1: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/08(土) 00:11:38.26 ID:3ReyzmEC0


ダンガンロンパ1と絶対絶望少女のネタバレあり

独自の解釈や設定多数あり

1のキャラと要救助民の短編です



2: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/08(土) 00:16:18.19 ID:3ReyzmEC0

~石丸編~
 

石丸「1、2、3、4!」

石丸「5、6、7、…ん?」

高秋「ただいま、清多夏」

石丸「お父さん!お帰りなさい!」

高秋「いつものことながら早いな」

石丸「お父さんは夜勤ですか?お疲れ様です」

高秋「ああ、警察官である以上夜勤は仕方がない。さあ、立ち話もなんだ。中に入ろう」




高秋「最近学校の方はどうだ?」

石丸「昨日模試の結果が返ってきましたが、今回も全国1位でした!」

高秋「そうか、流石だな。私が学生の頃とは大違いだ」

石丸「そんなことはありません!僕は警察庁の警察官として人々のために働いているお父さんをとても尊敬しているのです!」

高秋「はは、お前にそう言って貰えてうれしいよ」

高秋「だがお前は誰よりも努力し、そして結果を残している。それは誇っていいことだ」



3: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/08(土) 00:17:24.65 ID:3ReyzmEC0

石丸「人生とは努力で切り開くものであり、人生には努力するだけの価値がある…僕はそう思っています」

石丸「僕は…お祖父さんのようにはなりたくないのです」
 
高秋「………」

石丸「確かにお祖父さんは天才でした。人々の尊敬も集めていました」

石丸「でもそれゆえに世の中を甘くみているところが、あの事件につながったのでしょう」

石丸「そしてお祖父さんの周りにあれだけいた人たちが最後には離れていった」

石丸「その時僕は思ったのです。一度躓けば天才ほど脆いものはない。努力の力こそが人生を切り開くのだと」

石丸「僕は努力の力でお祖父さん以上のことを成し遂げたい。しかし全ての努力が報われる訳ではないこともわかっているのです…」

石丸「だから僕は努力をした者が報われる社会を作っていきたいと思うのです!」

高秋「……お前にはそのことで多くの苦労をかけた… しかしそのことでお前が前向きになってくれたのなら…少しは良いこともあったのかもしれんな」

石丸「はい!」




4: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/08(土) 00:18:49.63 ID:3ReyzmEC0




高秋「ところで勉強以外はどうなんだ?」

石丸「この前の体育祭では僕のクラスが優勝しクラスメート達と喜びを分かち合うことができました!……ただ…」

高秋「何だ?」

石丸「やはり僕には同世代の人と打ち解けるのが苦手なようです… 普段の何気ない会話になると途端に話が弾まなくなってしまう…」

高秋「うむ、そうか… 確かにお前は昔から友達を家に連れてきたりというようなことは無かったな…」

石丸「うぅぅ…!僕の努力が足りないばかりに!」ブシャアッ

高秋「そ、そういう問題でもないと思うが… だがまあ苦手なのは間違いないかもしれん。兄弟でもいればまた違ったのかもしれんが」

石丸「兄弟?」

高秋「ああ、年の近い兄弟がいればそういったことも学べたかもしれない」

石丸「なるほど…」

高秋「だが気にするな。お前にもいつか必ずお前のことを分かってくれる友人ができるはずだ」

高秋「だからその時はその友人を大切にしなさい」

石丸「…」





5: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/08(土) 00:21:56.21 ID:3ReyzmEC0




石丸「お父さん!!!」

高秋「どうした?そんなに慌てて」

石丸「こ、こ、こ、これを…!」

高秋「ん?これは…!」

石丸「希望が峰学園の…入学案内です!!!」

高秋「ということは、お前が…」

石丸「希望が峰学園にスカウトされたようです。超高校級の風紀委員として!!!」

高秋「そうか、お前の努力が…また一つ報われたな」

石丸「う、うわあああああああああああ!!!」ブシャアッ

高秋「ははっ、何も泣くことはないだろう」

石丸「うぅ……」

高秋「それで…もちろん行くのだろう?」

石丸「…」

高秋「ん?どうした?まさか行く気がないのか?卒業すれば成功を約束されたも同然と言われる希望が峰学園だぞ」

高秋「きっとお前の夢の力になってくれるはずだ」

石丸「確かにそうなのですが…」

高秋「ならどうしたと言うんだ」

石丸「希望が峰学園は全寮制なのです… だから、お父さんとお母さんを家に残していくことに…」



6: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/08(土) 00:23:47.59 ID:3ReyzmEC0

高秋「全く……何を気にしているかと思えばそんなことか」

石丸「し、しかし…」

高秋「お前は昔から聞き分けのいい子だった。我が儘一つ言ったこともない」

高秋「だがな、我が儘言っていいんだ。子供が親に自分の進みたい道くらい我が儘言わなくてどうする」

石丸「お、お父さん…」プルプル

高秋「希望が峰学園に行きなさい。私たちのことは心配するな」

石丸「ありがとうございます!!!!!」ブッシャアアアアアア!

高秋「!?」

石丸「ぼ、僕は…グス…せ、せいいっぱい…努力して…ズズ…」ボロボロ

石丸「うわあああああああああああ!!!!!」ブシャアッ

高秋「わ、わかった…もうわかったから」

石丸「は、はい…」





高秋「清多夏、頑張るんだぞ!」

石丸「はい!」



7: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/08(土) 00:28:32.62 ID:3ReyzmEC0

石丸編終わり

次の話はまた書き溜めてから投下します

ちなみにゼロ未読なので霧切さんの話は厳しそうです

それ以外は今のところ全員分書く予定です



15: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/08(土) 23:52:18.54 ID:3ReyzmEC0

~セレス編~


「安広さん、ごめんね。委員でもないのに手伝って貰っちゃって…」

「フフッ、いいのよ。特に予定もなかったしね」

「ありがとう!やっぱり安広さんは頼りになるね!」

「それじゃ、私こっちだから…」

「うん!じゃあね!」

「ええ、また明日」



 ガチャッ

「ただいま」

「………」

 『今日も遅くなります。夕飯は食べててください 母より』

「…」



セレス「ああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁっっ!!!!!!!」ガッシャーン!!!

セレス「なぁ~にが『安広さん!』だあのイモ女!!!!」

セレス「私の名前はセレスティア・ルーデンベルク!!!安広なんてダセェ苗字で呼ぶんじゃ…」

セレス「ねええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」バキ!

セレス「……まあ、仕方ありませんわね。表でこの名前を名乗るわけにはいきませんもの」

セレス「さっさと部屋に戻って着替えるとしましょう。今日は『勝負』の日ですもの」



16: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/08(土) 23:54:19.00 ID:3ReyzmEC0




グラン「にゃ~」

セレス「うふふ、いい子にしてましたこと、グラン?」

グラン「にゃ~ん」スリスリ

セレス「あら?あなた…」

グラン「?」

セレス「また大きくなりました?」

グラン「にゃあ」

セレス「うふふ、どこまで大きくなるのかしら?本当に猫なのか疑わしくなりますわね」ナデナデ

グラン「にゃぁ…」

セレス「あらあら、別に私は疑ってはいませんわよ?ちゃんと血統書もついていますし」

セレス「それにこのセレスティア・ルーデンベルクの家族ですもの。普通の猫と同じでは困りますわ」

グラン「にゃあ!」

セレス「もう膝に乗せられないのが残念ですけれど…」

セレス「さて、早速出掛けますわよグラン。今日は久々の…」



セレス「ギャンブルですわ」



 『○○さんの家に泊まりに行ってきます 多恵子』

セレス「これで私は家にいなくても騒ぎにはなりませんわね」

セレス「まあどうせ朝まで帰って来ないでしょうけど」





17: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/08(土) 23:56:33.93 ID:3ReyzmEC0




セレス「ごきげんよう」

「お待ちしておりました。セレスティア・ルーデンベルク様」

グラン「にゃ~~~」

「あの…こちらは…?」

セレス「私の連れですの。席まで連れて行きますのでお気遣いなく」

「いえ…しかし……」

セレス「あら?」


セレス「何か問題でも?」カッ


「ヒィッ!?い、いえ…その…他のお客様の…ご迷惑に…」

「おい、止めないか」

「し、支配人…」

「申し訳ありません、セレス様。新人が失礼いたしました」

セレス「全く…話は通しておいて頂かないと困りますわ。グランは私の家族ですのよ」

セレス「おわかりですか?」カッ

「はい、申し訳ありません」

セレス「もう結構です。それより今日の勝負は?」

「本日は麻雀でございます。なお場所はここではなく主催者の邸宅に移動して頂きます」

セレス「まあ、私を呼びつけるだなんて…一体どんな方ですの?」

「『昭和の怪物』と呼ばれた豪運を持つあの方でございます。さらに最近噂になっている『悪魔』と呼ばれている少年も招待されているとのことです」

セレス「あの方だの噂になっているだの…私はそんな方々なんて知りませんわ」

セレス「まあいいでしょう。どんな相手でも…大金が手に入るなら構いませんわ」

「どちらも伝説級の博徒でございます。油断はなさらない方がよろしいかと…」

セレス「うふふ、楽しみですわね」




18: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/09(日) 00:00:39.09 ID:CBFNf6cs0




老人「ククク…!君があの謎の女子高生ギャンブラーセレスティア・ルーデンベルクか…!」

老人「素晴らしい…!これまでで一番楽しい夜になりそうだ…!君のような若く美しい娘が…徐々に血を抜かれ…恐怖しながら死んでいく…!」

老人「これまで様々な若者の死に様を見てきたがそんなものを見るのは流石の儂も初めてだ…!」

老人「カカカ…!キキキ…!ククク…!ケケケ…!」

グラン「フカーーーーッ!!!」

老人「カカカカカカカカカカ…!!!!」

グラン「にゃ゛あ゛!?」ビクッ

セレス「まあ…何ですの?この方は」

少年「おい…いつまでやってんだ…!さっさと始めようぜ…!」

セレス「あなたが噂の『悪魔』ですか…」

老人「ククク…!今日は2人の若者が来てくれた…!存分に楽しませて貰うぞ…!」



少年「………」トン

老人「………」トン

セレス「…カン!……っ!」ビチャ

セレス「なんてことですの…!お茶をこぼしてしまいましたわ!」

セレス「着替えもありませんし…困りましたわ…」

少年「おい…!勝負を止めるな…!ちょっとこぼれただけだろ…!」

セレス「しかし…」

少年「流れが切れる…!さっさと切れ…!」

セレス「うっせえんだよ!!!ビチグソがぁ!!!染みになったらどうすんだよおおおぉぉぉ!!!!!」バニッ

少年「………」

老人「………」

セレス「あら、さすがにこの程度の恫喝では動じませんのね」

セレス「わかりましたわ…着替えもないですし仕方ありません。勝負を続けましょう」




19: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/09(日) 00:03:19.61 ID:CBFNf6cs0




少年「………」トン

老人「………」トン

セレス「………」ソワソワ

老人「ククク…!どうした…!まだ血が抜かれたわけではないだろう…!」

セレス「ええ…それはそうですけど…」

少年「リーチ…!」

セレス「………」ソワソワ

老人「ククク…!」



少年「聴牌…!」

老人「聴牌…!」

黒子「ノーテン…!」

セレス「ノーテンですわ…」


少年「………」トン

老人「………」トン

セレス「……ツモですわ。8000・16000」

少年「………!」カチャ

老人「ククク…!ここで大三元とは…!面白い…!」カチャ

セレス「次は私の親ですわね」



セレス「………」

老人「ククク…!どうした…?一打目から迷うとは…!」

セレス「天和。16000オールですわ」

少年「なんだと…!?」

老人「ば、馬鹿な…!どういうことだ…!」

セレス「うふふ、お爺様の飛びで終了ですわね」

老人「貴様…!どんな手を使いおった…!」

セレス「まあ、イカサマをしたとでもおっしゃるのですか?」

セレス「ヤマすら作らないこの麻雀でそんなことが出来ると思いますか?牌もそちらが用意したもの。細工は不可能です」カッ

セレス「つまりは運ですわ」ニコ

老人「カ…カカカ………」グニャァー

少年「なんだ…これは…!」

セレス「ああ、そういえばあなたも私と同じ挑戦者でしたわね」

少年「なんだと…?」

セレス「忘れてましたわ」ニコ

少年「」グニャァー




20: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/09(日) 00:05:29.83 ID:CBFNf6cs0




セレス「今日は大変な勝負でしたわね…私のギャンブラー人生で一番苦戦したかもしれません」

グラン「にゃ~」

セレス「しかし無事危機は乗り越えました。ほら、ミルクティーの染みはキレイに抜けましたわ!」

グラン「にゃあ!」

「お待たせ致しました。餃子定食と餃子ごはんでございます」

セレス「やっと食事にできますわね。うふふ、勝負の後はこれに限りますわ」

「それと…セレス様にお届け物がございます」

セレス「あら、なんでしょう?」

「こちらでございます。それではごゆっくり…」スッ

セレス「封筒…ですか…」

グラン「…」ジー

セレス「そうですわね、先に頂きましょう」ニコ



21: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/09(日) 00:08:20.13 ID:CBFNf6cs0




セレス「さて、希望が峰学園の入学案内…『超高校級のギャンブラー』ですか…」

セレス「卒業すれば成功も手にしたも同然…それが本当なら私の『夢』にまた一歩近づくことができます」

セレス「面白いですわね…それに希望が峰学園なら堂々とセレスティア・ルーデンベルクを名乗ることができますわ」

グラン「にゃー」ゴロゴロ

セレス「………」

セレス「あなたはセレスティア・ルーデンベルクの唯一の家族ですわ…私の世界で私の側にいられるナイト以外の唯一の存在…」ナデナデ

セレス「安広多恵子でもない、嘘のベールに包まれた天才ギャンブラーでもない、本当の私を知る唯一の存在ですわ…」

グラン「…」ゴロゴロ

セレス「ですが、あなたは猫の身……いつまで一緒にいられるのでしょうか…」

セレス「私の夢が実現する時…あなたはまだ私の側にいるのでしょうか…」

グラン「にゃあ!」

セレス「うふふ、そうですわね。それまでに実現させればいいだけのことですわね」





セレス「希望が峰学園…楽しみですわ」




29: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/28(金) 00:45:31.97 ID:DcuPn0bX0

~不ニ咲編~



太市「ここが聖エルバンディア学園か…」

不二咲「ちょっと、お父さん!こんなところで立ち止まらないでよぉ!」

太市「ああ、ごめんごめん。今日から千尋がここに通うと思うとついね……そうだ、折角だから校門の前で写真撮ろうか!」

不二咲「えぇ!?いいよそんなの!皆通るのに…」

太市「一度しかない記念だしいいじゃないか」

母「それなら、私が撮るわ」

太市「うん、それじゃあ頼むよ!」

不二咲「ちょ、ちょっとぉ…」

母「さあ、二人共並んで」

太市「千尋、早く早く!」

不二咲「もう…そんなに張り切らなくても……」

太市「よし、いいよ!」ポン

不二咲「そんなにくっつかないでよぉ…!」

太市「まあまあ…」

不二咲「もう…」

母「撮りますよー。ハイ、チーズ」パシャ






30: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/28(金) 00:46:42.59 ID:DcuPn0bX0




不二咲「うぅぅ…恥ずかしいよぉ…」

太市「あはは、まあいいじゃないか」

太市「それよりほら!よく撮れてるよ!」

不二咲「う、うん…」

太市「一枚は家に飾るとして…もう一枚は手帳の中に入れておこうかな…」

不二咲「そ、そういうことは言わなくていいよぉ!」

太市「あはは、そうだね……って、そろそろ時間じゃないか?」

不二咲「うん…もう行くね…」

不二咲「……ねぇ、お父さん…」

太市「どうしたの?」

不二咲「僕…この学校ではうまくやっていけるかなぁ?」

太市「不安なの?」

不二咲「うん…そうなのかなぁ…」

太市「きっと大丈夫だよ!千尋は優しくていい子だから、友達もちゃんとできるよ!」

不二咲「そうかなぁ…」

太市「……千尋、頑張るんだぞ!」

不二咲「う、うん…」



太市「………はぁ…」

太市「もう少しちゃんとしたこと言えなかったのかなぁ…」

母「全く…頼りない父親ね」

太市「あはは…その通りだね…」







31: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/28(金) 00:49:16.94 ID:DcuPn0bX0


━━数年後━━


コンコン

ガチャ

太市「千尋、ちょっといいかな?」

不二咲「あ、うん。どうしたのぉ?」

太市「…って、何やってるんだ?」

不二咲「ゲームだよ。昔のゲームなんだけどネットでちょっと話題になってたからオークションで買ってみたんだぁ」

太市「あ、これトワイライトシンドロームだよね?」

不二咲「え?知ってるのぉ?」

太市「うん、千尋がまだ小さい時に発売されたゲームだよね」

太市「お父さんも気になってたんだけど、その時は忙しくてプレイしてなかったんだ」

不二咲「お父さんも昔からゲーム好きだよね」

太市「まあね、運動はあんまり得意じゃないし…どっちかというとゲームしてる方が好きかな」

不二咲「僕も…昔は体が弱くて全然運動とかできなかったよね……」

不二咲「今は良くなって少しならできるようになったけど、体育の授業はいつも欠席だし…」

不二咲「でもこんなんじゃ出られないよね。体育は男女別だし」

太市「…」

不二咲「男の癖にこんな恰好してるなんて…やっぱりおかしいよね…」

不二咲「体はよくなっても中身は全然変わってなくて…弱いままなんだ」

太市「そんなことないよ!千尋は今の学校ではうまくやってるじゃないか!」

不二咲「それは今の学校の皆が優しくしてくれるからだよ…僕が何かしたわけじゃないよ」

不二咲「学校生活には困らないけど…性別を隠したままじゃ仲のいい友達は作れないし…」

太市「千尋…」

不二咲「あ…ごめんなさい…こんな話ばっかりして…それより何か用があったんじゃないの?」

太市「あ、ああ、そうだね…この間の契約の話なんだけど…」






33: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/28(金) 00:50:39.78 ID:DcuPn0bX0




不二咲「…」

太市「…」

不二咲「…」

毛虫くん「」ウネウネウネウネ

不二咲「………えへへ…」

太市「……ち、千尋…」

不二咲「あ、お父さん…いたんだ」

太市「それは…何なの…?」

不二咲「これ?これは毛虫くんだよ!」

毛虫くん「」ウネウネウネウネ

太市「な、何に使うものなんだ?」

不二咲「こうやって紐を引っ張ると毛虫みたいに動くんだよぉ!」

毛虫くん「」ウネウネウネウネ

太市「面白いの…?」

不二咲「うん!」

太市「そ、そうなんだ…」

不二咲「お父さんは面白くないの?」

太市「面白くないっていうか…ちょっと苦手かな…?なんか動きが蛇みたいだし…」

不二咲「ふぅーん…」

毛虫くん「」ウネウネウネウネ


ピンポーン


太市「あ、お父さんが出るよ」





34: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/28(金) 00:51:45.80 ID:DcuPn0bX0


