1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:04:54.03 ID:ivYMPUcG0
双葉杏諸星きらり
 コタツに入って仰向けに寝ころんでいる双葉杏が感極まったように言う。

「コタツはいいよね」

 反対側でコタツに入り、天板に上半身を預けている諸星きらりが答えた。

「温かいにぃ」

「ポカポカだねぇ……」

「ぬっくぬくでハピハピにぃ……」

「ねえ、きらり、みかんとって」

「オケオケ。ばっちし」

 きらりはコタツに入ったまま寝ころぶと、無造作に伸ばした手で部屋の隅のミカン箱を掴む。

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:07:07.02 ID:ivYMPUcG0
「手が長いと便利だねぇ」

「うふふふ、ばっちし」

 こういうときに「大きい」と杏は言わない。
 身体全体の大きさとは関係なく、ミカン箱には手が届くのだから。

「おみかんおみかん、まぁるくてあんまいみかんだにぃ」

「みかんちょーだい、みかん」

「ちょっとだけねぇ、待ったらいいことあるに」

「しょうがないなぁ、きらりが言うなら待ってあげるよ」

「杏ちゃんはいい子いい子」

 きらりはせっせとみかんの皮を剥く。
 それが終わると今度は、白い筋を一本一本丹念に取り始めた。

「ぷるんぶるんっ」

 筋一本残ってない、綺麗に剥かれたみかんの房。

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:09:16.21 ID:ivYMPUcG0
「ぷるんぷるんで、杏ちゃんのホッペタみたいだにぃ」

「ホッペタかぁ」

「お尻でもいいにぃ?」

「杏のお尻をきらりはいつ見たの!?」

「この前一緒にお風呂に入った時だにぃ。しっかり観察したよ」

「今すぐ記憶から抹消するといいよ」

「でも手触りは知らないからざんねーん。ホッペタの手触りは知ってるにぃ」

「絶対に触らせないからね」

「美味しい飴があるにぃ」

「駄目駄目、飴ぐらいじゃ杏のお尻は触れないよ」

「ふにぃ」

「拗ねても駄目だよ。早くみかんちょーだい」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:11:18.82 ID:ivYMPUcG0
「オケオケ。あーん」

 手を伸ばすきらり。その手の先には剥いたばかりのみかん。

「あーん」

 杏が口を開いたところに手を伸ばしたきらりは、ミカンの房を杏の舌の上に優しく置いた。

「かぷり」

「ぎょぎょっ! 杏ちゃん、きらりの指食べゆ!?」

「はへはいよ」(食べないよ)

 すぐに口を開けて解放する。

「杏ちゃんがカンニバリズムに目覚めたかと思ったにぃ」

「そういう話は小梅とかとすればいいよ」

「小梅ちゃんはきらりは苦手だにぃ。話しているとコワコワになるにぃ」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:13:21.01 ID:ivYMPUcG0
「そうなんだ。みかんもう一つちょーだい」

「オケオケ」

「おみかん?」

 二人のサイドから声。
 きらりの左、杏の右。そこでもう一人が起きあがる。

市原仁奈
「おみかんでごぜーますか?」

「仁奈ちゃん、ハピハピ、おはようだにぃ」

「起きたんだ。きらりがみかんを取ってくれたよ」

 ふぁわあ、と仁奈は大欠伸。

「おはようごぜーます……って朝じゃねーですよ?」

 時計を見ながら、仁奈はずれたうさぎの着ぐるみをちょいちょいと整える。
 どうやら、小一時間ほど眠っていたらしい。

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:15:24.69 ID:ivYMPUcG0
「仁奈ちゃんも、おみかん食べゆ?」

「いただきますでごぜーます」

「オケオケ」

 ごそごそと、みかんを三つほど新たに取り出すきらり。

「今剥くにぃ」

 きらりの手元に目を向けた仁奈は、最初に杏の食べさせるために剥いたみかんの皮に気付く。

「きらりおねーさん、それがみかんの皮ですか?」

「そうだにぃ」

「……うさぎでやがりますよ?」

 きらりは、剥いた皮の形がうさぎになるように器用に剥いていた。

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:17:31.76 ID:ivYMPUcG0
「♪ぴょんぴょん、ぴょんぴょん」

「♪ぴょんぴょんぴょんぴょん」

 きらりが節を付けて弾むように口ずさむと、追従するように仁奈も歌い出す。
 二人を慌てて見比べる杏。

「♪ぴょ……」

 入ろうとするがうまくいかない。

「♪ぴょ……」

 やっぱりうまくいかない。どうしてもタイミングがずれてしまう。

「うぬぬ」

「♪ぴょんぴょんぴょんぴょん」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:19:33.48 ID:ivYMPUcG0
 着ぐるみの頭から伸びた耳を掴みながら、仁奈は歌っている。

