて、根津見荘での生活費が尽きた私は一時的に実家に戻った。
 ほどなくして、実家にネズミが出没し始めた。これまで何度も書いてきたように、根津見荘では日常茶飯事だったが、実家でそんなことが起きたのは初めてだった。
「毎晩毎晩、冗談じゃないわ!」
 普段はボケっぱなしの母がヒステリックに喚くのももっともだが、祖父と父は「別に気にならない」と無関心を決め込み、一方で兄と弟はゴキブリにも背を見せる始末だ。

 結局、もともと破壊活動担当だったうえ、家にいる時間が最も多い私が処理することになった。再び根津に戻るまでに実家で駆除したネズミは、射殺したもの、ネズミ捕りにかかったもの、どっかの猫が敷地内でくわえているのを目撃したものを合わせると、8匹に及ぶ。

 今年の春に私が根津に戻った時、母は実家のネズミが野放しになることを恐れていたが、幸いそれは杞憂に終ったようだ。私の引越しとほとんど時を同じくして、ネズミはほとんど出なくなったそうである。

 2007年の秋。根津見荘取り壊しのため、またまた実家に戻ってからそろそろ二ヶ月。
 ネズミのことなどすっかり忘れていたが、台所でタバコを吸っていたら、どこからともなくその気配。天井裏も騒がしい。
(根津から追っかけてきたんじゃねーだろーな。。)
 
 そんなわけで、久しぶりに銃でも新調しようかしらんと思っている。
 幸か不幸か、去年のネズミ騒ぎ以来、家族は私の趣味にあまり口を挟まなくなった。
 
 
  
Posted by springinsfeld at 01:57

October 17, 2007

ローライズな日々

 どこからもらってきたのか、祖父がこないだ伊勢丹の商品券を三千円分ほどくれた。
 高い物を買うには中途半端な額なので、日常的かつ少し質の良い物を買うことにした。バイト後に伊勢丹の小物売り場をブラブラして、結局買ったのはポール・スミスのボクサーブリーフ。店員のおばちゃんに相談して、サイズはMにした。

 ところがこのボクサーブリーフ、はいてみたらえらくローライズで、普通のトランクスに慣れている私からすると半ケツとしか思えない。ウエストのサイズは丁度いいから、こういうデザインなのだとは思うのだが、鏡で見てみるとやはり半ケツにしか見えない。
 そんなわけで、最近の私は週に一度はズボンの下が半ケツである。
 
 大学院のゼミの時、
「18世紀における神聖ローマ帝国の政治秩序は…」
などと述べている時に、ふと自分が半ケツなことを思い出した。

 少し可笑しくなってしまった。

   
Posted by springinsfeld at 01:42

October 12, 2007

モノノ家

 まだ根津にいたときの話。

 その頃、根津見荘には私と久保さん以外にも二人の住民がいた。
 ある日、一番新しい住民が、「この家はたまに変な音がする」と言い出した。といっても、ネズミが出す物音ではなく、人が咳き込む音に近いという。
 私と久保さんは全然感知していなかったのだが、みんなで話してみると、もう一人も実はそれが気になっていたという。
 住民に喘息持ちはいない。そのうえ、明らかに留守中の私の部屋からも、その音が聞こえることがあるというではないか。
 なにしろ古い家なので、気にしだすと薄ら怖い。

 そんなわけで、学究の徒らしく、科学的に事態を収拾することになった。
 科学的に線香を焚き、科学的に塩を盛り、科学的に家を清めた結果、変な音はしなくなったそうだ。 


参考文献:GS美神 極楽大作戦  
Posted by springinsfeld at 00:57

October 05, 2007

黒髭ピーターパン危機一髪

 ここ最近、私の周りでは結婚する奴が急激に増えている。
 以前にも触れたが、高校の同級生では女友達二人が今年すでに式を挙げ、男も一人、来年に式を控えている。
 また、私がヒマがありゃ口説いていた都立大の色っぽいねーちゃんは、あろうことか東大の研究室の同僚と入籍し、同じくヒマがありゃ口説いていた研究室の色っぽいねーちゃんは、あろうことか見も知らぬ男との式を予定している。

 「結婚?そんなもの無駄無駄無駄無駄ァ!」と決め込んでいるお子様な私だが、こうも怒涛の結婚ラッシュが続くと、正直、陽の光を知らぬ悪者になった気分だ。あるいはヒゲの濃いピーターパンにでもなった気分だ。もちろん、ネバーランドには結婚という概念自体ない。ついでにいうと試験もなんにもない。


 少し前に、高校の連中と飲み会があった。当初の幹事は今年結婚した旧姓トーヤマ。
 ところがこのトーヤマ、直前になって参加できなくなり、幹事を引き継いだのは同じく今年結婚した旧姓ツキゾエ。
 
 例によって私は飲み会に遅刻し、店の入り口で店員に訊かれた。
「ご予約はありますか」
「えっと、もう入ってると思うんですけど。「トーヤマ」でとってありますか?」
「トーヤマ様。…申し訳ありません、ないみたいですが。」
「じゃあ、ツキゾエでとってあるはずです。」
「ツキゾエ様。……えーと申し訳ありません、こちらもちょっと…。」
「えっ?」
 店員は既に哀れむ目で私を見ている。

(いけね、そーいやあいつら結婚したんだった。)
 ようやく気づいたが、いかんせん、旦那の性が思い出せない。
 店員と私の間にいよいよイタい空気が流れ始めたところで、店の奥の障子越しに見慣れた大きなシルエットを見つけた。
「あ、いました!あれです!」

 普段はうっとおしいコムラの巨体を、これほど頼もしいと思ったことはない。
 ちなみに予約はツキゾエの旦那の性でとってあったらしい。

  
Posted by springinsfeld at 02:15