太市「ハイ、千尋に何か届いたみたいだよ」

不二咲「え?僕に…?……あぁ!これ…希望が峰学園って…」

太市「希望が峰学園…!?希望が峰学園ってあの希望が峰学園!?」

不二咲「う、うん。そうみたい」

太市「ってことは…千尋が!?」

不二咲「開けてみるねぇ…」ビリ

不二咲「これは…」

 『不二咲 千尋様  今回、我が校では“自動応答システム”の開発を始めとしたあなたの功績を称え、あなたを“超高校級のプログラマー”として招き入れる事になりました』

太市「…すごいじゃないか!千尋!希望が峰学園にスカウトされるなんて!」

不二咲「…」

太市「どうしたんだい?嬉しくないの?」

不二咲「そんなことないよぉ。僕の作ったものが認められたことはすごくうれしいけど…」

太市「けど…?」

不二咲「えっと…辞退しようかなぁ…って…」

太市「え!?どうして!?あの希望が峰学園からスカウトされたのに!」

不二咲「希望が峰学園って…すごい人たちが集まる学校なんだよね?」

不二咲「でも、僕なんてパソコンのことしかできないし…」

不二咲「それに、男なのに未だに女の子の恰好してさ…ずっと殻に閉じこもって逃げてるんだぁ…弱い自分から」

不二咲「そんな僕が…そんなすごい学校に入ってもきっとうまくいかないよぉ…」



35: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/28(金) 00:53:55.38 ID:DcuPn0bX0

太市「そんなことない、千尋はホントはすごいことが出来る子なんだよ。でも…」

不二咲「?」
 
太市「千尋がそんな風に自信が持てないのは…お父さんの所為かもしれないね」

不二咲「え…?」

太市「千尋が女の子の恰好をし始めた時、お父さんはそれでもいいと思った…どんな格好でも、千尋は千尋だから…」

太市「でも千尋はそうじゃなかった。だから僕が支えてあげなくちゃいけなかったんだ…父親として」

太市「結局、どうしたらいいのかわからなかったんだろうね。そしてそれは今も同じだ」

太市「僕は父親失格だよ…」

不二咲「そんなことないよ!」

太市「え?」

不二咲「お父さんは父親失格なんかじゃない…僕にとってお父さんは最高の父親だよ!」

太市「ち、千尋…」

不二咲「プログラミングは、僕が唯一自信を持てることだけど、それはお父さんのおかげなんだ」

不二咲「僕が初めてプログラムを開発した時、お父さんは褒めてくれたよね?」

不二咲「僕はお父さんの仕事用のパソコンを勝手に使って怒られると思ったんだぁ」

不二咲「でもお父さんは褒めてくれた。僕はそれがうれしくて…こんな僕にもできることがあるんだって思えて…」

不二咲「全部お父さんのおかげなんだよ…だから、父親失格なんて言わないでよぉ」ポロポロ

不二咲「グス…ごめんなさい…僕が情けない所為で…ヒック…お父さんに…そんな…」ポロポロ

太市「千尋…」ギュッ

不二咲「お、お父さん…?」

太市「千尋が悪いんじゃないよ」

太市「ごめん。千尋がそんな風に思ってたなんてね」

太市「でも、父親として一つでも千尋に何かしてあげられたならお父さんはうれしいよ」

不二咲「一つじゃないよぉ!僕はお父さんにいっぱいして貰ったんだ!」

太市「あはは、ありがとう。千尋」ナデナデ



36: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/11/28(金) 00:55:54.51 ID:DcuPn0bX0

不二咲「…ねぇ、お父さん」

太市「ん?」

不二咲「僕…やっぱり希望が峰学園に行くよ」

太市「え!?どうしたの急に?」

不二咲「僕がスカウトされた『超高校級のプログラマー』の才能は僕がお父さんにして貰ったことの証みたいなものだと思うんだぁ…」

不二咲「だから僕は希望が峰学園でプログラマーとしてもっと腕を磨きたい…」

不二咲「お父さんに貰ったこの才能で…もっと自分に自信を持てるようになりたいんだ!」

不二咲「それにもしかしたら僕自身も強く変われるかもしれない…」

不二咲「だから僕希望が峰学園に行きたいんだ!」

太市「ち、千尋…」ジワ

不二咲「お、お父さん!?泣いてるのぉ!?」

太市「千尋が…そんなことを言うようになったのが…うれしくて…グス」

不二咲「な、泣かないでよぉ」

太市「あはは、ごめん…」ゴシゴシ

太市「でもね、千尋」

不二咲「なに?」

太市「千尋の過去はそれも含めて千尋なんだ。だから、それを否定する必要なないと思うよ」

太市「コンプレックスがあるのは誰だって当たり前だし、それを変えたいと思うのも大切なことだ」

太市「でもだからといって自分を否定する必要はないんだ。千尋は千尋のまま強くなればいい」

不二咲「お父さん…」

太市「って…結局なに言ってるか全然わからないけど、今ではそう思ってるよ」

不二咲「ううん、ちゃんと伝わったよぉ。ありがとうお父さん、僕頑張るね」

太市「そっか。ならお父さんも頑張らないとね」

不二咲「え?お父さんも?」

太市「千尋はそんなことないって言ってくれたけど、やっぱりお父さんは父親としてまだまだだ」

太市「千尋やお母さんにはもっと父親らしいことをしてあげたい」

太市「だから僕ももっと頑張らないと…」

不二咲「えへへ、一緒だね!」

太市「うん、そうだね」




太市・不二咲「強く変わるんだ!」




43: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/05(金) 01:04:37.33 ID:iF0rHr4M0

~大神編~



大神「すまぬ」

「は、はい。何ですか…?」

大神「この病院ににケンイチロウという者が入院しているはずなのだが…」

「え、えっと…ケンイチロウさんですね。…505号室です」

大神「ふむ、505号室か。仕事中にすまない」

「いえ、また何かありましたらご遠慮なくどうぞ」

大神「ああ、感謝する」スタスタ




「すごい人だったなぁ…」





44: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/05(金) 01:05:41.46 ID:iF0rHr4M0



ガラッ

大神「失礼する…」

「ひぇ…」ビク

大神「む、我は怪しい者ではない。ただ知人の見舞いにきただけだ」

「そ、そうですか…」

大神「驚かせてすまなかった…」

「い、いえ…こちらこそ失礼しました…」スタスタ


ケンイチロウ「さくら?」

大神「っ!?…ケンイチロウ…起きていたのか…」

ケンイチロウ「わざわざ来てくれたのか!うれしいぞ!」

ケンイチロウ「まあ、こっちに来て座ってくれ」

大神「ああ…」






45: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/05(金) 01:07:19.44 ID:iF0rHr4M0




大神「気配ではわからなかったが…お主随分と痩せたな…」

ケンイチロウ「そうだな。正直大分衰えてしまったと思う」

大神「体の方はどうなのだ?」

ケンイチロウ「最近は割と調子がいいな」

大神「そうか…」

ケンイチロウ「そういうさくらはどうなんだ?また強くなっただろう?」

大神「見ただけでわかるのか」

ケンイチロウ「お前のことはずっと見てきたからな。すぐにわかる」

大神「…」

大神「我が一族は皆地上最強を目指す者…強くなるのは最早義務だ」

大神「我もその一人。女とてそれに変わりはない」

ケンイチロウ「…」

大神「お主を超えること…我はそれだけを目指し強さを求めてきた…」

大神「我はそのためなら女であることも捨てる覚悟がある…」

ケンイチロウ「…さくら」

大神「何だ?」

ケンイチロウ「純粋に強さを求めるお前を俺は尊敬している」

ケンイチロウ「だがそのために女であることを捨てる必要はないんじゃないか?」

大神「お主にはわかるまい…心の中に女があれば迷いが生まれる」

大神「最強を目指す我には女であることこそ必要ないのだ」




46: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/05(金) 01:09:27.60 ID:iF0rHr4M0

ケンイチロウ「そういうものなのか…確かに俺には女心というものはよくわからないが…」 

ケンイチロウ「俺はお前の強さを知っている。そして、その強さは少しの迷いで揺らぐものじゃないはずだ」

大神「それは…」

ケンイチロウ「さくらはさくらだ。最強を追い求めるのに女であることは関係ない」

ケンイチロウ「それは誰よりもさくら自身が体現してきたはずだ」

ケンイチロウ「俺はお前に勝つことで堂々と最強を名乗れるんだ」

大神「…」

ケンイチロウ「それに俺は今のままのさくらが好きだ」ニッ

大神「なっ…!?」

ケンイチロウ「?」

大神「お、お主はまた平然とそういうことを…」

ケンイチロウ「な、なんだ…?さくら、どうしたんだ?」

大神「な、なんでもない!気にするな」

ケンイチロウ「そ、そうなのか?それならいいが…」

大神「…だがなるほどな。確かにそうかもしれん」

大神「我は父に初めて勝って以来、お主以外には負けたことがない」

大神「ただ求道心を言い訳に女であることから逃げていたのかもな…」

大神「そして、この気持ちからもな…」ボソ

ケンイチロウ「ん?何か言ったか?」

大神「ふっ、なんでもない」




47: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/05(金) 01:11:03.04 ID:iF0rHr4M0

大神「だが、この我が今更女だと言ってもな…」

大神「このような見てくれでは既に女を捨てているのも同じだ」フッ

ケンイチロウ「そうか?俺はさくらはかわいい所もあると思うぞ」

大神「な、何!?」

ケンイチロウ「それに心も綺麗だ」

大神「ぐっ…!」

ケンイチロウ「だからさくらは強いだけじゃなくて、十分女らしいと思うぞ」

大神「ぬうぅぅぅぅぅ…!」

ケンイチロウ「まあ、女にしては少し体が大きいか!」ハハハッ

大神「…」

ケンイチロウ「さくら?どうs」

大神「ケンイチロウよ」ゴゴゴ

ケンイチロウ「ど、どうしたんだ…?そんなに殺気立って…」

大神「見舞いに果物を持ってきたのだ…食べるか?」ゴゴゴ

ケンイチロウ「あ、ああ…後でもr」

大神「食 べ る か?」カッ

ケンイチロウ「た、食べる…」

大神「そうか…では我が剥いてやるとしよう」

ケンイチロウ「ああ…すまないな」 

大神「ふん!!!!!」グシャアッ

ケンイチロウ「!?」




48: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/05(金) 01:13:03.87 ID:iF0rHr4M0

大神「さあ、食べるのだ」ポタポタ 

ケンイチロウ「さ、さくら…それは剥いてるのか…?」

大神「何か文句でもあるのか?」ゴゴゴ

ケンイチロウ「いや…文句というか…」

大神「では食べろ」グイ

ケンイチロウ「なに!?さ、さくら…落ち着いt…」モガモガ

大神「食べるのだ」グイグイ




ケンイチロウ「ふう…何だったんだ…」

大神「すまぬ…ついはしゃぎ過ぎてしまった…」

ケンイチロウ「いや、気にするな」

大神「だがお主は病床の身だというのに…」

ケンイチロウ「俺なら大丈夫だ。それにさくらと過ごせて俺も楽しかったからな」

大神「そうか…」

大神「やはりお主は変わらんな」

大神「最初見た時は随分と痩せていて驚いたが…中身は前と同じままだ」




49: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/05(金) 01:14:44.94 ID:iF0rHr4M0

ケンイチロウ「俺は今も昔も変わらない。ただ最強の座を求め、そしてその座を守り続けるだけだ」

ケンイチロウ「俺は病に侵され、余命半年を宣告され、戦うこともできずにいる…」

ケンイチロウ「だがそれから半年を過ぎて随分経つ今になっても俺はまだこうして生きている」

ケンイチロウ「俺はいつか必ず病に打ち勝って再び戦いの中に戻ってみせる」

ケンイチロウ「だから、それまで最強の座は一時的にお前に預ける」

大神「!」

ケンイチロウ「俺は体を治し、後で必ず最強の座を取り返しに行くから、それまで絶対に負けるなよ」ニッ

大神「…ふっ」

大神「言われずともそうするつもりだ。最強の座は我が預かるとしよう」

大神「だがお主が戻ってきたとしても返すつもりはない」

大神「お主が以前の力を取り戻し、最強の座を取り戻しに来た時…」

大神「その時こそ、我が真の最強になる時だ。お主を倒すことでな」

ケンイチロウ「当然だ。そうでなければ最強の意味がない」

大神「その為にも我はもっと強くなる。だから…」

ケンイチロウ「だから?」

大神「必ず…戻ってこい」

ケンイチロウ「…ああ、約束する。俺は必ず力を取り戻し、お前のところへ戻ってこよう」

ケンイチロウ「何年掛かっても必ずな…」

大神「…」








50: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/05(金) 01:18:33.26 ID:iF0rHr4M0

大神「先日、我の元へこのような物が届いたのだ」パサ

大神「希望が峰学園の入学案内だ」

ケンイチロウ「希望が峰学園?学校か?」

大神「あの希望が峰学園を知らぬとはな…お主の世間離れには毎回驚かされる」

ケンイチロウ「そういうな。知らないものは仕方ないだろ」

大神「希望が峰学園は、学業・スポーツ・芸術・芸能あらゆる分野の超一流高校生を集めた政府公認の超特権的な学校だ」

大神「入学者は完全スカウト制で条件は2つ。『現役の高校生であること』そして『何らかの分野で超一流であること』だ」

大神「生徒にはその分野での『超高校級』の称号が与えられ、卒業者は成功を約束されたも同然といわれるほどの学校だ」

大神「我はその学校から『超高校級の格闘家』としてスカウトされたのだ」

ケンイチロウ「なるほど、それはすごいな」

大神「去年我の高校でも一人スカウトされている。確か『超高校級の剣道家』だったな」

大神「かなりの強者だったようだ。我も一度手合せ願ったことがある。興味がないと断られてしまったがな」

ケンイチロウ「それで、さくらはその学校に行くのか?」

大神「無論だ。各分野の頂点が集まる学校…最強を目指す身として避けては通れまい」

大神「我はそこでさらなる力を身に着ける…最強の座を守り、そしていつの日か真の最強となるためにな…」

ケンイチロウ「そうか、頑張れよ」

大神「…お主もな」

大神「そろそろ面会時間も終わりだ。帰るとしよう」

ケンイチロウ「うむ、名残惜しいが仕方ないな」

大神「…次に会う時は…最強の座を決する時だ…」

ケンイチロウ「…!」

ケンイチロウ「…わかった」

ケンイチロウ「今日は来てくれてありがとう。久しぶりにさくらと話せて楽しかったぞ」

大神「ふっ…我もだ」

大神「ではな…」

ガラッ バタン








51: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/05(金) 01:19:25.99 ID:iF0rHr4M0







大神「ケンイチロウ…」

大神「我は最強の座にていつまでもお主を待っている…」

大神「だから、必ず…」

大神「必ず、戻ってくるのだ…!」ギュ




56: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/06(土) 02:04:04.11 ID:jnpJ9mJI0

~山田編~




富士子「一二三ちゃん、朝ごはんできたわよ!」

山田「Zzz…」

富士子「一二三ちゃん!」ユサユサ

山田「うぅ…まだ眠いよ…ママ」

富士子「ごはん冷めちゃうわよ!」

山田「朝ごはんはいらないっていつも言ってるじゃないか…」

富士子「駄目よ。朝はちゃんと食べないと体に良くないんだから」

富士子「ほら!早くしないと学校に遅れるでしょ!」

山田「今日は休むよ…」

富士子「駄目!」バサッ

山田「昨夜はずっと徹夜だったんだよ…」モゾモゾ

富士子「大丈夫よ!ママだって締切前で徹夜だから!」

山田「訳が分からないよ…」







57: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/06(土) 02:04:59.12 ID:jnpJ9mJI0





ガチャッ

山田「ただいまー」

「あ、一二三君」

山田「おや?あなたは確かママの担当編集者の方でしたな?」

「今丁度先生から原稿を貰って帰るところなんだ」

山田「それはそれは…どうもご苦労様ですぞ」

「じゃあ、先生によろしく」



山田「ママー」

山田「むむ?」

富士子「Zzz…」

山田「ママ、起きてよ。こんなところで寝たら風邪ひいちゃうよ」ユサユサ

富士子「うぅぅ…」ゴロン

山田「まったく…朝とは逆だよ」

富士子「Zzz…」

山田「毛布だけでも掛けておかないと…」パサッ

山田「さて、僕も一眠りしますかな…」







58: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/06(土) 02:06:01.23 ID:jnpJ9mJI0





富士子「一二三ちゃん、今度の冬コミなんだけど何日目に参加するの?」

山田「ふっ、愚問ですな。この山田一二三、今年も全日程参加する所存ですぞ!」

富士子「そう、じゃあホテルは取っておくわね」

富士子「そうだ、売り子さん達はどうするの?」

山田「彼らは当日電車で来るのでホテル予約は不要ですぞ」

山田「それにしてもママも大変ですなぁ…」

富士子「何が?」

山田「いえ、漫画家『せかんどふらい』として連載をいくつも持ちながら別の名義で同人活動もしているとは…」

富士子「ふふっ、男同士の濃厚な繋がりを描くのに表の名義を使うわけにはいかないのよ」

山田「BLですか…僕には理解できない世界ですぞ…」

富士子「まあ、あまりオープンな世界ではないわね」

富士子「でも最近、一二三ちゃんならいつか良さがわかるんじゃないかとも思うのよ」

山田「ふむ、なるほど。確かにそろそろ新しい世界へと繰り出すのも悪くありませんな」

山田「偏見を持つことなく、幅広い視点を持ってまず理解してみようとする姿勢こそ我々の業界には必要ですからな」

富士子「いつか一二三ちゃんとそっち方面での萌えトークが出来るかもしれないと思うと楽しみね」

山田「いや…そこまで深入りするかはわかりませんぞ…?」




59: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/06(土) 02:07:06.77 ID:jnpJ9mJI0

富士子「それにしても…」

山田「何か?」

富士子「一二三ちゃんももう高校生なんだし…彼女の一つもできないものかしらねぇ…」

山田「ブヒィッ!?突然何を言い出すのですか!?」

富士子「だって高校生になったら得体のしれない謎の部活に入部してそこの仲間と色んなイベントに巻き込まれたり、放課後に部室でティータイムしたり、運動部で男同士の濃厚な友情を深め合ったりするものでしょ?」

山田「どこのアニメの設定ですか!?そんなことが現実である訳ないでしょう!」

富士子「ママはそうだったわよ?」

山田「なぬぅーーーーーーーーー!?」

富士子「そこでパパと出会ったの」

山田「リアルな両親の馴れ初めなんて聞きたくないですぞ!」

富士子「ママだって昔は痩せてたし美人だったんだから」

山田「聞いてませんぞ!」

山田「というか最後のはママの妄想じゃないですか!」

富士子「別にいいじゃない!」

山田「いや良くないですぞ!?とにかく!拙者に三次元の彼女など不要なのです!」

富士子「そんなこと言ったって一二三ちゃんのサークルあんなに大手なのに売り子が全員男じゃない!」

山田「そんなこと別に珍しくもありませんぞ!」

富士子「でも皆全然萌えないじゃない!」

山田「結局そこですか!」

山田「た、確かにルックスは決していいとはいえませんが、彼らは皆オフ会で出合った歴戦の勇者ですぞ!そこいらの小物とは訳が違うのです!」

富士子「確かに二次元は至高だけど、三次元には三次元の良さがあるのよ!ほら、見て!」

山田「誰ですかこれは?」




60: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/06(土) 02:08:10.03 ID:jnpJ9mJI0

富士子「今話題のプログラマー『不二咲千尋ちゃん』よ!可愛いでしょ?」

山田「確かに三次元にしては中々の逸材ですが…」

富士子「この娘が実は女装した男の娘だったら萌えると思わない?」

山田「妄想乙ですぞ!三次元に希望を抱くなど愚かな行為なのです!」

富士子「な、なんですって!?」

山田「む?」

富士子「一二三ちゃんは~~~~~!!」ガシッ

山田「ブヒィッ!?」

富士子「だから2ちゃんねるで馬鹿にされるというのだ~~~~~!!この~~~~!」ギリギリ

山田「ぐえぇぇーー!!悪霊退散悪霊退散!」




富士子「ハァ…ハァ…」

山田「ハァ…ハァ…こ、これ以上は…不毛ですぞ…」

富士子「そ、そうね…お互い体力もないし…」

山田「と、とにかく!なんと言われようと僕の嫁はブー子一人ですぞ!」

富士子「はあ…まあいいわ。こういうのは口で言ってもわからないものだし…」

山田「そうですぞ!僕はブー子一筋ですからな!」

山田「そもそもブー子は彼女自身が魅力的なだけでなくアニメとしても非常に高次元な作品なのですぞ!」

山田「そのような作品でブー子のような少女が活躍するとなればこれに魅かれるのは最早必然!」

山田「まあ拙者の場合ブー子好きとは言っても、いわゆる美少女萌えアニメとしてではなく、メタSF作品としての視点も持っている変わり者なのですが」

山田「だから僕はブー子を単なる美少女萌えアニメとして2次創作してる連中を見てると許せないんですよ!」

山田「そんな輩は全力を持って叩き潰さねばなりません!」

富士子「またそんな物騒なこと言って…」

山田「ブー子の魅力というのはそのかわいらしい外見だけではなく…」ペラペラペラ



富士子「でも…少し心配ね…」ボソ

富士子「このまま女の子に免疫がないまま女の子と仲良くするようになったら…」

富士子「女の子との関わり方を知らないままだったら…」

富士子「その娘を想う気持ちが暴走して…自分や他の誰かを傷つけてしまうかも…」

富士子「でも…きっと大丈夫よね」

富士子「一二三ちゃんは、とっても優しい子だから…」

山田「む?何か言いましたか?ってこれでは鈍感系主人公のようですな」

富士子「なんでもないわ。それよりそろそろご飯にしましょうか」

山田「おっと、もうこんな時間ですか。確かにお腹が空きましたな」

富士子「ふふっ、今日は一二三ちゃんの好きなチーズハンバーグよ」

山田「ほう…それは中々ですな。ポテトは山盛りでお願いしますぞ」









61: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/06(土) 02:09:19.00 ID:jnpJ9mJI0

富士子「一二三ちゃん!これ見て!」

山田「ん?なにこれ?希望が峰学園入学案内?」

富士子「これってもしかして…」

山田「ふむ…希望が峰学園への入学案内ということは…これは現役の高校生に宛てたもの…」

山田「そしてこの通知が届いた我が家には高校生は一人…この僕だけ…」

山田「つまり…この通知は僕に届いたものだと推測できる!」ビシィッ!

