2005年04月28日

「残業代ゼロ」一般社員も・厚労省方針、労働時間重視を転換

 〜人事労務屋のつぶやき〜の田代さんの記事にコメントしようとしたところ、文字数オーバーでエラーが出てしまいました。しばらくサボっているうちにこんな制限が入ったんですね。それで、本日2つ目の投稿となりました。
明後日の講義の準備もまだできていないのですが・・・。

 今日の日経新聞朝刊の記事概要は以下のとおりです。NIKKEI NET BizPlusからの抜粋です。
 厚生労働省は、休日や週40時間を超える労働に割増賃金を支払う規制について、適用除外の範囲を拡大する方針だ。現在の除外の対象は管理職のみだが、一部のホワイトカラー社員などにも広げる。働き方の多様化で成果を勤務時間で評価しにくくなっているため。労働時間を最重視した日本の労働政策の転換を意味しており、残業の取り扱いなど企業の賃金政策に影響を与えそうだ。

 28日に有識者による研究会を設置する。労働時間を規制した労働基準法の見直しを進め、2007年の国会に改正案の提出を目指す。

[4月28日/日本経済新聞 朝刊]


 労基法は工場労働者を主眼に制定されたものですから、特に労働時間に対する規定は現在の働き方の実態に合っていないことが多々指摘されてきました。また現場でも、真面目に仕事をこなす者よりもダラダラと仕事をして残業する者の方が(短期的視点では)実入りが多いというねじれ現象も起きています。

 日本人は「赤信号、みんなで渡れば怖くない」的な気質を持っていますので、元々無理な規制をかけられてもまともにそれを受け止める人は少数派です。実際、労働基準監督官の絶対数不足もあって労基法はザル法になっていて、労働者の申告があったり労災が起きてはじめて機能するといったレベルです。

 それならば規制は緩めるけれど、罰則や適用を強化する考えの方が余程実効性はあると私は考えていますので、この方針には原則肯定的な考えを持っていますし、今後この方向性で議論を進めていってほしいと期待しています。

 上記の記事抜粋では触れていませんが、日経新聞朝刊では、
 規制緩和が過重な労働を招くのを防ぐため、一定の所得保障や健康への配慮措置を講じるよう雇用主に義務付ける。
本人の裁量が大きいホワイトカラー職種で労働時間の規制を緩める一方、時間で成果を測りやすい工場勤務のブルーカラー職種などについては規制を強める。
といったことも検討されているようです。

 しかし、問題がまったくないわけではありません。ひとつは所得規制の問題です。もし年収700万円や800万円といったところで年収規制がかけられるようでは、中小企業やサービス業では実質部課長クラスでなければ該当者がいませんし、東京と地方の賃金格差を考えれば、500万円でも厳しいと思います。

 また、残業や深夜勤務の割増賃金を増額することも検討課題に入っているようですが、これこそサービス残業を助長することにならないかと懸念しています。ましてや深夜の時間帯に営業をしている会社は多くあり、超過勤務でもないのに深夜労働割増を上げられてはたまったものではありません。
働き方の多様化にむしろ逆行する方針ではないかと思うのです。労働市場も労働力の売買契約市場で自ずと市場原理が働きますから、必要以上の行政の介入は不要だと考えます。

 そして3番目に「計画年休」の促進が挙げられていますが、これも実質の時短であり、コストアップ要因です。コストを上げることと違反に対する罰則の適用強化はまったく別物ですから、あれもこれも追い求めるのでなく、まずはサービス残業の縮小のために何をすべきか議論していただきたいと思います。

 以上3点は企業の立場からの視点で述べましたが、労働者の視点からは、今までザルではあっても法規制があったからこそ、何かあれば訴えることが可能でした。しかし法規制が緩められると法違反を問いにくくなるため、重大な事故につながる可能性が高まる恐れもあります。

 計画年休や残業代のアップで長時間労働の弊害を抑えようと考えているのだと思いますが、それよりも事業主の健康配慮義務違反の罰則規定を設けるべきだと考えます。
現在、労災法上では事業主に重大な過失があったとき、保険給付の30%相当額を費用負担しなければなりませんし、労働保険徴収法ではメリット制といって保険料が高くなる仕組みがありますが、事業主の過失の多くは民事によって判断されることになります。つまり、裁判で争うしかないわけです。

 労災補償は本来無過失保険ですので、事業主に過失があったときや故意に事故を引き起こしたときの罰則強化は法の趣旨に合わないかとも思いますが、労基法の規制を緩める以上、担保として労災法上での事業主責任強化も必要ではないでしょうか。勿論、労基法上の罰則強化と厳格な適用の上でです。

 久しぶりに行政が現実に目を向けてまともなことを検討しようとしているのですから、良い方向に行くことを願っています。そのためには有識者という机の上で物事を考える人の意見でなく、現場の、しかも中小企業で働く労働者や事業主の意見、できれば地方の人々の意見をもっと聴いていただきたいと思います。
労政審で議論したことだけで判断するのでなく、実態に深く切り込んだ議論が望まれます。

brain




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この記事へのコメント
竹林さん、こんにちは。
トラックバックありがとうございました。

詳細な記事をありがとうございます。大変参考になりました。この件は、相当なインパクトがありますので、ご指摘のように色々な立場の方々の意見を聴くようにして、実態に深く切り込んだ議論にして戴きたいですね。

