出張の合間に都合をつけて、リバイバル上映フィルム「ヨコハマ・メリー」を観に行きました。
横浜の伊勢佐木町のミニシアター「ジャック・アンド・ベティ」では、シネコンなどで取り扱わないが良質な問題作を期間限定(1作品2週間~4週間程度)で上映しています。

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伊勢佐木町は、昭和の香りが残る庶民的な下町です。
大阪の鶴橋や西成を体感して育った私にとってはなじめる空気感ですが、おセレブ志向にとっては風俗街も近く、多国籍ブルーカラーが住む町は「子供の教育に悪い」と言うかもしれません。

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古い商業ビルのエントランスから2階までの短いエスカレーターがあり、時間にならないとチケットを売らない窓口で手もぎのチケットを購入。

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岡山で生まれ育ち、若くして結婚と離婚を経験して、戦後に占領軍将校の愛人として横須賀にやってきた「メリーさん」の周囲の人々のインタビューを中心としたドキュメンタリー。
朝鮮戦争に出兵した後に米国に帰国し日本に戻ってこないパートナーを思いながら、戦後の混乱の中を独特の立ち位置の娼婦として生き、1995年に故郷の老人ホームに安らぎを得るまで伊勢佐木町を中心に横浜市内でその姿を見ることができたといいます。

ミニシアターの社員さんによる、手作りのオブジェに心がこもっています。
地域に根付いた社交場としてのシアターらしさを感じます。

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最初の公開当時の貴重な記事、もう今は亡くなった「メリーさん」の貴重な写真が飾られていました。
フィルムの最後には実際に老人ホームで暮らす80歳近くなった「メリーさん」が収められていますが、若い頃は絶世の美女だったろうということがわかる、品のある横顔のおばあちゃんでした。
観客の中には実際に「メリーさん」が街角に立っていた頃、その姿を見たことがある方もいらっしゃいました。

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映画の半券をみせるとお得なサービスがあるという商店街でお茶タイム。
珈琲豆を目の前で焙煎していたカフェでアップルパイとアイスコーヒーが5%引きになりました。
伊勢佐木町の地域でミニシアターと映画文化を守ろうという心意気が感じられました。

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フィルムは「メリーさん」を主人公にしながら、実は、占領下にあった横浜の戦後混乱期その後の高度経済成長期、バブル崩壊までの移り変わりをも画面に映していました。
みなとみらいに象徴されるきらびやかな成長と、ネオンの下に置き去りにされた境遇で強く生きる名もなき人生と。

私の宿泊はGoToプランで海に近い桜木町のホテルでした。
高層階のお部屋からは誰もが知っている輝くような夜景が見えます。
闇が深いからこそ、ネオンは人の目をひくのか。
真昼の光の下ではネオンの価値がわからないから、わざと闇が必要なのか。

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『昼の陽の光の眩しさに、夜の闇の深さなどわかるものか』

ニーチェ「ツァラトゥストラはこう言った」より