山田「真実はいつも一つ!!!」

山田「って僕ゥーーーー!?」でぶでぶ

富士子「『超高校級の同人作家』…すごいじゃない!」

山田「僕の実績を持ってすれば当然ですぞ!」

山田「とはいえ僕の分野での功績は業界以外では認められにくいもの…」

山田「そういう意味では希望が峰学園も中々見る目があると言えますな!」

富士子「それでどうするの?後は書類を送るだけみたいだけど…」

山田「ふむ…確かに希望が峰学園なら拙者のようなニッチな分野で活躍する人間も存分に力を発揮できますな…」

山田「今の学校では僕の活動はあまり歓迎されてはいませんし、この学校に通うのも…あ…」

富士子「どうしたの?」

山田「希望が峰学園は…全寮制だって…」

富士子「まあ、全寮制?ということは同級生との共同生活ね!いかにも青春モノって感じだわ!」

山田「だが3次元だ。第一寮生活ともなれば実際は色々と規則がうるさそうですぞ。それに…」

山田「ママと離れるのは嫌だよ…」




62: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/06(土) 02:10:16.44 ID:jnpJ9mJI0

富士子「一二三ちゃん…」

山田「やっぱりこれは辞退する…」

富士子「え!?」

山田「だってママと離れて暮らすなんて考えられないよ…」

富士子「…」

富士子「一二三ちゃん!そんなこと言ってたら駄目よ!」

山田「ママ?」

富士子「確かに一二三ちゃん程の才能があれば大抵の我が儘は通るわ」

富士子「お金だって不自由しないし、ここに住みたいって言えば編集の人がそこまで原稿を取りに来てくれる」

富士子「でも世の中は一二三ちゃんが思っている以上に広いし、一二三ちゃんの知らない世界もたくさんあるわ」

富士子「ママは一二三ちゃんにもっと色んなことを知って欲しいの」

富士子「一二三ちゃんと離れて暮らすのはママだって寂しいけど…でもママはそれが一二三ちゃんのためになるならそれを応援したい」

富士子「だからママと離れたくないからなんて理由で自分の可能性を潰すのは駄目よ!」

山田「…」

富士子「もちろん最後に決めるのは一二三ちゃんだから、どっちにしてもママはそれを応援するわ」

富士子「だからもう一度よく考えて…」

山田「ママ、僕…希望が峰学園に行くよ」

富士子「え?」

山田「ママと離れるのは嫌だけど…僕はママが大好きだから…ママが応援してくれるなら頑張りたい!」

富士子「ひ、一二三ちゃん…」

山田「それに僕ほどの作家となればやはりそれなり舞台が必要ですからなぁ」

山田「希望が峰学園という最高の舞台があってこそ僕才能は輝くのですぞ!」

山田「もしかしたら『超高校級の声優』なんて方もいるかもしれません!」

山田「同じような分野で活躍する方がいるのなら是非ともお会いしたいですな!」

富士子「それじゃあ…行くのね?」

山田「勿論ですぞ。神に選ばれしこの僕がこの機会は逃すなどあり得ませんな!常識的に考えて!」

富士子「一二三ちゃん、頑張ってね!ママ応援してるから!」

富士子「ママはね…いつか一二三ちゃんと一緒の雑誌で連載を持つのが夢なのよ」

山田「なるほど…つまりはオリジナルの漫画ですな?確かにそちらを目指すのも面白いかもしれませんな…」

山田「ふむ…それでは…」





山田「山田一二三…全ての始まりにして終わりなる者…その伝説の幕開けですぞ!!!」







66: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/11(木) 17:54:24.83 ID:D9Zr6G910

~朝日奈編~




「悠太ーーーーっ!」

悠太「ん?」

朝日奈「やっと追いついた!」ドン!

悠太「うわっ!」ヨロ

悠太「おいおい、なんだよ…わざわざぶつかってくることないだろ」

朝日奈「だって悠太がいくら呼んでも気づかないんだもん!」

悠太「いや、理由になってねえって…」

朝日奈「まあまあ。悠太も今帰り?一緒に帰ろ!」

悠太「まあ、いいけどよ」

朝日奈「今日はねぇ、練習が絶好調でさぁ!ホームラン2本も打っちゃったよ!」

悠太「ああ、今日は野球だったんだな」

朝日奈「うん!そうだよ!おかげでその後の水泳もすごく捗ったんだ!」

悠太「それで水泳もやったのかよ…相変わらず化け物みたいな体力だな…」

朝日奈「えへへ~、今日ははなきんだからね!」

悠太「どうせ明日も練習なんだからあんまり関係ねーと思うけどな…」

朝日奈「いいのいいの!こーいうのは気分が大切なんだから!」

朝日奈「あ!ていうか女の子に化け物とか言わないでよ!」

悠太「はいはい、失礼しました」

朝日奈「もう…悠太までバカ元気がどうとか言うの?」

悠太「バカ元気?」

朝日奈「たまに私のことそう言う奴がいるんだよ!朝日奈の元気はバカ元気だーって」

朝日奈「大体そーいうこと言うやつ程気合が足りてないんだよね!」

悠太「まあ、バカ元気がどうかはわからないけど、バカで元気なのは事実だろ」

朝日奈「ちょっと!バカってどういうこと!?自分だって数学赤点ばっかりの癖に!」

悠太「中学生に落第はないからいいんだよ。あとその返しがもうバカっぽい」

朝日奈「うぅ…悠太が冷たいよ…これが反抗期なんだね…」

悠太「ほら、もう家着いたぞ。バカなこと言ってないで入ろうぜ」

朝日奈「あーーーっ!またバカって言った!」








67: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/11(木) 17:55:23.21 ID:D9Zr6G910






悠太「ただいまー」

悠太「ん?誰もいないのか?」

朝日奈「あ、そうだった!今日お母さんも遅いんだった」

悠太「そうなのか?夕飯はどうするって?」

朝日奈「買ってくるから待っててって」

悠太「待ってられるかよ。こっちは部活帰りで腹ペコだってのに…何か軽く食うかな」

朝日奈「あ!私も食べる!」

悠太「太るぞ」

朝日奈「だ、大丈夫だよ!たくさん運動してるし!それに運動後のアスリートにはカロリー補給が必要なんだよ!」

悠太「まあそうだけどよ。じゃあ姉ちゃんの分も用意するから待ってろ」

朝日奈「うん!よろしくねー」



悠太「用意できたぞー」

朝日奈「うん!ありがとう…って羊羹じゃん!」

悠太「それがなんだよ…?」

朝日奈「ドーナツじゃないの!?」

悠太「ねーよドーナツなんて」

朝日奈「そんな!ドーナツの方がおいしいのに!?」

悠太「いや、それは人それぞれだろ」

朝日奈「そんなことないよ!ドーナツがおいしいのは宇宙の真理なんだよ!」





68: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/11(木) 17:56:27.92 ID:D9Zr6G910

悠太「いいから食べろよ。羊羹だって旨いだろ」

悠太「それに羊羹は糖分と塩分がバランスよく入ってて消化吸収も早いからアスリートの栄養補給には最適なんだ」

朝日奈「まあ、羊羹も好きだけどさ…明日はドーナツだよ?」モグモグ

悠太「明日はって…明日は自分で用意しろよ…」

朝日奈「おいしい!羊羹もおいしいよ!」

悠太「話聞けよ!」

朝日奈「えへへ~、たまには和菓子もいいね!」

悠太「まったく…」モグモグ

朝日奈「ねえねえ、最近部活の方はどうなの?」

悠太「そうだな…まあ、結構いい感じだぜ?50mのタイムもまた縮まったしな」

朝日奈「へえ、今は何秒?」

悠太「6.2秒」

朝日奈「うわあ、すごいじゃん!もう私より速いね!」

悠太「もう部内で一番速いしな」

朝日奈「えへへ、やっぱり成長期だねぇ」

 ピピピッ!

悠太「ん?何だ?」

朝日奈「あ!できた!」ビリッ

悠太「ってカップ麺かよ!いつの間に…」

朝日奈「いや~、羊羹だけじゃもの足りなくて…」

悠太「しかも一番デカいやつじゃねぇか」

朝日奈「やっぱりラーメンって言ったら豚骨だよね~。カップラーメンじゃお店の味には敵わないけど」

悠太「あー俺も食おっかなぁ…」

朝日奈「うんうん!育ちざかりは食べないとね!」

悠太「姉ちゃんは太らないように気を付けないとな」ベリッ

朝日奈「うぅぅ…わかってるよぉ…」ズルズル




69: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/11(木) 17:59:35.89 ID:D9Zr6G910







朝日奈「悠太!早く早く!」

悠太「そんな急がなくてもいいだろ。なんで俺が日曜にこんなこと…」

朝日奈「だって今日はカップルで来店するとドーナツが半額なんだよ!?」

悠太「彼氏のフリなら他のやつに頼めよ」

朝日奈「だ、だって私男友達とかいないし…」

悠太「ふーん…いないんだ。一人も」ニヤニヤ

朝日奈「も、もう!いいから行くよ!」




「いらっしゃいませ。2名様でよろしいですか?」

朝日奈「はい、二人です」

「それではお席へご案内いたします」

「本日、カップルデーとなっておりましてドーナツが全品半額なっております。是非ご利用ください」




朝日奈「私たちのことカップルだと思ってるみたいだね!」ヒソヒソ

悠太「こういうのって一々確認しないもんなんだな」

悠太「姉ちゃんは飲み物何にする?」

朝日奈「あ!駄目だよ悠太!ちゃんと名前で呼ばなきゃ!」

悠太「は?」

朝日奈「私たちカップルってことになってるんだから!姉ちゃんなんて呼んだらバレちゃうでしょ」ヒソヒソ

悠太「やれやれ…わかったよ朝日奈」

朝日奈「自分も朝日奈なのに!?」

悠太「カップルのフリするんじゃなかったのかよ…」

朝日奈「あ!そうだった!」





70: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/11(木) 18:00:48.75 ID:D9Zr6G910

悠太「そんなことよりここは朝日奈のおごりだからな」

朝日奈「えー!?デートでは男が出すものなんだよ!」

悠太「いや、これはデートじゃねえから」

悠太「それに朝日奈が食べる数考えたら普通料金の一人分より半額で二人分の方が安いだろ」

朝日奈「むーん、まあいいか。お姉ちゃんだしね!」

悠太「彼女じゃなかったのかよ」

朝日奈「そうだった!」

朝日奈「えへへ、悠太といると楽しくてそういうのすぐ忘れちゃうんだよね~」

朝日奈「ほ、本当の恋人もこんな感じなのかな…?」カァアア

悠太「…姉ちゃんって時々そういうことを無意識に言うよな」

朝日奈「え?」

悠太「他の男にはそういうこと言わないほうがいいぞ。絶対勘違いされるから…」

朝日奈「…? どういうこと?」

悠太「ハァ…やっぱり心配だよ…」




朝日奈「あー、食べた食べた!」

悠太「12個も食ってたな…」

朝日奈「ねえねえ、プール寄ってこうよ!」

悠太「え…プール…?」

朝日奈「今日はまだ泳いでないし、カロリーはしっかり消費しないと!」

悠太「…」

朝日奈「悠太?どうしたの?」

悠太「いや…まあいいか。最近泳いでないしな」

朝日奈「うんうん!じゃあ行こ!」




71: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/11(木) 18:01:46.79 ID:D9Zr6G910







悠太「ふぅ…」ザバァ!

悠太「あれ?姉ちゃんどこいった?」

 サババババババババッ!

悠太「あっちか…」

「うわっ!なんだあいつ!?」

「あれ、あすなろ高校の朝日奈葵じゃないか?オリンピック候補にも選ばれてる…」

「すげえな…ホントに人間かよ…」

悠太「…」

悠太「やっぱり…姉ちゃんはすげえな…」

朝日奈「悠太ー!」バチャバチャ

悠太「なんだよ」

朝日奈「競争しようよ!」

悠太「俺が姉ちゃんに勝てるわけねーだろ…」

朝日奈「えー、悠太も結構速いと思うんだけど…」

悠太「姉ちゃん、俺もう上がるわ」

朝日奈「えぇ!?まだ来たばっかりだよ!?」

悠太「ジムの方にいるから終わったらロビーな」

朝日奈「むぅ…」





朝日奈「ただいまー!」

母「あ、2人ともお帰り。葵に何か届いてたわよ」

朝日奈「え?何?」

母「部屋に置いてあるから見てみなさい」








72: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/11(木) 18:03:06.77 ID:D9Zr6G910







朝日奈「あ、封筒がある。これだよね?」

悠太「そうなんじゃねえか?…ってオイ!これ希望が峰学園からだぞ!」

朝日奈「えぇ!?」

悠太「とりあえず開けてみろよ!」

朝日奈「う、うん」ビリッ

『朝日奈 葵様 今回、我が校ではあなたの水泳競技での功績を称え、あなたを“超高校級のスイマー”として招きいれることになりました』

朝日奈「わ、私が希望が峰学園に!?」

悠太「すげえじゃんか!姉ちゃん!」

朝日奈「うわぁ…どうしよう…すっごくうれしいよ!」

悠太「でも水泳で選ぶなら姉ちゃんしかいねえだろ」

朝日奈「えへへ、そうかな?」

悠太「それで…やっぱり行くのか?」

朝日奈「うーん、お父さんやお母さんと相談しないとわからないけど…」

朝日奈「やっぱり行きたいかな」

朝日奈「あすなろも気に入ってるし友達とお別れするのは寂しいけどさ…」

朝日奈「でも希望が峰学園なら設備もメニューも充実してるだろうし…」

朝日奈「私はね…どんな競技でもギリギリのせめぎ合いに勝つためにベストを尽くしてきたつもりだよ」

朝日奈「一本でもシュートを多く決めるため…一本でも多くヒットを打つため…0.1秒でも早く泳ぎ切るため」

朝日奈「だから、今よりもいい環境があるのにそこに飛び込まないなんて私にはできないよ!」

悠太「…そうだよな。姉ちゃんはそういう奴だよな。だからすげーんだ…俺なんか全然敵わねえくらいにさ」

朝日奈「それに寮生活も楽しみなんだよね!毎晩友達の部屋に集まったりするのかな~?」

悠太「え…?寮…?」

朝日奈「うん、そうだよ。希望が峰学園は全寮制なんだ。知らなかった?」

悠太「あ、ああ…そっか…なら姉ちゃんも寮暮らしになるんだな…」

朝日奈「あ!もしかして悠太…」

悠太「なんだよ…?」

朝日奈「私がいなくなるのが寂しいんでしょ!」

悠太「な…!?」

朝日奈「そっかー、でも大丈夫だよ!たまにはこっちにも戻ってくるからね!」

悠太「ち、ちが…何言ってんだよ!!!」カァアア

朝日奈「あはは、顔赤いよ!やっぱりそうなんでしょ!」

悠太「姉ちゃんだってすぐ赤くなるだろ!!!」

朝日奈「でも今はなってないよ!」

悠太「うぐぐ…」








73: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/11(木) 18:05:04.23 ID:D9Zr6G910





朝日奈「あはは、ごめんって…ちょっとからかいすぎたね…」

悠太「まったく…」

朝日奈「うぅ…もう許してよぉ…」

悠太「ハァ…もういいよ…認める。確かに姉ちゃんが寮に入るって聞いて少しは寂しくなったよ」

朝日奈「悠太…」

悠太「でもやっぱり姉ちゃんは希望が峰学園に行くべきだよ」

悠太「姉ちゃんはさ…俺なんかより全然すごくて…いくら頑張っても勝てなくって…」

悠太「正直姉ちゃんの才能に嫉妬したこともあったけど、やっぱり姉ちゃんは俺の自慢なんだよ」

悠太「だから姉ちゃんには最高の環境で頑張って欲しいって思うんだ」

朝日奈「グス…」

悠太「姉ちゃん…?」

朝日奈「ゆ、悠太…ありがとね…!」ポロポロ

悠太「お、おい!何泣いてんだよ!」

朝日奈「えへへ、悠太がそんな風に思ってくれてたのがうれしくって…」グス

悠太「だからって泣くことねえだろ…」

朝日奈「いやあ…」

悠太「姉ちゃんって結構すぐ泣くよな」

朝日奈「あはは…確かに感動すると結構泣いちゃうかも…」

朝日奈「そういえば悠太が泣いてるのってもう随分見てない気がする…」

悠太「俺も最後に泣いたのがいつかよく覚えてないな」

朝日奈「流石男の子だね!」

悠太「いや、よくわかんねえけど…」

朝日奈「私は悠太もすごいと思うよ!」

朝日奈「水泳は私のほうが上かもしれないけど…」

朝日奈「走るのは悠太の方が速いし!」

悠太「まあ…陸上部だしな」

悠太「けどやっぱり姉ちゃんほどすごくはねえよ」

朝日奈「これからもっと伸びるって。悠太はまだ中学生なんだしさ!」

悠太「そうか?」

朝日奈「うん!だからそんなに決めつけなくてもいいんだよ」

悠太「…そうだよな。まだまだ頑張ればいいんだよな」

朝日奈「高校生になったらきっともっと速くなってるよ!」

朝日奈「そしたらさ、2人で金目指そうよ!」

悠太「金って…金メダルか?」

朝日奈「そうだよ!水泳と陸上で2つ!」

悠太「…それ、いいかもな!」

朝日奈「うんうん!2人で頑張ろうよ!」







74: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/11(木) 18:05:34.62 ID:D9Zr6G910










朝日奈「目指すは金!バカでも金だよ!」

悠太「バカは姉ちゃんだけだろ」

朝日奈「ちょっとぉ!?」







86: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/13(土) 14:05:38.83 ID:9h+FQn8U0

