2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 18:09:55.84 ID:agepgmZXP

辻垣内「お前有珠山のだろ」

成香「は、はい。そうですけど……」

成香「も、もしかして辻垣内さん……?」

成香(メガネ外してるし髪おろしてるから、一瞬わかりませんでした……)

辻垣内「こんなところで何してる」

成香「あ、いえその……」

辻垣内「……」ギランッ

成香「ひぃっ!」

辻垣内「……何をそんなにおびえている」

成香(そ、その長モノなんですか……)プルプル


3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 18:13:09.24 ID:agepgmZXP

辻垣内「ああ、これか?」チャキ

成香「あう……」カタカタ

辻垣内「これはドスじゃない」

成香「えっ」

辻垣内「……木刀だ」

成香(な、なんでそんなもの持ち歩いてますか……)

辻垣内「護身用にな。さすがにドスを持ち出したら銃刀法で捕まる」

成香(ど、ドスも持ってるんですかー!?)


5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 18:18:02.43 ID:agepgmZXP

辻垣内「私のことはいい。お前どうしたんだ」

成香「あ、えっと……実は迷子になってしまって」

辻垣内「迷子?」

成香「はい……ホテルへの帰り道で学校のみんなとはぐれてしまって」

辻垣内「……どこのホテルだ」

成香「そ、それが……あの、名前よく知らなくて……」

辻垣内「……」

成香「あ、えっとそのすみません! 自分で探しますから! ご、ご迷惑おかけしました!」ペッコリン


6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 18:23:14.96 ID:agepgmZXP

成香「で、では!」

辻垣内「……待て」グイッ

成香「ひゃうっ!」

辻垣内「……」腕時計チラッ

辻垣内(時間はあるな……)

成香「……?」

辻垣内「一緒に探してやる」

成香「……えっ、今なんて?」


8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 18:28:00.75 ID:agepgmZXP

辻垣内「一緒に探してやるといったんだ」

成香「……」

成香(つ、辻垣内さんが……?)

辻垣内「不服か?」

成香「え、……そ、そんなことないです!」

辻垣内「ならいくぞ」スタスタ

成香「ち、ちょっと待ってください!」タタッ


10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 18:34:03.98 ID:agepgmZXP

成香(ど、どうして辻垣内さんが迷子の私を助けてくれるんでしょうか……?)

成香「あ、あの……どこへ?」

辻垣内「まずは国際フォーラムまで戻る」

成香「……?」

辻垣内「お前の同伴者が探しに戻っている可能性があるからな」

成香「な、なるほど……」

成香(考えもしませんでした……)


11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 18:38:09.41 ID:agepgmZXP

黙って先を歩く辻垣内さん。何か話を振らなければと焦る私は、端から見ればさぞや滑稽だったでしょう。

成香「あ、あの……」

辻垣内「なんだ」

成香「つ、辻垣内さんはどうしてあそこに?」

辻垣内「……宵涼みがてら散歩をしていただけだ」

辻垣内「明日の試合もあるからな。少し息抜きでも、と」

成香「あっ……」

成香(そうでした……どうして私はそんなことにも気づかず……)

成香(今日のBブロック準決勝を勝ち抜けたのは清澄と臨海女子……)

成香(ということは明日の決勝、辻垣内さんは真っ先に試合をすることになる)

成香(こんなところで時間を浪費している場合ではないのに……)


13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 18:43:20.21 ID:agepgmZXP

成香「あの……申し訳ありませんでした」

辻垣内「……?」

成香「明日の試合もあるのに、私の都合に付き合わせようとしてしまって……」

成香「ホテルへは自力で戻ってみます……辻垣内さんはどうぞ明日に備えて英気を養ってください」

成香「それでは、失礼します……」

辻垣内「……フフッ」

成香「……えっ」

成香(わ、笑ったんでしょうか……?)

