2019年01月02日

初夢ではなくなった現実のAI?

2014年に京都の川柳「凛」誌に責任者の
こうだひでお氏のご厚意で下記の夢物語りを載せて
戴いた。5年後の今、参考にアップしてみた。
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 「川柳夢遊」            丸山 進
川柳を長くやっている人によると五年毎くらいで壁にぶつかるという話をよく聞く。私は一七経ったが確かに
思い当たる気がする。それ以外の時期でも迷ったり悩んだりは絶えずあったので、五年は大きな節目というように捉えている。名古屋の「川柳みどり」の大会は私のデビューの場であり、そこには多くの凄い先輩(歳は無関係)が選者やゲストで参加されいろいろ教えてもらった。
石部明さんや石田柊馬さんやなかはられいこさん他で挙げればきりがない。そこで、まだ初心の頃、徳永政二さんから「そういう作り方をしているといつか壁に当たるよ」と言われた。昨年は樋口由紀子さんから酒席で「地元で講師をやっているようだが、初心者の添削やお手本川柳を作って見せたりしていると、表現を開拓するという感性が鈍るよ」と言われた。どちらも胸にずきんとくる話だったが、そう言われても何かの因縁で走っている道であり、車は急には止まれないと思いつつ蟠りは残った。もやもやを抱えて年を越し、年初から風邪で少し体調を崩したりして、日常的な川柳の宿題が中々できない日が続いた。そんなある日、うなされるような夢を見た。
前置きが長くなったがその夢を以下に紹介する。夢は録画できず、記憶の断片を繋いだだけなので論理的でない所が多々あるのはご容赦願いたい。これが私や川柳にとって悪夢なのか一縷の希望なのかは分からない。
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『夢の話』
最近、著名なネット句会で無名の新人がいつも好成績をあげて話題になっている。それも半端な成績ではなく天位や特選などのトップ賞ばかりである。一度や二度なら単なる気まぐれか神のいたずら程度で、じきに忘れられるのが気軽で飽き易い面を持つネットの一時的現象と誰もが思った。ところがその勢いは止まることがない。       
とうとう全国区のハイレベルで人気のネット句会でもいきなり最優秀賞を獲得した。選者は誰もが知っている実力者である。受賞者の名前は「キリマクルヨ」だ。
ネットでは雅号というより防犯上ハンドルネームを使うことはよくある。挑戦的な名前と数々の実績から「キリマクルヨ」は何者だ、と犯人捜しのようにベールを剥がしたくなるのが世の常だ。柳界にスーパースター出現とか、実力のある大御所が名を隠して若手に刺激を与えるため投句しているのではとか、裏で主催者が不正なやり方をしているのでは等、噂や話題が尽きない事態になった。句会の主催者に問い合わせが殺到した。
主催者側としては、ルール通り投句しているし、厳正に選をしている。賞品は所定の住所の「キリマクルヨ」宛に送れば、受け取っているので何ら問題はないという見解。住所は実在の都心の高級マンションということも分かっていると。
ただし電話は何度かかけたが呼び出してはいるが出ないとのこと。ネットでなく当日実施の大会に参加してくれれば謎は一気に晴れるのだがと、関係者は溜息をつくばかり。そうこうしているうちにも独り勝ちの実績はどんどん積み重ねられて、ネット句会だけでなく誌上句会でも同様になった。関係者が必死に、本人?に電話や手紙で接触の努力を続けていたら、やっとある日、電話が繋がった。相手は若い女性の声で「キリマです」と名乗った。実情を話し、インタビューを申し入れたら、都合がつかないと拒否していたが、根負けして指定する某所で会うことになった。ただし写真はダメという条件で。
関係結社の責任者と雑誌の女性編集者が一緒に代表として訪問することになった。待ち合わせの静かな喫茶店に行ったら既に彼女は待っていた。どう見ても三〇代としか思えない淑やかで聡明そうな女性だった。
以下は訪問者(Q)とキリマ(A)の問答形式の会話である。(挨拶等は除き要点のみ)
Q:キリマクルヨさんの本名は?
A:キリマクルヨが本名です。
Q:なぜ川柳の投句始めたのですか?
A:研究の仕事をしていますが、その気分転換にいいかなと思いやってみました。
Q:どんな研究で、それと川柳との関係は?
A:大学の研究室で未来科学、特に脳の進化や退化を研究しています。仕事の疲れを癒すためネットサーフィンをしていたら、ネット句会という川柳の競吟が溢れているので遊んでみようと思いました。脳の進化と予測に日夜大学のスーパーコンピュータを使っているのでその環境を利用しました。将棋や囲碁でプロの実力者が電脳棋士(コンピュータ)に負けたというニュースを見ました。将棋等は指し手の組み合わせは膨大ですが、いずれにしろ論理の世界です。 
コンピュータの急速の進歩を思えば早晩、人が完璧に負けるのは明らかです。五七五の言葉からなる川柳の言葉の組み合わせは無限ではないが、将棋等に比べればはるかに膨大です。それに論理だけでなく言葉の世界特有の曖昧さや感情、リズムなど価値の多様性があります。脳と言葉の関係は乱雑で曖昧の中に解を求めるという類似点があります。大学での専攻は数学で群論やファジー理論やゲーム理論が得意だったので、それを活用できる脳の研究の道に入りました。