「♪ぴょんぴょんぴょんぴょん」

 みかんの皮を剥きながらきらりが歌っているのが主旋律ならば、仁奈が歌っているのは副旋律。

「うぬぬぬ」

 杏は悔しがるけれど、入れないのだ。

「きらり! 杏はみかんが欲しいの! 急いで!」

「にょわ?」

 突然の杏の声に、驚いて歌を止めるきらり。
 仁奈も止める。

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:21:35.40 ID:ivYMPUcG0
「おみかん、ちょっと待つにぃ。先に仁奈ちゃんのを剥くからにぃ」

「杏が先だよ」

「杏ちゃんはお姉ちゃんだから、仁奈ちゃんの後だにぃ」

 ニッコリ笑ってそう言われると、杏はそれ以上何も言えなくなる。

「卑怯だなぁ、きらりは」

「ん?」

「なんでもない。早く仁奈にあげなよ」

「ん~。急ぐにぃ。次は杏ちゃんにあげゆ~」

 テキパキと二つのみかんを剥くきらり。今度の皮は、象と蛙だ。

「ぞうさんとかえるさんでごぜーますよ」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:23:37.96 ID:ivYMPUcG0
「パオンとケロンだにぃ」

「ほんっとに、きらりは無駄に器用だねぇ。なんでいっつも杏を潰しそうになるのかなぁ」

「杏ちゃんは可愛いから、全力で抱きしめゆ」

「仁奈も逃げた方がいいよ。いつか潰されるよ?」

「きらりおねーさんは仁奈を潰しやがるですか?」

「わさとじゃないにぃ」

「芸能界は厳しいので、潰されるかもしれねえと、プロデューサーが言ってたですよ。きらりおねーさんも仁奈のライバルでやがりますね?」

「うん、それはちょっと意味が違うんじゃないかな」

「だけど仁奈は、頑張るですよ。新たな着ぐるみゲットのために」

「うん。わかった。がんばって。杏は印税生活のために頑張るから」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:25:41.59 ID:ivYMPUcG0
「杏ちゃんも仁奈ちゃんも頑張るにぃ」

「きらりおねーさんも杏おねーさんも頑張るですよ」

「きらりも仁奈も適当に頑張ればいいよ」

 三人は、再び思い思いの姿勢でくつろぎ始める。



 帰ってきたPが「事務所にコタツ持ち込んだのは誰だーーーっ!」と騒ぎ立てるまで、あと五分の安らぎタイムであった。




                                               仁奈編 終

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:28:35.31 ID:ivYMPUcG0
 なんだかんだと、コタツは事務所に認められた後日……

「そろそろ煮えるにぃ」

「うどんすきかぁ……」

「うどんは嫌いかにぃ?」

「杏は何でも食べるよ。誰かが用意してくれるなら」

「杏ちゃんも自分でご飯作らないと、将来困るにぃ」

「うーん。毎日コンビニでもいいけどなぁ」

「にょわ……」

「ああ、コンビニに行くのも面倒くさいなぁ」

「杏ちゃんも大変だにぃ……」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:31:10.17 ID:ivYMPUcG0
「あ、そうだ。宅配してもらうよ。最近はお弁当とかも運んでくれるから」

「栄養が偏ると病気が心配だにぃ」

「その時はビタミン剤とか飲めばいいよ」

「お野菜とか食べてゆ?」

「サプリメントとか飲めばいいよ」

「うゆ……」

「じゃあこうしよう」

「にょわ?」

「きらりがご飯作ってよ」

「にょ?!」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:35:22.72 ID:ivYMPUcG0
「そ、それは、きらりが毎日杏ちゃんのご飯作ゆ?」

「うん」

「毎日お味噌汁作ゆの?」

「別にお味噌汁のない日があってもいいよ?」

「も、もしかして、プロポーズ?」

「うん、その発想はおかしいよ、きらり」

「だって毎日……」

「女同士は結婚できないからね?」

「じゃあ同棲にぃ」

「その発想はなかった」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:39:59.40 ID:ivYMPUcG0
 お鍋が煮えたので、きらりは杏のお椀にうどんをよそう。

「熱いから気をつけるにぃ」

「うん」

「美味しそうですね」

三村かな子
当たり前のように座るのは三村かな子

「うどんすきですか?」

「一緒に食べゆ?」

「いいんですか?」

 今度は杏に尋ねるかな子。

「あー、作ってくれたきらりがいいなら、いいんじゃないかな」

「ありがとうございます」

 深々と礼をして、目の前の割り箸とお椀を手に取る。

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:43:16.53 ID:ivYMPUcG0
「あ、そうだ。これ、良かったら後でデザートにしましょう」

 ケーキの箱を横に置く。

「おお、それはコージーコーナーのケーキだね」

「はい、新作ですよ」

「うん。いい心がけだね」

「杏さん、ケーキは好きですか?」

「美味しいケーキは好きだよ」

「良かった。実は……」

 別の箱を取り出すかな子。

「クッキーもあるんです」

「おおおーー。でかした、かな子!」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:46:56.74 ID:ivYMPUcG0
 どん。と大きな音と共に置かれるかな子のお椀。