辻垣内「そんなことを気にしていたのか」ククッ


15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 18:49:56.38 ID:agepgmZXP

成香「だ、だって……」

辻垣内「今さっきお前に聞かれて答えただろう。私は息抜きで散歩をしていたと」

辻垣内「ちょうど暇を持て余していたところだ。気にするな」

成香「……ほ、ほんとによろしいんでしょうか?」

辻垣内「ああ」

彼女はほんの僅かだけれど頬を緩ませた―――それは、私が初めて見る辻垣内さんの優しい表情だった。

成香「……」ドキッ

成香(な、なんだか胸がザワザワします……)


17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 18:54:36.23 ID:agepgmZXP

成香「……」クゥ

成香「ひゃうあ!」

辻垣内「なんだ? 突然変な声を出すな」

成香(き、聞かれてなかったようです……)

成香「……す、すみません」お腹オサエ

辻垣内「……腹の虫か?」

成香「!」ギクゥ

成香(バレバレでした……)

成香「え、えとその……まだお夕飯食べてなくて……」カァア

成香(ま、まだ知り合って間もない人にお腹の音を聞かれるなんて……恥ずかしいです)


20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 19:02:40.48 ID:agepgmZXP

辻垣内「……じゃあまずはファミレスにでも寄るか」

成香「え、いえいえそんな! 私、お腹は空いててもまだまだ動けますから!」

辻垣内「いや、ちょうど私も空かせていたところだ。それに腹が減っては戦もできぬというしな」

成香「で、でも私……あまりお金がなくて」

辻垣内「どうせ領収書を切って経費で払うつもりだ。お前も分もおごってやる」

成香「そ、そんな! 悪いです」

辻垣内「人の行為を無下にするな……ほら、入るぞ」

成香「えっ、ここですか? ここすごくお高そうじゃ……」

辻垣内「いいから入れ。後ろが詰まる」


23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 19:10:09.50 ID:agepgmZXP

成香「……」ドキドキ

成香(なんだかお店の雰囲気に萎縮してしまいます……)

辻垣内「何でも好きなもの頼め」

成香「は、はい……」

成香(といってもどれにすればいいのでしょうか……)ペラッ

成香(さ、3500円!?)

店員「いらっしゃいませ。あら辻垣内さん、いらっしゃい」ニコッ

辻垣内「どうも、ご無沙汰してます」

成香(じょ、常連さんなんでしょうか……)

店員「注文はいつもの? 今日は餡蜜のデザート付きだけど」

辻垣内「じゃあそれで」


26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 19:19:58.38 ID:agepgmZXP

店員「お連れの方はいかがなさいますか?」ニコッ

成香「ひゃっ……あ、あのえと……」ワタワタ

店員「あ、ゆっくり考えていただいて結構ですよ」ニコニコ

成香「あ、ダイジョブです……す、すすぐに決めます」カタカタ

辻垣内「……」お茶ズズズ

成香(ど、どうしましょう……早く決めなきゃ……でもどれもお値段が高くて……)チラッ

成香(わわっ……店員さんも辻垣内さんも待ってる……)

成香(早く、早くしないと……あっ、ダメです……な、なんだかお顔が火照って……)カァア



辻垣内「……私と同じやつで」コトッ


27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 19:26:32.49 ID:agepgmZXP

店員「あら、いいんですか?」

辻垣内「ここへ連れてくるの初めてなので、とりあえず」

店員「かしこまりました」ニコッ


成香「……はぁ……す、すみません」

辻垣内「お前あがり症か?」

成香「は、はい……あまり人に注目されるのが得意ではなくて」

成香「学校でよくスピーチ大会があるんですが、そこでもよく噛んでしまいます……」

辻垣内「……」ズズズ

成香「あっ……わ、私の話なんてどうでもいいですね、すみません」

辻垣内「……」

成香「こ、ここにはよくいらっしゃるんですか?」


28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 19:32:05.35 ID:agepgmZXP

辻垣内「……ま、たまにな」

成香「……そ、そうなんですか」

辻垣内「……」ズズズ

成香「……あ、う」

成香(そ、そこで会話ストップしちゃダメです……! な、なにか喋らないと……)グルグル

辻垣内「……おい」

成香「えと……えと……っ」

辻垣内「おい」

成香「っ、ひゃい!」

辻垣内「……お茶飲むか?」

成香「お、お茶……ですか?」


30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 19:36:51.77 ID:agepgmZXP

成香「……」ズズズ

辻垣内「……少しは落ち着いたか」

成香「……っ、はい」

成香「ごめんなさい……なんだかテンパってしまって」

辻垣内「いや、私は別に気にしていない」

成香「ほんとに……ごめんなさい」シュン

店員「お待たせいたしました。日替わり御膳お二つでございます」

辻垣内「適当に並べてください」

店員「はーい」コトッ

成香「……あ、ありがとうございます」


32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 19:40:11.18 ID:agepgmZXP

店員「ごゆっくりどうぞ」ペッコリン

辻垣内「……じゃ、いただきます」

成香「い、いただきます」

辻垣内「……」ング

成香「……わぁ」

成香(な、なんだかものすごく高級感あふれる和食です)