~十神編~




ペニーワース「白夜お坊ちゃま、コーヒーが入りました」

十神「ああ、ご苦労」

十神「…ブルーマウンテンか?」

ペニーワース「はい、本家ジャマイカ産のブルーマウンテンでございます」

十神「そういえば…この間缶コーヒーというものを始めて飲んだ」

ペニーワース「白夜お坊ちゃまがでございますか?」

十神「日本に行った時、たまたま自販機で見かけてな。試しに飲んでみた」

十神「120円という見たことのない値段だったが、まったく酷い味だった… あんなものはコーヒーとは呼べん」

十神「世の中とはつくづく不公平なものだ。あんなものを喜んで飲む連中がいるとはな」

ペニーワース「白夜お坊ちゃまはそのような方々とは違います。お坊ちゃまにはやはり“本物”を口にして頂かなければなりません」

十神「ふん、確かにそうだな。この十神白夜がそこらの愚民共と同じというわけにはいかん」

ペニーワース「はい、十神家次期ご当主様にはそれ相応の品格というものが必要でございます」

十神「当然だ。俺は選ばれた人間だからな」








87: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/13(土) 14:06:35.73 ID:9h+FQn8U0







十神「おい、ペニーワース」

ペニーワース「はい、どうかなさいましたか?」

十神「これを見てみろ」

ペニーワース「これは…書庫の資料でしょうか…?」

十神「そうだ。日本警察の極秘資料で『ジェノサイダー翔』の事件に関するファイルだ」

ペニーワース「確か…現場には必ず“チミドロフィーバー”の血文字を残す正体不明の連続殺人鬼でしたな」

十神「このファイルを見る限り事件を解決する有力な手がかりは無いようだが、この殺人鬼に関しては中々興味深い」

十神「いいか?この殺人の特徴はお前が言ったように現場に血文字を残していることだ」

十神「だがそれは世間にも公表されていることだ。この事件にはそれとは別の特徴がある」

ペニーワース「別の特徴…でございますか?」

十神「それは被害者が必ず貼り付けにされていることだ」

十神「さらに被害者は全員男」

ペニーワース「…」

十神「そしてなによりも面白いのが…」

十神「プロファイリングによれば、現場には犯人が長時間居座った後慌ててその場を立ち去ったような痕跡あるらしい」

十神「これらの事実から犯人には解離性人格障害の疑いがある…ということだ」

十神「まったく常軌を逸した事件だ。それに加えて犯人は二重人格とは…クククッ、面白いじゃないか」

ペニーワース「…私めには白夜お坊ちゃまの深い感性を理解しきることは難しゅうございます」

十神「……ふん…そうか…」









88: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/13(土) 14:07:20.12 ID:9h+FQn8U0







ペニーワース「白夜お坊ちゃま、おはようございます」

十神「ああ」

ペニーワース「朝食のご用意ができております」

十神「わかった。頂くとしよう」

ペニーワース「お坊ちゃま、本日のご予定は?」

十神「今日は特に入ってはいない。当然会社は動いているが、俺がいなければ1日も回らないような会社ではないからな」

ペニーワース「それでは、久々に学校などに行ってはいかがでしょうか?」

十神「学校だと…?」ギロ

十神「くだらん。この俺に今更そんなものが必要だと思うか?」

十神「俺は既にあらゆる分野の学問を習得している。たとえ世界トップレベルの名門校であろうと教育など不要だ」

ペニーワース「だからこそでございます」

十神「なんだと…?」

ペニーワース「白夜お坊ちゃまは既に知識・知能においては完璧と言えるお方でございます」

ペニーワース「しかしながらお坊ちゃまにはまだ学ぶべきことがあると私は考えるのです」

十神「なんだ?言ってみろ」

ペニーワース「人の心や感情…といったものでございます」

十神「心や感情だと…?ちっ、何を言い出すかと思えば… 聞いて損した。まさかお前がそんなことを言い出すとはな」

ペニーワース「人を動かすにも、人と協力するのにも、心や感情というのは必ず物事を左右するものです」

ペニーワース「そして、それはお坊ちゃまが身を置かれている戦いの中でも同じです」

十神「確かに愚民共が感情に流され、時に不合理な選択をすることは知っている」

十神「だが、それによっていくら事情が変わろうとも、そんなものに左右される俺ではない」

十神「プランクトン共の気持ちをわざわざ汲んでやるなど持っての他だ」

ペニーワース「お坊ちゃまならいずれおわかりになる時が来ます。ですから今日のところは学校に…」

十神「くどいぞ!行かないと言っている!」

ペニーワース「左様でございますか…」

十神「…ちっ」










89: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/13(土) 14:09:38.61 ID:9h+FQn8U0







十神「おい、ペニーワース」

ペニーワース「はい」

十神「暇だ。チェスの相手をしろ」

ペニーワース「かしこまりました。それでは失礼いたします」



十神「チェックメイトだ」

ペニーワース「む…完敗でございます」

十神「完敗だと…?冗談は止せ。この俺を本気にさせる相手などそうはいない」

ペニーワース「失礼ながら、昔は私の方が勝ち越していたものですが…最近ではお坊ちゃまが勝つことが多くなってきましたな」

ペニーワース「ふふ…」

十神「何がおかしい?」

ペニーワース「いえ、楽しいのでございます。お坊ちゃまと唯一対等に向き合えるこのチェスの時間が」

十神「当然だ。この俺に手を抜ける人間など存在しない」

十神「だが喜べ。お前は俺が知る中でも中々使える男だ」

ペニーワース「お褒めに預かり大変光栄でございます」ペコリ

十神「だが解せないな…」

ペニーワース「何がでございましょう?」

十神「お前ほどの男が何故執事などやっている?」

十神「もちろん十神家の執事ともなれば半端な者には勤まらん。ただの執事とは訳が違うし、それに見合う報酬も与えている」

十神「しかしお前の能力ならば自分の力で戦う道を選ぶこともできたはずだ」

ペニーワース「私が十神家にお仕えするようになったのは遠い昔のことでございます」

ペニーワース「それ以来、私は精一杯皆様にお仕えして参りました。私にはそのことが何よりの喜びでございます」

ペニーワース「理由などありません。十神の躍進を影から支えること…それこそが私の戦いでございます」

十神「そうか…まあ理由などなんでもいい」

十神「お前ももういい歳だが、お前の代わりなどそうはみつからん」

十神「お前にはまだまだこの俺のために働いて貰わねばならん。覚悟しておくことだ」

ペニーワース「はい、私の人生の最後の時まで…私は白夜お坊ちゃまにお仕えすることでしょう…」









90: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/13(土) 14:10:40.46 ID:9h+FQn8U0







ペニーワース「お坊ちゃま、ご当主様からお手紙が届いております」

十神「父から?一体なんだ?」

ペニーワース「恐らく来月のお坊ちゃまのお誕生日パーティーのことではないかと…」

十神「ちっ、そういえばもうそんな時期か… まったく、毎年毎年煩わしい…」

ペニーワース「ですが十神家の御曹司の誕生日ともなれば並の催しではありません」

ペニーワース「ですから、お坊ちゃまには是非とも出席して頂きませんと…」

十神「ふん、わかっている。俺ほどの人間ともなれば、たかが誕生日でも盛大なものになってしまうことくらいはな」

ペニーワース「5月5日…白夜お坊ちゃまがお産まれになった日は今でもはっきりと覚えております…」

ペニーワース「あの日私はご当主様に付き添って…」

十神「おい、くだらん思い出話は止めろ。お前がその手の話をする時は決まって長くなる」

ペニーワース「は…失礼致しました」

ペニーワース「ところで白夜お坊ちゃま。お坊ちゃまは…もうケーキはお嫌いなのでしょうか…?」

十神「突然何の話だ…… まさか…!」

ペニーワース「…」

十神「毎年パーティーに用意されている馬鹿デカいケーキは貴様の仕業か!?」

ペニーワース「…はい」

十神「おい貴様、何を考えている!今年からはあんなものは出すな!」

ペニーワース「しかし、既に準備を…」

十神「いいから取り止めろ!これは命令だ!」

ペニーワース「はい、かしこまりました…」









91: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/13(土) 14:11:52.19 ID:9h+FQn8U0







ペニーワース「白夜お坊ちゃま、またお手紙が届いております」

十神「今度はなんだ?また父からか?」

ペニーワース「いえ、それが…希望が峰学園というところからでございます」

十神「希望が峰学園…?」

十神「確か超一流の高校生を集められており、そこを卒業すれば成功を手にしたも同然と言われている日本の学校…だったな」

十神「俺に届いたということは…この俺をスカウトしたいといったところか」

ペニーワース「恐らく、そういうことではないかと」

十神「そういえば希望が峰学園の生徒には皆“超高校級”の称号が与えられるのだったな…」

ペニーワース「お坊ちゃまにもあることでしょう。確認してはいかがですか?」

十神「いや、全てを手にした俺を表現する言葉など一つしかない」

十神「それは“完璧”だ。つまり俺は“超高校級の完璧”というわけだ」

ペニーワース「なるほど、確かにその通りかもしれませんな」

十神「まったくくだらん。そんなものに頼らずともこの俺の成功は既に約束されている」

ペニーワース「おっしゃる通りでございます」

十神「だがそうだな…近々丁度日本へ戻る予定だった。この期に学籍を移してしまうのもいいかもしれんな」

十神「まあいいだろう、行ってやるとするか。ペニーワース、手続きをしておけ」

ペニーワース「かしこまりました」









92: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/13(土) 14:12:47.53 ID:9h+FQn8U0






ペニーワース「…白夜お坊ちゃま、コーヒーが入りました」

十神「この香りは…ルアックか?」

ペニーワース「はい、十神白夜の門出にふさわしい最高級の一杯でございます」

十神「門出だと?まさか希望が峰学園のことを言っているのか?」」

十神「馬鹿馬鹿しい。たかが学校を変えるだけだろう」

十神「…だが、お前がルアック・コーヒーを入れる時は決まって特別な時だったな」

ペニーワース「はい、お坊ちゃまは大変コーヒーがお好きでいらっしゃいます」

ペニーワース「ですが、その中でも最高級のこのコーヒーは、十神家の力を持ってしても手に入れるのは難しく、お坊ちゃまに最もふさわしい格を持つコーヒーといえます」

ペニーワース「ですから私は、この一杯をお坊ちゃまにとって特別な時に入れるようにしているのです」

ペニーワース「私は…白夜お坊ちゃまが希望が峰学園で何か大きなものを手にするような気がしてなりません」

十神「俺は十神白夜だ。世界を手にするのは必然だ」

ペニーワース「そういうことではなく…いえ、これ以上は蛇足ですな」

十神「お前の言っていることは理解できん」

ペニーワース「白夜お坊ちゃまはいずれ十神家の全てを継ぐことになります」

ペニーワース「そしてそれをきっかけに十神家はこれまでよりもさらに大きな存在となるでしょう」

ペニーワース「お坊ちゃまはそのための何かを希望が峰学園でつかむ…だからこそこれはその大切な門出になると思うのです」

十神「ふん、いい加減なことを言うな。今更俺が学校ごときで得るものなどない」

ペニーワース「私のような執事にはお坊ちゃまの進む覇道について推し量ることはできません」

ペニーワース「ですがお産まれになった頃からお仕えしてきた白夜お坊ちゃまのことはわかります…」

十神「お前がなんと言おうと、俺の進む道は変わらん」

ペニーワース「…はい、それでこそ白夜お坊ちゃまです」









93: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/13(土) 14:15:59.29 ID:9h+FQn8U0










十神「俺はこの十神の家に生まれ、そして勝ち残った」

十神「これからも俺は全てにおいて勝利し続け、そして世界を統べる存在となる…」

十神「“十神の名にかけて”な」








96: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/16(火) 00:30:05.19 ID:FliiHF9Y0

~戦刃編~





江ノ島「Zzz…」

ピンポーン

江ノ島「んあ?」パチ

江ノ島「今誰か来た…?ってもう11時じゃん…」

ピンポーン

江ノ島「はいはーい」



ガチャッ

戦刃「盾子ちゃん!久しぶり!」ダキッ

江ノ島「うわ!」

戦刃「会いたかったよ…」スリスリ

江ノ島「うっせぇ離せ!つーか遅えよ!もう11時じゃねえか!」

戦刃「ごめんね… 空港で手間取っちゃって… 盾子ちゃんも迎えに来てくれないし」

江ノ島「行く訳ねえだろ!この残姉!」

戦刃「うぅ…そんな…」

江ノ島「まあいいでしょう。あなたが空港の手続きすらままならない残念なお姉ちゃんというのは前からわかっていたことですし、あなたに会うのが待ち遠しかったというわけでもありませんから」

戦刃「あ、そうだ盾子ちゃん。盾子ちゃんにお土産があるんだ」




97: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/16(火) 00:32:22.52 ID:FliiHF9Y0

江ノ島「お土産?正直な所1ミリたりとも期待はできませんが、一応見ておきましょうか」

戦刃「うん!えっとね…」ゴソゴソ

江ノ島「…」

戦刃「えっと…」モタモタ

江ノ島「…」

戦刃「…」ゴソゴソ

戦刃「えっと江ノ島「長えよ!!!」ゲシ!

戦刃「あうっ…」ドテ

ゴロゴロ

戦刃「あ、出てきた」

江ノ島「なんですか…?これ…?」

戦刃「うん、お土産のレーションだよ」

江ノ島「は?レーション?」

戦刃「うん。フェンリルの任務で色んな国の軍隊に動向したからその時に分けてもらったのをとっておいたの」

戦刃「盾子ちゃんにも食べて貰おうと思って…」テレ

江ノ島「いや、いらないし」

戦刃「えぇ!?」

江ノ島「うぷぷ、そんなもので喜ぶのはミリオタか飢えた避難民か絶望的に残念な舌を持つむくろちゃんだけだよ」

戦刃「そ、そんなことないよ?すごくおいしいよ?」

江ノ島「だから…いらないって言ってるじゃないですか… そのレーションはお姉ちゃんが一人で食べてください…」

戦刃「折角持ってきたのに…」

江ノ島「そんなことより、あなたには来月から日本の学校に通って貰いますから」

戦刃「え?学校に?」

江ノ島「ええ。なんの特徴もない普通の県立高校です。それはもう絶望的なまでに退屈です」

戦刃「でも私試験とか受けてないよ?」

江ノ島「そこは私様がうまくやっておいたわ。私様の手にかかればそのくらい楽勝なのじゃ」

江ノ島「ちなみにー!その学校にはアタシも通うことになってるんだー!」

戦刃「え!盾子ちゃんと一緒の学校!?」

江ノ島「いやーん、食いつかれたー!気持ち悪ーい!」

戦刃「そんなこと言わないでよ…」

江ノ島「私の計算によれば、類まれなる残念属性と高度なぼっちスキルを持つお姉ちゃんともなれば、自力で真っ当な学校生活を送ることは不可能と言えます」

江ノ島「5月にもなれば熟練ぼっちの雰囲気を醸し出し、体育の時間や昼休みの時間が訪れる度に絶望することは間違いありません」

江ノ島「だからわざわざ同じ学校にしてあげたのさ… 公立だから工作は多少面倒だったけどね」

戦刃「うーん…確かにそうかも」

江ノ島「うんうん、素直な子は好きだよ。無能な働き者より無能な怠け者ってね」

戦刃「す、好き…?」パアッ

江ノ島「それじゃアタシはもう寝るから。まあ“今後のこと”についてはそのうち話すってことで」ガチャッ

戦刃「盾子ちゃん…私のこと好きって…」エヘヘ








98: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/16(火) 00:33:23.90 ID:FliiHF9Y0







戦刃「盾子ちゃん寝ちゃった」

戦刃「…」グゥー

戦刃「お腹すいた…」

戦刃「今日はお昼から何も食べてない… レーション食べよう」

戦刃「盾子ちゃんは食べてくれなかったし…」



戦刃「まずはアメリカ軍のレーション『MRE』…」

戦刃「アメリカ軍のレーションは元々あまりおいしくなかった」

戦刃「でも今では改良されて味もよくなり、メニューも増えた」

戦刃「中身は…」ゴソゴソ

戦刃「ビーフステーキ、メキシカンライス、ピーナッツバター、クラッカー、ビーフジャーキー、キャラメル、粉末ジュース」

戦刃「これ以外にも色んな種類のメニューがある…」モグモグ

戦刃「容器は温めやすい作りになっていて、軽量でごみもかさばらない…」モグモグ

戦刃「ちゃんとおいしさを考えられていて、任務中は滅多に食べられない贅沢品」モグモグ

戦刃「…おいしい」








99: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/16(火) 00:34:15.87 ID:FliiHF9Y0







戦刃「次はフランス軍のレーション…」

戦刃「フランス軍のレーションは世界的にもかなりおいしいと評判…」

戦刃「クラッカー一つ取っても他の国とは物が違う…」

戦刃「メインの缶詰に副菜の缶詰が2つずつ、インスタントスープ、ビスケットやキャラメルなどのお菓子類、コーヒーや紅茶などのも飲み物」

戦刃「私のお気に入りは、ツナとポテトの缶詰とチョコレートバー」モグモグ

戦刃「コーヒーや紅茶が飲めるのは戦場では至高の贅沢…」モグモグ

戦刃「特に三日三晩戦い続けた後の一杯は普段水とお湯しか飲まない私でもたまらない…」ズズ…

戦刃「…おいしい」








100: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/16(火) 00:34:57.87 ID:FliiHF9Y0







戦刃「次はロシア軍のレーション…」

戦刃「メニューはクラッカー、ジャム、塩茹での牛肉、ミートペースト、レモネード」

戦刃「アメリカやフランスに比べると品数が少なくて質素…」

戦刃「でもそれがいい…」モグモグ

戦刃「この素朴で戦場を意識できる味こそレーションの醍醐味…」モグモグ

戦刃「…おいしい」








101: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/16(火) 00:35:38.03 ID:FliiHF9Y0






戦刃「次はイギリス軍のレーション…」

戦刃「メニューはイギリスの家庭料理ランカシャー・ホットポット、ビスケット、ミートパテ、ドリンク、スープ、お菓子」

戦刃「イギリスには寒冷地用のメニューもあって私はそっちの方が持ち運びにも便利だから好き…」モグモグ

戦刃「でも寒いところで食べるものだから飴やチョコを他のところに持っていくと…」モグモグ

戦刃「包み紙の中で溶けてべとべとになる…」モグモグ

戦刃「レーションあるある…」フフッ

戦刃「おいしい…」








102: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/16(火) 00:36:34.09 ID:FliiHF9Y0







戦刃「最後にフェンリル特性のレーション…」

戦刃「私が一番よく食べるレーション…というか基本的にはこれ」

戦刃「栄養を素早く摂ることだけに特化した作り…」

戦刃「固形タイプと液状タイプがあってどちらも一瞬で食べられる…」モグモグゴクン

戦刃「今流行りの10秒チャージ…」

戦刃「正直味はあんまりよくないけど…」

戦刃「戦場では重宝する」

戦刃「時間がある時で物足りない時には現地で動物を捕まえて焼いて食べる…」

戦刃「新鮮な肉は味を付けなくてもそこそこおいしい…」

戦刃「私の得意料理…」ニヤニヤ








103: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/16(火) 00:37:14.18 ID:FliiHF9Y0









戦刃「ふう…ちょっと食べすぎた…」

戦刃「でもどれもおいしかった。やっぱりレーションは最高」

戦刃「明日から盾子ちゃんのために頑張らないと…」

戦刃「折角日本に戻ってきたんだから…」

戦刃「…私ももう寝ようかな」

戦刃「………Zzz…」






108: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/16(火) 15:39:30.01 ID:FliiHF9Y0