しばらくバタバタしておりましたが、ようやく平常に戻れそうです。これから1ヶ月間は、最後の追い込みをかけていきたいと思います。お忙しいことと思いますが、これからもよろしくお願い致します。
Posted by 人事労務屋・田代 at 2005年04月28日 15:41
お前、企業の味方の糞社労士だから、ベタぼめだけど、働くものの身にもなって考えてみろ!
サービス残業が合法化され、お前が労働者いじめ指南している悪徳企業に低賃金で食事睡眠以外の全てを捧げられ、挙句の果てに、過労死か、自殺か、某JRみたいに大事故につながることが目に見えてるだろ。
法律丸覚えの試験知識しか頭になくて、今の労働者の惨状を経験したことがない頭でっかちの奴が偉そうにほざくな、バカ!!
Posted by ひろ at 2005年04月28日 16:29
田代さん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
田代さんも相変わらずお忙しそうですね。そんな中でも欠かさずに記事を書かれていることに敬意を表します。
こちらこそ、今後もよろしくお願いいたします。
Posted by 竹林社会保険労務士事務所 at 2005年04月28日 19:30
ひろ様
長くなりますので、2つにわけてコメントします。

私が糞社労士かどうか、他の方がどう評価されているかは知りませんが、何も今回の件についてベタ褒めしているつもりはありません。後半の記事を良くお読みください。

私だって数年前までサラリーマンをしてきてサービス残業の経験はあります。酷いときには泊り込みをしたことだって何度もあります。また社内で過労死が起きたこともあります。あなたは身近で過労死が起きたことがありますか?その悲惨さをご存知ですか?
Posted by 竹林社会保険労務士事務所 at 2005年04月28日 19:44
私は守れもしない法規制をかけて適用をいい加減にしているからこういった問題が後を絶たないと考えています。それなら、努力すれば守れる範囲まで法規制を緩め、罰則の適用は厳格化すべきだと言っているだけです。

私が仕事上企業の立場に立つことは当然のことです。しかし、労働者の犠牲の上に企業経営が成り立って良いものだとも考えていません。
勝手な推測で誹謗され、しかも匿名での投稿にはまったく不愉快な思いです。
Posted by 竹林社会保険労務士事務所 at 2005年04月28日 19:44
しばらくブログから遠ざかっておりました。
こちらこそお久しぶりです。

この記事、私も新聞でまず目にとまりました。
私も竹林さんと同じく、サラリーマン経験、
残業手当なし経験、朝帰り経験をしているため、
こういった法改正を良いようにとるか悪いようにとるか悩むところです。

でも確かに、勤務時間で仕事を推し量るのは
最近の労働形態にあっていないとは思います。

難しい問題ですね。
Posted by uakko at 2005年04月28日 20:02
uakkoさん、こんばんは。

仰るように難しい問題ですね。しかし法律が実態に合っていないのも事実ですし、それによって大きな労災事故も起きているのですから、最早放置できないところまで来ていると思います。

また↑にあるように、労働強化に繋がるのではないかという労働者の方の心配ももっともですので、何らかの担保措置も必要でしょう。間違った方向に行かないよう、いろんな立場の人の意見を聴いて、慎重に対応していただきたいと思います。
Posted by 竹林社会保険労務士事務所 at 2005年04月28日 20:58
現状の「時間」主体での考え方の根底には「マルクス論」を感じています。戦後の復興では官僚主体の「社会主義的資本主義」が我が国の主流だったのではないでしょうか?
現在でも「時給いくら?」「休憩時間は?」といった条件で仕事を選ぶアルバイトが多いように感じます。

そもそも、「能力も個性も違う個人」を一律、時間給にすること自体に無理があるのではないでしょうか?

地方の労働者、事業主も含め、様々な角度から検証していく必要がありそうですね。

机上の空論にならない十分な論議がなされることを希望しています。
Posted by イラクへ行った社長 at 2005年04月29日 00:28
中丸社長、いつもコメントありがとうございます。

賃金は企業にとってコストであるとともに投資でもありますよね。そうすると投資に見合ったリターンを測る物差しが必要で、労働時間がその物差しにならないことは間違いありません。

逆に労働者にとってみれば唯一の生活の糧ですから、生産性が低い者は最低賃金で生活すればよいのか、馬車馬のように働くしかないのかというと、そういうわけにもいきません。

このバランスを取ることは、口で言うのは簡単でもどう落とし所をつけるかは大変な作業だと思います。労使の意見を足して2で割るような改悪にならないよう、私たちも注意して見ておく必要がありますね。
Posted by 竹林社会保険労務士事務所 at 2005年04月29日 01:29
竹林さん、こんにちは。
ご無沙汰しております。

今回のことは、ものすごく大きな意味を持つ転換となりそうですね。
竹林さんの、以下のご意見に賛同します。

(ここから引用)
実際、労働基準監督官の絶対数不足もあって労基法はザル法になっていて、労働者の申告があったり労災が起きてはじめて機能するといったレベルです。
 それならば規制は緩めるけれど、罰則や適用を強化する考えの方が余程実効性はあると私は考えていますので、この方針には原則肯定的な考えを持っていますし、今後この方向性で議論を進めていってほしいと期待しています。
(ここまで引用)

実態として、完璧に労働基準法を遵守することができる中小企業はほとんどないと思います。
そんな実態の中、「密告された」→「運が悪かった」と感じるような今の状況は何かおかしいですね。

今後の議論も見守っていきましょう。
今後とも宜しくお願い致します。
Posted by pensuk at 2005年04月29日 20:12
pensukさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。

仰るように「密告された」→「運が悪かった」という状況は異常ですよね。何らかの改正が必要な時期に来ていると思います。
ただ、JRの日勤教育ではないですが、何のために法改正を議論するのかを明確にしなければ、とんでもない方向に行きかねませんから、注目しておきたいと考えています。

今後もこの問題についてpensukさんのご意見をうかがわせていただければと思います。
こちらこそよろしくお願いいたします。
Posted by 竹林社会保険労務士事務所 at 2005年04月30日 03:20