辻垣内「……食べないのか」

成香「あ、いえ……いただきます!」

パクパク

成香「っ!」


35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 19:48:34.30 ID:agepgmZXP

成香「す、すごくおいしい……」

成香(あ、思わず声に出してしまいました……)

辻垣内「……フフッ」

成香「あ、ごめんなさい……っ、食べながら話すなんて」

辻垣内「いや、気にするな。昭和の時代じゃあるまいし」

成香「……っ」モグモグ

辻垣内「……お前、相当お腹空いてたんだな」

成香「……っ、……は、はしたなかったでしょうか……?」

辻垣内「いや、旨そうに飯を食う奴はキライじゃない」フフッ

成香「……っ、お、お腹が空いてたのもたしかなのですけれど、」

成香「それ以上のこのお店の料理に魅了されてしまって……」

辻垣内「まぁ、この店はたしかにいい料理を出すな」

成香「和食ってこんなにおいしいんですね……」モグ


39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 19:53:52.92 ID:agepgmZXP

辻垣内「ごちそうさま」

成香「……ごちそうさまでした」

辻垣内「どうだ、腹は膨れたか?」

成香「あ、はい……おかげさまで」

辻垣内「それはなによりだ」

成香「な、なんかこんなことしてていいんでしょうか。誓ちゃ……友達が私を探しているかもしれないのに」

辻垣内「焦っても仕方ないさ。それにちゃんと手は打ってある」ピッピッ

成香(ケータイ? 何をしてるんでしょうか……)

辻垣内「……よし、きているな」

成香「……?」


40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 19:55:26.27 ID:agepgmZXP

辻垣内「そういえばお前ケータイはもってないのか?」

成香「えっと、一応持っているにはもっているんですけれど……」

成香「普段は失くさないように誓ちゃ……友達のバッグに入れてしまっているので……」

辻垣内「……はぁ、ケータイの意味を全く成してないな」

成香「ご、ごめんなさい……」シュン

辻垣内「今さら過去のことをどうこう言っても仕方ない。それより今何をするかだ」

成香「そうですね……」

辻垣内「そろそろ店出るぞ」

成香「あ、はい」


41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 19:58:54.15 ID:agepgmZXP

東京国際フォーラム

成香「窓口はどちらでしょうか……?」

辻垣内「……あそこだ」

スタスタ

辻垣内「すみません、有珠山高校の生徒から何か連絡は受けていませんか?」

スタッフ「あら、辻垣内様。有珠山高校ですか……いいえ、こちらには何も」

辻垣内「そうですか……おい、お前名前はなんていった」

成香「あ……も、本内成香と申しますっ!」

辻垣内「では、もし有珠山の生徒から本内成香の所在を尋ねられた場合は、こちらの電話番号にかけるよう伝えてください」スッ

スタッフ「かしこまりました。明日の試合がんばってくださいね」

辻垣内「ありがとうございます」


43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 20:02:57.65 ID:agepgmZXP

成香「すごいですね……さっきも警備の人たちに声かけられていましたし、お店の店員さんとも……」

辻垣内「地元だからな。ここには去年も来ているし、必然的に顔見知りも増える」

成香「そ、それだけではないと思います。きっと辻垣内さんの人望が厚いからではないかと……」

辻垣内「褒めても何も出んぞ」

成香「そ、そういうわけでは……! ほ、本心からです」

辻垣内「……」

成香「辻垣内さん、今日の試合すごく強かったですし、明日だって……」

辻垣内「……私は人から期待を寄せられるほどの器じゃない」

成香「……辻垣内さん?」

辻垣内「……」

成香(わ、私もしかしてまた無神経なことを……?)


46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 20:12:47.35 ID:agepgmZXP

成香「……っ」

成香(もしかしたら、この人も周囲からの期待にプレッシャーを感じているのかも……)

成香(特に辻垣内さんは去年の個人戦で3位……寄せられる期待のほどは計り知れません)

成香(でもいくら強いからと言って、中身はまだ大人になりきれていない高校生です)

成香(プレッシャーに押し潰されそうになることだってあるはず)

成香(私もその気持ちは痛いほどわかります……それなのに)

辻垣内「お前の宿泊していたホテル……」

成香「は、はいっ?」

辻垣内「どんなだ……でかいか?」


48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 20:16:18.03 ID:agepgmZXP

成香「け、けっこうおっきいです……」

辻垣内「会場までは電車で?」

成香「はい……地下鉄だったと思います」

辻垣内「そうか……」ピッピッ

成香「あの、なにを……?」

prrrrrrrr

『お電話ありがとうございます。帝国ホテルでございます』

辻垣内「本内と申します。そちらに宿泊している有珠山高校に電話の取次ぎをお願いしたいのですが」

『畏まりました。少々お待ちくださいませ』


49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 20:20:38.96 ID:agepgmZXP

チンチロリン~♪

成香(も、もしかして今のヒントだけでホテルを特定してしまったというんでしょうか……?)