~葉隠編~




葉隠「ふう…やっと戻ってこれたべ…」

葉隠「ただいまー」ガラガラ

浩子「あら、康比呂。今回は早かったね」

葉隠「全然早くないべ… まったく散々な目にあったべ…」

浩子「まあ気にしても仕方ないさ。それよりお腹空いてるだろ?朝ごはんできてるよ」

葉隠「おお!流石母ちゃん!やっぱり日本人は米と味噌だべ!」

浩子「残念、今日はパンだよ」

葉隠「え、そうなんか…?まあでも母ちゃんの作った飯ならなんでもうまいべ」

浩子「あはは、この子ったら…うれしいこと言ってくれるじゃないのさ」

葉隠「でもハンバーガーだけは駄目だ。ろくなことにならねーべ」

浩子「…? 前は普通に食べてたじゃないか。どうしたんだい?」

葉隠「色々あったんだべ。危なく連れ去られるところだったべ」

浩子「ふーん… まあいいさ。冷めちまう前に食べよっか」

葉隠「おう、いただきますだべ」








109: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/16(火) 15:40:19.42 ID:FliiHF9Y0







浩子「康比呂、また裁判所から出頭命令が来てるよ」

葉隠「マジでか!?今度は何だべ!?」

浩子「この間別れたっていう女の子じゃないかい?要約するとだまし取った金を返せって話らしいね」

葉隠「何なんだべ!壺の件ならちゃんと合意の上で買って貰ったべ!」

浩子「それだけ?」

葉隠「あとは…ちょっくらあるセミナーに参加してもらったべ。料金後払いだったから怒ってた気がするべ」

浩子「料金の話は事前にしたの?」

葉隠「…してないべ」

浩子「はあ… あんたね、女の子にお金絡みの話は止めなって言ったろ?」

葉隠「うぅ…俺は困ってるんだべ…」

浩子「男なら、自分のケツは自分で拭くことさね。母ちゃんだっていつも助けてやれるわけじゃないんだ」

葉隠「わかってるべ。母ちゃんだけには迷惑かけたくないべ」

浩子「…やっぱりあんたはいい子だね。アタシの自慢の息子だよ」

葉隠「母ちゃん…」

浩子「女の子とのことだってきっと誤解されやすいだけなんだろうね」

浩子「あんたがちょっと魅力的すぎるのさ。だから女の子も舞い上がっちゃうんだろうよ」

葉隠「そうなんか?」

浩子「そうさ。だから、もうちょっとうまくやんな」

葉隠「わかったべ!俺は心を入れ替えるべ!」

浩子「偉いね。流石康比呂だよ」

浩子「相手の女の子には申し訳ないことをしたけど…まあそれは裁判の結果を見てからだね」




110: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/16(火) 15:41:12.89 ID:FliiHF9Y0

葉隠「まいったべ…すでに3件の訴訟が継続中だってのに…」

浩子「おいおい、3件じゃなくて5件だろ?」

葉隠「ん?そうだったか?」

浩子「そこはちゃんと覚えておきなよ。ま、そんな大らかな所もあんたのいい所でもあるんだけどさ」

浩子「一応いつもの先生にお願いしておくけど…これじゃあ今回も負けちまうかもしれないね」

葉隠「まあ、なるようになるべ」

浩子「ふふ、前向きな男ってのはいいもんだね」

浩子「でも…借金はどうしたもんかね…」

葉隠「額が額なだけにすぐには無理だべ…」

浩子「あんたのオーパーツコレクションを質に入れるってのはどうだい?」

葉隠「それは駄目だべ!あれは歴史的にも重要な価値を秘めてるんだ!あれを手放すことは世界を諦めるのと同じだべ!」

浩子「そうかい。じゃあしょうがないね」

葉隠「おう、しょうがないべ」

葉隠「いよいよとなれば腎臓の一つでも…」

浩子「それは止めるべ!!!!!」

葉隠「ヒイッ!?」ビク

浩子「康比呂…あんたが何をしようとそれはあんたの人生だ。好きにしな」

浩子「でもね…お金のために自分を傷つけるようなことは絶対にするんじゃないよ」

浩子「あんたはアタシの大事な一人息子なんだ。だから…どうか体だけは大事にしておくれよ…」ダキ

葉隠「母ちゃん…俺が悪かったべ…」

浩子「とにかく、それだけは絶対に手を出したら駄目だよ。あんたの体を傷つけるくらいならアタシの内臓だって惜しくないんだ」

葉隠「そ、それこそ駄目だべ!母ちゃんはそんなことしなくていいべ!」

葉隠「母ちゃんが俺のこと大切に思ってくれるように、俺だって母ちゃんのことが大切なんだべ!」

浩子「康比呂…ありがとね」

葉隠「母ちゃんがそこまで言うなら、“自分の内臓は”売るの止めるべ」

浩子「うん、それがいいさ」










111: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/16(火) 15:42:17.94 ID:FliiHF9Y0







葉隠「よっこらせっと…」ゴソ

浩子「ん?康比呂、それはなんだい?」

葉隠「おお、母ちゃん。よくぞ聞いてくれたべ!」

葉隠「これはかのナポレオンやチンギスハンも手にしたとされ、手にした者は世界を統べると言われている絶対に割れない奇跡の水晶玉だべ!」

浩子「ふーん、なんだかすごそうだねぇ…」

葉隠「俺の全財産はたいて買ったんだ!これで借金も返せるはずだべ!」

浩子「母ちゃんにはよくわからないけど…男ってのはよくわからないものが好きだからね。まあいいんじゃないかい?」

葉隠「占いの仕事も捗るべ」

浩子「あんたにはすごい才能はあるみたいだからね。その助けになるならきっといい買い物さ」

葉隠「おう!流石母ちゃんはわかってるべ」

浩子「これでも母親だからね。康比呂のことはなんでもわかるさ」

浩子「借金だってあんたならすぐに返せるよ。だから頑張んな」

葉隠「俺は世界を手にしたも同じだべ!もう怖いものは何もないんだべ!」








112: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/16(火) 15:43:18.23 ID:FliiHF9Y0






浩子「ふー…」スパー

葉隠「母ちゃんまた煙草すってるべ」

浩子「ああ、ホントは良くないんだろうけどね… 仕事が忙しくなってくるとつい吸いたくなるんだよね」

葉隠「いや、仕事関係なくいつも吸ってるべ?」

浩子「そうだったかね…」

葉隠「程々にしとかねーと体にわりーぞ?」

浩子「そうだね。気を付けるよ」

葉隠「それとくれぐれも寝煙草は止めるべ。また家が燃えたら洒落にならねーべ」

浩子「それは大丈夫だよ。あたしはそんなヘマしないさ」

葉隠「まあでも母ちゃんも仕事大変だしな。多少の息抜きは必要だべ。酒で良ければ俺が付き合うぞ」

浩子「そういえばあんたももう二十歳だったね。こんなにちっちゃかったのに…早いもんだよ」

葉隠「いい加減高校は卒業しちまいたいべ」

浩子「焦ることはないさ。大きな器ってのは作るのに時間がかかるものだしね」

葉隠「確かに…そうかもしんねーな!」

浩子「とはいえこれ以上ダブると退学になっちまうから気を付けな。高校くらいは出ておいて損ないからね」

葉隠「わかってるべ…」








113: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/16(火) 15:44:01.13 ID:FliiHF9Y0






葉隠「母ちゃん」

浩子「ん?どうしたの?」

葉隠「俺にこんなん届いてるべ」

葉隠「希望が峰学園とかいうところからだべ」

浩子「希望が峰学園?それって確か相当すごい学校じゃないかい?」

葉隠「すごい学校?」

浩子「確か一流の才能を持つ高校生が集まる学校で、そこを卒業しれば成功を手にしたも同然だとか…」

葉隠「そんな学校が俺に何の用だべ?もしかして金でもくれんのか?」

浩子「とりあえず開けてみたら?」

葉隠「そうするべ」ビリ

葉隠「お?」

浩子「なんだって?」

葉隠「俺のことを“超高校級の占い師”としてスカウトするって書いてあるべ」

浩子「へえ、すごいじゃないか!希望が峰学園からスカウトされるなんて」

浩子「やっぱりあんたは何か持ってるんだねぇ」

葉隠「よくわかんねーけど…母ちゃんが言うならそうなんだべ」

浩子「それで、行くのかい?」

葉隠「おう。新しい学校に行けば新入生扱いになるから、あと何回かダブっても大丈夫だべ」

浩子「その発想はなかったね」

葉隠「それにそんなすごい学校なら金持ちもいっぱいいるべ。恩を売って借金返済を助けてもらうべ」

浩子「まあ程々にしときなよ。折角あんたの力でこんないい学校に入れるんだからさ」








葉隠「奇跡の水晶玉も手に入れたし、希望が峰学園にも入れるし、最近は良いことづくしだべ!」

葉隠「きっと俺には希望あふれる未来が待ってるんだべ!」

葉隠「俺の占いは3割当たる!!!」





120: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/23(火) 23:46:44.45 ID:TwwSq9ik0

~舞園編~





「はい、それでは次は羽山あやかちゃんについて紹介していきます!」

あやか「はい!カスじゃないですアヤカスです!よろしくお願いしまーす!」

「えー…正直アイドルにしてはブスやろ?」

あやか「ちょっと!いきなり何言ってるんですか!?」

舞園「あやかはホントにいい娘なんですよ!」

あやか「ブスの方も否定してよ!!!」

 アハハハハッ

「まあ、あやかちゃんもお前のことブスやと思ってるけどね」

「なんでやねん!そんなことないやろ!」

あやか「…」

「何か言わんかい!!!」バシッ

あやか「痛っ!!!」

「お前何してんねん!アイドルやぞ!」

「別にええやろ。最近のアイドルは結構皆体張るし」

あやか「すいません…そういうのは私じゃなくてさやかの担当なので…」

「そこはお前が張らんかい!」

 アハハハハハハハッ!

舞園「でも私結構丈夫なのでホントに向いてるんですよ?」

「え?そうなの?」

舞園「はい!こう見えて結構筋肉あるんです!」

「じゃあちょっとどんなもんか… コイツにビンタしてみてくれる?」

「ちょっとぉ!なんで僕なんですかぁ!」

舞園「えっと…」

「ほらぁ!さやかちゃん困ってるじゃないですかぁ!」

舞園「わかりました!やります!」

「なんでやーーーーーッ!!!!」

舞園「それじゃあ、いきますよ!」

「嫌やぁーーーーッ!!!!わー!わーーー!!!」

 バチーーン!!!








121: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/23(火) 23:47:39.36 ID:TwwSq9ik0





舞園「ふぅ…」

あやか「さやか!お疲れ!」

舞園「あやか、お疲れ様」

あやか「今日の収録良かったね!皆面白かったって言ってたよ!」

舞園「うん。でもやっぱりバラエティは緊張するなぁ。変なこと言っちゃったらどうしようとか考えると…」

あやか「そう?私はライブのリハーサルの方が緊張するけどなぁ…やっぱり本業だし本番で失敗したら大変だし」

舞園「そうなんだけどね。でもなんていうか…私はそれも含めて楽しいっていうか…」

あやか「さやかはすごいなぁ… 私は正直楽しむ余裕なんかないや」

舞園「もちろん大変なこともいっぱいあるけど…あやか達と一緒にこうやってアイドルやってられるのが私は幸せなんだと思う」

あやか「あはは、うれしいこと言ってくれるね!」モミッ

舞園「きゃあ!ち、ちょっとあやか!」

あやか「へへへ、さやかもだいぶ育ってきましたなー」

舞園「なんでいきなり胸を揉むの!?」

あやか「まあまあ、いいじゃんちょっとくらい。女同士なんだしさ」

あやか「あ、それとも男の子に揉まれた方が良かった?」

舞園「な、何言ってるの!?」

あやか「確か…苗木君だっけ?前にさやかが好きって言ってた人」

舞園「な、苗木君はそんなんじゃ… ていうか好きなんて言ってないよ!!!」カァアア

あやか「えーそうだっけ?じゃあなんて言ったの?」

舞園「た、ただちょっと気になるって…」

あやか「同じじゃーん!」

舞園「全然違うよ!!!」

あやか「はいはい、もうわかったよ」

舞園「もう…あやかが言い出したのに…」

あやか「でもアイドルってやっぱり大変だよね。恋愛禁止なんてさ」

あやか「私たちだって年頃の女の子なんだよ!」

舞園「そうかもしれないけど…それは仕方ないんじゃない?」

あやか「それさえなければ、さやかも苗木君に話しかけられたかもしれないのに」

舞園「もうやめてぇ!」








122: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/23(火) 23:48:39.19 ID:TwwSq9ik0






あやか「でも私なら大丈夫な気がする」

舞園「何が?」

あやか「彼氏作っても」

舞園「まだその話するの!?」

あやか「いやいや、もう苗木君の話は終わってるよ?」

舞園「あぅ…」カァアア

あやか「さやかがしたいなら別いいよ?私はもっと聞きたいし」

舞園「し、しないよ!」

あやか「なーんだ、つまんないの…」

舞園「そ、それよりあやかの話だよ!」

あやか「あ、そうそう。私なら彼氏作っても大丈夫じゃないかって話」

舞園「え?それはやっぱり駄目じゃない…?」

あやか「普通のアイドルならそうかもしれないけど…」

あやか「私なら逆にファンの人も喜んでくれそうな気がしない?」

舞園「そ、そういう人も中にはいるだろうけど…」

あやか「よし!ナンパしよう!」

舞園「よりによってナンパ!?危ないよ!」

あやか「私の決意は固いのだ!」

舞園「お願いだから考えなおして!」

あやか「ちぇ…」








123: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/23(火) 23:52:20.33 ID:TwwSq9ik0








舞園「ふぅ…今回の収録は結構上手く喋れたかな…?」

舞園「あやか!お疲れ様!」

あやか「うん…お疲れ」

舞園「あやか?どうかしたの?

あやか「…ねえ、さやか」

舞園「何?」

あやか「私ってブスだよね?」

舞園「え?き、急に何言ってるの?」

あやか「うん、わかってるよ。私が全アイドルの中で一番ブスなのは」

あやか「今までそのキャラをうまく利用してファンの人たちから好かれてきた訳だしさ」

舞園「あ、あやか?何言ってるの…?」

あやか「自分の役割はわかってるよ。ブスだけど誰よりも明るく頑張ってて皆に愛されるキャラ」

あやか「歌もダンスも上手くてステージの端からライブを盛り上げる。バラエティに出れば芸人顔負けのトークで笑いを取る」

あやか「グループでは私がいることで皆すごく仲良く見える。メディア的にもネタには事欠かない」

あやか「それでいて私以外は皆すごく可愛いからグループのレベルが下がることもない」

舞園「…」




124: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/23(火) 23:53:38.65 ID:TwwSq9ik0

あやか「わかってるよ… ちゃんとわかってる… でもさ…!」

あやか「私だって女の子なんだよ!?ブスだブスだなんて言われて嬉しい訳ないじゃん!!!」

あやか「私だって最初は自分がブスだなんて思ってなかったよ!普通にアイドル目指してたよ!」

あやか「でも気が付いたらこんなことになってた!!!私ってアイドルなの!?」

あやか「って…こんなこと言ってもさやかにはわからないよね… だってさやかは」

 パシーンッ!!!

あやか「…えっ?」ジンジン

舞園「言いたいことはそれだけ?」

あやか「な、何すんのよ!!!」

舞園「聞きたいなら言ってあげる。あやかはブスだよ!!!」

あやか「…っ!」

舞園「アイドルとして…?違うよ!!!一般人から見てもブスだよ!!!」

あやか「な、なんで…なんでそんなこと言うの?」ポロポロ

舞園「あやかが馬鹿なこと言うからだよ!!!」

あやか「な、何が馬鹿なの!?私は真剣に悩んでるのに!!!」

舞園「キャラって何よ!!!」

あやか「え?」

舞園「誰よりも明るく頑張ってて皆に愛されてるのがアイドル“羽山あやか”でしょ!?」

あやか「…」

舞園「仲良く見えるって何よ!!!私たちってホントは仲良くないの!?」

あやか「…」

舞園「私たちも…ファンの人たちも…あやかのことが大好きで…あやかと一緒にいられるのがすごく楽しくて…だからここまで一緒にやってきたのに…」

舞園「なんで…そのあやかがそんなこと言うのよ…」




125: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/23(火) 23:55:13.64 ID:TwwSq9ik0

舞園「私だっていつも不安なんだよ…?いつまでアイドルでいられるのか…世間に飽きられてグループも解散して、皆バラバラになっちゃうんじゃかいかって…」

舞園「アイドルってそんなに長く続けられるものじゃないでしょ…?だからいつか絶対に終わりが来る…」

舞園「できるだけ長く続けることはできるかもしれないけど…来月にはもう終わってるかもしれない…」

舞園「私はこのアイドルって仕事に全てを捧げてきた。でも、どんなに頑張ってもこの不安は無くならない」

舞園「芸能界ってそれだけ厳しいところだもんね」

あやか「…そうだね」

舞園「でもそんな厳しい世界でずっと頑張ってこれたのはあやかがいてくれたからなんだ」

あやか「…」

舞園「初めてあやかとあった時、あんまり可愛くなくてびっくりしちゃって…この娘ってホントにアイドルなのかなって」

舞園「でもあやかと話してるうちに自分が馬鹿だったって気が付いた…」

舞園「あやかはいつでもすごく前向きで、人を元気にする才能があるんだってわかったから」

舞園「私もあやかみたいなアイドルになりたいってずっと思ってた」

舞園「辛いことや苦しいこともいっぱいあったよ」

舞園「プロデューサーに怒られた時、ライブでミスした時、制作会社の社長さんに…嫌な写真を撮らせた時、ネットで枕ってあだ名付けられてるのを知った時」

舞園「でもそんな時でもあやかはいつも笑顔でいてくれて…私はそれに元気付けられてきたんだよ」

舞園「他の皆もそう。あやかがいなかったらここまで来れなかったし、あやかがいない私たちなんて考えられない!」

舞園「だから…」

あやか「さやか、もういいよ」

舞園「え?」

あやか「もう十分わかったから…」




126: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/23(火) 23:56:57.28 ID:TwwSq9ik0

あやか「ごめんね、さやか。さやかがそんな風に思ってたなんて私知らなくって…」

あやか「それで…私は…あ、あんなに…勝手な…っ…こと言って…グス…」ポロポロ

舞園「あやか…」ギュッ

舞園「私の方こそごめんなさい…叩いたり酷いこと言ったり…痛かったよね…?」

あやか「うん…」

舞園「あやかだって辛い思いしてたのに…私ついカッとなって…ホントにごめんなさい…」

あやか「…」

舞園「ねえ、あやか… さっきはあんなこと言ったけど…やっぱりあやかが辛いなら…」

あやか「さやか!」

舞園「な、何?」

あやか「私、頑張るよ!」

舞園「え?」

あやか「日本一のアイドルにそんなこと言われたんだもん!アイドルなら誰だって頑張ろうって思うよ!それにね…」

あやか「さやか達がいてくれたら頑張れるから。私も皆と一緒に1日でも長くアイドルを続けたいんだ!」

舞園「でも、いいの…?これからだって…」

あやか「あーもう!いいって言ってるでしょ!私がそう決めたんだから!」

舞園「…そっか。うん!じゃあ、これからもよろしくね!」

あやか「うん!私の方こそよろしく!」

舞園「あ、でもまた辛くなったらいつでも言ってね!あやかだけが我慢してるのはやっぱり嫌だし…」

あやか「大丈夫だって!それにずっとアイドルやってきたのに今更他のことなんてできないよ」

舞園「大丈夫だよ!その時は私が一生面倒見るし!」

あやか「あはは、何それ?愛の告白?」

舞園「え!?ち、違うよ!」

あやか「わかってるって。さやかが好きなのは苗木君だもんね」

舞園「だから違うって!!!」









127: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/23(火) 23:58:56.23 ID:TwwSq9ik0







