今日は本の話題を久しぶりに書きます。
まずタイトルがお堅いながらも凄みがあります。実に考えさせられる本です。

「大東亜戦争」の敗戦要因の”本質”とはいかなるものか?

これを解明するために戸部良一氏を筆頭に経営組織論、経営学、意思決定論
ないし政策決定論、政治史、軍事史の各々専門家が集い共通の戦闘事例をも
とに日本軍の戦い方、負け方を徹底的に分析。

そして、その中にある種の共通項ともいえる日本軍の行動傾向(=負けのキーワー
ド)を導き出すという理論構成で成り立っている学術的な専門書です。

 私はこの本に戦闘事例として登場する六つの事例の戦死者の数の多さに驚
き、同時に胸の奥底から悲しみと怒りがこみあげてきました。ま、そういった情緒
的戦争論は本書の”本質”ではないと著者はいっているのでここでは論及しません
が、以下に各事例の戦死者の数と損耗数(艦船や航空機を失った数)を記します。

 1.「ノモンハン事件」   7,696人

 2.「ミッドウェー海戦」  空母等 5隻 、航空機 300機

 3.「ガダルカナル作戦」 12,500人

 4.「インパール作戦」   30,000人

 5.「レイテ海戦」      空母等 34隻

 6.「沖縄戦」        150,000人(諸説あり。)

 言葉もでない、とはこいうことをいうのでありましょう。

 さらに、この中で一番愚かな戦闘事例であると思ったのは「インパール作戦」。
この本の中でもこの作戦は特に厳しい評価を受けています。その証拠にサブタ
イトルに”賭の失敗”が掲げられ、その直下のコメント欄にはこのような記述が。

しなくてもよかった作戦。戦略的合理性を欠いたこの作戦がなぜ実施されるに至っ
 たのか。作戦計画の決定過程に焦点をあて、人間関係を過度に重視する情緒主
 義や強烈な個人の突出を許容するシステムを明らかにする。」


 そして牟田口中将の個人的心情に傾斜した無茶苦茶な作戦計画の遂行プロセスに
私はほんとうに呆れかえってしまいました。行軍行程のほとんどは熱帯のジャングル。
そこを多人数で敵の陣地を目がけて突進するだけなのです。しかも、戦にとって重要な
補給は現地調達が原則。これではまるで兵士が死に向かって突進しているだけと批判
されても仕方ありません。

 肝心なのは、牟田口中将のそういう指揮命令を許容した日本軍中枢に”失敗の本質”
があったという指摘です。まさに、”強烈な個人の突出を許容”してしまったところに組織
としての欠陥が見てとれます。

 そのあげく、佐藤幸徳師団長が前代未聞の抗命事件(戦場からの独断による撤退)
を起こすなど指揮命令系統という以前に軍組織としての人間関係にも大きな亀裂を生じ
させたことにも異様さを感じます。

 その異様な状態こそが戦争の本質のような気がします。

 著者グループは日本軍に纏わりついているタチの悪い癖をこれらの事例から導き出し
ます。それを要約すると陸軍の「銃剣白兵主義」と海軍の「艦隊決戦主義」に行き着きます。
前者は驚くべきことに20世紀半ばの戦闘であることを全く意識せず、半世紀前の「日露
戦争」での勝利を発想の基盤におき、日本人の持つ強靭な精神力で気合もろとも敵に向い
銃剣を突けば敵はその気合に気押され勝利することができるという論理。

 一方、艦隊決戦主義も同様に過去の成功事例から艦同士の直接対決ならば我軍は無
敵という驕りを醸成しました。小回りの利かない、かつ、量産に適さない大型艦の製造に
力をいれた結果、生産力に優る米国の素早い小型艦に翻弄されます。

 また、陸軍と海軍の縦割り組織的な壁と双方のテリトリー意識が作成遂行の円滑化を
妨げたこと。対する米国は統合作戦本部方式をいち早く取り入れ、陸軍、海軍、空軍を
統括的、一元的に管理統括する組織編成を具体化し成果をあげました。

 この本は日本で著名な経営者に評価されているのも以上の観点からよくわかるような
気がします。ビジネスの現場もよく戦場にたとえられます。従って、失敗の本質から組織
上の問題点や戦術上の不備を炙り出す視点は重要です。いまふうにいえばPDCAサイク
ルというところでしょうか。

 人間誰しも失敗などしたくありませんし、はじめから負ける戦と分かっているのならばその
戦は避けるべきであると思います。むしろ、その失敗や負けの可能性を極力小さくし実質的
に被るデメリットをも小さくする。ビジネスの現場には時にそういった冷徹な眼も必要と、そん
なことを感じた次第です。






あと一歩で1位復活!、応援よろしくお願いします!
   ↓
ランキングはこちらをクリック!



やる気の源!あなたの1票に感謝!
プッシュお願いします〜( ´∀`)つ

   ↓
ranking

人気blogランキングへ