成香(ん? それよりもさっき辻垣内さんは自分のことを本内と……)

辻垣内「……」

『――お待たせいたしました本内様』

辻垣内「はい」

『大変申し訳ございません、当ホテルでは有珠山高校ご一行様の宿泊は確認しておりません』

辻垣内「そうですか、こちらの勘違いだったようです。お手数おかけしました……それでは」ピッ

成香「ち、違いましたか?」

辻垣内「……まだアテはある」ピッピッ


51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 20:28:20.93 ID:agepgmZXP

成香「あ、あの……あっ!」

成香(そうか……辻垣内さんはこの近辺のホテルに手当たりしだい電話をかけていってるんですね)

辻垣内「――そうですか、失礼します」ピッ

成香「す、すみません……私のためにこんな面倒なこと」

辻垣内「気にするなと言ったろう。謝られてばかりだとこちらも気が滅入る」ピッピッ

辻垣内「それに、都内にあるホテルのマッピングデータを送ってくれたのは私のチームメイトだ。感謝ならそいつにしてくれ」

成香「は、はい……ありがとうございます」

prrrrrrrr


53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 20:31:31.87 ID:agepgmZXP

辻垣内「ちっ……ダメか」

成香「あ、あの……あまり関係ないことなんですけれど、なぜ“有珠山高校は宿泊していますか?”とホテルの方に尋ねないのでしょうか……?」

辻垣内「……ホテルには守秘義務があるからな。素直に聞いても答えは返ってこない」ピッピッ

成香「しゅ、守秘義務……」

prrrrrrrr

辻垣内「だからカマをかけている……名前を偽っているのはその方がスムーズだからだ――はい、本内と申します……」

成香「な、なるほど……」

成香(こ、この人やっぱりすごいです……)

辻垣内「……はい……はい、そうです。お願いします」


54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 20:35:11.94 ID:agepgmZXP

成香「み、見つかりましたか?」

辻垣内「ああ、そのようだ」

成香「よ、よかった……」ホッ

『……お電話代わりました。真屋です。成香先輩ですか?』

辻垣内「……真屋という子だ」スッ

成香「あ、ありがとうございます……!」

由暉子『もしもし……?』

成香「あ、もしもしユキちゃん? な、成香です」

由暉子『まったく……どこ行ってるんですか? 先輩方みんな探してますよ』


57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 20:40:12.59 ID:agepgmZXP

成香「そ、それが迷子になっちゃって……」

由暉子『はぁ……今どこですか?』

成香「し、試合会場のすぐそばです」

由暉子『国際フォーラムですか……じゃあ今から爽先輩たちに電話して迎えに行ってもらいます』

由暉子『絶対にそこ動かないでください。いいですね?』

成香「う、うん……ごめんなさい」

由暉子『いいですよもう……それよりよくホテルの電話番号わかりましたね。ケータイ忘れてってるのに』

成香「い、一緒に探してくれた人がいて……」チラッ

辻垣内「……」


59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 20:45:12.49 ID:agepgmZXP

由暉子『へえ……まあどうでもいいですけど』

成香「ゆ、ユキちゃんひどい……」ガーン

由暉子『それじゃあ電話切りますよ。絶対に動かないでくださいね』ピッ

成香「う、うん……って切れちゃいました」

辻垣内「……」

成香「……はぁ」

辻垣内「……ここで待ってろと?」

成香「はい……なんだかずいぶん大事になってしまったみたいで」

辻垣内「……」


61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 20:51:01.83 ID:agepgmZXP

成香「今日の試合でも辻垣内さんにボロボロに負けて、そのうえ迷子になって……」

成香「チームに迷惑かけてばかりです私……ほんとダメダメな子ですね」

辻垣内「……」

成香「辻垣内さんにもご迷惑おかけしました……ほんとにごめんなさい」

辻垣内「……」クルッ

成香「あ、あの……」

スタスタ

成香(つ、辻垣内さん……呆れて帰っちゃったんでしょうか)

