外堀通りを下に見て丘橋を渡り切ると東京ドームが地上にぽっかりと
浮かんでいるように見える。それにしても、と有馬は思った。
(白鳥君は、なぜ、自分が外出するとき、戻るか戻らないかを瞬時に見
破ってしまうのだろう。きっとなにか、自分の癖のようなものを頼りに彼
女はそれを見分けているのだろう。)
そこまで考えたところで、お目当ての青いビルに着いた。そそくさと”黄色
いボックス”と呼ばれる当日券売場に向かう。
「南側は空いてますか?」
「はい。中段から後ろの方でしたら、まだ空きがございます。」
「では、1枚ください。」
有馬は受け取ったチケットを一瞥し、エレベータで5階に向かう。チケットに
は”I-10番”と書かれていた。
(ま、これくらいの席がいいかな。たしか、真ん中くらいでリングに向かって
右寄りの感じだったはず。)
と、有馬はリングと自分の距離感をイメージした。
客の入りは試合開始前とはいえ、フルハウスにはほど遠く、メインエベントま
でに八割方埋まれば上々といったところだろう。今日の試合は連日興行の二日
目で出場選手は昨日の試合で全力を出し切り、疲れきっているのではないか、
とも思われた。いわゆる消化試合が多くなる可能性も高い。
そんなことを考えながら有馬は”I-10番”に腰を下ろした。
浮かんでいるように見える。それにしても、と有馬は思った。
(白鳥君は、なぜ、自分が外出するとき、戻るか戻らないかを瞬時に見
破ってしまうのだろう。きっとなにか、自分の癖のようなものを頼りに彼
女はそれを見分けているのだろう。)
そこまで考えたところで、お目当ての青いビルに着いた。そそくさと”黄色
いボックス”と呼ばれる当日券売場に向かう。
「南側は空いてますか?」
「はい。中段から後ろの方でしたら、まだ空きがございます。」
「では、1枚ください。」
有馬は受け取ったチケットを一瞥し、エレベータで5階に向かう。チケットに
は”I-10番”と書かれていた。
(ま、これくらいの席がいいかな。たしか、真ん中くらいでリングに向かって
右寄りの感じだったはず。)
と、有馬はリングと自分の距離感をイメージした。
客の入りは試合開始前とはいえ、フルハウスにはほど遠く、メインエベントま
でに八割方埋まれば上々といったところだろう。今日の試合は連日興行の二日
目で出場選手は昨日の試合で全力を出し切り、疲れきっているのではないか、
とも思われた。いわゆる消化試合が多くなる可能性も高い。
そんなことを考えながら有馬は”I-10番”に腰を下ろした。