 ガチャッ

舞園「ただいま」

父「おかえり、さやか」

舞園「お父さん!今日は早いんだね」

父「ああ、外回りだったからね」

父「さやかにこんなものが届いてるんだけど…」

舞園「私に?」

舞園「希望が峰学園入学案内?って封筒が開いてる… お父さん勝手に開けたの!?」

父「ご、ごめん… つい…」

舞園「もう…」

父「そ、それよりほら、さやかにスカウトが来たってことだよ!」

父「“超高校級のアイドル”だって!」

舞園「うん」

父「それでどうするんだ?」

舞園「お父さんはどう思う?」

父「それは…こんなすごい学校にさやかがスカウトされたなんて嬉しいよ。まあさやかなら妥当だとは思うけど」

父「だから、さやかがいきたいならお父さんはいいと思う」

舞園「そっか、じゃあ私行くよ!」

父「いいのか?そんな簡単に決めて。アイドルとして行くんだしグループの皆と相談したりした方がいいんじゃないか?」

舞園「大丈夫だよ!皆きっと応援してくれるもん!」

父「でもなぁ…」

舞園「私にはわかるの。だって私…」






128: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/23(火) 23:59:28.97 ID:TwwSq9ik0




舞園「エスパーだから!」






137: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/30(火) 20:22:00.13 ID:sUHAxgIQ0

~大和田編~




「雪丸さん、どうですか?」

雪丸「ああ、まだ来てない」

「どうですかね?今回は」

雪丸「心配いらないさ」

「あぁ…なんだか不安になってきた…」

雪丸「馬鹿野郎!!!お前それでも暮威慈畏大亜紋土のメンバーか!!!」

雪丸「総長を信じろ。あの人なら大丈夫だ!」

「あ!来ました!」

雪丸「いよいよだな… お前ら、絶対大声出すんじゃねぇぞ。気づかれたら事だからな」





「大和田くん! ごめんね、遅くなっちゃって」

大和田「あ、ああ、気にすんな。俺も今来たところだからよ」


雪丸「く~!やっぱり渋いぜあの人は!」

「いや普通のやり取りだと思いますけど…」

「ガチガチになってるしな…」

雪丸「お前ら何言ってんだ!あんなにイカしてるじゃねーか!!!」

「雪丸さん!声が大きいッス!」

雪丸「お、おう… すまねえ」


「それで何なの?用事って」

大和田「ああ…き、今日は…オメェに言いてえことがあるんだ」


雪丸「い、言うぞ… いよいよ言うぞ…」

「…」ゴクリ




138: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/30(火) 20:23:28.20 ID:sUHAxgIQ0

大和田「好きだッ!!!!!俺と付き合ってくれッ!!!!!!!!」

「ヒィッ!?」


「「あ~…またやっちまった…」」

「これで10回目だぜ… ねえ雪丸さん」

雪丸「…くっ」

「雪丸さん?」

雪丸「なんて…男らしい告白なんだ… 紋土さん…あんたやっぱりすげぇよ…」ポロポロ

「えぇ…」

「なんで泣いてるんすか?」

雪丸「なんでってお前…あの男らしい告白を見ただろ?思わず感動しちまったんだよ!」

雪丸「あれで落ちねぇ女はいねぇよ…」

「じゃあ、ちょっと見ててくださいよ…」

雪丸「おう、総長のかっこいいところを最後まで見届けようじゃねぇか!」


「…」

大和田「ど、どうだ!?」

「な、なんで怒鳴るの?」

大和田「あぁ?」

「なんで怒鳴るの!?」

大和田「ど、怒鳴ってねえよ!!!!!」

「怒鳴ってるじゃん!今も!」

大和田「怒鳴ってねえって!!!!」

「はあ…もういいよ」

大和田「なに?」

「せっかく大和田くんのこと…ちょっとはいいかもって思ってたのに…なんか冷めちゃった」

大和田「」

「私もう帰るね。バイバイ」

大和田「」


雪丸「なん…だと?なんだよこれ…何が起きたんだ…?」

「いつもと同じことッスよ…」

「なんで直らねえかなぁ」

雪丸「クソッ!」ダッ

「あ!ちょっと雪丸さん!」




139: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/30(火) 20:25:15.74 ID:sUHAxgIQ0

大和田「」

雪丸「紋土さん!」

大和田「…あぁ?って竹道じゃねえか…!」

「雪丸さん!待ってくださいよ!」

大和田「オメェらまで…こんなところで何やってんだ?」

雪丸「紋土さん!さっきの告白見事でした!!!」

大和田「あ?」

雪丸「紋土さんの男らしい告白!最高に渋かったですよ!」

雪丸「なんであれでうまくいかねぇかなぁ。俺が女だったら絶対に…」

大和田「おいテメーら…」

「うわぁ…」

「ヒイッ!!」

雪丸「ん?どうかしたんですか?紋土さん」

大和田「見てたんだな?」

雪丸「見てましたよ!彼女が来るところから見てました!」

大和田「そうか…彼女じゃねえけどな…」

「あわわ…」

雪丸「いやいや、彼女ってのはそういう意味じゃありませんよ!sheって意味の彼女です!」

「ゆ、雪丸さん…もうその辺で…」

大和田「オイテメーらああああああああああああああああああああ!!!!!」

「「うわああああああああああああ!!!」」

雪丸「も、紋土さん!?どうしたんですか!?」

大和田「おい竹道ィ…テメェ俺をおちょくってんのか?」バキバキ

雪丸「な、何言ってるんですか!そんな訳ないですよ!」

「そ、そうッスよ総長!ほら!雪丸さんって普段からこういうところあるじゃないッスか!」

大和田「… まあ…そうだけどよ…」

大和田「チッ!もういい。それより…また駄目だったぜ… また怒鳴っちまった…」

「なんとかならないんですか…?」

大和田「気を付けてるつもりなんだけどよぉ… 緊張するとつい怒鳴っちまうんだよ…」





140: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/30(火) 20:25:49.51 ID:sUHAxgIQ0

雪丸「気にすることないですよ!それくらいで紋土さんを振るような女なんて!」

雪丸「本当にいい女ならちゃんと紋土さんの素晴らしさがわかるはずです!」

大和田「ありがとよ竹道。だけどこれは俺が悪ィんだ」

雪丸「でも…」

大和田「こういうのはよぉ…男が全部被れば丸く収まるんだよ」

雪丸「紋土さん…流石です!」

大和田「まあ今回は普通に俺が悪ィんだけどな…」

大和田「でもよぉ!これくらいで諦めるかよ!次は必ず決めるぜ!」

雪丸「その意気ですよ!女なんて星の数ほどいますって!」

大和田「あぁ!?」

雪丸「え?」

大和田「星の数ほどいるだぁ…?流石ファンクラブまである奴は言うことが違ぇじゃねえか…」ピキピキ

雪丸「い、いや俺はそういうのは興味ありませんから…」

大和田「なんだそりゃぁ?そいつは俺への当て付けか?あぁ!?」

「そ、総長、落ち着いてください」

大和田「うるせええええええええええええええええ!!!!!!!」

雪丸「うわあああああああああああああああ!!!!!」









141: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/30(火) 20:26:26.78 ID:sUHAxgIQ0







「総長!大変です!」

大和田「あぁ?どうした?」

「前田が鈴乱高校の奴らに捕まりました!」

大和田「何ィ!?またかよ!!!」

「返して欲しければ今夜8時に商店街近くの倉庫跡まで来いって言ってます!」

大和田「チッ、何度も何度もしつけえ奴らだ」

大和田「オイオメェら!!!全員で乗り込むぞッ!!!2秒で砂にしてやるぜッ!!!!」

「「「「「おおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」

雪丸「待ってください!!!」

大和田「あ?なんだ?」

雪丸「大勢で正面から突っ込むのは危険です!!!」

大和田「テメェ…俺らがあんな奴らに負けるってのか!?」

雪丸「いえ…多分楽勝です。問題はそのあとなんですよ」

大和田「後だぁ?」

雪丸「あの倉庫跡は鈴乱の連中の活動範囲で住宅街も近い… おそらく通報も警察の到着もかなり早いはずです」

雪丸「大勢で行って騒ぎを大きくすると撤収に手間取った場合面倒なことになります」

大和田「なるほどな… 確かにオメェの言う通りだ」

大和田「なら少数精鋭で行くぞッ!!!俺と竹道を入れて10人で行く!!!」

大和田「それで、ルートはどうすんだ?」

雪丸「行きは最短経路で正面の道から乗り込みます」

大和田「帰りは裏道か?」

雪丸「裏道は別の大通りに直通してるので危険です。パトロール中のパトカーがその道から入ってくることがあります」

雪丸「正面の道からすぐ脇道に入ってそのあとバラバラの道を使います」

大和田「よし、それで行くぞ。オメェら!向こうに付いたら5分で撤収だッ!!!今から呼ぶ8人は俺らに続けッ!!!」








142: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/30(火) 20:27:27.26 ID:sUHAxgIQ0







雪丸「ああ、わかった。そのまま解散していいぞ」ピッ

雪丸「紋土さん、全員撤収完了したそうです」

大和田「おう、そうか」

雪丸「俺たちもこのまま解散しますか?」

大和田「そうだな…オイ竹道、これから2人で奔りに行かねえか?」

雪丸「2人でですか!?是非、お供します!」






大和田「ふう…結局一晩中奔ったな…」

雪丸「結構冷えますね」

大和田「こういう時は一風呂浴びてぇところだが…」

雪丸「どうしたんですか?」

大和田「今帰ると親父と顔合わせちまうからな。折角いい気分なのにそれはねぇよ」

雪丸「…それなら俺ん家に来ますか?」

大和田「あぁ?」

雪丸「良ければウチの風呂使ってください」

大和田「迷惑じゃねえのか?」

雪丸「はい、今日ウチ親いませんから」

大和田「…妙な誘い方すんじゃねぇよ」

雪丸「え?」

大和田「なんでもねえ。お前がいいって言うならお邪魔させて貰うぜ」

雪丸「はい、行きましょう!」






大和田「オイ…ここがオメェん家か…?」

雪丸「はい、そうですけど…」

大和田「オメェこんなでけえ家住んでたのかよ…」

大和田「オメェん家ってすげえ金持ちなんじゃねえか…?」

雪丸「まあ…そうですね」

大和田「執事とかいそうだな…」

雪丸「流石にそこまでじゃありませんよ。派遣の家政婦が一人いるだけです」

大和田「十分すげえよ…」

雪丸「さあ、入りましょう。風呂そこそこ広いんで2人でも入れますよ」







143: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/30(火) 20:28:13.48 ID:sUHAxgIQ0





ガチャッ

雪丸「さあ、こっちです」

大和田「誰もいねえのか?」

雪丸「親は2人とも出かけてます。家政婦も家にいるのは昼だけです」

「にゃあ~」

大和田「お?」

雪丸「あ、ああ、飼ってる猫はいますけど…」

雪丸「すいません!総長は犬派なのに!!!」

大和田「別に怒りゃしねえよ。猫も好きだしな」

「にゃ~」スリスリ

大和田「おぉ!コイツ、俺に懐いたぞ!」ナデナデ

大和田「へへ、やっぱ動物ってのはいいもんだよなぁ!俺もこうして昔は…」

大和田「…」

雪丸「紋土さん…?」

大和田「くっ…チャック…っ…」グス

雪丸「も、紋土さん!」

大和田「テ、テメェ…見るんじゃねぇ…あっち向いとけ…!」

雪丸「は、はい…」








144: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/30(火) 20:29:29.51 ID:sUHAxgIQ0







雪丸「紋土さん!お疲れ様です!」

大和田「よぉ、竹道。昨日は世話になったな!」

雪丸「いえ!紋土さんにはいつもお世話になってますから!」

大和田「……なあ…オメェよ」

雪丸「なんですか?」

大和田「このチームに入ってよかったのか?」

雪丸「急に何言ってるんですか!俺は紋土さんの男気に魅かれてこのチームに入ったんですよ!」

大和田「ああ、そうだったな。オメェはそう言って暮威慈畏大亜紋土に入ってきた…」

大和田「だけどよ…オメェはいいとこのお坊ちゃんだったんだろ?なんで族なんかになんだよ」

大和田「今は楽しいかもしんねーけどよ…ちゃんと勉強してた方が将来のためなんじゃねえのか?」

大和田「オメェはたまに馬鹿だけどよ、基本的には頭が切れるし、喋り方も族にしてはちゃんとしてると思ってたんだよ」

大和田「だから、もっと違う人生ってのも選べたんじゃねえかって思ってよ」

大和田「俺たちみてぇな連中の行きつく先なんてのは大体が力仕事、酷ぇ奴はチンピラのままだ」

大和田「うまくやる奴は車やバイクの仕事にありつける奴や職人になる奴もいるけどよ…」

大和田「オメェくらい頭良ければ大学だって行けるんじゃねえのか?」

大和田「そうすりゃ同じような仕事に就いたって現場監督だの設計士だの色んなことできるだろ」

雪丸「紋土さん、結構詳しいんですね」

大和田「あ? あー、…まあな。俺だってたまたまだろーが詳しいことくらいあんだよ」

雪丸「俺は紋土さんとこのチームを一目見てここで男になりたいって思ったんです」

雪丸「紋土さんみたいな本物の男になりたいって…」

大和田「…」

雪丸「それに大亜さんもです。大亜さんも俺にとっては…」

大和田「アイツの話はするんじゃねえよ」

大和田「あに…アイツはもう死んだ… 俺との勝負に負けそうになってトチって死んだ腰抜け野郎だ」

雪丸「…すいません」

雪丸「でも…なんで急にこんな話を…? やっぱり…こんな俺じゃ…親衛隊長は任せられないってことですか…?」

大和田「あぁ?何言ってんだ」

大和田「んな訳ねえだろ。ちょっと気になっただけだよ」ワシャワシャ

雪丸「そ、そうですか…」

大和田「それどころか俺はな…3代目はオメェしかいないとさえ思ってんだぜ?」




145: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/30(火) 20:30:15.89 ID:sUHAxgIQ0

雪丸「お、俺が3代目!?」

大和田「何驚いてやがんだ。親衛隊長ってのはそういうもんだろ」

雪丸「でも…俺なんかに暮威慈畏大亜紋土の総長なんて勤まるとは…」

雪丸「俺は紋土さんに比べれば男としてまだまだだし、喧嘩だって俺より上はチーム内にもいくらでもいるし…」

大和田「まあオメェは頭がいいから色々考えちまうのはわかるけどよぉ…」

大和田「オメェは俺なんかよりも全然頭もいいし、人のことも考えてやれるし、根性だって俺にも負けてねぇ」

大和田「だから俺はオメェを親衛隊長にしたんだ」

雪丸「…」

大和田「オメェは十分すげえ男だ」

大和田「だけどな、いつまでもそんな風にウジウジしてやがるようならそれは俺の見込み違いってことだ」

雪丸「…すいません。確かに俺は弱気になってたみたいです…」

雪丸「何百人もの荒くれ者達が、紋土さんの一声で一つになる」

雪丸「そんな紋土さんの姿を見てたらつい…」

大和田「…」

大和田「なあ…オメェ、希望が峰学園って知ってるか?」

雪丸「はい、あの全国から才能のある高校生を集めてるっていう…」

大和田「実はな…その希望が峰学園から俺のところにスカウトがきやがった」

雪丸「え!?紋土さんにですか!?」

大和田「“超高校級の暴走族”だとよ。最初はくだらねーって思ったけどよ…」

大和田「そこを卒業すりゃあ成功を手にしたも同然とか言われてるらしいんだ」

大和田「それに頼るつもりはねーけどよ… 俺はそこでもっと強くなれるんじゃねーかって思ってんだ」

雪丸「じゃあ、紋土さんは…」

大和田「ああ、俺は希望が峰学園に行くぜ」

大和田「俺はそこでもっと強くなって、オメェに引き継ぐまでこのチームをしっかり守る」

雪丸「もしかして…俺のために?」

大和田「アホか、そんな訳ねえだろ」

雪丸「…」

大和田「とにかくよ、俺が引退するまではまだまだ時間があんだ。だからオメェはそれまでにしっかり強くなりゃいいんだよ」

大和田「自信を持ってチームを引っ張っていけるようにな…」

雪丸「紋土さん…わかりました!俺、もっと強くなります!!!」

雪丸「紋土さんみたいにチームを引っ張れるような強い男に!!!」

大和田「おう!それまで暮威慈畏大亜紋土は俺がしっかり守るからな!」





146: ◆92Irv0u8fjnQ 2014/12/30(火) 20:30:47.20 ID:sUHAxgIQ0







大和田「男の約束だ!!!」








150: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/09(金) 22:38:05.93 ID:+SACe5Rw0

~桑田編~レオンお兄ちゃんの断髪式




桑田「…」トボトボ

花音「お兄ちゃん!」バッ

桑田「うおっ! …って花音かよ」

花音「そうです! 私が花音です!」

桑田「なんでお前がこっちにいんだよ?」

花音「今日は初めての部活でしょ? だからちょっと見にきたんだ!」

桑田「マジかよ… 俺練習出ねーから顔合わせだけなんだけど…」

桑田「つーかさ、お前の中学からここってそれなりに遠くね?」

花音「まあまあ、それよりどうかしたの? なんか元気なかったけど…」

桑田「ああ、それがよ…」

花音「ま、まさか!」

桑田「何だよ?」

花音「どっか怪我したとか!?」

花音「お兄ちゃんのあまりのかっこ良さに女の子が集まり過ぎて、一人一人に握手してたら腱鞘炎になっちゃったとか!?」

桑田「ねーよ。いや、確かにそういう野球選手もいたけどよ…」

桑田「そもそも俺、怪我とかしたことねーから。デッドボールなんかも貰ったことねーし」

桑田「つーかさ、なんで野球やってるだけで怪我すんのかなぁ。結構いるんだよそういう奴」

花音「なんでって… スポーツに怪我はモノツキじゃないの?」

桑田「モノツキ? あ、付き物ね」

桑田「いや、そうかもしんねーけどよ。でも野球だぜ? サッカーやバスケや柔道ならわかるけど野球で怪我するとかあり得ねーだろ」

桑田「あるとしたらベース上でのクロスプレーくらいじゃね?」

花音「お兄ちゃんは結構特殊な方だと思うよ…?」

桑田「そうか? てか、んなことはどーでもいいんだよ」

花音「まあ、怪我してないならいいんだけど… それならどうしたのさ?」

桑田「そうだ忘れてた! いやそれがさ、やべーんだよ! 激ヤバなんだよ!」




151: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/09(金) 22:38:46.41 ID:+SACe5Rw0

花音「な、何がヤバいの?」

桑田「髪切ってこいって言われたんだよ!」

花音「え?」

桑田「だーかーらー、坊主頭にしてこいって言われたの!!!」

花音「あー…野球部だからね…」

桑田「いくらなんでも理不尽だろ!? 中学では伸ばしてても大丈夫だったのによ!!!」

桑田「くっそー…こんなことなら入る前に確認しとくんだった…」

桑田「練習免除の約束はして貰えたのによぉ」

花音「レオンお兄ちゃんでも認めて貰えないの?」

桑田「練習免除は内輪のことだからギリオッケーってことらしいんだけど、髪型は外の目にも触れるから駄目なんだとよ」

桑田「だから来週の練習試合までに切るように言われた…」

桑田「で、それまではこのままでいいことになってよ。試合前日に部室でやってもらうことになったんだよ」

花音「そ、そうなんだ…」

桑田「けどよー、よく考えてみると大勢の部員に見守られながらマルコメ君になるって結構恥ずくね?」

花音「うーん、確かにそうかも…」

桑田「だろ? でも、先輩もいるしよぉ、もう決まっちまったんだよ…」

花音「大丈夫だよ!」

桑田「あ?」

花音「今のカッコいいお兄ちゃんが見られなくなるのは残念だけどさ、お兄ちゃんなら坊主でもカッコいいよ!」

桑田「いや、その辺の奴よりはそうだろうけどさ…」

花音「だから私と付き合お!」

桑田「なんでそうなるんだよ!?」

花音「私なら坊主のお兄ちゃんでも変わらず愛せるから!」

桑田「だから無理だっての!」

花音「うぅ…そんなぁ…」ジワ

桑田「ハァ…またかよ…」

桑田「泣きたいのは俺だっての…」ナデナデ

花音「うぅ……ウヘヘ…」









152: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/09(金) 22:40:19.02 ID:+SACe5Rw0