「かな子ちゃん、おうどん」

「あ、ありがとうございます」

「どうしたの? きらり?」

「杏ちゃんも、おうどん」

「う、うん。食べるけど……なんか怖いよ、きらり」

「なんでもないない」

 かな子がお椀を手に取った。

「いただきまーす」

「沢山食べるにぃ。美味しい美味しいうどんだにぃ」

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:49:46.24 ID:ivYMPUcG0
「美味しいおうどんですね」

「うん。美味しいね」

「かな子ちゃんも杏ちゃんもいっぱい食べてにぃ」

 ニコニコとお椀によそうきらり。

「まだまだたくさんあるにぃ」

「うーん、あんまり食べ過ぎると、ケーキとクッキーが食べられなくなるな」

「にょわ?」

「うん、そろそろ抑えようかな」

「にょわっ!?」

「おうどんばっかりでお腹ふくらせてもなぁ……」

「にょわわっ!?!?」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/27(木) 23:51:59.55 ID:ivYMPUcG0
「杏ちゃんは、きらりよりかな子ちゃんを選ぶにぃ……」

「え? なに、どうしたの、きらり?」

「きらりは悲すぃ……」

「えーと、どしたの、きらり? お腹痛いの?」

「杏ちゃんはケーキ好き?」

「好きだよ?」

「クッキーは?」

「好きだよ?」

「きらりは?」

「はい?」

27: >>25ありがとう 2012/12/27(木) 23:55:51.04 ID:ivYMPUcG0
 
 首を傾げる杏。
 うどんを食べるかな子。

「えーと、きらり。よくわからないんだけど」

「杏ちゃんの気持ちはよくわかりましたにぃ」

「私はきらりの気持ちがわからないよ?」

 さらに首を傾げる杏。
 二人の様子がおかしいので、自分でお椀にお代わりをよそうかな子。

「いいんだにぃ。杏ちゃんは美味しいケーキを食べればいいんだにぃ」

「ケーキは食べるけどさぁ……」

 うううう、と泣きそうなきらり。
 うどんを食べるかな子。

29: >>25ありがとう 2012/12/27(木) 23:58:00.90 ID:ivYMPUcG0
「えーと……」

 助けを求め、かな子に目をやる杏。
 かな子はニッコリ笑って、

「おうどん美味しいですよ」

「いや、そうじゃなくて」

「……このだんごですか? それとも鶏肉?」

「もしもし、この状況見えてる?」

「はい」

「それじゃあ……」

「お代わりは自分でよそいますからご心配なく」

「おい」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/28(金) 00:01:39.33 ID:+jgqt20J0
駄目だこの子、うどんすきしか見えてない。

かな子に美味しいもの、ちひろにガチャ、まゆにP。つまり、そういうことなのだ。

「あー、もう、きらり。言ってくれなきゃわからないよ?」

「……」

「杏が何か変なことした?」

「杏ちゃん、うどんよりケーキの方がいい?」

「へ?」

「うどんよりクッキーの方がいい?」

「えーと……」

 杏は考える。
 かな子は食べている。

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/28(金) 00:04:19.57 ID:+jgqt20J0
「ああ……」

 杏は頷くと、自分の席に戻り、お椀を取った。

「きらり、おうどん、美味しいよ」

「本当に美味しいですよ」

 とりあえずかな子を無視する杏。

「うん、美味しいからもっと食べたいな、お代わり欲しいな」

「……本当にぃ?」

「杏は、きらりの作ったうどんすきが食べたいよ」

「あんまり食べると、ケーキが……」

「ケーキいらない。きらりのうどんすきが食べたい」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/28(金) 00:08:26.15 ID:+jgqt20J0
 きらりの伸ばした手に、杏は空になったお椀を渡す。

「お代わり?」

「うん。お代わり」

「わかったにぃ」

「今日は、沢山食べるよ」

「いっぱい入れてあげゆ」

「ケーキもクッキーも今日は入らないよ。うどんすきだけでいいよ」

「一杯食べてにぃ」

「おー」

 その後、持ってきたクッキーとケーキは全部かな子が自分で食べました。


                                       かな子編 終

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/28(金) 00:10:32.15 ID:+jgqt20J0
以上、お粗末様でした


短かったけれど、仁奈編とかな子編で終わりです

モバをちゃんと書いたのは今回が初めてだけど、あんきらはいずれまた書くよ。

支援とか公式絵紹介とかありがとうでした

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/28(金) 00:14:41.65 ID:VGEzhLX50
おっと、完結してた
おっつおっつばっちし☆
あんきらはいいもんだねぇ

1001: SSウィーバー 2012/xx/yy(xy) 00:00:00.00 ID:ssweaver

人気記事