2: >>1代行ありがとうございます 2012/08/31(金) 20:02:28.03 ID:wfso8bBk0

八月も終わりに近づけば、夕頃には思いのほか涼しい風も吹く

心無しか日も短くなりつつあるようにみえた

その気配さえ見せずに、次の季節はあゆみよってくる

暮れ入る空には、オレンジが大気を焼いていた


校庭の砂利を少女が足早に散らす


ちなつ「ゆーいせーんぱいっ」


結衣「ちなつちゃん」



下校時刻間際の正門では、管理の教員が退屈げな声で生徒たちを急かす

夏休み最後の登校日だった


4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/31(金) 20:04:27.35 ID:wfso8bBk0

運が良かった――のではない

教室から遠目に先輩の姿を認めてわざわざ駆けてきたのだから


結衣「ずいぶん遅いね」


ちなつ「はい、うちのクラスは文化祭の準備もやってて」


そっか、と

先輩はふわりと前髪をはらってほほえんでみせた


ああ、久しぶりだなぁ


夏休み、ちょっとばかりご無沙汰していたこの軽やかな笑みに

胸の下からこんこんと高揚感があふれる


6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/31(金) 20:08:00.74 ID:wfso8bBk0

おもむろに小首をかしげる先輩

結衣「そういえばあかりは?」

ちなつ「あかりちゃんなら、ちょっと前に先に帰っちゃいました」

ちなつ「えと、何か家の用事があるとか、何とかで……」


一抹の胸の痛み、理由は分かっている


結衣「じゃあ、いっしょに帰ろうか」


一転、ためこんでいた高揚感を、そっくりそのまま溢れ出させるように、満面の笑みで返事をした


けど


またあかりちゃんにお世話になっちゃったなぁ

鞄を掛け直して先輩を肩を並べた

閉門とともに重い鉄の音がした


7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/31(金) 20:09:33.44 ID:wfso8bBk0

単なる恋愛相談を仰々しく「作戦会議」と呼んで、二桁にも及んだそれには

幼子が結託してわるだくみを企てるときのような、甘酸っぱい興奮があった

それは駅前のカフェで、それは大通りのファミレスで、

それは学校の図書館で、それはわたしの部屋で、

あるいはまた、あかりちゃんの部屋で


休み中、首尾よく先輩と遊びにいったりできたのも、思えば「作戦会議」の賜物

髪型、服装、デートコース、誘いの言葉、待ち合わせ場所、挨拶のかけ方まで

少しでも不安なことは二人の「会議」にあがるのだった


9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/31(金) 20:13:03.54 ID:wfso8bBk0

仰々しく専用のノートを用意した

「恋は盲目」とは良く言ったもの

かえりみれば逃げ出したくなるほど恥ずかしいタイトルを書きなぐった

とても他のひとには見せられるものではない


あかりちゃんと二人

言葉が言葉をつむいで、思いつきが思いつきを呼んで

無難な策から荒唐無稽な考えまで、何もかもをノートに書き込んでいった

どこまで本気だったのだろう

ひょっとして、ひょっとしてだけれど

あかりちゃんと、ああしていること自体が楽しかっただけなのかもしれない、と言えば

結衣先輩への自分の想いにちょっと不誠実だろうか


二つのお団子が特徴的な小さな女の子は

わたしの無茶にいつでも真剣な言葉で応え

わたしの戯れにいつでも純真な笑顔で応えてくれた


10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/31(金) 20:16:48.35 ID:wfso8bBk0

先輩と帰路を分つ十字路

影の長い電柱が、田舎道の隙間を埋めるように並ぶ

実り始めの稲穂が夕焼けに照り返って眩しい


結衣「それじゃちなつちゃん、また休み明けに」

ちなつ「はいっ、また!」


先輩は、口元をほころばせて小さく手を振ってくれた

ごらく部でみんなに見せる涼しい笑みとはちがう、ちょっと幼げな笑顔

それはきっと………


こんな浮ついた言い方が、思い込みや自惚れと区別できるのか、ちょっと不安ではあるけど

たぶん先輩とわたしは、「良い感じ」なはずだ


アスファルトを踏む歩みとともに幸福を噛みしめる


夕日が山の端で最後の輝きを謳歌していた


11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/31(金) 20:19:38.50 ID:wfso8bBk0

湯上がりには少し涼しすぎる風が吹き込んでくる


ーー週間天気予報、七森市は今晩から明日朝にかけて雨、午後からはーー


ともこ「ちなつ、そろそろ部屋にもどってやすみなさい」

ちなつ「ん、おやすみ、お姉ちゃん」


もう降り始めている


12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/31(金) 20:21:35.68 ID:wfso8bBk0

階下で雨戸の閉まる音がした


机の電灯だけが明るい


手ざわりのよい木の引き出し

それは申し分程度の簡単な鍵を備えていて

誰も探りなどしないのに

いつでもそこにそれは隠し収められ

秘密の名にふさわしい手厚い保護の下にあるのだった


ところどころよれたノートを

そっと

手のひらで撫でる



ちなつ「ありがとう、あかりちゃん」


14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/31(金) 20:23:54.95 ID:wfso8bBk0

頬を撫でれば薄手のパジャマの袖が濡れる


あかり「ありがとう」

あかり「ちなつ…ちゃん…」


雨音の隙間に細々と虫の音が響いていた


15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/31(金) 20:25:15.41 ID:wfso8bBk0

代行してくれた方、支援してくれた方、ありがとうございました

二度目の投稿も短編書くだけで一苦労
果たして長編を綴る日は

それでは\アッカリーン/



元スレ:ちなつ「ありがとう」あかり「ありがとう」

他サイト様の最新記事