成香「……」グスッ


62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 20:55:44.63 ID:agepgmZXP

成香(誓ちゃんたちまだかな……)

ピトッ

成香「ひ、ひゃぁっ!」

辻垣内「ふっ……お前、リアクションがいちいち大げさだな」

成香「つ、辻垣内さん……!?」

辻垣内「ほら、差し入れだ」ヒョイ

成香「お、わわっ……と」

辻垣内「コーヒーは嫌いか?」カキンッ

成香「い、いえ全然! ありがとうございます……っ」

成香(ぜ、全然ってなんでしょう……私ってば意味の分からないこと)ドキドキ


64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 21:01:26.86 ID:agepgmZXP

ゴクゴク

辻垣内「もしかして、私が帰ったと思ったのか?」

成香「え、どうして……」

辻垣内「だって今ベソかいてただろお前」

成香「え、えっ……!?」ゴシゴシ

辻垣内「……冗談だ」

成香「……えっ」

辻垣内「……フフッ」

成香「……つ、辻垣内さん……イジワルです」ウルッ

辻垣内「くくっ……」

無邪気に笑う横顔――それは本日二度目の、私が見た辻垣内さんの優しい表情。


67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 21:08:28.95 ID:agepgmZXP

成香「……辻垣内さんもそんな風に笑うんですね」

辻垣内「ん?」

成香「あ、いやっ……えっと」

成香「こ、こんなこと言うのは失礼かもしれませんが……その、もっと冷たい人かと思ってました」

辻垣内「よく言われるよ」

成香「そうなんですか? ……でも、ほんとは優しい方ですよね」

辻垣内「さっきも言ったが、褒めても何も出んぞ」

成香「……いいです、缶コーヒーもらいましたから」ニコッ

辻垣内「……フフ、たしかにそうだった」


68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 21:14:11.80 ID:agepgmZXP

成香「……」コクコク

辻垣内「……お前、さっき自分がダメダメとか言ってたな」

成香「っ……は、はい」

辻垣内「……たしかにそうかもな」

成香「あ、あう……」

辻垣内「すぐオドオドするし、私に麻雀でボロ負けするし……その歳で迷子になるポンコツだし」

成香「……か、返す言葉もないです」シュン

辻垣内「……いいじゃないか、それでも」

成香「……えっ」


70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 21:19:31.08 ID:agepgmZXP

辻垣内「お前のそういったところも含めて、認めてくれる人間が近くにいるだろう」

成香「わ、私を認めて……はっ!」

成香(誓ちゃん……爽先輩……揺杏ちゃん……ユキちゃん……)ギュッ

辻垣内「心の支えがある限り、人はがんばれる」

辻垣内「……お前は、お前自身のペースで進んで行けばいいさ」ゴクッ

成香「……っ」

成香(辻垣内さん……ありがとうございます)

成香「そ、そうですね……っ」

辻垣内「……? なに泣いてるんだお前」

成香「……っ、な、泣いてません」

辻垣内「……ほら」スッ

成香「へ、変な柄のハンカチですね……っ」ゴシゴシ

辻垣内「……余計なお世話だ」


71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 21:22:20.79 ID:agepgmZXP

辻垣内「……」

成香「……」

しばしの静寂……でも、最初と違ってそれは全く苦痛ではなくむしろ心地の良いものでした。

辻垣内「お前、明日の試合は見るのか」

成香「えと……はい、そのつもりです。同じブロックで戦った相手として、臨海女子と清澄は応援したいですから」

成香「……それに、」

辻垣内「……?」

成香「そ、それにっ! 今はなんというかその……わ、私個人として辻垣内さんを応援したい気持ちもありますし……」

成香(な、なにを言ってるんでしょうか私……)カァア

辻垣内「そうか……」

成香「……はい」


72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 21:26:03.47 ID:agepgmZXP

辻垣内「……」

成香(なんて声をかけたらいいでしょう……)

成香「あ、明日……」

――私は人から期待を寄せられるほどの器じゃない

成香「明日は……辻垣内さんらしく打ってきてください」

辻垣内「……」

成香「私と戦った時と同じように……その……あ、あまり気構えず」

辻垣内「……フフ、もしかして私に気を遣ってるのか?」

成香「え、っと、あの、いや……っ、それは」

辻垣内「わかってる……さっきの私の言葉は気にするな。少し弱気になっただけだ」

成香「あ、……いえ……」

成香(や、やっぱり辻垣内さんにはなにもかもお見通しなんですね……)


