私は、小学校から結婚するまでは東京の世田谷区、結婚後は横浜の青葉区に住んでおりました。世田谷区時代と青葉区時代は、それぞれ隣りの家で犬、および猫を飼っており、どちらもなかなかユニークな住民でした。 

犬はゴン、猫はボンという名前でしたが、各々が生きた時代には10年以上の隔たりがあり、両方の家には何の関係もないので、たまたま似た名前になったというだけです。私はゴンちゃんのほうは「ゴンの字犬」ボンちゃんのほうは「ボンの字猫」と呼んでおりましたが、この由来は自分でも思い出せません。 

ゴンちゃんは、見かけはそんなふうには見えませんでしたが、一応血統書が付いた四国犬だったらしいです。とても人懐こく、私とは仲良しでした。私が家にいると、塀の下を潜って遊びに来ます。下を通れるように自分で掘ってあるのです。構ってもらいたいので、受けを狙ってふざけた歩き方をしながらやって来ます。頭を落として、上目遣いで、左右に蛇行しながら・・・。私は、わざと気付かないふりをしてそっぽを向いています。すると、ほら遊びに来たぞ、とばかりに 
「ウオォゥ~ウオォゥウオォゥ~オウオウオウゥゥゥ・・・」 
私は、そこで初めて気付いたふりをして 
「あつ!ゴンの字犬だあつ!」 
と叫ぶと、悪ノリが一気に絶好調に達して、庭をすごい速さで走り回り、ひとしきり走ると飛び付いてきて噛む真似をするのです。 

ボンちゃんのほうは、ゴンちゃんと違って野良猫出身です。でも、飼い主はいわゆる高級住宅地に住んでいるのだという自負があるようで、飼い猫もそれに相応しいようにいつもきれいに洗ってありました。でもいくら洗っても、出自は隠せないようで、時々 
「ニャ~~~ォ」 
とコブシを効かせた野良猫独特の鳴き方をします。猫がコブシを効かせるというのも変ですが、この表現が最も分かり易いのです。演歌々手が 
「はぁなぁふぅぶぅきぃ~~~♪」 
なんて歌う時の、あの声です。 
飼い主のおばさんは、それが嫌いらしく、そのたびに 
「ボンちゃん、ダメでしょ。」 
何しろ「高級住宅地」の飼い猫に相応しくない鳴き方ですから。するとボンちゃん、かわいらしい声で 
「ニャ~ン♡」 
なんて言うのです。おばさんは満足して 
「そうそう」 

でもある日、虫の居所が悪かったか、飼い主をからかってやろうと思ったか、ダメでしょ、と言われたら、一層コブシを効かせて 
「ニィヤャァァァァ~~~~~~オ!」 
なんて鳴くものだから、笑ってしまいました。 

世田谷から青葉台に引っ越した時がゴンちゃんとのお別れでした。ボンちゃんのほうは、隣りの家が引っ越して行きました。 
犬や猫とは、哀しいものです。人間よりずっと早く歳を取って、いずれお別れの時が来ます。ゴンちゃんもボンちゃんも、それぞれの飼い主に惜しまれながらお別れをしたことでしょう。