Q:じゃあ川柳をコンピュータで作ったのですか?
A:いいえコンピュータはあくまで道具です。有能な道具が最適な解を出すための指示は人間が与えます。
Q:投句に際して具体的にどんな作業をするのですか?
A:基本はデーターベースです。川柳のデータはバラバラですが、ある所にはあるので、借用しました。
句集や柳誌は図書館や知人からかき集めて可能な限り入力しました。この作業は脳の研究にも役立つのでアルバイトの学生を数人使い約一年かかりました。その後、作家や結社、風土、詩性、私性、喜怒哀楽、曖昧、衝撃、時事、エロス、リズム等の要素や特徴を分析しました。それをパラメーター(変数)化し、数値で設定できるようにしました。料理の味付けと同じで言わば秘伝のタレです。それを句会の題や選者や場の句風等に合わせて設定し句を作りました。
Q:それは簡単なのですか?
A:データーベースがあるので、パラメーターの選択・設定だけでパソコンの数タッチで終わります。
Q:ネットでなく大会に出かけて参加しても受賞の自信はありますか?
A:あります。題が決まっていれば同じようにして作って行き、席題はスマホのような簡易なネット端末を使います。皆さんが電子辞書を使うのと同じ感覚です。ただし仕事が多忙で外出は無理です。
Q:選者をお願いしたらできますか?
A:投句一覧の優劣順序付けや、場に合った最高の句を選ぶのは、事前投句データの入力が終われば瞬時に結果は出ます。類想句や暗合句のチェックも簡単です。大会会場での選は簡易なネット端末と句箋リーダーで同様な結果が得られます。ただし、これも私の時間的な問題と場の雰囲気やルール等も含めてモラルとしての違和感があると思われますので受けるつもりはありません。
Q:五七五に俳句もあるが、なぜ川柳にしたのですか?
A:俳句はルールやデーターベースがしっかりしているので川柳より取組み易いと思います。川柳の、何でもありの乱雑さが、脳の進化や予測の研究対象として、より魅力だからです。
Q:こういう形での投句をずっと続ける予定ですか?
A:遊び心で始めた「電脳柳人」的挑戦は可能性と成果を確認できたし、正体もバレたので、もう止めます。
Q:「電脳柳人」が川柳人を制覇したということですか?
A:いいえ。五七五の言葉の組み合わせは、まだ手つかずの膨大な量があります。今の句会等では表層のほんの一部だけを使い回している感じです。その膨大な深層部を人が開拓しだしたら「電脳柳人」は追従できないでしょう。一部の柳誌ではそんな試行や挑戦も見られます。その中には宇宙人か類人猿かと見紛う発想があり、その辺の分析は未完のままです。
Q:研究の成果や仕掛けを公表できますか?
A:遊び心で始めた実験が人類の進化と共存のための本題の研究と密接に関係することが分かりました。
  本題の成果発表には数年かかり、その前にリークはできません。それと高齢者の脳の進化と川柳の関係が顕著だということも分かりました。便利な道具を使わず試行錯誤することが、生きがいになり脳にもよい影響を与えているのです。そういう意味では研究の一部を切り出して「電脳柳人」的道具にして公開するのは、伝統文芸である川柳の偉大な価値の冒涜のような気がしますので、公開には否定的です。 
Q:一人の女性として裸で川柳をやりませんか?
A:興味はありますが、それより研究に専念し、一段落したら、真面目に裸で恋愛や結婚や子育てをしたいです。高齢者になったら、人生の体験を活かして、マイペースで川柳をやってみたいです。
Q:貴重な時間をありがとうございました。差し支えなければ名刺をいただけますか。
A:はい。勝手なことを言い、大変お騒がせして失礼を致しました。(と次のような名刺を出した)
  〇△大学未来科学研究室長 理学博士 桐馬久留代


ssm51 at 12:43│Comments(2)clip!評論 | 詩歌

この記事へのコメント

1. Posted by 大西俊和   2019年01月04日 21:57
桐馬久留代さんのインタビュー、リアルですね。表現の世界にAIが関与すること、恐ろしいですし、興味深いです。そんな世界に背中を摩られたような感覚で読ませて頂きました。対談の続きを読みたいです。お時間の許すときに、よろしくお願い致します。
2. Posted by マル   2019年01月04日 23:40
俊和さん
拙文に目を通していただきありがとうございます。
AIの進化のスピードは速く、川柳も囲碁や将棋やチェスそして麻雀もかな、と同様にAIに圧倒される日がより近づいたような感じがします。
作戦や成果を絶対忘れないで利用して育っていくのが強みですね。

キリマクルヨの名はクレヨンしんちゃんの漫画で「売間久里代(うりまくりよ)」という辣腕セールスレディが出てくるのがありました。それをヒントにしました。

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マル

川柳をやってます。
川柳は金もかからず、金にもならないのが魅力です。
短詩系や文芸全般にも興味はあります。

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