73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 21:30:52.68 ID:agepgmZXP

成香「き、緊張してますか?」

辻垣内「……そりゃあな」

辻垣内「明日はあの宮永照との対局だ」

成香(去年の個人戦チャンピオン……辻垣内さんを負かした相手ですね)

辻垣内「私にとっては因縁の敵……去年の雪辱を晴らすためにも負けられない。他の二校も油断ならない奴ばかりだ」

成香「……」

辻垣内「応援してくれるサポーターはもちろん、後に控える仲間たちの期待は大きい……」

辻垣内「それを背負う覚悟はもうできている……今さらそこから逃げることは許されない」



辻垣内「……だが、そのうえで私は、お前の言ったとおり“私らしく打つ”。私が思う最善を尽くす。それだけだ」

成香「そう……ですね。それが、辻垣内さんらしいと思います」

成香(やっぱりこの人は強いです……わたしもいつかこんなになれたらな……)


75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 21:35:18.60 ID:agepgmZXP

辻垣内「緊張しているといったが、それもだいぶほぐれたよ……お前のおかげでな」

成香「わ、私ですか……!?」

辻垣内「お前のおっちょこちょいぶりを見ていたら否が応にも、な」ニヤッ

成香「な、なんだか嬉しいような悲しいような……複雑な心境です……」ガクッ

辻垣内「フフッ」



成香「……辻垣内さん、今日は本当にありがとうございました」

辻垣内「いいってことよ」

成香「……」

成香(もうすぐ、お別れですね……)


76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 21:39:13.08 ID:agepgmZXP

「……お~い!」

成香「あ、誓ちゃん!」



誓子「ふぅ……やっと見つけた」

揺杏「まったく~。探したよ、成香」

成香「ご、ごめんなさい……」

爽「ん、アンタたしか臨海の」

成香「彼女……辻垣内さんが私を助けてくれたんです」

辻垣内「大したことはしていない」


77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 21:42:16.11 ID:agepgmZXP

誓子「すみません……どうもうちの後輩がお騒がせしてしまったようで」

辻垣内「いや、見つかってなによりだ」

爽「う~~~む……」

揺杏「どしたの爽」

爽「……なんかアンタ、私のイメージと違うね。人助けとか」

誓子「ちょっと爽、なに言いだすの」

揺杏(むしろあたしはイメージ通りなんだけどなァ……)木刀チラッ

成香「辻垣内さんはすっごく優しい方ですよ」ニコッ

辻垣内「おい余計なこと……」

揺杏「なんかずいぶん懐いちゃってるね」

爽「もしかして成香、こいつに誑かされて……」

成香「ち、違いますよっ!」


78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 21:46:50.77 ID:agepgmZXP

爽「じゃま、ともかくうちの子引き取るね」

辻垣内「ああ、今度からちゃんとケータイは持たせておけよ」

誓子「あはは……面目ない」

揺杏「どうもっした~」

スタスタ

成香「あ、あの……少しだけ待っててください、みなさん」

揺杏「あら、どったのなるきち」

成香「す、少しだけ辻垣内さんにお話が……」

揺杏「おお、その心は?」

成香「えっ……あの、その……っ」ドギマギ

爽「や、やっぱり誑かされて……」

誓子「こらこら、変な詮索しないの……行っといで、成香」

成香「う、うん……っ」タタッ


79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 21:49:28.58 ID:agepgmZXP

成香「あ、あの……」

辻垣内「ん、どうした」

成香(こ、言葉に詰まります……どう言ったらいいものか)

また辻垣内さんに会いたい……それだけのことも言えないなんて……。

成香「ま、また……っ、その……」ドキドキ

辻垣内「そのハンカチ……」

成香「えっ……」

辻垣内「そのハンカチ、今日は貸しといてやる」

成香「……あっ」

辻垣内「だから、また近いうちに返しにこい。いいな?」

成香「……っ、は、はい!」ニコッ

辻垣内「……」フフッ


80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 21:51:32.84 ID:agepgmZXP

私、まだまだ未熟なところがたくさんあります。

けれど、この日をきっかけに変わる勇気が少し持てた、そんな気がします。

自分にできることを精一杯やって、いつか辻垣内さんのように自分に自信が持てる人に成れるよう頑張ります。

また後日、辻垣内さんにハンカチを返しに行ったのですが、それはまた別のお話です。



カン


81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/01/21(火) 21:52:58.31 ID:lHVO3owf0


この組み合わせ流行って欲しいな



元スレ:辻垣内「……おい」 成香「ひっ!」ビクッ

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