桑田「あー…いよいよ明日かぁ…」

花音「そのイケてる髪型も今日で見納めだね」

桑田「言うんじゃねーよ! てかなんでお前がウチにいるんだよ!」

花音「いいじゃん別に。折角近くに住んでるんだしお兄ちゃんと一緒に居たいもん!」

桑田「それは別にいいけどよぉ。俺は今それどころじゃねーんだよ」

花音「そんなに嫌なの?」

桑田「あたりめーだろッ! 誰が好き好んであんなだせー髪型にすんだよッ!!!」

桑田「うぅ…いっそのこと退部しちまおうかなぁ…」

花音「だ、駄目だよ! 野球やってるお兄ちゃんすごくカッコいいのに!」

花音「あ、でもお兄ちゃんなら野球やってなくてもカッコいいけど。っていうかお兄ちゃんはいつでもカッコいいけど」

桑田「んなこと言ったってよぉ…」

花音「それにお兄ちゃん特待生でしょ? 野球辞めたら学校に居られなくなるんじゃない?」

桑田「わ、忘れてたあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

花音「いくらお兄ちゃんでも流石に中卒はチョベリバだよ! 将来路頭に迷っちゃうよ!」

花音「あ、でもそうなったら私が一生養ってあげればいいか… だからお兄ちゃん!私と付き合…」

桑田「わねえよ!!!」

花音「うぅ…勢いに乗せても駄目なの…?」

桑田「駄目なの!!!」

桑田「あぁ…こんなことしてる間にも断髪式が刻一刻と近づいてくる…」

花音「もう仕方ないんじゃないのかな?」

桑田「まあ…そうだよなぁ。もうどーしようもねーよなぁ…」

桑田「でもよぉ、嫌なもんは嫌なんだよ…」

花音「うん!じゃあ私も明日付いてってあげる!」

桑田「ハァ!? なんでそうなんだよ!?」

花音「髪切る時も私が付いてるから!」

桑田「子供が歯医者行くんじゃねーんだからお前が付いてても意味ねーだろッ!!! つーか余計嫌だってのッ!!!」

花音「えー、なんで?」

桑田「なんでもだよ!」

花音「むぅ…」プクー




153: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/09(金) 22:41:10.09 ID:+SACe5Rw0

桑田「つーかもうこんな時間かよ… マジでやべーよ…」

花音「あ、そうだね。私もう帰らなきゃ…」

桑田「あ? 今から帰んの? お前ん家ってここからだと結構遠いだろ」

花音「うん、だからそろそろ…」

桑田「泊まってきゃいいじゃん。明日は土曜日だしよ」

花音「え? いいの?」

桑田「別にお前なら母ちゃんも何も言わねーって」

桑田「それにこんな時間にこの距離を帰らせるのはやっぱ危ねーだろ?」

花音「わ、私のこと心配してくれてるの…?」

桑田「は? そりゃするだろこんな時間なら…」

花音「お兄ちゃん!」ダキ

桑田「うわっ! なんだよ!?」

花音「お兄ちゃんが心配してくれてうれしいよ!」

桑田「大袈裟だっての…」

花音「えへへ…」ニヤニヤ

桑田「ハァ…なんかお前と馬鹿やってたら少し気が紛れてきたな」

花音「え? 私と?」ドキッ

花音「わ、私はお兄ちゃんが元気になったならいいけど… お兄ちゃんさえよければずっと一緒にいても…」

桑田「よし! 今のうちに寝ちまうか!」

花音「え?」

桑田「じゃあな。お前も早く寝ろよ」バタン

花音「…」

花音「…グス」








154: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/09(金) 22:41:51.43 ID:+SACe5Rw0







「怜恩、起きなさい! 遅刻するわよ!」

桑田「…ぅ…あぁ…? 今日は土曜だろ…?」

「今日は部活行くんでしょ!」

桑田「あー…そうだった… くっそー、なんでこんな朝早くから…」

桑田「マジ眠ぃよ…」

桑田「あ、そういや花音は?」

「花音ちゃんならもう朝ごはん食べて帰ったわよ」

桑田「なんだよ珍しいじゃん。アイツがこんな早く帰るなんて…」

「早く支度しなさい。もうあんまり時間ないわよ!」

桑田「あー、わかってるよ」








155: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/09(金) 22:42:43.01 ID:+SACe5Rw0








桑田「チーッス」

「おう桑田、やっと来たか。いよいよだな」

桑田「ウッス…」

花音「おはよう!お兄ちゃん!」

桑田「ハァ!? なんで花音がここにいんだよ!!!」

花音「え? だって昨日言ったでしょ? ついていくって…」

桑田「ついてきていいとは言ってねえだろ!!!」

花音「えへ、もう来ちゃった!」

桑田「来ちゃったじゃねえ! 帰れよ!」

「おい、桑田。ちょっと位いいじゃないか。こんな可愛い娘が来てくれたのに」

桑田「適当なこと言わないでくださいよ!!!」

「お前が来るまでちょっと話したけど、いい娘じゃないか」

桑田「何馴染んでだよ!!!」

花音「馴染むっていうか… 将来はこの学校に通う訳だし色々知っておかないとって思って…」

桑田「知るかんなこと!!!」




156: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/09(金) 22:43:48.28 ID:+SACe5Rw0

「さあ、もういいだろ。さっさと始めよう」

桑田「ちょ、ちょっと待ってくださいって! まだコイツが…」

「こっちはこの後練習があるんだ。早くしろ。もう準備はできてるぞ」

花音「大丈夫だよお兄ちゃん! お兄ちゃんなら坊主も似合うって!」

桑田「このアホ! そういう問題じゃねーって!」

桑田「せ、先輩! やっぱ俺、坊主なんて嫌ッスよ!」

「今更何言ってんだ。その頭で試合に出せる訳ないだろ」

桑田「なら試合出れなくてもいいッス!」

「お前の場合、試合出れなかったら退学だろ! それとも今から真面目に勉強するか?」

桑田「うぅ…それは…」

桑田「て、ていうか今時坊主ってどうなんすかね…? やっぱり坊主にする必要は…」

「馬鹿野郎! そんな頭でウチのユニフォームを着れると思うな! 伝統あるLL野球部をなんと心得る!」

「思い出せ。お前がウチに入ることを決めた日のことを… お前はLLのユニフォームを着て野球ができることを心待ちにしてたはずだ」

桑田「いや、俺は家が近くて野球の特待があったからここに来ただけで…」

「さあ、やるぞ。もうだいぶ時間を食ってしまった」カチッ ブイィィィン

桑田「ちょ、嫌ですって!」

花音「…」ギュッ

桑田「か、花音…?」

花音「大丈夫だよお兄ちゃん。私が手握っててあげるから…」

桑田「そーいう問題じゃねえってのッ!!!」

花音「この髪型もとうとう本当に見納めだね」

桑田「うわああああああああああああああああああ!!!!!」




 ジョリジョリジョリジョリジョリジョリジョリジョリジョリジョリジョリジョリ







157: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/09(金) 22:45:05.92 ID:+SACe5Rw0

桑田「うっわー…マジかよ…完全に坊主じゃん…」

花音「うん。シャレオツ坊主とかじゃなくて完全なマルコメ君だね」

桑田「はあぁぁぁぁ… こんな頭でこれからどうやって生きていけってんだよ…」

花音「大袈裟だって! その髪型も結構カワイイよ!」

桑田「いやいや、そーいうんじゃねえんだよなぁ。俺が目指してんのはさ」

桑田「俺が求めてんのはもっとパンクでイケてる路線なわけよ」

花音「あ、そういうストレートにカッコいいお兄ちゃんもいいなぁ」

桑田「だろ? あー、後3年もこの髪型で過ごすのかよ…」

花音「次から床屋さんでやって貰ったら? できるだけ長めにしてもらえると思うし」

桑田「そうだな。次からそーするわ」

桑田「ま、俺なら短髪でもそこそこイケんだろ! あんまりいつまでもウジウジしてんのもだせーしな!」

花音「そうだよ!どんな髪型でもお兄ちゃんが一番カッコいいよ!」

桑田「とりあえずは部活引退するまでの辛抱だな。そしたらマキシマムにかっけー俺を見せてやっからよ!」

花音「うん!楽しみにしてるよ!」

花音「じゃあ、その時が来たら… 私と付き合…」

桑田「わねーっての!!!」






163: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/13(火) 21:59:48.70 ID:0lMbCq9P0

~腐川編~



 ピピピッ ピピピッ

腐川「…」ポチ

腐川「…」ムク

腐川「…」テクテク

腐川「…うふ」

腐川「うふふふふふふ… おはよう、カメ子…」

カメ子「…」

腐川「ちょっと葉っぱが萎びてきてるわね… 帰りに新しいのを持ってきてあげるわ…」

カメ子「…」

腐川「…あんまり時間がないわね。名残惜しいけどもう支度しないと…」





 ガチャッ

腐川「…」スタスタ

父「…」モグモグ

母1「…」モグモグ

母2「…」モグモグ

腐川「…いただきます」ボソ

腐川「…」モグモグ

父「…」モグモグ









164: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/13(火) 22:00:34.35 ID:0lMbCq9P0







 ガチャッ

腐川「ふぅ…」

カメ子「…」

腐川「まったく…相変わらず辛気臭い食卓ね… 起きていくのが嫌になるわ…」

腐川「ど、どうせ食卓を囲むならアンタとがいいわ… アンタならアタシの臭いで食欲をなくすこともないもの…」

カメ子「…」

腐川「な、なんて言ったってアンタの方が臭いものね…! あは、あはははは…!」

カメ子「…」

腐川「…とは言っても、アンタは好きな時に草や果物の汁を吸うだけなんだから食卓も何もないわね…」

カメ子「…」

腐川「そろそろ行くわ… 本当は行きたくもないけどね…」

腐川「まあ、毎日のように嫌がらせされてた中学に比べればまだマシよ…」

腐川「そ、そうよ… 中途半端に関わろうとするからろくでもない目に合うのよ…!」

腐川「他人なんて徹底的に意識から排除しておけばいいのよ… 今のアタシみたいにね…」

カメ子「…」

腐川「じゃあ、行ってくるわね…カメ子…」










165: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/13(火) 22:01:30.93 ID:0lMbCq9P0









 バタンッ!

ジェノ「たっだいま~ん!!!」

母1「え…?」

父「と、冬子…?」

ジェノ「あらら? マミーだけじゃなくてパピーもいたのね?」

ジェノ「なら、“ま~ん”じゃなくて“ち~ん”ね! ゲラゲラゲラゲラゲラッ!!!」

父「またか…」

ジェノ「股? 玉? タマタマ?」

ジェノ「嫌だわお父様! まだ昼の3時半だっていうのに! Stand up ED!」

ジェノ「つーか、ひっさしぶりに出てこられたと思ったら放課後の学校の便所ってどういうことよ?」

父「は…?」

ジェノ「ひょっとして…便所飯の真っ最中!? あの根暗、とうとう一線を超えちゃったの!?」

ジェノ「いやいやいや、さっき放課後って言ったばっかなんですけど! ゲラゲラゲラゲラゲラッ!!!」

母1「…」

ジェノ「うんうん、わかるわマミー。根暗ブスが突然陽気な美人になって戸惑っているのね」

ジェノ「でもこれも真理… この世の全ては表と裏で構成されているの…」

ジェノ「9回表の後に9回裏があるように、根暗の裏には太陽のような朗らかさがあるのでーす! ゲラゲラゲラゲラゲラッ!!!」

父「…」

ジェノ「ところでマミー、今日のお夕飯は何かしらん?」

母1「カ、カレーだけど…」

ジェノ「まあ!アタシの大好物…って便所で目覚めたその日の晩にカレーとはこれ如何に…ゲラゲラゲラゲラゲラッ!!!」タッタッタッ









166: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/13(火) 22:04:22.52 ID:0lMbCq9P0






ジェノ「さてさて、結構久々に出てこれた気がするけど… 今はいつかしらん?」

ジェノ「ってもう8月ぅ!? マジ光陰矢の如し!!!」

ジェノ「夏の祭典までもう時間がない… その前にリビトーを補給しなくっちゃね!」

ジェノ「萌える男の子探しに行こーっと! そんでぶっ殺そーっと! ゲラゲラゲラ…あ?」

カメ子「…」

ジェノ「ほげええええぇぇぇぇぇ!!!!カメムシちゃんが机の上に!?」

カメ子「…」

ジェノ「チッ! ざっけんなよあの根暗。カメムシこんなとこに置くんじゃねえよ…」

ジェノ「大体なんでこんな無駄に風通しのいい容器に入れてんだよ。臭いが漏れんだろうがよッ!」

ジェノ「もしかして臭いが籠ると死ぬとか…?」

ジェノ「ゲラゲラゲラゲラゲラッ!!! マジかよちょーウケる!自分の臭いで死ぬって、あの根暗超えちゃってんじゃん!」

ジェノ「つーか臭ッ! アタシの体臭ッ! こりゃ3、4日洗ってねえな… この季節に信じらんねえわ…」

カメ子「…」

ジェノ「あ?何見てんだよ。捨てんぞ? …あれ?」

ジェノ「そうだわ!捨てちゃえばいいんだわ!」

ジェノ「アタシったらなんでこんな簡単なことに気が付かなかったのかしら!」

ジェノ「おーし、出てこーいカメ太郎ー! アスファルトのジャングルに放してやっから。都会の隅でその日暮らしさせてやっから」ガサゴソ

カメ子「…」ブーン

ジェノ「うおっ!? 逃げんなコラ!」チャキッ




167: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/13(火) 22:05:05.39 ID:0lMbCq9P0

ジェノ「まあ、萌えないっていうか人間ですらないし… 遠慮なく鋏でやらせて貰いまーす!」ブンッ!

カメ子「…」ブーン

ジェノ「チッ! チョコマカと…」

カメ子「…」ピタ

ジェノ「お、止まった。そんじゃあ、鋏じゃなくてティッシュで…」

カメ子「…」プ~ン

ジェノ「お?…っ!? くっせ!!! うっわマジでくっせ!!!」

カメ子「…」プ~ン

ジェノ「ちょ…これ…洒落になら…うぷっ…!」フラフラ

ジェノ「嘘…だろ…?意識が…」バタリ

カメ子「…」

ジェノ「………かゆ…うま…」ガクッ

カメ子「…」

カメ子「…」コロリ

カメ子「」








168: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/13(火) 22:06:13.59 ID:0lMbCq9P0






腐川「……ん…」

腐川「あれ…?アタシ…」

腐川「ハッ! ア、アタシ、学校でクシャミして…そ、それで…!?」

腐川「ってアタシの部屋…?」

腐川「…どうやら、まだ殺してはいないみたいね…よかったわ…」

腐川「あれ…?この臭い…」

カメ子「」

腐川「カ、カメ子!?」

腐川「ちょ、ちょっとカメ子! どうしたの!? しっかりしなさいよぉ!」

カメ子「」

腐川「そ、そんな…カメ子…アンタが死んだら…アタシはどうすればいいのよ…」

腐川「うぅぅ…カメ子ぉ…」ポロポロ

 ポタリ…

カメ子「」ピクリ

腐川「え…?」

カメ子「…」ムクリ

腐川「そ、蘇生した!? …って、元々死んでなかったってだけよね…」

腐川「でも、よかったわ…」

カメ子「…」

腐川「それにしても、なんで戻れたのかしら…? どうやらクシャミじゃなくて気絶の方みたいだけど…」

カメ子「…」

腐川「…! も、もしかして…アンタがやったの…?」

カメ子「…」

腐川「そ、そうよ…! この部屋の臭いといい…気絶していたアタシ達といい…そうとしか考えられないわ…!」

腐川「うふふ…カメ子、アンタがアタシを守ってくれたのね…」

カメ子「…」

腐川「すごい…すごいわ…! やっぱりアタシ達は確かな絆で結ばれているのね…!」

腐川「うふ…えへ…あははははははははは…!」

カメ子「…」









169: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/13(火) 22:07:48.79 ID:0lMbCq9P0








ジェノ「んー…」ガサゴソ

ジェノ「今回の戦利品どこに仕舞おっかなぁ…」ガサゴソ

ジェノ「そろそろ収納スペースがきつくなってきたわね! 始めはあんなに緩々だったのに!」

ジェノ「使い込むほどきつくなっていくなんて…なんてファンタスティックなの!? ゲラゲラゲラゲラゲラッ!!!」

ジェノ「そろそろ新しい場所見つけないと…ん?」

ジェノ「あららーん? なんだかお宝っぽい封筒をみつけたぞ?」

ジェノ「根暗宛だろうけど開けちゃおーっと!」ビリッ

ジェノ「えーっと、何々…希望が峰学園…? スカウト…?」

ジェノ「えー!? 何アイツー! スカウトとかチョー生意気なんですけどー!」

ジェノ「ってか希望が峰学園って… どっかで聞いたことある気がすんだよぁ…」

ジェノ「こういう時は…“希望が峰学園”で検索検索ゥ!」

ジェノ「YAHOO!でググろーっと! ゲラゲラゲラゲラゲラッ!!!」







170: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/13(火) 22:09:56.04 ID:0lMbCq9P0





ジェノ「ふぅーむ、なるほどなるほど…」

ジェノ「つまり希望が峰学園っていうのはイケてる少年少女が集まって自分の得意なことをシコシコ頑張る所なのね…」

ジェノ「面白そー! 何より共学ってのが最高じゃない!」

ジェノ「あの根暗女、アタシの知らない内に女子高に入りやがったからなぁ」

ジェノ「ま、アタシをなるべく男に会わせないようにしたんだろうけどねー」

ジェノ「でも、そんな日々も今日で終わり… アタシは希望が峰学園で萌える男子達とキャッキャウフフな毎日を送るの!」

ジェノ「アイツにバレる前に手続きしちゃいまーす! ゲラゲラゲラゲラゲラッ!!!」

カメ子「…」

ジェノ「あ? 何見てんだよ。バルサン焚くぞコラ」

ジェノ「ま、めんどくせーからやんねーけど」

ジェノ「しっかし、“超高校級の文学少女”ねぇ…」

ジェノ「確かにあの根暗女の取り柄なんてそれくらいよね!」

ジェノ「それならアタシは…」






ジェノ「“超高校級の殺人鬼”ってとこかしらーん? ゲラゲラゲラゲラゲラッ!!!」










173: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/26(月) 23:47:08.26 ID:ZxxTQG6X0

~苗木編~




こまる「ねえ、お兄ちゃん」

苗木「ん? どうしたの?」

こまる「もう読んだ?」

苗木「何がだよ?」

こまる「何がじゃなくて! この前貸した漫画だよ!」

苗木「ああ、あれか」

こまる「まさか、読んでないの!?」

苗木「ボクは“最強伝説○沢”とか“○道部物語”みたいなマンガが好きなんだよ」

こまる「好みが渋すぎるよお兄ちゃん…」

苗木「そうか? でも最近のも結構読むけどなぁ…たら☆すぱとか。後ラノベも読むし」

こまる「なら少女漫画も読んでみようよ!」

苗木「うーん…でもさすがに少女マンガはなぁ…」

こまる「少女漫画を馬鹿にしないで!!!」

苗木「ば、馬鹿にしてるわけじゃ…」

こまる「お兄ちゃんは男の子だからって先入観を持ちすぎなんだよ!」

こまる「ちゃんと読めば面白いはずだからさ!」

苗木「ボクだって少女マンガくらい読んだことあるよ。でもその時は…」

こまる「面白くなかったの?」

苗木「うん。なんか展開とか不自然だし、目が異常に大きいし…」

こまる「目が大きいのは様式美だよ!!!」

苗木「わ、わかったから… そんな大きい声出すなよ…」

こまる「お兄ちゃんだって背が異常に小さい癖に!」

苗木「い、異常!? おい!いくらなんでもそんな言い方することないだろ!!!」

こまる「だって私より小さいし…」

苗木「こ、これから伸びるんだよ! 男子は女子より伸びる時期が遅いんだからさ!」

こまる「今年の身体測定ではいくつだったの?」

苗木「………160だよ」

こまる「こういうキリのいい数字答える人って大体少し盛ってるよね」

苗木「も、盛ってないよ! 何言ってんだよ!」

こまる「本当は156cmくらいじゃないの?」

苗木「4cmも盛る訳ないだろ!!! いや、っていうかそもそも盛ってないよッ!!!」

こまる「じゃあ、そのアンテナ入れてるとか?」

苗木「入れてないよ… 正真正銘頭の頂点で測ったよ…」




174: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/26(月) 23:47:41.64 ID:ZxxTQG6X0

こまる「ところでさ、そのアンテナってどうやって作ってるの?」

苗木「え? 別に作ってないけど…」

こまる「じゃあ、自然にそうなってるの?」

苗木「うん。朝起きて寝癖を直すと自然にこうなるんだよ」

こまる「へぇ、いいなぁそれ」

苗木「そうか?」

こまる「うん、なんか個性的っていうか… 自然にワンポイントできるのはうらやましいかな」

苗木「うーん、こまるにこれがあってもどうかと思うけど…」

苗木(こまるって昔から変なものに憧れるようなところがあるからなぁ)

こまる「あれ? なんでこんな話になったんだっけ? 」

苗木「漫画の話してたのにお前がいきなり身長の話を始めたんだろ…」

こまる「そうだよ!漫画の話だった!」

こまる「とにかくちゃんと読んでみてよ!絶対面白いから!」

こまる「“あの子の中の爆弾”は私が読んだ漫画の中でも3本の指が入る面白さだからね!」

苗木「マンガに指は入らないと思うけど…」

こまる「細かいとこはどうでもいいんだよ!大事なのはこの漫画が最高に面白いってことなんだから!」

苗木「いやでもさ、子宮の中に爆弾っておかしいだろ」

こまる「え?なんで知ってるの? もしかして少し読んだ?」

苗木「いや、ネットのスレで晒されt」

こまる「はぁ!? そんなのおかしいよ!!!」

苗木「ボクに言われても…」

こまる「ゆみちゃんのあの切ない恋模様をそんな目で見るなんて…」プルプル

こまる「許せないよ! 心無い人の所業だよ!」

苗木(正直ボクも笑っちゃったけど…)

苗木「わ、わかったよ! ちゃんと読むから!」

こまる「ホント?」

苗木「ホントだって! だから落ち着けって!」

こまる「うん。それならいいんだけど…」

苗木「まったく…」

こまる「お兄ちゃん、読んだら感想聞かせてね」

苗木(なるほど… 好きなマンガの話を一緒にする相手が欲しかったのか)

苗木「うん、わかったよ。なるべく早く読むようにする」

こまる「えへへ、待ってるからね!」










175: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/26(月) 23:49:03.19 ID:ZxxTQG6X0








こまる「ねえねえ、お兄ちゃん」

苗木「今度は何だよ?」

こまる「おやつ食べない?」

苗木「え? どうしたんだよ? いつも一人で食べてるのに」

こまる「えへへ、油芋食べようと思うんだけど一人だと全部食べちゃいそうだから…」

こまる「これって全部食べると結構カロリーあるんだよね」

苗木「ふーん、ボクはそういうのあんまり気にしたことないなぁ」

こまる「もう! 女の子は色々大変なんだよ!」

こまる「お兄ちゃんも女の子の気持ちとかちゃんとわかってないと後で困るんだよ!?」

苗木「ボ、ボクはそういうのは…」

苗木(あんまり考えたことないし… っていうかボクにそんなこと…)

こまる「またそんなこと言ってる…」ビリッ

こまる「お兄ちゃんももう高校生なんだからいい加減そういうところにも気を使わないと!」ガサゴソ

苗木「大体皆こんなもんだって…」

こまる「恋人同士っていうのはこういうお互いの理解不足が原因でうまくいかなくなるものなんだよ」パリッ

こまる「だから今は彼女とかいなくても今の内から勉強しとかないと!」モグモグ

苗木「わかったようなこと言ってるけど、こまるだって恋愛経験なんてないだろ」

こまる「あ、あるもん!」

苗木「本当か? 聞いたことないけど」

こまる「お、お兄ちゃんに言ってないだけだよ!」パリッモグモグ

苗木(一緒に食べようって言った割に袋を手に持って一人でバリバリ食べてるな…)




176: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/26(月) 23:49:33.00 ID:ZxxTQG6X0

こまる「そ、それに私は恋愛モノの漫画とか結構読むし…」

苗木「そういう漫画は参考にはならないんじゃ…」

こまる「なるよ! わかったようなこと言わないで!」

苗木「いや、それはこまるだろ…」

こまる「そ、そんなことないよ。私ネットとかでも恋愛相談に乗ったりしてるし…」モグモグ

苗木「ネットとはいえあんまりいい加減なこと言わない方がいいと思うけどなぁ」

こまる「いやいや、それが結構いいアドバイスができてるみたいでさ! 私の話を聞いて彼氏とうまくいったって人も何人かいるんだよ!」

苗木「そういうのは本当に女の人とは限らな…いや、何でもない」

こまる「…? 変なの。…あ、お菓子無くなっちゃった」

苗木「え、ボクまだ一口も食べてないんだけど…」

こまる「もう!お兄ちゃんがのんびりしてるから全部食べちゃったじゃん!」

苗木「ボクのせい!?」

こまる「運動してカロリーを消費しないと… お兄ちゃん!外でキャッチボールしよう!」

苗木「うん、まあいいけど」

こまる「今日テレビで高校野球やっててさ。ピッチャーの人がすごい球投げてたんだよ」

苗木(そういえばニュースでもやってたな… 名前は忘れたけど、関西の名門校だったはずだ)

こまる「かっこよかったなぁ… なんでもプロも注目してる逸材らしいよ!」

苗木「あはは、こまるはすぐに影響されるなぁ」

こまる「お兄ちゃんも何かスポーツとかやってればよかったのに」

苗木「ほ、ほら、ボクは運動とかはあんまり得意じゃないし…」

こまる「あ! バスケとかやったら背も伸びたんじゃない!?」

苗木「べ、別にバスケやったからって伸びる訳じゃないだろ。元々背が高い人がバスケをやるんだよ」

こまる「でも、背を伸ばすには適度な運動がいいらしいよ?」

苗木「知ってるよ… もっと早く知りたかったけど」

こまる「まあ、大丈夫だよ。今は私よりも低いけど、まだ少しくらいなら伸びるって!」ナデナデ

苗木「撫でるな!!!」











177: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/26(月) 23:50:43.74 ID:ZxxTQG6X0









苗木(喉乾いたな…台所で何か飲むか)



こまる「あ、お兄ちゃん」

苗木「なんだ、こまるもこっちにいたのか」

こまる「うん、ちょっと休憩」

苗木「そっか」ガチャッ

こまる「ずっと描いてて疲れたからね」

苗木「…」ゴクゴク

こまる「…」

苗木「ふぅ…」

こまる「…」ペラッ

苗木(もう一杯飲もうかな)トクトク

こまる「あー…疲れたなぁ…」チラチラ

苗木「…」ゴクゴク

こまる「でも、うまくできたからまあいいかなぁ…」チラチラ

苗木「ふぅ…」プハァ

こまる「結構練習してたからなぁ…」チラチラ

苗木(コップ洗っておかないと…)ジャー

こまる「あー! 中々うまく描けたなー!」チラチラ

苗木「さて、戻るか」

こまる「お兄ちゃん!!!」

苗木「うわっ! な、なんだよ…?」

こまる「なんで何も聞かないの!?」

苗木「き、聞いて欲しいならそういえばいいのに…」

こまる「そういう問題じゃないの!!!」

苗木「なんなんだよ…」




178: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/26(月) 23:51:52.12 ID:ZxxTQG6X0

苗木(でもここは言う通りにしておいた方がよさそうだ…)

苗木「えっと……何…やってたの?」

こまる「うん! ちょっと絵を描いてたんだ!」

苗木「そこはすぐ答えるんだ…」ボソ

こまる「何か言った?」

苗木「い、いや、何も…」

こまる「あ! もしかして描いた絵を見たいとか!?」

苗木「え!?」

こまる「うーん、困ったなー! 確かに我ながら上手く描けたと思うけど、人に見せるほどじゃないと思うなー!(棒)」

苗木(もしかして絵が上手く描けたから見て欲しいのかな…?)

こまる「でもお兄ちゃんがどうして見たいって言うなら…」チラッ

苗木「え、えっと…もしこまるが良ければ見せてくれないかな…? ほら、描いた絵って今手に持ってるやつだよね?」

こまる「え!? お兄ちゃんやっぱり見たいんだ!」パアァ

こまる「困ったなー! 私は趣味で描いてるだけなのにー!」

苗木(まだ粘るのか… 我が妹ながらなんてめんどくさいんだ…!)

苗木「い、いいだろ少しくらい! こまるが描いたものを見てみたいんだよ!」

こまる「しょ、しょうがないなー! じゃあ、ちょっとだけだよ?」

こまる「ハイ! これだよ!」ペラッ

苗木「どれどれ…」

苗木(うーん、そこそこ上手い…のかな? 少なくともボクよりは上手そうだ…)

こまる「ねえねえ!どう!? 結構いいでしょ!?」キラキラ

苗木「う、うん! よく描けてると思うよ! 練習したの?」

こまる「えへへ、少しだけね!」

苗木「そっか、すごいな。こまるは」

こまる「実はね…私、将来は…」

こまる「…」

苗木「ん? どうした?」

こまる「や、やっぱりなんでもない!」

苗木「でも、今何か言いかけて…」

こまる「本当になんでもないって!」

こまる「じゃあ、私部屋に戻るから!」ダダダッ!

苗木(なんだったんだ…?)

苗木(まあいいか。本人は満足したみたいだし…)

苗木「それにして、なんか疲れたな…」ハァ…











179: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/26(月) 23:53:07.23 ID:ZxxTQG6X0








母「誠君。もうすぐ文化祭の時期よね?」

苗木「うん、そうだね」

こまる「文化祭!? いつやるの!?」

苗木「来月だけど…」

こまる「高校の文化祭かぁ… きっと中学のよりもすごいんだろうなぁ」

苗木「どうだろう? ボクも高校の文化祭は初めてだからな」

母「こまるちゃんは高校の文化祭に興味があるの?」

こまる「うん!色んな出店やアトラクションがあったり映画を撮ったりするんだよね!?」

苗木「まあ、そういうのもあると思うけど」

こまる「後は何と言ってもステージイベントだよね!」

母「うーん、確かに文化祭といえばステージって感じよね」

こまる「うんうん! ステージイベントのない文化祭なんて秘密○具のない○ラえもんみたいなもんだからね!」

苗木「いや、その例えはどうなんだろ…?」

こまる「高校の文化祭って中学よりも自由にできてなんていうか青春って感じだよね!」

母「うふふ、それなら高校生活も楽しみね」

こまる「うん!どんな高校に行くのかな? やっぱり大きな校舎や豪華な設備があるお洒落な学校がいいな!」

苗木「あはは、それならボクの高校は全然違うね。豪華な設備どころか食堂すらないからね」

母「そういう学校だったらいいところの私立よね? 勉強頑張らないとね!」

こまる「あ、でも根黒高校もいいかなぁ…」

苗木「根黒? 根黒って普通の県立高校だろ? 何かあるのか?」

こまる「だって根黒にいけばさやかちゃんの後輩になれるんだよ!?」

苗木「ああ、そういえば舞園さんは根黒に行ったんだったな」

こまる「…」ジー

苗木「な、なんだよ…?」

こまる「別に…“舞園さん”なんて言っちゃって、まるで身内みたいな口ぶりだなーとか思ってないよ」

苗木「な、何言ってんだよ! ボクは別にそんな…!」

こまる「中学が一緒だっただけで話したことすらないのにね」

苗木「だ、だから、そんなんじゃ…」




180: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/26(月) 23:53:41.18 ID:ZxxTQG6X0

母「そういえば誠君、中学の入学式から帰ってきた時すっごく興奮してたわね」

こまる「あー、舞園さやかが同じ学校に入ってきたーとか言ってすっごい騒いでたよね」

苗木「そ、そうだったっけ…?」カァアア

こまる「そうだよ! 私に何回も自慢してきたじゃん!」

苗木「お、覚えてないな…」

こまる「嘘だよ! 絶対覚えてるよ!」

苗木「うぅぅ…こまるはもうちょっとボクに優しくしてくれてもいいだろ…」

母「あら? でもこまるちゃんはお兄ちゃんのことが大好きよね?」

苗木「え?」

母「小学生の時、誠君が友達の家に泊まりに行った時のことなんだけど…」

こまる「…あ! だ、駄目だよ!お母さん!」

苗木「…どうしたの?」

母「こまるちゃんったら夜になってお兄ちゃんがいないって泣きだしちゃったのよ」

こまる「わああああああああああああ!!!」カァアア

苗木「知らなかった… ボクのいない間にそんなことがあったなんて…」

こまる「ま、まだちっちゃい頃の話だよ!」

母「そうねぇ…確かこまるが2年生の時だったかしら…」

こまる「ほらね! 5年生までおねしょしてたお兄ちゃんの方がよっぽど恥ずかしいよね!?」

苗木「なっ…!?」

こまる「なら私はセーフだよ!」

苗木「お、お前…それ絶対外で言うなよ!?」

苗木(こまるなら何かの拍子にポロッと言っちゃいそうな気がするッ!)

こまる「え…あ、も、もちろんだよ…! あはは…」

苗木「ま、まさか…」

こまる「だ、大丈夫だよ! ちょっとしか言ってないから…」

苗木「ちょっとってなんだよオイ!」

こまる「チェコちゃんにちょっとだけ言っちゃったっていうか…」

苗木「お、お前、なんてことしてくれたんだよッ!!!」

こまる「わぁ!お兄ちゃんが怒ったぁ!」

母「もう、こまるちゃんがからかい過ぎるからでしょ」

こまる「そんなに気にしなくても…チェコちゃんもかわいいお兄さんだねって言ってたし!」

苗木「うぅ…最悪だ… 絶望的だよ…」










181: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/26(月) 23:54:32.88 ID:ZxxTQG6X0








こまる「お、お兄ちゃーん…?」

苗木「…」

こまる「もしかしてまだ怒ってる…?」

苗木「……怒ってるわけじゃ…ないけどさ…」

こまる「べ、別にそんな恥ずかしくないって! 5年生くらいまでならそこそこいるはずだよ!」

苗木「そういう問題じゃないだろ…」

こまる「それにほら! 前向きなのがお兄ちゃんの取り柄なんでしょ?」

苗木「いくらボクでも前向きになれることとなれないことがあるんだよ…」

こまる「うぅ…」

苗木「なんかボクには兄の威厳みたいなものが全くない気がする…」

こまる「そ、そうかな…?」

こまる(確かにそういうのは感じたことないけど…)

苗木「運動も勉強も平凡で趣味や特技にも変わったところはない。好きなものだって大抵はランキング番組で1位になってるものだし… 王道という言葉すら裸足で逃げ出すような普通の人間…」

苗木「そのくせ背だけは平均どころか妹よりも低くて、おまけに5年生までおねしょしてたなんて…」

苗木「ボクは決定的に最低で…最悪で愚かで劣悪で…何をやっても駄目な人間なんだ…」

こまる「な、なんか怖いよお兄ちゃん…」

苗木「仕方ないだろ…もはや唯一の長所である前向きさも失ったんだ…」

こまる「そ、そんなことないよ! お兄ちゃんにはいいところだっていっぱいあるよ!」

苗木「へえ…だったら試しに言ってみてもらえる? ボクのどこが優れているのか」

こまる「そうだね…まずは優しいところかな」




182: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/26(月) 23:56:27.33 ID:ZxxTQG6X0

苗木「ふぅーん。あんまり自覚はないけど少なくともこまるの目にはそういう風に見えてるんだね」

苗木「だったらボクも期待に応えてこまるには優しくするよ!」

苗木「優しく優しく優しく優しく…ね?」ネットリ

こまる「あわわ…」

こまる(なんか違ったみたい…)

こまる「えっと…じゃあ、他には…」

こまる「アンテナがカッコいい!」

苗木「は?」

こまる「え…ほ、ほら! 髪型でキャラが立ってるから…」

苗木「立ってるからなんなの? そんな単純な答えが正解だなんて本気で思ってるの?」

こまる(これも駄目なんだ… 私はいいと思うけどなぁ)

こまる「じゃあじゃあ…えっと…」

苗木「…プッ、あはは、もういいよ! 冗談だからさ」

こまる「え?冗談?」

苗木「まあ普通で平凡すぎるってのは事実だけどさ、前向きさまで失くしたら本当にどうしようもないからね」

苗木「ちょっと仕返ししてやろうと思ったんだけど、こまるがあんまり真剣に考えるからつい…」

こまる「もう!酷いよお兄ちゃん!」

苗木「そんなに怖い声出さないでよ。怒ってるならほら、深呼吸深呼吸」

こまる「でも、よかったよ。前向きな時のお兄ちゃんってたまにかっこいいから」

苗木「あはは、そうかな?」

こまる「まあ、相変わらず兄の威厳はないけどね」

苗木「あ…やっぱりないんだ…」

こまる「もう少しシャキッとしてたらさやかちゃんとも友達になれたかもしれないのに」

苗木「いや、ボクなんかが舞園さんと仲良くなるなんて無理だから…」



母「誠君、ちょっといい?」

苗木「ん? どうしたのお母さん?」

母「さっきの話なんだけど…」

苗木「さっきの話って?」

母「ほら、誠君が友達の家に泊まりに行って時の話よ」




183: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/26(月) 23:57:15.47 ID:ZxxTQG6X0

こまる「も、もうその話はいいよぉ!!」

母「実はその時のビデオが残ってるんだけど…見る?」

苗木「見る!」

こまる「はあ!?」

母「うふふ、じゃあ準備するわね」

こまる「ちょ、ちょっと待ってよ!!! そんなことしてなんの意味があるの!?」

母「いいじゃない。すっごくかわいいんだから。お母さんも久しぶりに見たくなっちゃったわ」

こまる「そもそもなんでそんな映像が残ってるの!?」

母「お父さんが撮ってたのよ」

苗木「あはは!お父さんのファインプレーだね!」

こまる「どこが!? ファインプレーどころか戦犯だよ!!!」

母「じゃあ、早速見ましょうか」

こまる「やめてえええええええええええええええええええ!!!!!!!!!」



  今日も苗木家は平和です。




184: ◆92Irv0u8fjnQ 2015/01/26(月) 23:57:44.22 ID:ZxxTQG6X0

これで全編終わりになります

ありがとうございました














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